恥辱とカタルシス -15ページ目

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

あれー?なんだこのよーわからんの……。

 

こんにちは、渋谷です。

 

 

 

江國香織さんの「号泣する準備はできていた」を読みましたよ。あ、その前にTwitterで窪美澄さんのアカウントを発見した話。

 

おすすめユーザーに窪美澄さんが出てきたからフォローしてみたんですね。結構な数呟いてらっしゃるんですが、遡ってみるとやっぱり窪さんは窪さん。

 

「ツイッターやってる意味が分からない……。作品で語ればそれでいいじゃない。取材とか受けるのもイミフ……なんでこの作品を書いたのかって、そんなこと聞かれてもこっちが困るわよ」といったことをとても知的な言葉で書かれていて、ああ、この人はやっぱり私と感覚が似てるなあと思いました。

 

「でもまあ読者の方とつながる場所がなくなりますから一応アカウントは置いときますけど……積極的には呟きません!」とか言ってね。素晴らしい独自路線。私、こういう自分を持ってる人が好きです。もちろんツイッターを楽しんでる道尾秀介さんなんかもすごくいいと思いますが。

 

いちいち他人と迎合せず、それをはっきり表明しちゃう窪美澄さんは本当に面白い人です。やっぱりファンです。この先も色々と読みたいと思います。

 

……で、江國香織さんです。直木賞受賞作の「号泣する準備はできていた」。もう、もう、もう、びっくりするぐらい期待外れ……。

 

 

 

この「号泣する準備はできていた」は短編集で、収録作が

 

前進、もしくは前進のように思われるもの

じゃこじゃこのビスケット

熱帯夜

煙草配りガール

こまつま

洋一も来られればよかったのにね

住宅街

どこでもない場所

号泣する準備はできていた

そこなう

 

となっております。

 

かなり短い作品が多数収められています。まあ、直木賞とったんだから面白くって当たり前、と思って読み始めますわね?

 

だって、芥川賞じゃないんだよ?直木賞。大衆がおもろいおもろいっつって喜ぶのが直木賞でしょう。なのに、この短編集、はっきり言って何にも面白くありません。よく言えば難解。悪く言えば意味不明。どの話にもろくに起承転結がありません。起承転結、の、起承、ぐらいで話が終わる。「だから何なの?」という感想しか出てきません。

 

「前進、もしくは前進のように思われるもの」は、ある女性が以前海外でホームステイしていた先のおうちの娘さんを、空港に迎えに行くところから話が始まります。あの頃2歳だった娘さんはもう17歳。でも主人公の心は曇っています。夫が飼い猫をどっかにほかってきてしまったんですね。夫の母が飼っていた老猫。もう飼えないっていうんで預かってすぐに捨てちゃった。それで夫婦は険悪になっているんです。

 

でもまあ夫も悪い人ではないらしいんです。夫のことを愛してもいる主人公。空港についてお嬢さんを迎えると、どうもボーイフレンドらしき青年が同行している。で、「ごめんなさいおばさん。私たちホテルに泊まります。家には自分で電話しますから」

 

その女の子に向かって、いきなり「夫が昨日猫を捨てたの」と謎の告白をする主人公。それでなんかすっきりして空港を後にする。で、話はおしまい。

 

……これ、なに?何が言いたいの?まったく意味が分からない。何かの暗喩を駆使してるの?感想、「は?」しかないんですけど。

 

 

 

「溝」も意味わからん。もう離婚するつもりの夫婦が、夫の実家を訪ねます。離婚することは今日は内緒。父、母、妹と共にマージャンを始める夫。妻はそれを見ながら出てくるいい酒を飲みまくります。「あー、この家族嫌い」と思いながら。

 

なんとなく楽しそうに家族麻雀の時は過ぎていくんですが、時に妹と妻の小競り合いもあったりはします。でもなんだかんだいって和やかに時は過ぎ、夫婦は自分の家に帰る。帰宅途中の車で旦那に突っかかる酔っ払いの妻。家について「あなたに贈り物があるの」って言って、車から妻が出したのは夫のウェットスーツ。実家からくすねてきたらしいんだけど、なんなんだそれ?

