北朝鮮の核問題 年越し攻防続く
北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議は、11月の日米首脳会談を境に、日米両国の連携を再確認した米国が「完全かつ正確な申告」をするよう北朝鮮側に迫る一方、ブッシュ米大統領が金正日総書記に親書を送るなど、米朝双方の駆け引きが続いている。議長役の中国の武大偉外務次官は6日、首席代表会合開催について来年に持ち越されるとの見通しを示したが、10月の共同文書で合意した申告の期限となる年末を控えて、米朝の攻防はさらに活発化しそうだ。首脳会談以降の日米朝の動きを追った。(今堀守通、田北真樹子 北京 有元隆志)
「自分は満足していない」。11月16日、ホワイトハウスで行われた日米首脳会談。福田康夫首相が核施設の無能力化の作業が始まったことを切り出すと、ブッシュ大統領は強い口調でこう述べた。
この発言は日本側を驚かせた。寧辺に専門家チームが入るなど、10月の合意文書の履行に向け作業が順調に進んでいるように見えたためだ。
申告について、交渉にあたるヒル国務次官補は北朝鮮が最初から完全な申告を行うことはないとみて、1回目は不十分でも何回か申告を繰り返させることで、徐々に完全な内容に近づけようと考えていた。
これに対し、ホワイトハウス側は、北朝鮮が小出しに情報を出し、見返りに支援を求める「サラミ戦術」が続くことを警戒した。大統領発言は「交渉の現状に不満を示した」(協議筋)ともいえる。12月はじめに訪朝したヒル次官補は大統領の意向を踏まえ、「最初の草案であっても完全かつ正確な内容であることが重要だ」と伝えた。
金桂寛外務次官からは「せいては事をし損じるということもある」との答えが返ってきた。6日から予定された首席代表会合に参加できない理由も伝えられなかった。
交渉の行方に楽観的な見通しを示すことの多いヒル次官補も5日夜、記者団に「いくつかの相違点がある」と認めた。
申告をめぐる米朝の駆け引きが続くなか、首脳会談後、「大統領は拉致の重要性も含め、問題点をよく理解していた」(政府筋)との安(あん)堵(ど)の声が日本側から漏れた。
米国が首脳会談前後にもテロ支援国家指定解除に踏み切るとの見方も出るなか、大統領に北朝鮮問題で、正確な報告が上がっているか不安視する向きもあったためだ。参院で与党が少数という不安定な状況のなか、指定解除された場合、福田政権に大きな打撃となる。
首相と大統領は2人だけで、拉致問題について突っ込んだやり取りを交わしたという。
大統領は「被害者はわかっているのか」「犯人は断定できるのか」などと矢継ぎ早に質問を浴びせた。首相は英語版の拉致の資料を大統領に手渡し、「核・ミサイル問題を並んで拉致問題の解決が日本にとって重要だ」と伝えた。大統領も「拉致問題を決して忘れない」と応じた。
首相が指定解除問題を持ち出すことはなかった。首相周辺は「あえて解除反対を言わずとも、大統領はわかっている。解除は当面ないとの感触を得た」と説明する。
ところが、首相が日本に戻ると、解除問題に言及しなかったことに不満を表明する家族会の姿がテレビに映し出されていた。首相は「拉致問題をちゃんと伝えたのになぜ怒るのか」と周辺にいらだちをぶつけた。
首相には官房長官時代の2002年9月の日朝首脳会談後、拉致被害者の安否をめぐる対応で、家族会らから批判を浴びたことが「トラウマとして残っている」(自民党有力議員)とされる。
日本側と米側の担当者の行き違いで公表内容を調整する時間がなくなり、非公表の部分が多くなったためだった。
就任当初から安倍政権の「圧力重視」路線から一線を画し、対話も重視する姿勢を示した首相だが、訪米中の米CNNとのインタビューで「北朝鮮が核保有を続ければ消滅する」と発言した。
