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~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

ブルックナーを聴こう第2部

 ~巨匠たちのブルックナー⑩~

第10回:セルジュ・チェリビダッケ

第10回に到達しました。そこで、一昔前に特にブルックナーの演奏で強烈な印象を残していたチェリビダッケの演奏を聴いてみたいと思います。録音嫌いのチェリビダッケはほとんどスタジオ録音を残さなかったため、一時期は幻の巨匠となっていましたが、没後たくさんのライヴや放送用録音が、正規版としてリリースされました。その中の一つのミュンヘン・フィルとの選集です。

【CDについて】
作曲:ブルックナー

曲名:交響曲第8番ハ短調 第2稿ノヴァーク版 (104:13)

演奏:チェリビダッケ指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1993年9月12-13日、ミュンヘン Philharmonie am Gasteig (ライヴ)
CD:50999 0 85578 2 7(レーベル:EMI) 12CD

 

【曲について】

ブルックナーの最長の交響曲第8番は、1887年版:第1稿と、1890年版:第2稿があります。現在演奏される主流となっているのは、第2稿で、その中では、シャルクによる初版、ハース版、ノヴァーク版が存在します。最も演奏機会の多いものは、このCDで演奏されている第2稿のノヴァーク版ですが、カラヤンやヴァントなどハース版を支持して演奏していた指揮者も多数存在します。

 

【演奏について】

チェリビダッケのブルックナーの印象といえば、演奏時間が長いというものです。これは晩年になってからの特徴で、全てではないと思いますが、じっくりと作り上げられた長大な演奏が緊張感が途切れず延々と続くというもの。長い長い至福の時間に浸ることができるということになります。クラシックを聴き始めた頃、シュトゥットガルト放送響とのライヴをFMで聴いた記憶がありますが、当時は全く歯が立ちませんでした。少々まとまった時間と気合が必要なCDです。久しぶりに聴いてみます。

 

滑らかにゆっくりと演奏が開始されます。じっくり、一つ一つの音符が音になって流れ出していきます。ミュンヘン・フィルの素晴らしい音で、ブルックナーの世界を作っていきます。これは、ブルックナーの全てを漏れなく表現し尽くすという感じですね、ここまで全てを赤裸々に表現して、音楽を成立させる境地とはいったい何なのだろうと、思いを馳せてしまいました。第一楽章が消え入るように終わるところなど、深い闇の中に音が消えていくような気がします。そして、驚くべきことに、時間の経過を全く忘れてしまっていることに気付くのでした。

 

スケルツォに入りました。刺々しくなく、とても柔らかい印象です。そして第二楽章は、何の誇張もなく、至極真っ当に聴こえます。そして、曲は長大な後半部へと入っていきます。後半の2楽章だけで1時間超なのですね。全体の演奏時間が1時間44分。この時間というのは、映画なら少し短め。オペラやバレエとしても短い方なのでしょうが、逆に交響曲でそれらに匹敵しているということは、純音楽を聴きつつ音楽をドラマのように体験しているという事かもしれません。美しくゆったりと歌われる第三楽章で、十分な時間をこの音楽の中で過ごすことができます。そして、眠りにつくように、終わりの時を迎えます。

 

いよいよフィナーレです。壮大な第一主題で開始され、ゆったりした懐かしいような第二主題へと続いていきます。チェリビダッケの演奏は、この複雑に構成されたソナタ形式の成果を克明に描き出していきます。曲は様々に展開し変貌を遂げ、華々しいフィナーレへと向かいます。ウォルフの評した「闇に対する光の完全な勝利」。前の楽章は闇に消え入るように終わりますが、終楽章で華々しく閉じられることからもこの評価となっていることでしょう。チェリビダッケの精緻に積み上げられた、この曲の全てを表現しきったような演奏。しかも、聴くものを取り込み長さを感じさせません。ブルックナーの曲の偉大さを正面から表現した稀有な演奏だと思います。

 

【録音について】

1993年のライヴ。ミュンヘン・フィルの音が美しく捉えられている録音だと思います。

 

【まとめ】

ブルックナーの演奏の究極の姿だと思いますし、これを乱れず演奏しきったミュンヘン・フィルも偉業を達成していると思います。この演奏は聴けば聴くほどいろいろな発見がある素晴らしいものだと思いました。

 

さて、巨匠たちのブルックナーとして10回投稿したので、これでひとまずこのシリーズは中締めとしたいと思います。ブルックナーはこれからも散発的に聴いていくと思いますので、またお付き合いいただけると幸いです。最後にこれまでの投稿のリンクをつけさせていただきます。

 

購入:不明、鑑賞:2023/10/31(再聴)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近リリースされた新譜から ⑫