 

「私たちが別れるってことについて、あなた、どう思う?」……いや、どうもこうも。知らんがな。「あなたの家族といると、私の居場所がないような気がするの」……どこの嫁も思うやつやでそれ。「冷蔵庫の掃除をもうずっとしてないことあなた知ってる?」……いや、掃除せえよ。

 

なんだか……分かりません。私の理解を軽く超えていました。もう、感想としては「は?」しかありませんでした。

 

 

 

そんなわけなんですが、「こまつま」と「そこなう」はまだ理解できたかな。ちゃんと主人公の感情が書かれていたから。主人公の感情がすっ飛ばされてる作品が多くて、想像力が足りない私には理解が出来ませんでした。芸術的……なのかなあ。いや……芸術なのか何なのかもよく分からんなあ。まあエライ先生たちが「これが直木賞ー!」って決めたんだから、分かんない私が悪いんだと思います。でも、本気で分からん。

 

もう一冊くらいは、江國香織さん読んでみたいと思います。作家さんに対して、相性が合う、合わないは間違いなくあると思うんです。でも、こんなにまで「理解不能」なのは逆に気持ち悪い。一体江國香織さんという人は何が書きたいんだ。言いたいことがまったく伝わってこないから気持ち悪いのです。

 

「間宮兄弟」辺りがいいかね。謎を解明せねば。というわけで今日も小説書いてきます!

 

ではまたっ!

わーい、めちゃくちゃ!
 
こんにちは、渋谷です。
 
 
 
窪美澄さんの「雨のなまえ」を読みましたよ!面白かったーめちゃくちゃ!どろどろ!
 
窪さんの持ってる残酷さが余すことなく発揮された作品だったかと思います。「晴天の迷いクジラ」の10倍は面白かった!この人はこういうのを書く人だと思ってたのよ!私の好きなやつでした。
 
この「雨のなまえ」は短編集で、収録作が
 
雨のなまえ
記録的短時間大雨情報
雷放電
ゆきひら
あたたかい雨の降水課程
 
となっております。
 
どの作品にも、土砂降りの描写が出てきます。そして最後の「あたたかい雨の降水課程」以外はすべてバッドエンド。
 
そのバッドエンドエンドぶりがすかっと爽快!なのよね。特に面白かったのが、「記録的短時間大雨情報」と「雷放電」でした。
 
 
 
「記録的短時間大雨情報」は、40代パート主婦タミコさんが主人公。身体はすっかりおばさん体型になってしまいましたが、性欲は満載です。夫は昔浮気をした過去があり、たまにえっちはしますが心はもう離れています。
 
そんなタミコさんに押し付けられるのは認知症の可能性がある姑。少女のようなあどけなさを残す姑は、「あなたはもっと人生を楽しまなきゃだめよ」などと言ってタミコさんに揺さぶりをかけます。
 
そりゃ、タミコさんだって人生をたのしみたいですよ。パート先のスーパーに入ってきた新人の大学生の男の子。この子がタミコさんにちょっかいを掛けるんですね。夫は無責任かつ自己中心的。ああ、私はもう一生気持ちいいセックスなんてできないのかしら。あんな男の子とセックスできたらどんなにいいかしら……。
 
土砂降りのなか、タミコさんたら大学生のお部屋に突撃しちゃいますよ。どうなる……!と思いきや、キモがられてあっさり振られ、しかもパート先で言いふらされ、その上万引き魔である姑は行方不明。徘徊が始まったんですね。もうタミコさんはソファに倒れ込んで起きられません。
 
めちゃくちゃ!めちゃくちゃ!いいですねーこういう救いのない話。とりあえず姑を探しがてらウォーキングして痩せようタミコさん!一連の流れの中で、無気力だったタミコさんには勇気が芽生え始めているんですね。痩せて自信つけて、旦那に食ってかかろう!「誰の母親やねん!」タミコさんはここから人生を逆転できる女だと信じてるよ!
 
