其処で生きている

呟いた一言は

雨の隙間に霞む


まだ、生きてるよ

僕も君も

息衝いて、

ふくらむ鼓動に

立ち上がる雲


遠くに消える

飛行機雲

風が吹いては

微かに滲む

雨の残響


そっと残す様に

小さく笑う

聞こえた声も

忘れてしまう前に


見つめた

未来の道に

僕はふいに眩んだ


またね、って

声を聞かせて


此処で生きていることを

幸せに思えるように

呼吸をし始める


今日が


生きていられる様に


閉ざされた瞳の奥で

微かに燃える光を見た


それは確かに

淡く力強く瞬いて

一つの形を象っていた


これほどまでに

それは僕を愛し、

僕は君を愛した


二人だけの愛の歌

痛みなんて

何処にもないよ


幼いだけの熱を

分け与える様に

静かに横たえた


花束の中で

呼吸をする

叩かれた問いに

もがく様に

祈りを失くした


二人だけの楽園

眩んだから

僕はその目を閉ざした


最後に見たのは

君が愛した楽園


君の姿が

確かに映っていた

此処に、

楽園に。


確かに、生きていた。


心臓を突き抜ける

痛みは空の彼方

滲んだ針の先は

秒針にて傾く

天秤仕掛けて

君を弔う


デリートキーは小指で、

鈍いままのタイピング

いつもと同じ様で

微妙に狂い始める

タイミングは一秒前後

またまた今日は寒くて

少し笑ったり

力の抜けた様な

そんな話の中で

君が突き刺してた


黒インクが滲んで

均衡が崩れてしまう

手をついて

吐き出す様に

嘘が零れていく

痛みを悼む。

チクタク、タク、

ずれて気持ちの悪い

音の波が攫っていく

どれが答えなの?

答えはあるの?


外れていく道の上で

僕はキーボードに手を乗せる

許しておくれよ、

どうせ消えるんだから

小指で押された

デリートキーの重さが

また胸に乗っかって

天秤が傾いていく

零れる、

溢れる、

軋んでまた深く

針が突き刺さっていく


また君を弔う

悴んだ掌で

撫ぜる冷たい陶器の上辺

悲しみが流れるけれど

それも仕方ないから

僕は、君を隠す

動かすこの手も

嘘吐くこの心も

全部全部。


酷く緩やかに

毒されていく

侵されていく


殺めて

弱めて

苦しいから

閉じ込めて

少しだけ

笑いかけて

僕が此処で

落ちてしまう前に

言葉を潰して

嚥下する声を

望んで転げた


もしも、もしも。

姿形が違って

もしも、もしも。

僕が僕じゃなかったら

世界は、

どうなっただろうか


きっと変わらない

きっと同じままで

ずっと変わらない

今までもこれからも


死んでいく細胞内で

笑いかけた絶望に

どうしてか喉が、

胸が苦しくなって

望んだのは僕なのに

願ったのは僕なのに

どうしても喉が

胸が苦しくなるんだ


緩やかに緩やかに

殺されていく

閉じ込めていく

僕の笑顔も

君の笑顔も

僕の感情も

君の感情も

一つしかないから


潰された呼吸で

必死に息をした


僕は此処だ。

君も此処だ。


全てが変える様に


全てが還る様に


代わりなら

いくらだっている

僕の存在意義が

責め立てる様に抉って

静かに殺していく

瞬いた先で

毒を巡らす様に


ぼやけて見える

僕の夢の中じゃ

もう何も分からないよ

此処にいる理由も

君が望む意味も

全てを覆い隠して

泣き叫ぶように

胸を潰す


優しく殺めて

この心は哀しく

音を立てて軋むから

その掌に爪を立てた


流れる血の色が

どうしても、

どうしても悲しい。


此処に居る理由を

君が縛るなら

眠る事も奪い取って

もう何も残さないで

責めるこの胸が

頭の中で死んでいくなら

背中を押す様に

何処にも行けないように

何処にも逝けないように、


代わりを望んだ

僕を望んで、