読書感想文104 窪美澄 雨のなまえ | 恥辱とカタルシス

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作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

わーい、めちゃくちゃ!
 
こんにちは、渋谷です。
 
 
 
窪美澄さんの「雨のなまえ」を読みましたよ!面白かったーめちゃくちゃ!どろどろ!
 
窪さんの持ってる残酷さが余すことなく発揮された作品だったかと思います。「晴天の迷いクジラ」の10倍は面白かった!この人はこういうのを書く人だと思ってたのよ!私の好きなやつでした。
 
この「雨のなまえ」は短編集で、収録作が
 
雨のなまえ
記録的短時間大雨情報
雷放電
ゆきひら
あたたかい雨の降水課程
 
となっております。
 
どの作品にも、土砂降りの描写が出てきます。そして最後の「あたたかい雨の降水課程」以外はすべてバッドエンド。
 
そのバッドエンドエンドぶりがすかっと爽快!なのよね。特に面白かったのが、「記録的短時間大雨情報」と「雷放電」でした。
 
 
 
「記録的短時間大雨情報」は、40代パート主婦タミコさんが主人公。身体はすっかりおばさん体型になってしまいましたが、性欲は満載です。夫は昔浮気をした過去があり、たまにえっちはしますが心はもう離れています。
 
そんなタミコさんに押し付けられるのは認知症の可能性がある姑。少女のようなあどけなさを残す姑は、「あなたはもっと人生を楽しまなきゃだめよ」などと言ってタミコさんに揺さぶりをかけます。
 
そりゃ、タミコさんだって人生をたのしみたいですよ。パート先のスーパーに入ってきた新人の大学生の男の子。この子がタミコさんにちょっかいを掛けるんですね。夫は無責任かつ自己中心的。ああ、私はもう一生気持ちいいセックスなんてできないのかしら。あんな男の子とセックスできたらどんなにいいかしら……。
 
土砂降りのなか、タミコさんたら大学生のお部屋に突撃しちゃいますよ。どうなる……!と思いきや、キモがられてあっさり振られ、しかもパート先で言いふらされ、その上万引き魔である姑は行方不明。徘徊が始まったんですね。もうタミコさんはソファに倒れ込んで起きられません。
 
めちゃくちゃ!めちゃくちゃ!いいですねーこういう救いのない話。とりあえず姑を探しがてらウォーキングして痩せようタミコさん!一連の流れの中で、無気力だったタミコさんには勇気が芽生え始めているんですね。痩せて自信つけて、旦那に食ってかかろう!「誰の母親やねん!」タミコさんはここから人生を逆転できる女だと信じてるよ!
 
 
 
「雷放電」はもっとひどい。自身がブ男であると自覚している男性、三枝くんが主人公。三枝くんには美津ちゃんという超美形の奥さんがいます。あまりに美しい妻を持った三枝くんは、彼女の幸せのために精一杯働いています。
 
大学の同級生だった美津ちゃんと付き合えることになって、発奮した三枝くんは一流企業に就職します。ふたりはすぐに同棲をはじめ、猫のりっちゃんと3人で仲良く暮らします。途中転勤で引っ越したり中古住宅ローンで買ったり。幸せに暮らしているふたりを襲うのはあの震災です。それ以来、美津ちゃんは寝てばかりの状態になってしまいます。
 
でも三枝くんは美津ちゃんのために仕事に家事に頑張ります。こんな美しい女が妻になってくれたんだ。必死に人生に食らいつく三枝くんですが、ある日乗った電車で見知らぬ人がこんな事を言ってくる。
 
「この電車に乗っていても、あんたの行きたいところには行けないよ」
 
それではたと思い出す三枝くん。美津を伴った男に罵られた記憶。「ストーカー、きもっ」と彼を蔑んだのは確か美津だった。そして帰宅してみても違和感。あれ?俺んちこんなおんぼろだった?部屋には隠し撮りした美津の写真。そして、自分で執筆した美津と自分のふたりの愛の物語。
 
ぜーんぶ妄想だったんですね。うん、これぐらいならまあよくある話だ。でも三枝くんはその上を行っていました。あ、俺、電車に飛び込んで死んだかも。やべえ俺霊じゃん。そして実体のない手でせんべい布団をめくると、空気の抜けたラブドールちゃんが寝ている……。
 
最後の数行のオチが良かった!ただの狂人の妄想なら既視感でしたが、おお、霊かよ、みたいな。しかもしわしわになったラブドールって結構な余韻よ?
 
他のお話もすごーい迫力です。窪さんは生真面目に壊れている感じがしていいですねー。山田詠美さんみたいに天然の異端って感じじゃなく、頭良すぎてだんだん変になっていった子(失礼)みたいな迫力があります。好きです。とても面白いとおもいます。
 
あー他のも読もう!今日は参観日なので準備をせねば。
 
というわけで、またっ!