 
 
「雷放電」はもっとひどい。自身がブ男であると自覚している男性、三枝くんが主人公。三枝くんには美津ちゃんという超美形の奥さんがいます。あまりに美しい妻を持った三枝くんは、彼女の幸せのために精一杯働いています。
 
大学の同級生だった美津ちゃんと付き合えることになって、発奮した三枝くんは一流企業に就職します。ふたりはすぐに同棲をはじめ、猫のりっちゃんと3人で仲良く暮らします。途中転勤で引っ越したり中古住宅ローンで買ったり。幸せに暮らしているふたりを襲うのはあの震災です。それ以来、美津ちゃんは寝てばかりの状態になってしまいます。
 
でも三枝くんは美津ちゃんのために仕事に家事に頑張ります。こんな美しい女が妻になってくれたんだ。必死に人生に食らいつく三枝くんですが、ある日乗った電車で見知らぬ人がこんな事を言ってくる。
 
「この電車に乗っていても、あんたの行きたいところには行けないよ」
 
それではたと思い出す三枝くん。美津を伴った男に罵られた記憶。「ストーカー、きもっ」と彼を蔑んだのは確か美津だった。そして帰宅してみても違和感。あれ?俺んちこんなおんぼろだった?部屋には隠し撮りした美津の写真。そして、自分で執筆した美津と自分のふたりの愛の物語。
 
ぜーんぶ妄想だったんですね。うん、これぐらいならまあよくある話だ。でも三枝くんはその上を行っていました。あ、俺、電車に飛び込んで死んだかも。やべえ俺霊じゃん。そして実体のない手でせんべい布団をめくると、空気の抜けたラブドールちゃんが寝ている……。
 
最後の数行のオチが良かった!ただの狂人の妄想なら既視感でしたが、おお、霊かよ、みたいな。しかもしわしわになったラブドールって結構な余韻よ?
 
他のお話もすごーい迫力です。窪さんは生真面目に壊れている感じがしていいですねー。山田詠美さんみたいに天然の異端って感じじゃなく、頭良すぎてだんだん変になっていった子(失礼)みたいな迫力があります。好きです。とても面白いとおもいます。
 
あー他のも読もう!今日は参観日なので準備をせねば。
 
というわけで、またっ!

豪華客船に乗りたいですね。

 

こんにちは、渋谷です。

 

 

 

豪華客船に乗りたいのですよ。クルーズ。日本船ならにっぽん丸とか飛鳥Ⅱとかですね。あとぱしふぃっくびーなす。乗りたいのです。もちろん、海外のクルーズ船でも構いません。

 

昔々からなんか船旅に憧れているんですね。一時期、只野仁の人がBSでクルーズの番組やってたじゃないですか。大好きで毎週楽しみでした。花火を見るためのディナークルーズ、とかなら数回乗ったことがあるんですが、お泊りしたことはないのよ。ああ、大阪高知特急フェリーなら泊りましたけど。そういうんじゃないの!私が乗りたいのは豪華なやつ!オールインクルーシブでいつでも美味しいものが出てきて船室にバルコニーがあって海外の寄港地に寄ってくれるやつ!

 

最近どーしてもどーしてもクルーズに行きたくて、YouTubeでクルーズ動画ばっかり見ていました。朝ごはん食べながらクルーズ。昼ごはん食べながらクルーズ。そしたら、明日のマツコの知らない世界で「豪華客船の世界」やってくれるんだって!前から年一ぐらいでやってたけど。もう今日から楽しみで楽しみでたまりません。

 

いつかは世界一周クルーズに出かけたいものです。英語に若干の不安がありますが(若干どころじゃねえな)、子供が何とかしてくれるはず。しっかり勉強して通訳頼んだよっ!