今回の新譜は、ラロのヴァイオリン協奏曲集のCD。少し前に発売されたものですが、やっと入手しました。ラロはスペイン交響曲が有名ですが、全部で4曲ヴァイオリン協奏曲があります。このCDにはその中の2曲が入っています。ちょっと楽しみです。

【CDについて】

①作曲:デュパルク

 曲名:旅へのいざない(管弦楽版、歌唱はヴァイオリンで) (4:48)
②作曲:ラロ

 曲名:ヴァイオリン協奏曲第1番ヘ長調 op20 (27:50)
③作曲:サン=サーンス

 曲名:序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 op28 (9:30)
④作曲:ラロ

 曲名:ヴァイオリン協奏曲第4番 ト短調「ロシア協奏曲」op29 第1楽章 (15:40)

⑤作曲:リムスキー=コルサコフ

 曲名:100のロシア民謡集 op24より「エヴラシェヴォ村の鐘が鳴る」

    (弦楽合奏編曲版)(0:41)

⑥作曲:ラロ

 曲名:ヴァイオリン協奏曲第4番 ト短調「ロシア協奏曲」op29 第2~4楽章(17:37)
⑦作曲:リムスキー=コルサコフ

 曲名:100のロシア民謡集 op24より「ノヴゴロドに鳴り響く鐘」

    (ヴァイオリン、バセットホルン、チェレスタ、ハープ、チェロの編曲)(0:31)
⑧作曲:ムソルグスキー

 曲名:愛しいサーヴィシナ (ヴァイオリン、チェロ、コントラバス、クラリネット、

    ホルン、ファゴットの編曲)(1:37)

演奏:スミルノフ(vn)、ホリガー指揮、バーゼル室内管弦楽団

録音:2022年2月23-25日、バーゼル Don Bosco

CD:PROSP0071 (レーベル:PROSPERO)

 

【曲と演奏について】

ラロのヴァイオリン協奏曲とその元ネタ?や同時代の様子に思いを馳せるCD。美しいメロディを聴きながらお勉強もできそうです。ラロは4曲のヴァイオリン協奏曲を書いていますが、現在よく演奏されるのは、第2番にあたるスペイン交響曲ですね。ここでは第1番と第4番が取り上げられています。当時としての異国情緒を曲に取り入れたラロの、ここではその作曲にインスピレーションを与えた曲や、同時代の名曲たちもあわせて聴いていこうという趣向なのでした。

 

オープニングはデュパルク。デュパルクといえば歌曲で、歌謡風の美しい旋律が流れてきます。この「旅へのいざない」も元はボードレールの東方の地への幻想を描く詩による歌曲。この曲でのオープニングは、美しいメロディに乗って旅に出ましょう、という趣向の表現と思います。デュパルク編の管弦楽版に、歌の部分はスミルノフのヴァイオリンで演奏されています。

 

ヴァイオリン協奏曲第1番は、ラロの出世作。サラサーテによって初演され、大成功した曲ということです。重々しく始まりヴァイオリンの美しいメロディも踏まえて展開する、躍動的な第一楽章はまずは聴きどころ。この曲は伝統的な三楽章形式で、次に来るのは、静かで叙情的な第二楽章。ほぼ独奏ヴァイオリンの美しいメロディで満たされます。第三楽章はリズミカルに流れる躍動的な楽章。ここでもヴァイオリンが大活躍。早いパッセージが多く、特徴的なリズムが印象に残りました。

 

次は、サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」。ラロが4曲のヴァイオリン協奏曲を残した時代、フランスではこのような音楽が流行していました。この曲もサラサーテのために書かれた曲で、当時の時代の雰囲気を感じましょう。ヴァイオリン協奏曲第1番の9年前の作品になります。演奏は美しいヴァイオリンの音色と、ニュアンス豊かな洒落た演奏で聴くことができました。

 

さて、本題のロシア交響曲です。ゆったりとした静かな導入で始まります。そしてヴァイオリンがまたゆったりしたメロディを奏でオーケストラが呼応していきます。ヴァイオリンがひとしきり歌い終わると、少し速度を上げていき、哀愁を帯びたメロディが現れ、盛り上げながら展開していきました。

 

そして中断。リムスキーコルサコフの100のロシア民謡集から、元ネタのメロディが入ります。そしてそのメロディを使った第二楽章。ここもゆっくりとした入りで、ヴァイオリンが旋律を奏で始めると、そのメロディは先ほどのロシアの歌。郷愁を湛えるメロディが流れていきました。第三楽章は間奏曲。スケルツォ風でもある明るい音楽でした。第四楽章はガラッと雰囲気を変えて始まりますが、結局ヴァイオリンが始まると再び静かなメロディに戻っていきます。ここもリムスキーコルサコフの100のロシア民謡集からです。曲は徐々にスピードを上げ最後は盛り上げて閉じられました。

