さようならは

全てが死んだ後に

足元に転がる

数多の死骸を踏み潰して

追い越し指し示した

その瞳の奥底に沈む

枯れた残骸の上


留めた呼吸の続きで

骸を抱き締める

喉を嗄らしたのは

何を伝えたいのか

土に汚れた膝を

痛みを置いてきた指先を

幾度となく捨てて


乾涸びた四肢を

喉に伝う涙の嘆きを

途切れさせぬ様に

ずっと歩き続ける

歪めた表情に

きっと思い出せない

その先の先に


気取った温度に

さようならが叫び出す

掻き抱いた最愛に

誰もが忘れた

そんな嘆きの声が

踏み潰した死骸の上で

泣いているんだ


変わりゆく空を覗く


コントラストに触れた


その掌は何時だって温かで


朝の緋色が目を覚ます


瞳の奥に柔らかな色を垣間見た


それは優しく彩る


鮮やかな夢から浮かぶ


泡沫の様な日差しに瞬いた


そうして送り出す


影を追いかけて、追い越して


群青に染まる夢の痕を


僕は一つ一つなぞって


辿りついた


今日の終着点に


きっと僕は今ここに在る事


確かに感じていて


目を伏せる


夜に溶ける


明日になる今日を


そうしてまた送り出す


さようなら。


また、明日。


強く祈る呼吸で

その言葉を紡いで

明日の足跡を消していく

知らない事すらも

忘れたふりをして


優しくなくていい

とぼけた様な笑顔で

何時だって待っていて


それは柔らかな懺悔

十字を切った指先を

知らないままでいるように

削り取る夢の痕に

その瞳を伏せた


私の事は忘れて

冷たく落ちていく夜に

その足を止めないで

今日の終わりが

明日になっていくように

焼けた胸のの内でさえ

痛みを置いていかないで


それほどに強く、

強く願った呼吸の中

溺れていく誓いの祈りを

その喉の奥に浸らせて


置いていっておいでよ

愛の言葉に忘れていく

それでいいんだと

泣きそうな笑顔で

何時までも置いていって


僕が僕で在る事を

僕自身が疑う事を

きっと貴方は許してくれない


知ってるんだ

それでも先に行く事を

精一杯腕伸ばして

拒まないでくれよ

思い出は綺麗なままで

忘れてしまうのが一番だろう?


どこまでも広がる傷を

放っておいたって

何れは塞がるさ

それまで疼いて泣いたって

立ち止る理由も責任もない

忘れたってそれは罪じゃない


僕が行く道を

貴方が行く意味を

僕は正しく理解して

足を止めて振り向く


どうしたって泣いているのさ

笑って送り出してくれと

何度言ったって聞いてくれない

知っているんだろうって

泣いた雨の事を

僕は何時だって覚えている


許してくれないのは

一体どっちなんだ

正しさと虚しさの間で

どれだけ泣いたって

そういう事だったんだって

分かっている世界の端で

泣いている君の腕を

僕がもう一度触れる未来を


僕は、何時だって。


忘れてしまうと

全てを目蓋に焼き付けて

そうして踏み出した道で

君が笑ってしまうと

僕にそう言って歪める

口元に僕はただただ視線を殺す


それでいいんだろう?

夢の先は僕だけで行くさ

君が溺れてしまう未来は

何一つ必要ないさ


呼吸器官に口付けを落として

酸素奪う意識の端っこを

待ち望んで指先を伸ばす

掠りもしない海底に

感情論投げ込んで笑う


覚えておいてよ

きっとそれで十分さ

忘れてしまえばそれまでの

思い出語りなんて望んでなくて

夢に沈んでいくこの身体を

追いかけて沈んで


それでよかったのさ

忘れる事すらも

一つ思い出してしまえと

僕らはそれを望んでいたのだから