 

そんなわけで今日も読んだ本の話。西加奈子さんの「窓の魚」です。

 

 

 

結論から言うと、「ちょっと隠し過ぎ!」でしょうか。

 

仕組みはとても面白いお話です。ナツ、アキオ、ハルナ、トウヤマの四人の若い男女が、温泉宿にお出かけをするのですが、そこで一泊した翌朝、ある女性の死体が敷地内の池から発見されます。そこに至るまでのナツ、アキオ、ハルナ、トウヤマそれぞれの視点から見た一夜に、事件後に警察の取り調べを受けていると思われる旅館の従業員など、関係者の証言が挟まれた形で描かれています。

 

だから最初にナツが感じた一夜が、次にトウヤマの視点から見た一夜、ハルナの視点、アキオの視点と繰り返されていくわけですね。間の関係者の証言で、「あ、この旅館で誰かが死んだんだ」と読者には分ります。でも、誰が死んだのか、どうして死んだのかは明らかになりません。

 

 

明らかになりません、て言っても、普通終盤になったら「山田花子さんがこんな理由で死にました」ってはっきり書かれているものじゃありませんか。これがね、最後の最後まで明記されてないの。「自分で考えてねー」なんだけど、そのヒントが少なすぎる!しかも皆がかなり病んでて、ナツに至っては薬で幻覚を見ている状態だから、そのヒントが余計事態をややこしくする!登場人物たちのちょっとしたボタンの掛け違いすらもちゃんと外されないまま話が終わってしまう!これは……もはや前衛的とすら言っていい作品なんではないでしょうか……。

 

 

 

まあね、丁寧に読み解いていけば、「あーこの人はこのトラウマのせいでこうなっちゃって、この人とこの人はこんな関係になっちゃって、結果あんなことが起きてしまったのねえ……」と分かるには分るんですが、それすらもあまりに少ないヒントのせいで、本当に正解なのか自分でも自信を持つことが出来ず、なんだかもやもやが残ってしまいます。「あ、あの伏線はここに繋がるのね!」はそれが爽快感を伴うものだと思うんですが、この作品の場合「あ、ああー、そういうことか。でもほんとに?証拠出してよ証拠」みたいな気持ちになる。結局トウヤマは薬やってたの!?死んだ女との関係は!?ナツは最終的に死ぬの!?何もかもわからーん!

 

面白い構成ではありました。一つの事実を4人の人間がどう解釈していたか、というのを順番に明らかにしていく。その脇で少しずつはっきりしていくひとりの女の死。サスペンスと言うか、ミステリーと言うか、人間ドラマと言うか、サイコものと言うか、色んな要素があってそこは面白かったです。でも、あまりにも隠し過ぎているんだよなあ。

 

もうすぐ書いてたミステリーの短編を掘り起こして推敲しなくっちゃなのですが、参考になりました。やっぱり隠し過ぎると読者はすっきりせんね。読者はお客様で、お客様には読後にすっきりしてもらわんといかん。どんでん返しは必要ですが、秘めるが花、ではないのですね。

 

そんなわけで若干もやっとしてしまいました。多分西加奈子さんの作品の中でも珍しい毛色の作品なんじゃないかと思います。次は「THE・西加奈子」を探そう。では。

 

またねー!

ああー、林檎ちゃんと櫻井さんサイコーやったあ……。

こんばんは、渋谷です。



昨夜のMステ見ましたか。見ましたか。大トリがあのふたりでしたよ。櫻井さーん!相変わらず美人!

Twitterも沸いてましたねー。BUCK-TICKを知らぬ世代が騒いでおったな……。そうなのよ。櫻井敦司という絶世のおっさんに慄くが良い!