最後にリムスキーコルサコフの原曲のメロディがつきます。

 

全体としては、旅の幻想がテーマの、郷愁を誘う美しい音楽です。ただヴァイオリンが技巧的なパッセージは目立ちますが、曲自体にあまりメリハリがなく、あくまで東方の異国情緒のあるメロディに終始した感じで、インパクトは弱め、またそれが売りでもあるのでしょう。

 

ラストにムソルグスキーのロシアの哀愁を誘う歌曲が演奏されてCDを閉じます。

 

スミルノフによるこだわりの選曲と編曲だと思います。CD全体のテーマは、ラロのあまり聴かれていない曲とその周辺を描くもので、なかなか面白いCDでした。

 

購入:2023/09/23、鑑賞:2023/10/22

買ったCDはちゃんと聴こうシリーズ ⑪

【CDについて】

①作曲:ブラームス

 曲名:クラリネット五重奏曲ロ短調 op115 (35:40)

②作曲:ウェーバー

 曲名:序奏と主題と変奏 (12:04)

演奏:シュミードル(cl)、新ウィーン八重奏団員

録音:1980年4月 ウィーン Sofiensaal

CD:F35L-20021(レーベル:LONDON、原盤:DECCA:ポリドール)

 

【曲について】

ブラームスのクラリネット五重奏曲は、1891年にクラリネット三重奏曲とともに作曲された晩年の傑作です。この曲は、夏季に訪れた避暑地に滞在中、速筆で書き上げています。初演後も各地で演奏が行われて大好評でした。終楽章に変奏曲があるのはモーツアルトの晩年の傑作と同様で、また古典的な構築感や密度の高さがあるうえに、甘美で哀愁を帯びたメロディに満たされており、深い感動を呼ぶ作品となっています。

 

【演奏について】

クラリネット五重奏曲といえば、この曲やモーツァルト、ウェーバーなどがよく聴かれるのではないかと思います。CD時代になって、収録時間が長くなってから、2曲がカプリングされることも多いと思います。ブラームスの作品は、晩年の傑作というところですが、モーツァルトも晩年にクラリネット五重奏曲を作曲していますし、ブラームスは、この曲以外にも晩年にクラリネットの曲をいくつか書いてます。

 

クラリネット五重奏曲は、ベースが弦楽四重奏になっているので、カルテットの表現も曲を聴いた印象を左右するのではないかと思いますが、このCDは伝統的な落ち着いた音が流れてきます。尖らず柔らかい、ウィーンの音ですね。この曲にとてもあっていると思います。

 

音楽は、哀愁に満ちた美しい旋律で始まります。新ウィーン八重奏団の演奏は、伝統のウィーンの音に加えて、現代的な明晰な要素も加わり、より強く心に刻まれる演奏でした。第二楽章は、甘美なメロディにクラリネットの哀愁が加わります。クラリネットの音楽の中でもこのソロパートの哀感は白眉ではないでしょうか。

 

第三楽章はスケルツォ風の音楽ですが、ここでもそこはかとない哀愁が漂います。そして、モーツァルトと同様の変奏曲の第四楽章に進みます。次々と現れる変奏に感情を積み重ねていく感じは圧巻です。そして全てを語り尽くして消えていく。まさにブラームスの晩年の傑作ですね。柔らかな弦の音と哀感のクラリネットがとてもいい演奏でした。

 

ウェーバーのこの曲は、真作かどうかは定かでないらしいのですが、大変陽気で楽しい音楽でした。

 

【録音について】

それぞれの音が明確に捉えられた、クリアな録音だと思います。

 

【まとめ】

今回は、ブラームスの晩年の名曲をじっくりと味わいました。この曲はいろいろ伝統的な録音があるので、是非それらも聴いてみたいです。聴けば聴くほど味わい深い曲だと思います。

 

購入:不明、鑑賞:2023/10/25

いままで記事にしていなかった交響曲名曲5選 ②

2回目は、サン=サーンスのオルガン交響曲にしてみました。ひところいろいろな録音を聴きましたが、その時聴いたのは、ほぼフランス系の演奏ばかりでした。サン=サーンス自体、聴くのも随分久しぶりな気がします。このCDは、ピアノ協奏曲第2番もついているので、そちらも楽しみです。

【CDについて】

作曲:サン=サーンス

曲名:①交響曲第3番ハ短調 op78 (34:19)