朝鮮中央通信は5日になってこの発言に反論する論評を出した。北朝鮮が首相を批判するのは初めてで、首脳会談を機に日米がさらに連携して強い姿勢で交渉に臨んでいることを牽制(けんせい)するねらいがあったものとみられる。
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【主張】拉致特別委決議 米は対北戦略の見直しを
北朝鮮に対する米国のテロ支援国家指定解除に反対する超党派決議が衆院拉致問題特別委員会で採択された。参院でも近く同じ趣旨の決議案が提出される見通しだ。
決議は「拉致被害者が抑留され続けている以上、テロは今も続いている」と指摘し、指定解除は「多くの日本国民を落胆させ、日米同盟に重大な影響を及ぼす」とも明記している。自民、民主、公明3党の賛成による超党派で採択された事実は、拉致問題解決を求める多くの日本国民や国会の強い意思と、指定解除が同盟の信頼関係にもたらす悪影響を端的に示すものである。
特定の米外交政策に異論を唱える国会決議は異例という。だが、米議会でも安易な指定解除への懸念が高まり、被害者の帰国などを解除条件とする法案が下院に提出されている。同時期に日米の立法府で同じ趣旨が叫ばれているということは、こうした懸念が決して的外れでなく、間違ってもいないことを裏書きしているといってよい。
5日には、政府拉致問題対策本部の企画で欧米など8カ国の記者11人が新潟市内の横田めぐみさん拉致現場を視察するなど、国際的関心も着実に広がりつつある。
核問題をめぐる米朝協議は、北朝鮮が「完全かつ正確」な核申告を行うとの約束を果たしそうになく、6カ国協議の年内開催も微妙となった。ヒル米首席代表の交渉姿勢をめぐっては「北朝鮮側との口約束だけで話を進めすぎる」といった批判が元米当局者らからも出ているのが現状だ。
先の日米首脳会談で、ブッシュ米大統領は「拉致問題を忘れない」と述べたが、それだけでは安心できない。安易な決定で同盟関係を損なうことがないように、米政府は核廃棄の全体プロセスにおける指定解除問題の位置づけや北朝鮮に対する協議戦略などについて今一度、見直してもらいたい。
特別委決議は日本政府に対しても、拉致被害者の全員救出のために「最大限の外交努力を尽くすべきだ」と求めている。日米両国とも同盟を強化しつつ、核問題も拉致問題も、着実な前進を図らなければならない。福田康夫首相はじめ日本外交当局も、同盟国だからこそできる直言や緊密な協議を怠らずに、全力を投入してほしい。
【主張】拉致特別委決議 米は対北戦略の見直しを - MSN産経ニュース
ブッシュ大統領:金総書記に初の親書 「全核計画申告を」
【ワシントン笠原敏彦、北京・西岡省二】米ホワイトハウスは6日、ブッシュ大統領が北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記に親書を送り、6カ国協議の合意に基づき年内に行う予定の「すべての核計画の申告」を約束通り履行するよう求めたと発表した。北朝鮮を「悪の枢軸」と名指しし、金総書記を嫌悪してきたブッシュ大統領が同総書記に書簡を送ったのは初めてで、米側の核計画の申告に対する懸念を示す動きと見られる。
親書は1日に書かれ、訪朝したヒル国務次官補が5日、朴宜春(パクウィチュン)外相に手渡した。
米国家安全保障会議(NSC)のジョンドロー報道官は親書の内容について「大統領は米国の6カ国協議への関与を改めて表明するとともに、北朝鮮が完全な核計画の申告を行う必要性を強調した」と説明した。
ヒル次官補は6日夜、滞在先の北京で、同様の親書を駐中国大使を通じ他の6カ国協議参加国に送ったことを明らかにし、「手紙そのものは異なるが、同じポイントが含まれている」と記者団に語った。
毎日新聞 2007年12月6日 23時35分 (最終更新時間 12月7日 2時24分)
ブッシュ大統領:金総書記に初の親書 「全核計画申告を」 - 毎日jp(毎日新聞)