今書いてる話には出てくるおっさんのモデルは分かりやすく櫻井さん。あー、やっぱり好きだわ。魔王のくせに口下手で照れ屋さん。53歳なんだから。あんなに美人なくせにうちの夫と同い年なんだから。

ああ、眼福でした。さて本を読んだ話。「天使の卵」、文学賞の審査員としてお名前を見かける村山由佳さんの、すばる文学賞受賞作です。



「ワンダフル・ワールド」が面白かった村山さん。

私もこないだすばる文学賞に出したんですよねー。受賞作は他に「天龍院亜希子の日記」を読んだ気がしますが、あれもイマイチだったんだよなー。

ぶっちゃけると、この「天使の卵」もちょっと微妙でした。丁寧に描かれた純愛ものだったんですが、エネルギーが足りなかったなあ。

主人公は一本槍歩太くんという浪人生。美大受験に失敗した19歳です。お母さんは小さな居酒屋を経営していて、お父さんは精神病院に入院中です。お父さんの入院はもう10年になり、お母さんは居酒屋のお客さんと恋仲になってしまっています。

そんな彼が電車である女性にひとめぼれするところから話が始まります。儚げで壊れそうな女性、春妃。その春妃がお父さんの担当の精神科医で、歩太くんの彼女のお姉さんだったりするからややこしくなる……。

うーん、ここまででも結構ご都合主義。紆余曲折があってふたりは結ばれますが、最終的に春妃は医療ミスによって死んでしまいます。歩太の子供を妊娠していて、流産しそうになり駆け込んだ病院で投与された薬にアレルギーを起こすんですね。

……さっきまでぴんぴんしてた人を、殺すにはあまりに無理がある展開。最初っから村上さんは春妃を殺して悲恋にしようとして書かれたんでしょうが、ちょっとなあ、これはあまりに無理くりな展開と言わざるを得ない……。



まあ全体的に、少年と青年の間で揺れる歩太くんが、心を壊した父親と自分を重ね合わせることで苦しみ、恋と将来に揺れるようすが瑞々しく描かれた作品でした。面白いか面白くないかって言えば面白かったです。

でもなあ、なんかイマイチ響かない。なんでかと考えてみると、歩太くんがちょーふつーの子なんですね。画家の卵ってあたりは個性かも知れませんが、予想通りの動きしかしない。だから展開も予想の域を超えない。

とても切ない恋愛ものになってはいたのですが。既視感があるんだよねえ。まあ私の好みではなかった、ってだけなんですが。強烈なのが好きだからさ。

という訳で、明日は全国統一小学生テストです。遅れないように、早くねよっ。

おやすみなさいー!

さあ弱ったぞ。

 
こんばんは、渋谷です。
 
 
 
書いてる小説がどんどん進みますよ。子供が帰ってくるのが夕方の4時ぐらいになったので、時間があるのですね。
 
だからわしわし書けるのですが、原稿用紙で80枚書いても準主役が出てこない。あんなことさせようとかこんなシーン出そうとかアイデアばっかり浮かぶのに。これ、300枚でも収まらん気がする。500枚ぐらいになるかも。大丈夫なんだろうか。
 
簡潔な文体で書いてるはずなんですけどねー。まあとりあえず書いていくしかないけど。でもすごく楽しくて、毎日わくわくしながら書いてます。やっぱり小説書くの楽しいね。世の中の7割の人に「……意味分からん」と思われるようなのを書きたい。分からんはずなのに、最後まで読んで初めて納得する、みたいな風にしたい。
 
長くなってもいいから、とりあえず最後までだーっと書いちゃいたいと思います。この勢いなら多分6月中には書き終わるな。じゃあ去年も応募したポプラ社新人賞に送ろうか。いや、7月末締め切りにもちょうどいい新人賞があったからそっちにしようかな。
 
ま、なんせ毎日楽しいです。幸せ。で、今日も本を読みました。「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」が最高に良かった山田詠美さん。文藝賞受賞作の「ベッドタイムアイズ」です。うん。良かった。良かったんだけど、私読む順番間違っちゃったかもしれないなあ……。
 
 
 
