コラムなタイム -17ページ目

夢天国

マチュピチュへ いつかいつかと 天国だぁ

いつかはクラウン、いつかはマチュピチュ、夢遠く、天国がすぐそこにやってきた。
車は大きなやつにするくらいお金持ちになりたかったし、
旅の夢はカレンダーやテレビでみていたあの異国の別天地のはずだった。
でも、それもこれもあれも、おおかた可能性があやしくなった。
今は小さな猫の額ほどの我が家の庭を眺めては、
かの画家よろしく、蟻は左右のどちらの足から歩き出すのかと、
息をひそめて眺めやる日向暮らしだ。
ほんに、まいった。
この身は、じき尽きるのか。
つましく生きて、とりあえず今少し長らえるとしたい。

新聞難民

 死亡欄 奴か俺かと ドンブラコ

最近、大きな新聞を開いて読むのが億劫になってきた。
字がよく見えなくなってきた上に、メニエール病とやらで
広い紙面の左右上下を眺めている内に、目がくらんできてしまうのだ。
それでも、この歳になると細かな死亡欄に目がいってしまう。
誰か知り合いが死んでいないかというような心配からではなく、
むしろ自分の無事を諮るような気持ちが動いている。
で、そんな自分に嫌気がさしてきたというのに、
今日も一番に開いて見ている。
いつかは自分のくせに。
どうせ自分の名前が見られないのだったらと、
最近は新聞を取るのを止めようかと考えていたら、
隣で女房が言った。
「あたしが見てやるから」と。
やれやれ。

本との気持ち79

「ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち」三上 延
(メデイアワークス文庫・590円+税)

 このところ面白く読める本に出会えないでいた。芥川賞や直木賞の作家、何十万部も売れている作家などのベストセラー本を読んではみたけれど、何が良いのかも皆目分からなかったり、ひどく毒のある文章に辟易したり、どれも途中で投げ出したくなるようなことが続いた。そんな折りに表紙の絵の美女に誘われるがままに手にした本書は鬱屈した気分を一掃してくれた。
 この本、本好きにはたまらなく面白い本だろうと思う。古本屋の美人店主が持ち込まれた本に隠された秘密や事件を追いながら、サインや書き込み、蔵書印、栞の紐、貸し出しカードなどを手がかりに一つ一つ謎を解き明かしていくというストーリーだ。恋と出生の秘密がサイン入りの名作に隠されていたり、失くした文庫の栞の紐が犯人探しの手がかりになったり、盗まれたはずの初版本をめぐる争奪戦にも似た展開など、どこにも美人店主の推理に舌を巻きつついつしか心ひかれてゆく主人公の「俺」がいる。登場する古本は夏目漱石の「それから」や太宰治の「晩年」という名作から論理学の本の他、小山清の「落穂拾ひ」という4編が取り上げられていて、衒うことなく仕立てられたストーリーはミステリーに満ちて実に巧妙で、落ちどころもロマンスを感じさせて心にくいばかりだ。「せどり屋」とか「アンカット」とか古本業界の専門用語もでてくるのも面白さを倍増させてくれる。続編もあるというので、また是非読んでみたいと思う。さぁ、次は少し硬い本でも探してみるとしよう。

ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)/三上 延

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