   ②ピアノ協奏曲第2番ト短調 op22 (24:08)

演奏:①ハーフォード(org)、デュトワ指揮、モントリオール交響楽団

   ②ロジェ(p)、デュトワ指揮、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

録音:①1982年6月 モントリオール 聖ユスターシュ教会

   ②1978年7月7日 ロンドン Walthamstow Assembly Hall

CD:478 3363(レーベル:DECCA)

 

【曲について】

サン=サーンスの交響曲第3番は、ロンドン・フィルハーモニック協会の委嘱で作曲されました。初演は作曲者自身の指揮によってロンドンで行われ、大成功となったとのこと。この曲はサン=サーンスの代表曲となります。サン=サーンスはキャリア初期に長く教会のオルガン奏者を務めており、パリでは最高峰の奏者だったのです。この曲にはオルガンが目立ちますが、ピアノも使われています。

 

【演奏について】

サン=サーンスの有名曲をよく聴いていた時が確かにありました。ほとんどはこの交響曲第3番だったので、何枚かCDが手元にありますが、なぜか廉価盤ばかり。そうなんですね。この曲の新譜が出たといって追っかけたことはなかったのでした。新譜という意味で記憶に残っているのは、テラークのオーマンディ盤。当時オーディオ的にも注目盤でした。今になって、聴いてみたいと思ってます。

 

今回、どの演奏を聴こうかと思っていろいろ探しましたが、手元にあるのが廉価盤ばかりなので、余計なカプリングが多くてイマイチなのでした。このデュトワのCDは、まぁ許容範囲です。というか、ピアノ協奏曲第2番ならむしろ聴いてみたいので、これでいきます。

 

演奏内容としては、デュトワなので、まずは安定のデュトワらしい演奏です。この曲の名盤の一つですね。明るく輝かしくて、雰囲気がいい感じでした。すごい誇張とか、爆発的に盛り上がるとかは無くて、自然で聴きやすい感じでした。ただ、オルガンの入ってくるところは、油断していたので、ちょっと驚きました。

 

ピアノ協奏曲第2番は、ロジェのピアノです。洒落た華麗な演奏だと思いますが、決して軽くはなく、しっかりとした演奏です。素直に耳に入ってくる感じで、面白く聴けました。今回は、サン=サーンスの曲を聴きながら、時々メンデルスゾーンのような節回しを感じました。時代は近いですし、サン=サーンス自身ドイツロマン派の音楽にご執心だったようですので、そうなってくるのでしょう。そして、それ以上に両者の曲はとてもメロディアスで明るいのでした。最近そういった感じの曲がけっこう好きになっています。

 

【録音について】

DECCAの優秀録音なので問題ないです。

 

【まとめ】

かつて、よく聴いていたつもりではありますが、久しぶりに聴いてみて、いろいろな演奏を聴くともっともっと楽しめる曲ではないかと思いました。機会があれば新譜や名演奏をまた楽しんでみたいですね。

 

購入:不明、鑑賞:2023/10/23(再聴)

買ったCDはちゃんと聴こうシリーズ⑩

【CDについて】
作曲:マーラー
曲名:交響曲第4番ト長調 (60:57)

演奏:バトル(s)、マゼール指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1983年11月3-6日、ウィーン Musikvereinssaal

CD:SICC 246(レーベル:SONY CLASSICAL、販売:ソニー・ミュージック・ジャパン)

【曲に関して】マーラーの交響曲の中で最も規模が小さく軽快な曲なので、聴きやすい曲となっています。第四楽章はソプラノ独唱付きとなっていますが、この楽章は「天上の生活」として最初に作曲された部分で、この楽章から遡る形で、第一楽章から第三楽章までが作曲されました。


【演奏についての感想】

マーラーの交響曲第4番は、明るく整った曲で、マーラーの中でも聴きやすい曲なので、昔からよく聴いていました。最初に聴いたのは、バーンスタインの旧盤のLPではないかと思います。そんな第4番のCDで、未聴の棚にあったマゼール盤を取り出してきました。面白く聴かせてくれそうなので、期待して聴きます。


第一楽章が始まります。あちこちで、アクセントが強くて、緩急の幅も大きい演奏です。一つ一つのフレーズにもことごとくニュアンスをつけている感じがします。時々、裏の旋律もクローズアップされたり、打楽器が目立ったりと、面白く目立ちそうな効果はどんどん取り入れています。あまりやりすぎると、流れが悪くなると思いますが、そこはギリギリ回避しているかなと思います。まぁ若干そういうきらいも無いことはないと思いますが…。