主人公は米軍兵相手のクラブで歌を歌っている日本人の女の子、キムちゃん。日本人なのにキム、なのねえ。多分本名じゃありませんね。外国人からしたら中国人も日本人も一緒ですから。あだ名かな。そんな彼女が、スプーンと自らを名乗る脱走米兵を家に匿い恋に落ちてしまうところからお話は始まります。スプーンは黒人さん。暴力、セックス、欠乏を抱えた二人がお互いを埋め合うようにして混じり合っていきます。
 
なんせスプーンはダメ男。米軍を脱走して、麻薬の売人をしていて自らもヤク中な上に、キムちゃんにもお薬を摂取させてしまいます。だめよもうー。ダメカップルの見本のような二人は、スラングで罵り合いながらセックスに夢中になりお互いを求めあいます。キムちゃんはスプーンを好きで好きでしょうがない。でもスプーンはいつでもキムちゃんを気持ち良くはしてくれますが、落ち着いた愛を与えてはくれません。
 
退廃的なやけっぱちの愛。痛いです。痛々しい。でもこういうの、私も若い頃に経験しましたねえ。あほな男とあほな私。その先に何も見えないのに今しかないものを求めていた。平和や責任や社会性なんかは皆無で、でも自分の中の空洞を埋めるために必死で男にしがみ付いていた。まあ、常識的な大人が見たら「けしからん!」つって怒られても仕方ないんですが、そのころの私たちはそれが精一杯だった。
 
そういう刹那的な輝きを凝縮した作品でした。そんなの、嫌悪する人の方が現代日本には多いのかも知れませんが。結局スプーンは米軍の機密情報を漏らそうとしていた罪で、当局に連行させていきます。あんなにファックだのビッチだの言ってたスプーンは、実はいかにもキリスト教徒みたいな厳格な名前を持っていて、機密情報を扱えるような学も持っていたんですね。キムちゃんは何も知らされていなかった。スプーンはそのあだ名の由来となった、銀のスプーンを残して警察に連れて行かれてしまいます。
 
欧米では、銀のスプーンを握って生まれてきた子供は幸せになれる、なんて言うんだってね。私も姉ちゃんが子供産むときに、銀のスプーンがセットになったベビー服をプレゼントした。でもこれ、どうやったら子供が掴んで生まれてくるんだ?とか結構真剣に悩みましたよ。飲み込むのか?下から入れるのか?
 
まあ日本のお食い初め的な、「一生食うに困らん」的な願いを込めた寓話なんでしょうけどね。残された「食器としての」スプーンとキムちゃん。この先、誰よりも愛したスプーンを失ったキムちゃんはどうやって生きていくのでしょうか……。
 
 
 
そんなわけで、なかなかに爆弾を投下したような衝撃を残した「ベッドタイムアイズ」。これが書かれたの、30年以上前なんです。世の中はビビっただろうなあ……。新人賞受賞作にして、芥川賞候補にもなったんだそうです。すげえね。でもちょっと残念だったのは、「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」を先に読んでしまったこと。「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」と毛色は同じ作品で、あちらの方が完成度が高かった。これが読む順が逆だったら、私も当時の衝撃を味わうことができたんだろうけど。
 
でも、なんというか、「他人の目を気にしない」という精神がほんとに潔くてカッコ良かったです。「売れそうなもの、受けそうなもの」を書こうとしてない。「あたしはこうなんです」と山田さんが主張されているのが、痛いくらいに聞こえてくる作品でした。私もそう言える作品が書きたいです。大衆におもねらず、おもねらないのなら芸術性が高くなければ受け入れてはもらえないのだろうから、そこは極めて。
 
自己主張がある人ってやっぱり素敵ですね。そうそう、明日のMステに椎名林檎ちゃんとBUCK-TICKの櫻井さんが出てきて「駆け落ち者」って歌を歌いますよ。死ぬほど最高にかっこいいですよ。林檎ちゃんのニューアルバム「三毒史」がちょーいいですよ。こっそり宣伝。ああ、楽しみだわ。
 
そんなわけで今日はおしまい。あら、明日がきそうですね。
 
それでは、おやすみなさいー!