TRIANGLE -5ページ目
容易い程の愛の言葉が
胸に溶けて沈んでいく
まるで底が無いかの様に
深く深く、淀みなく落ちていく
嗚呼、まるで夢の様に
何処までも行けてしまえたら
忘れ去られた記憶の端まで
行ってしまえるのに
その口が吐き出していく
正しい言葉の続きは
まだ聞きたくはないんだ
知らなくて良いままで
生きていけるのならば
それで良かった
確かな在り方なんて
分かりたくはなかった
私が私で在れる事
私が私で在る事
その正当性に殺される事を
何一つとして知らないで
まっさらな言葉の色を
私は薄汚れた感情で
この胸の奥へ落とした
暗く暗く、歪なままで
悲しい顔を思い出す
貴方は笑いかける
安堵に悲しみを纏って
容易い程に安直な言葉で
私の胸を突き刺していく
突き落としていく
それでよかった
私が貴方と在れる事
それでよかった
例えそれが悲しい事でも
貴方が私を選んだならば。
緩く呼吸を繰り返す
確かに生きていると
囁く鼓動の裏を
僕らは覗き見る
覚えている温度が
生温く湿った息で乾く
空の器は何時だって
正しく虚ろなまま
その意味を奪うために
僕はここにいるのに
いずれ、いずれと
先延ばしにした迷子の
その手を引いて歩く
僕らは、どこに向かって歩けばいい?
柔く押された胸が
酷く痛んで悲しくなる
此処に居る事も
今痛みで死にそうな心も
全部まっさらにして
いっそなかった事にして
それでいい。それでいいと囁く
丸く尖った針は
いつだって僕に差し出されていた
そんなことは分かっているのに
鼓動がその身体を動かす
吐き出した息が乾く
喉に張り付いた毒を
全部まとめて呑み込んで
正しく僕が生きたと
虚しさを抱えた孤独を
その標に突き刺して
嗚呼、何処へも行けないと
歩くしかない呼吸を
僕は繰り返して泣いた
貴方の背を追いかける
届かない指先は
望みを掻き消して
呪いの様に
この胸を乱していく
その瞳は何も映さず
私の声を閉ざした
心の行き先を
選べはしない
選びはしない
それでいいのだと
永遠を差し出して
私の望みを貴方の理想が壊す
それが痛みを伴う結末でも
浮かべた笑みの奥底で
血反吐吐く様な苦しみ抱えて
この足はもう動けない
心に貼り付けた
逃げ出せない憧憬に
いつまでも囚われて
貴方のせいだと
何度も声高に叫んで
膝をついて背を丸めて
どれだけ嘆いても
貴方へは届きはしないだろう
離れていく背と
追い越した日々と
二度と触れる事ない
その温もりの中で
正しく愛だと知れば
確かに選んできた
運命というふざけた未来を
私は恨んで呪って
そうして愛に埋もれるだろう
逸らした視線が
絡まる糸が
枷の様に足をとる
貴方が夢だとしても
それを証明する術は
何一つ持たないだろう?
歩き出す力が
一つ足りないまま
一体何度躓いた?
溶け出す様な氷は
僕の心の様で
何も許されないで
断罪は遠く焼け付く
その瞳は貴方を映して
罪ばかりを教えていく
どうして笑えない?
生きる様にと
続けた呼吸が死んでいく
燃え尽きた四肢が
まるで十字を切る様に
心を引き摺っていく
同じ景色ばかりの
地獄はきっと愛しい
貴方を見付けた断崖を
いつまでも愛していると
笑えるこの胸を
前を向くだけの言葉を
何も残さなくても
手の中の埃塗れの花束を
知らなくても美しい
爛れた瞳の罪悪を
記憶に葬る様に
例え灰に変わった命でも
移した温度は温く息衝く
痛みが身体に巡る
零れた涙も血も温度も
何一つ許されない罪の証を
地獄を歩けるようにと
地についた杖で在る様に
私が私を殺すのだろう
吸い込んでは
吐き出して
私は此処で
息をしている
許された時の中で
目蓋に落ちる日差しは
柔らかな土に降り
花咲く時を待って
それでも愛しいと
泣いた貴方の頬だって
乾涸びていたのに
喉の奥を突き刺す
音は何時だって残酷だ
青に沈んだ空は
貴方を追いかけるには遠い
立ち止って
心臓を確認する
鼓動は鳴り止まないで
痛みを積み上げていく
それは正しいの?
それとも間違い?
分かりもしない事を
いくつも並べたて
走れもしない足で
立ち竦んで
守れないその胸を
悼むその心を
貴方は何も知らないで
日差しが刺し殺す
貴方の夢の痕に
私を横たえて覗きこむ
それは愛と
貴方が笑う
その青の下で
私は手を振り翳す
喉が焼けていく
胸は穴が空いたまま
貴方が先をゆく
私も追いかけて
そうして、
そうして。