もちろん、これは第一楽章に限らず第二楽章も同様で、時々ハッとさせられたり、オッと思ったりして楽しんでいます。そうなると、緩徐楽章をどれだけ面白く聴かせてくれるかで、第三楽章への期待も高まります。第三楽章は、確かに抒情たっぷりと美しく演奏されますが、傾向は変わららずで、節々のアクセントが強い演奏でした。最後の方の強奏は、とても強くて豪快でした。そして第四楽章は、さらにキャサリン・バトルが登場し、相変わらず賑やかなオケに、よく通る声が乗っていきました。この曲ではあまり聴かないゴージャスな雰囲気になっているかもしれません。今まで聴いてきた天使のような演奏ではなく、強烈な印象の演奏でした。期待通りで、マゼールの演奏は楽しかったのです。


【録音について】

若干荒い気もしますが、ウィーン・フィルの音がよく捉えられた録音と思います。

 

【まとめ】

マーラーの4番をアクセントの強い演奏で楽しみました。こういう明るくて楽しいマーラーは、私は好きですね。旋律も美しく表現されて良かったと思います。

 

購入:不明、鑑賞:2023/10/11

今日は、新日フィルの音楽監督である佐渡裕さんの演奏会。ハイドンとブルックナーという、なかなか意欲的なプログラムです。冒頭の佐渡さんのご挨拶では、今の新日フィルの路線、ウィーンラインのご説明で、ウィーンにゆかりのある作曲家をメインにすえている事のお話がありました。また、曲については、ハイドンは当時珍しい短調の交響曲であり、ロックの先取り?といった表現でも説明されていました。ブルックナーの方は宇宙という表現でした。

 

◆前半

ハイドン:交響曲第44番 ホ短調「悲しみ」
◆後半
ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調

 

演奏:佐渡裕 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団

 

2023年10月30日 サントリーホール

 

ハイドンの交響曲第44番については、知らない曲なので大歓迎。カノンのメヌエットの第二楽章や美しい第三楽章を経て、颯爽とした第四楽章を迎えます。なかなか面白い曲であることはよくわかりました。しかし、この曲が終わる頃には、気分はブルックナーに向いてしまってます(笑)。

 

さて、久々の実演ブルックナーです。期待して序奏を待ちます。テンポは標準か少し早め、ためはあまり作らないようですが、起伏が大きく、盛り上がりの迫力はなかなかのものでした。ティンパニーがドドドドっとすごく迫力がありますね。なかなかの熱演と思いました。弦はとても美しい音を出し続けていると思います。テンポはあまりいじらない感じではありますが、第三楽章のトリオはぐんと減速した気がしました。

最後は佐渡さんは、何かやり切った感がすごく出ていた感じがしました。迫力と聞き応えのある熱演を楽しませていただきました。

ショスタコーヴィチの時代 ⑭

今週は少し停滞して、「ムツェンスク郡のマクベス夫人」の組曲版を聴いてみたいと思います。とは言っても、これはあまり良いCDを持っていなくて、ちょっと不完全な感じのものになりましたが、こういう形の録音もあったということで、ご容赦ください…。

【CDについて】

作曲:ショスタコーヴィチ

曲名:①交響曲第1番へ短調 op10 (29:38)

   ②組曲「ムツェンスク郡のマクベス夫人」 (17:44)

演奏:①ケーゲル指揮 ライプツィヒ放送交響楽団

   ②ガラグリー指揮 ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団

    フィッシャー(s)

録音:1963年頃①、1964年頃②

CD:0031702BC(レーベル:BERLIN Classics/ETERNA)

 

【曲と演奏について】

さて、このCDのメインは、きっとケーゲルの「交響曲第1番」の方だと思いますが、今日の話題は、組曲の「ムツェンスク郡のマクベス夫人」になります。このオペラの組曲は、Wikiを見ると2つの物があるとのこと。

 

一つは、「交響組曲 作品29a」で、1932年の作曲直後に成立したもので、3曲の間奏曲からなるもの。

1.アレグロ・コン・ブリオ(第2場と第3場の間奏曲)
2.プレスト(第7場と第8場の間奏曲)
3.アレグレット(第7場と第8場の間奏曲)

 

もう一つは、改訂後の「カテリーナ・イズマイロヴァ」より編曲されたもので、「5つの間奏曲  op114a」の全5曲。
1.アレグレット(第1場と第2場の間奏曲)
2.アレグロ・コン・ブリオ(第2場と第3場の間奏曲)
3.ラルゴ(パッサカリア)(第4場と第5場の間奏曲)
4.アレグレット(第6場と第7場の間奏曲)
5.プレスト(第7場と第8場の間奏曲)

この組曲を聴く場合、大は小を兼ねるで、op114aを聴くと十分かと思います。何よりパッサカリアが入っているのがいいですね。

 

