最後をなぞる

視線が追いかけるのは

何時しか遠ざかった背中で


終わりは黄昏に抱く

白く浮かび上がった

血の気の失せた表情の裏

揺れ動いた感情の先で

貴方が囁いていた


未来は何処にもない

何秒先だという嘘も

全部並べてしまえば

大差ない夢物語の残滓で


終焉を運んで

その幕引きに指をかけた

鳴り響くアンコールと

破裂音の雑音に

僕は諦めたように目を伏せて

愛を語るには近すぎた

その唇に紅を引いた


最後が辿る

まるで救いがない様だ

それだって良かった

望んだのは何時だって

忘れてしまった

その表情一つでいいのに


貴方が引き摺ったのは

伝え損ねたエンドロールだった


垂らした雫に

忘れてしまった

どれだけの愛で

貴方の事を憂えば

全てを許されるのだろう


それは優しさに

愛しさに満ちて

真綿に染み込ませた


夢や希望など

嘘に隠れて

もう伏せてしまった

貴方の未来を

足踏みしてまで


進む秒針の音を

どれだけ願い続けたか

きっとこの世界は

誰も望んじゃいない

人々の未来の話など

一つも関係なくて


また一つ忘れていく

合わせた両手の意味を

抱きしめた腕の意味を

もう誰も思い出せなくて


苦しみで溢れていく

その心の先じゃ

もう目を開いたって

遅いんだよ


その瞳が逸らした

未来が零した涙に

何の意味も無くなる日に

貴方は愛を語るのだろうけど


正義を模したグラスを傾ける

飲み干した懺悔と罪悪感は

刺激的な愛を象る


それが正しいさ!


零しもしない涙なら

誰だって一緒じゃないか

僕に突き立てたナイフだけで

生き残るぐらいなら

拡声器の中で溺れた声で


本意は一体何処に在るのか

そんなマジックを重ねて

指差した言葉の位置に

察しているんだろうって

理屈の上で胡坐をかいて

当てない理想郷を覗いた


正義のグラスが溢れだす

伝う滴の行き先なら

誰よりも君が分かっているだろう

表面だけの愛情を選んで

薄ら冷えていく感情に

何重にも重ねた思い出を


さぁ!飲み干せ!


理屈に跪いた

偏屈を探り当てればいいさ!


苦し紛れの言葉で

君を傷付けた

離しきれない

そんな優しさで


そんな目で見ないで

瞳伏せてまで

君を殺めるには

あまりに近すぎた


遠ざける為の掌は

君には届かないように

知らないでほしいと

願うための両手は

何時しか君を忘れた


意味がないんだろう?

理由がないふりをして

全部上から重ねた

そんな笑い方で

泣く様な事があるなら

もう僕は、知らないと


枯れていく言葉を

君が只管嗄らして

浮かべた表情の中

微かに覗いた傷が

僕らの距離になる


瞳に溢れた希望から

零れ出す死骸を

抱きしめる程の最愛を

君は知らないだろう


僕が選んだ最善が

君が忘れたい絶望なら

どれだけの幸せを渡せただろう

それでも僕は知らないまま

君の幸せの上を歩き続ける


それが幸せであるように


それが最愛であるように


君が先を歩く

その線路の上を

草木が横たわる

砕けた夢の欠片が

アスファルトに転がって


笑っておくれよ

正しかったんだって

そう言っておくれよ

君さえ正しければ

僕はもうそれでいいんだ


もう誰も見てはいない

映画のエンドロールみたいに

僕は舞台から降りていく

君の視線を背中に感じながら

僕は笑いながら

独り幕を下ろすんだ


泣かなくてもいいのさ

そんなもの必要ない

例え遠くに行ったって

君が此処に在るのなら

たった一つ、それだけで


僕はわらってみせるよ

正しかったんだって

僕だけでも言ってみせよう

答えなんて必要ない


夢の続きはこの線路の向こうで

僕の途切れた世界の続きを

君が零した涙の上で

君が笑っていられるよう

願いなんてちっぽけなものだ


そう言って目を伏せた

道標は優しく足元に散らばる

正しさの答えなんて

何処にもないのだから


君がこれから先も在る様

ただそれだけが幸せで在る様

君だけが君の正しさで在る様


ただ僕は、願うんだ