夏の日の入りは遅い。足早にやってくる冬の夜と違って、夏の夜は太陽に出番をたくさんもたせているみたいで、太陽が沈んでしまっても、太陽の残光で空は茜色に光り輝いている。
それは僕たちにとって非常に好都合だった。もう六時をまわっているんだけど、まだ、真っ暗闇になっているわけでもなく、僕たちの足元を照らしている。
「大津ってどこなんだ?」
先輩は辺りをきょろきょろと見渡していた。
「おい、何か言えよ」
先輩は僕に呼びかける。
「あっ、すいません。聞いてませんでした」
「大津ってどこって聞いたんだよ」
「あー、大津・・・」
僕は口ごもった。
「どうした?」
「いや、なんでもないです」
少しずつ、辺りは夜の空気になってきていた。
さっきの車に乗っていたときに流れていた、クイーンの曲が頭の中でずっとリピートされていた。
アイワズボーントゥラブユー
僕はアナタを愛するために生まれてきた。
とてもいい言葉だと思う。本当に。でも、僕は今どうしたいんだろう。家を飛び出してきたのはいいけど、実際何がしたいかわからなくなってきていた。そりゃあ、ヒッチハイクしていろんな人に車に乗せてもらって人の優しさに触れたけど、それが今回の旅と何か関係があるんだろうか。これが僕がしたかったことなんだろうか。なにをするために家を飛び出したんだろうか。僕の、ために、って何だろう。僕はどこまで行けばいいんだろう。
僕は疲れてしまった。