で、このCDはというと、

1.アレグロ・コン・ブリオ(第2場と第3場の間奏曲)

2.アリア「もうすぐ夜になる」(第3場)
3.ラルゴ(パッサカリア)(第4場と第5場の間奏曲)
4.アレグレット(第6場と第7場の間奏曲)

 

という感じですね。録音された年代からすると、op114aがベースと思われますが、2曲を省略して、カテリーナの寂しさを嘆くアリアが差しはさまれています。簡単な抜粋盤の趣があります。激しくまた諧謔的な2曲に、緩徐楽章として2曲を差しはさんだ構成になっています。ガラグリーの演奏は、ゆったりめのテンポでダイナミックで迫力のある管弦楽として演奏されていて、音楽の良さを十分伝えるものだと思います。ただし、演奏における激しさや感情の噴出などは、ロストロポーヴィチの全曲盤が上だと思います。歌唱はドイツ語になっています。

 

ところで、話はそれますが、ガラグリーの演奏は当然ケーゲルの交響曲と最初からカプリングされていた訳ではないと思うので、オリジナルを探ってみたところ、1965年に発売されたETERNAのLPで、コダーイの「ハーリ・ヤーノシュ」との組み合わせでした。ガラグリーだけだとCDが売れないかもしれませんが、これはこれで面白い組み合わせかも…、と思いました。

 

さて、おまけと言っては何ですが、このCDのメインのはずの、ケーゲルの第1番も併せて聴きました。細部にまで細かく気を配ったなかなかいい演奏と思います。ニュアンスもかなり細かくつけられて、メリハリも聴いていて、この曲の面白さをよく出していると思います。少しだけケーゲルのテンポの癖が気になったりしましたが、当時の東独でのショスタコーヴィチの演奏を体験できるという意味で、大変貴重な録音だと思いました。

 

【録音】

優秀な録音だと思いますが、少々ぼやけた感じがするところもあったような気がしますので、リマスターされるとまた感じが変わりそうな気がします。

 

【まとめ】

ムツェンスク郡のマクベス夫人について、連続して堪能しました。この曲はこの時代のショスタコーヴィチの作品の、一つの頂点になっていると思います。さて、これからまだ、プラウダ批判前の諸作品を聴いていきたいと思います。 ~つづく~(笑)。

 

購入:2012/12/01、鑑賞:2023/10/23(再聴)

【CDについて】

作曲:モーツァルト

曲名:レクイエム ニ短調 K626 (46:19)

   キリエ ニ短調 K341 (7:35)

演奏:ガーディナー指揮 イングリッシュ・バロック・ソロイスツ

   モンテヴェルディ合唱団

   ボニー(s)、オッター(a)、ブロホヴィッツ(t)、ホワイト(bs)

録音:1986年9月①、1986/11② ロンドン

CD:420 197-2(レーベル:PHILIPS)

 

【曲について】

モーツァルトのレクイエムは、モーツァルト自身の絶筆となった曲で、ラクリモーサの8小説までが書かれたところで、他界しました。ただし、9曲目以降について、モーツァルトが書いていなかったわけではなく、先に作曲された部分もあるので、曲順と絶筆となった部分は合致していないようです。

 

【演奏について】

いつ聴いても、どういった演奏で聴いても、素晴らしい感動を残す、モーツァルトのレクイエム。気になるCDがあったら、ついつい手を出してしまいます。今日は最近入手した、ガーディナー盤で聴いてみます。

 

入祭唱、レクイエム・エテルナムが静かに始まります。演奏は、少し明るめの音で、穏やかに進んでいきます。イングリッシュ・バロック・ソロイスツとモンテヴェルディ合唱団の奏でる音色は、とても柔らかで穏やかです。キリエは激しい音楽ですが、素晴らしいアンサンブルが聴かれました。管楽器のアクセントが効果的です。続唱にはいって、ディエス・イレは、弦楽器を中心とした、古楽器らしい演奏がとても効果的で素晴らしいと思いました。

 

トゥーバ・ミルム、トロンボーンのソロと歌手たちの競演です。このレクイエムは、一つ一つの曲に、いろんな見せ場が作られています。ソロの歌手陣の静かな名唱が楽しめる場面のレコルダーレを過ぎると、この曲のドラティックな核心部ともいうべき、コンフターティスからラクリモサへ。極端な誇張はなく穏やかに演奏されて、絶筆となったラクリモサが始まりました。合唱が大きく盛り上がっていく、大変感動的な部分です。ガーディナーの演奏は、穏やかな中でもしっかりと構築して盛り上がり、続唱を締めくくりました。

 

