口を閉ざして

明日を眺める

まるで夢の国だ

愛なんて言わなくても

満たされているくらいに


優しい日差しは

目蓋に落ちて煌めく

ぽつりと零した戯言も

本の隙間に閉ざして


それは何処までも続く

蒼穹に仰いだ

誰かの夢の跡で


足をつけた海の青を

呑み込んでは

蹴り倒していく砂の城に

誰も笑えやしないよ

失くしたものの多さに

引き連れた口端を


繋がっているだなんて

優しい嘘は要らないから

影の跡を二人だけ

残さないでおいて


夢の国から零れ落ちた

愛の話は悲劇で

君を愛した分だけ

溶けていく様な瞳の青


其処にいるんだろう?


波打ち際で笑う

君の事を眺める

優しい夢の続きは

僕の為だけに


落ちていくその音を

僕は遠くから見ていた


悲しくはない

寂しくもない

ただ小さな空白と

焼き付いた光景が

何時までも其処にあるだけで


問いかけた問いの答えは

いまだに見付からないまま

優しいだけの世界を終える


それは燃える様な茜に

大きく息を吸い込んだ後で

もう元には戻れないと

言い聞かせた僕の胸の内を

静かに解いていく様で


それは落ちていくだけの

優しさを引き連れていたから


僕は見ないふりをして

悲しみも寂しさも

君には何一つ分けたくはなかった

僕だけでよかったんだって

そうやって埋め合わせて

愛を語るには安い言葉で

終わらせる事が出来るのなら


まだその答えは知らないまま

それでも君は口を開いた


茜が群青に溶けていく

焼き付いた光景は

今も胸に残ったまま


溢れだした感情と

言葉の先を埋め合わせる

君は何も知らない、

僕も何も知らない。

焼き付いた網膜は

爛れたその続きを選んだ


望んでしまった理想が

静かに僕の心臓を引き千切って


もう握る力も

命の先も

夢の死骸も


足跡の埋まらない隙間を

優しいだけの眼差しで

真直ぐに見つめる君が

僕の頬を撫ぜるなら

何故独りで歩く事を

許してはくれないのだろうか


空の高さに沈む様に

愛を一つずつ積み重ねた

まるで墓石の様で

悲しみに涙を流す事はない

ただ只管に感傷的になる

もう見れない夢の続きを

丁寧に燃やしてしまうだけで


僕はいないのだろう

君が笑う先の言葉も

掠れて消えた影法師も

穏やかに手折れる木陰の嘘も


煌めきながら鬱蒼と翳る

その背に背負う罪を

冷えた指先でなぞれるなら

全てはこの為に愛した

世界の果てになるんだろう


僕は知ってしまった

君は何も知らないまま

小さく覗いた隙間に

愛を詰め込んで


鼻につく様な

遠くに霞んだ吐き気と

まどろむ窓辺に軋む


心の落ちる音が、

貴方の足元に散らばる

目蓋の裏には

愛があるの?


語る事なんてない

そう言って笑う貴方は

劈く様な悲鳴に隠れた

慟哭に膝を折った


其処にあるのは愛ですか?

口を開いた先で

貴方は静かに目を伏せて


夢の続きはどうしたって

貴方のいない未来しか、

だってそれだって

貴方が望んだ訳じゃない

なのに、どうしたって


続かない言葉の裏側で

溢れだす感情と

何処か離れていく心が

眠りについた私を揺り起こす


こびり付いた愛なら

落とさなくたっていいだろう?


歯を食い縛った先で

愛が胸に落ちた


息を吐き出して

最後を思い出す

くすんだ藍色は

悲しく滲んだまま


心を千切って

誰かを愛する事が

どうしても難しくて

君の隣は息苦しい


正しく在る事が

君の正義だと言うなら

僕はどうしたって

君の隣には在れない

正しくなりきれない

振り翳した正義は

僕の胸を切り裂いていく


呑み込んだ息の理由を

誰も知る事はないだろう

僕は僕を護るため

埋もれていく愛の形を

そっと握り潰した


もういいだろう

心は誰にも渡せない

僕は僕以外の誰かを

愛する事は出来ないだろう


絶対的な許容量を

溢れだした感情は

垂れ流しの傷口を

引き連れて笑う


涙なんて優しい物は要らない

手折れた花束に埋もれた嘘は

いずれは僕を殺すだろう


正しいと叫んだ口を

この両の手で塞いで

それでも愛せたら

僕は今頃正しく在れただろうか


この瞳が信じた事を

この心が信じなければ

何の意味もないだろうけど


藍色が滲んでいく

愛が沈んでいく空の先を

君が静かに指を差すのを

知らないまま僕は目を伏せた