読書感想文101 山田詠美 ベッドタイムアイズ | 恥辱とカタルシス

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

さあ弱ったぞ。

 
こんばんは、渋谷です。
 
 
 
書いてる小説がどんどん進みますよ。子供が帰ってくるのが夕方の4時ぐらいになったので、時間があるのですね。
 
だからわしわし書けるのですが、原稿用紙で80枚書いても準主役が出てこない。あんなことさせようとかこんなシーン出そうとかアイデアばっかり浮かぶのに。これ、300枚でも収まらん気がする。500枚ぐらいになるかも。大丈夫なんだろうか。
 
簡潔な文体で書いてるはずなんですけどねー。まあとりあえず書いていくしかないけど。でもすごく楽しくて、毎日わくわくしながら書いてます。やっぱり小説書くの楽しいね。世の中の7割の人に「……意味分からん」と思われるようなのを書きたい。分からんはずなのに、最後まで読んで初めて納得する、みたいな風にしたい。
 
長くなってもいいから、とりあえず最後までだーっと書いちゃいたいと思います。この勢いなら多分6月中には書き終わるな。じゃあ去年も応募したポプラ社新人賞に送ろうか。いや、7月末締め切りにもちょうどいい新人賞があったからそっちにしようかな。
 
ま、なんせ毎日楽しいです。幸せ。で、今日も本を読みました。「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」が最高に良かった山田詠美さん。文藝賞受賞作の「ベッドタイムアイズ」です。うん。良かった。良かったんだけど、私読む順番間違っちゃったかもしれないなあ……。
 
 
 
主人公は米軍兵相手のクラブで歌を歌っている日本人の女の子、キムちゃん。日本人なのにキム、なのねえ。多分本名じゃありませんね。外国人からしたら中国人も日本人も一緒ですから。あだ名かな。そんな彼女が、スプーンと自らを名乗る脱走米兵を家に匿い恋に落ちてしまうところからお話は始まります。スプーンは黒人さん。暴力、セックス、欠乏を抱えた二人がお互いを埋め合うようにして混じり合っていきます。
 
なんせスプーンはダメ男。米軍を脱走して、麻薬の売人をしていて自らもヤク中な上に、キムちゃんにもお薬を摂取させてしまいます。だめよもうー。ダメカップルの見本のような二人は、スラングで罵り合いながらセックスに夢中になりお互いを求めあいます。キムちゃんはスプーンを好きで好きでしょうがない。でもスプーンはいつでもキムちゃんを気持ち良くはしてくれますが、落ち着いた愛を与えてはくれません。
 
退廃的なやけっぱちの愛。痛いです。痛々しい。でもこういうの、私も若い頃に経験しましたねえ。あほな男とあほな私。その先に何も見えないのに今しかないものを求めていた。平和や責任や社会性なんかは皆無で、でも自分の中の空洞を埋めるために必死で男にしがみ付いていた。まあ、常識的な大人が見たら「けしからん!」つって怒られても仕方ないんですが、そのころの私たちはそれが精一杯だった。
 
そういう刹那的な輝きを凝縮した作品でした。そんなの、嫌悪する人の方が現代日本には多いのかも知れませんが。結局スプーンは米軍の機密情報を漏らそうとしていた罪で、当局に連行させていきます。あんなにファックだのビッチだの言ってたスプーンは、実はいかにもキリスト教徒みたいな厳格な名前を持っていて、機密情報を扱えるような学も持っていたんですね。キムちゃんは何も知らされていなかった。スプーンはそのあだ名の由来となった、銀のスプーンを残して警察に連れて行かれてしまいます。
 
欧米では、銀のスプーンを握って生まれてきた子供は幸せになれる、なんて言うんだってね。私も姉ちゃんが子供産むときに、銀のスプーンがセットになったベビー服をプレゼントした。でもこれ、どうやったら子供が掴んで生まれてくるんだ?とか結構真剣に悩みましたよ。飲み込むのか?下から入れるのか?
 
まあ日本のお食い初め的な、「一生食うに困らん」的な願いを込めた寓話なんでしょうけどね。残された「食器としての」スプーンとキムちゃん。この先、誰よりも愛したスプーンを失ったキムちゃんはどうやって生きていくのでしょうか……。
 
 
 
そんなわけで、なかなかに爆弾を投下したような衝撃を残した「ベッドタイムアイズ」。これが書かれたの、30年以上前なんです。世の中はビビっただろうなあ……。新人賞受賞作にして、芥川賞候補にもなったんだそうです。すげえね。でもちょっと残念だったのは、「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」を先に読んでしまったこと。「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」と毛色は同じ作品で、あちらの方が完成度が高かった。これが読む順が逆だったら、私も当時の衝撃を味わうことができたんだろうけど。
 
でも、なんというか、「他人の目を気にしない」という精神がほんとに潔くてカッコ良かったです。「売れそうなもの、受けそうなもの」を書こうとしてない。「あたしはこうなんです」と山田さんが主張されているのが、痛いくらいに聞こえてくる作品でした。私もそう言える作品が書きたいです。大衆におもねらず、おもねらないのなら芸術性が高くなければ受け入れてはもらえないのだろうから、そこは極めて。
 
自己主張がある人ってやっぱり素敵ですね。そうそう、明日のMステに椎名林檎ちゃんとBUCK-TICKの櫻井さんが出てきて「駆け落ち者」って歌を歌いますよ。死ぬほど最高にかっこいいですよ。林檎ちゃんのニューアルバム「三毒史」がちょーいいですよ。こっそり宣伝。ああ、楽しみだわ。
 
そんなわけで今日はおしまい。あら、明日がきそうですね。
 
それでは、おやすみなさいー!