さてここからは、オッフェルトリウムに入り、雰囲気が変わり、聴いていると、いつもここから気分が変わります。ドミネ・イエスは、ポリフォニックで、快活な雰囲気で進む好きな部分です。オスティアスに入ると静かな曲に変わり、再び後半でドミネ・イエスのメロディが戻ってきます。続くサンクトゥス、ベネディクトゥス、アニュスデイと続いていくあたりは、続唱部分のようなドラマティックさは薄れて、宗教曲的な雰囲気が強くなり、ガーディナーの演奏も大変穏やかなものでした。ベネディクトゥスは、重唱がとても美しい曲で、ソロの歌手たちのパフォーマンスも聴きどころです。

 

最後にコムニオで冒頭の曲が戻って締められます。これで全体的な統一されて、聴き終わります。ガーディナーの演奏は美しい音で包まれ、名歌手の歌唱も素晴らしく、穏やかではありますが、大変彫りの深い音楽となっていました。そして全体の構成感もしっかりした、素晴らしい演奏でした。この曲の正統的で理想的な演奏の一つだと思います。

 

キリエニ短調は、なかなか劇的な音楽でした。短い中にパワーのある合唱や管弦楽が詰まっていますね。

 

【録音について】

美しく優しい感じの音を良く捉えた優秀録音です。

 

【まとめ】

モーツァルトのレクイエム。やはりいつ聴いても穏やかな気持ちになれるいい音楽だと思います。まだまだ、いろいろと聴いてみたいと思います。

 

購入:2023/10/02、鑑賞:2023/10/18

ブルックナーを聴こう第2部

 ~巨匠たちのブルックナー⑨~

第9回:ロブロ・フォン・マタチッチ

今回は、マタチッチの演奏を聴いてみたいと思います。マタチッチがいろいろな面で巨匠であるという評価は少々異論がありそうな気がしますが、少なくともブルックナーの演奏や日本での評価から見た場合、巨匠に列するのもいいのではないかと思います。これは、マタチッチと関係の深かったチェコ・フィルとの録音です。

【CDについて】
作曲:ブルックナー

曲名:交響曲第7番ホ長調 初版 (68:53)

演奏:マタチッチ指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1967年3月27-30日、プラハ 芸術家の家
CD:COCO-73076

   (レーベル:Supraphon、発売:コロムビアミュージックエンタテインメント)

 

【曲について】

第7番は、第4楽章が短いことが問題点として評されることがありますが、そのような名曲はほかにもいろいろ思いつきます。全体の構成に比較して第4楽章が短いと感じるのは、シューベルトのピアノソナタ第21番とか、ショパンのピアノソナタ第2番とか(これは極端ですが)…。そのような名曲は前の楽章が、全てを語りつくしたような名曲になっています。ブルックナーのこの曲の第一楽章と第二楽章。素晴らしいです。

 

【演奏について】

ロブロ・フォン・マタチッチは、第二次大戦時前後に政治信条などから不遇となっていた指揮者で、戦後になって東欧を中心に活躍した、クロアチア出身の指揮者。日本に度々来日しており、その時の演奏も近年いろいろとリリースされました。このCDは、当時マタチッチと関係の深かったチェコ・フィルとの演奏による、スプラフォンへの録音で、長く名盤として聴き継がれているCDです。

 

いつも期待して神妙に聴き始めるブルックナーの第7番の冒頭。この演奏はまさに悠然と始まります。弦の明るい音色や管楽器の渋い音色の対象が印象的で、意外に色彩豊かな音色に包まれます。滑らかに進行していく序奏部は、ゆっくりと盛り上がっていき、チェコ・フィルの美しい音で、細部まで克明に表現されていきます。そして、首部に入るてまえで大きく減速していくニュアンスがなかなか効果的です。第一楽章は、ゆっくりしたテンポの中で、曲の美しさが堪能できる名演奏です。美しい旋律を美しく表現する演奏は、聴かせ方がとても上手いと思います。緻密に作り上げられた、美しい構造物のようです。

 

第二楽章に入っても、同じようなゆっくりしたテンポと雰囲気で、曲は大河のように流れていきます。そして、最後はゆっくりと何度も大きな波が打ち寄せるように、かなり爆発的に盛り上がっていきます。これが大変迫力がある演奏になっています。第三楽章、スケルツォ楽章でテンポは上がりますが、相対的なテンポの雰囲気はあまり変わらない感じです。スケルツォ部分の演奏は、意外と強いアクセントのキレのいい演奏だと思います。

 

