こんにちは。
先週のことになりますが、今年も秋恒例の美輪明宏さんの音楽会へお邪魔してきました。
今年の音楽会のテーマは美輪明宏さんがこれまで65年以上に及ぶ歌手人生のすべてを捧げてきた「シャンソン」に焦点が当てられたものでした。
タイトルは『美輪明宏の世界 〜シャンソンとおしゃべり〜』です。
◉会場:東京芸術劇場 プレイハウス
◉構成・演出・出演:美輪明宏さん
◉演奏:セルジュ染井アンサンブル
シャンソン (chanson) は、フランス語で歌を意味する言葉です。フランス語圏においては、シャンソンは歌全般を意味し、特定ジャンルの楽曲を指すものではないのです。フランス以外ではフランス語で歌われる曲という意味で使われることが多いみたいですけどね。
日本では、1960年代までに流行したフランスの歌謡曲全般をシャンソンと呼ぶ場合が多く、これらを日本語訳でカバーしたものもシャンソンに分類されています。
美輪さんがステージでおっしゃっていましたが、シャンソンは「モダンシャンソン」、「パリジャン・シャンソン」などと呼ばれるほか、シャンソン・ド・ボア(動きのないシャンソン)、シャンソン・ド・シャルム(美しいメロディーと甘い歌詞、聴き手を誘惑するような情緒的な魅惑的なシャンソン)、シャソン・ド・レアリスト(政治や経済といった世の中の出来事についての歌や、社会を風刺した歌、恋愛についても甘いだけじゃない、リアルな恋愛の悲しみや痛みを歌ったシャンソン)、シャソン・ド・サンチマンタル(センチメンタルなシャンソン)、シャソン・ド・ファンタジスト(踊りながら歌うシャンソン)といった風に、「シャンソン」という語に何らかの形容詞を付け分類するそうです。
今回のステージで美輪さんが歌われた『ラストダンスは私に』は、元々英語詞だったそうですが、フランス語の訳詞で大ヒットしたためシャンソンに分類されるようになった曲だそうですよ。
『ラストダンスは私に』は越路吹雪さんの歌唱でヒットしましたよね。
僕の世代を含めて、若い方には『シャンソン』というジャンルは馴染みが薄いと思うのですが、誰か美輪さんの他に今の音楽界でシャンソン歌手って思い浮かびます?
加藤登紀子さんや美川憲一さんなどが歌ってらっしゃいますけど、お二人は『シャンソン』専門の歌手とは言えませんしね。
女優さんが本業以外の歌でCDを出される時に『シャンソン』を歌われることがあったりしますけど。
現在は、美輪さんの真の後継者と呼べるような『シャンソン』ならこの人というような歌手がいない気がして寂しいですね。
ブルースの女王とも呼ばれた淡谷のり子さん、日本で初めてシャンソン歌手を名乗った高英男さん(吸血鬼ゴケミドロの怪演でも有名です)、日本シャンソン協会初代会長の石井好子さん、フランス・パリのオランピア劇場にアジア人として初出演を果たした芦野宏さん、シャンソンの女王と称された越路吹雪さん、画家の中原淳一さんを叔父に持つ中原美紗緒さん、江戸川乱歩賞受賞作家でもある戸川昌子さん、『夜明けのうた』『恋心』『希望』などヒットを連発した岸洋子さんなど、美輪さん以外にも実力のあるシャンソン歌手の方が以前はたくさんいらしたのに、皆さん亡くなられてしまっているので、『シャンソン』というジャンルが日本から廃れてしまわないかと不安になります。
父が好きだった金子由香利さんは歌手活動をされていないようですし、どうされているのでしょうか。気になります。
美輪さんが美容室で若い子たちに挨拶をされたので「私のこと誰だかわかるの?」って訊いたら、「声優さんですよね?」って返ってきたそうなんです。
「私はシャンソン歌手なのよ」って美輪さんが言ったら、「シャンソンって楽器の名前ですか?」って。別の機会に、また若い子に「シャンソンってどういうものか知ってる?」って訊いたら、そのときは「化粧品の名前ですか?」って言われたそうです(笑)。
どうしましょう〜(笑)。
僕は20代の頃から『シャンソン』は好きでしたが、まぁこれが普通なんでしょうね〜。若いシャンソンの歌い手がいればまた違うんでしょうけど。
新宿に、もう亡くなられましたが、シャンソンの作詞をされていた矢田部 道一さんが経営されていたシャンソニエ『シャンパーニュ』というお店(今年で創業45周年だそうです)があり、そこで歌っていた歌手の1人と以前、知り合いだったので、何度か遊びに行ったことがあり、僕は『シャンソン』というものに少しは若い頃から馴染みがありましたが、こういう繋がりでもないとなかなか知り得ない世界なのかもしれませんね。
年齢を重ねた人たちが楽しむものというイメージがありますからね。
シャンソンの文化は日本だけではなく、世界中、フランス本国でも偉大な歌手たちが亡くなったり引退したりしたことで、息絶えつつあるそうです。仕方がないことなんでしょうか。残念でたまりません。
美輪さんは、だから『シャンソン』という文化を、生きている限り、自分だけはなんとか守り通そうと思うと力強くおっしゃっていました。
その熱い想いが迸るようなステージでしたよ〜(笑)。
失礼なことを言うようですが、美輪さんは昭和10年のお生まれ、ご高齢です。これからいつまで歌い続けられるのかご自身でも理解されていると思います。
歌声は衰えもなく、素晴らしいのですが、歌い終わると息が切れることもあります。ステージを動くにも機敏にはいきません。緩やかです。歌い出しをお忘れになることもあります。ギャグかもしれませんが(笑)。
しかし、美空ひばりさんのように、命ある限り、表現者として人生を全うするのだと言うような、強い意志を美輪さんの歌声には感じます。
僕のような軟弱な人間とは違い、美輪さんは壮絶な人生を送ってこられた方です。真の愛をご存知の方です。その滾るような愛が聴いてる僕たちへ降りかかってくるようなステージでしたよ。
ひたむきに人を愛す。ひたむきに人生を生きる。難しい事かもしれませんが、僕はそうありたいと美輪さんが歌う『シャンソン』を聴いて思いました。
僕の右斜め前の座席に、美形の若い男の子が一人で座っていました。アンコール曲の『愛の讃歌』を聴きながら涙をぬぐっていました。
こんな若者が増えてくれたらいいなと思いました。
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