第四楽章も、引き続きダイナミックな雰囲気の演奏だと思います。時々強めのアクセントもつけながら、全体的にパワフルに展開していきます。チェコ・フィルは、音も美しい上になかなか力強い演奏をしていると思います。マタチッチの演奏は、その体躯も大きいのですが、演奏も圧倒的は巨大かつ精緻な構築物といった感じのブルックナーで、少し長めの演奏時間をじっくりと堪能できるものでした。

 

【録音について】

当時のスプラファンの音は、自然でバランスや臨場感がとてもいい録音だと思います。細部から全体感まで、よく捉えられた優秀録音になっています。

 

【まとめ】

マタチッチの演奏は、この曲の美しさや構造を克明に構築した巨大な感じのする演奏でした。この演奏を聴いていると、まさに巨匠の演奏という感じがします。

 

購入:2013/02/11、鑑賞:2023/10/20(再聴)

最近リリースされた新譜から ⑪

今回の新譜は、エマーソン弦楽四重奏団の最後のアルバムを鑑賞してみましょう。エマーソン弦楽四重奏団は、数年前に、2023年夏で活動を停止することが発表され、そして今年2023年の10月についに活動を終えることとなりました。その最後のアルバムとして録音されたのが、このCDになります。バーバラ・ハンニガンを加えた録音で二十世紀初頭の音楽を中心に構成された、大変興味深い作品集です。

【CDについて】

①作曲:ヒンデミット

 曲名:メランコリー op13 (14:03)

②作曲:ベルク

 曲名:弦楽四重奏曲 op3 (21:29)

③作曲:ショーソン

 曲名:終わりなき歌 op37 (7:28)

④作曲:シェーンベルク
 曲名:弦楽四重奏曲第2番 嬰へ短調  op10 (29:49)

演奏:ハンニガン(s)、シャマユ(p)、エマーソン弦楽四重奏団

録音:2022年8月、ヒルフェルスム Muziekcentrum van de Omroep ①③④

   2022年10月、ニューヨーク Staller Center for the art, Stony Brook Univ.②

CD:ALPHA1000 (レーベル:Alpha)

 

【曲と演奏について】

エマーソン弦楽四重奏団は、まさに今、2023年10月に、その47年の活動の歴史を閉じることになりました。このCDはその直前の2023年9月発売で、国内流通仕様としては、12月に発売予定となっています。これがラスト・レコーディングであることは、ブックレットにも書かれていました。エマーソン弦楽四重奏団と言えば近現代の曲が得意な四重奏団というイメージですが、モーツァルトやベートーヴェンなど伝統的な作品においても数多くに録音を残しています。私は多くを聴いていませんが、シェーンベルクの「浄夜」は愛聴していました。

 

このアルバムに収められている曲は、後期ロマン派から十二音技法に向かう過渡期の曲や、そのイメージに合う曲のようです。ベルク・シェーンベルクそして、ヒンデミットの比較的初期の作品。後期ロマン派の影響を受け、その行き詰まりも感じ、新しい時代に向かっていこうという機運の曲が集まっています。そして、ショーソンの歌曲「終わりなき歌」は、ハンニガンのコラボとして挿入されていると思いますが、その「perpétuelle」という題名は、このアルバムの「INFINITE(無限)」という題名に呼応しています。その歌詞の水辺に身を投げて浮かんでいる女性の静かなイメージは「浄夜」のような清澄なイメージも浮かびます。

 

エマーソン弦楽四重奏団の最後のアルバムとしてのメッセージとしては、彼らがレパートリーの中核として取り組んできた時代の音楽を集めたものである以上に、二十世紀初頭の音楽家の現状に満足せず新しい時代に向かって追求を重ねる雰囲気や、そこからの無限の可能性を感じさせるもの。その中から、エマーソン弦楽四重奏団が活動を停止したとしても、そのルーツに立ち返って、これからのそれぞれの活動やクラシック音楽界を見通すことや、更に新しい時代に向けて無限の可能性を探して「INFINITE VOYAGE」に旅立つことが込められていると思います。私もこのアルバムを聴きながら、新しい可能性を探し求めたいと思います。

 

このCDのPV

 

過去記事へのリンクです

 

【録音に関して】

素晴らしい録音です。弦楽四重奏の音色も、歌唱もすべてクリアに収められています。

 

【まとめ】

エマーソン弦楽四重奏団の最後のアルバムは、まさにこれからの未来に向けてのものでした。そして、ここで聴くエマーソン弦楽四重奏団の演奏は、穏やかでとても自然に聴こえ、これらの曲がすんなりと耳に入ってくる素晴らしい演奏でした。これを機会に彼らの演奏を再度楽しみつつ、新たな感動を探し求めていきたいと思います。

 

購入:2023/09/23、鑑賞:2023/10/22