~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど -32ページ目

~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

久しぶりに演奏会に行きました。新日フィルの室内楽シリーズです。楽団員のプロデュースによるシリーズで、毎月どなたかが担当してプログラムを組んでいらっしゃいます。今回は第2ヴァイオリン・フォアシュピーラーの佐々木絵里子さんでした。

 

お題は「ファムファタール2~秘密~」秘められた、あるいは道ならぬ熱愛から生まれる名曲の数々ということです。曲目は以下の通り。

 

◆前半

①クララ・シューマン: ロマンス ロ短調(佐々木絵里子編)
②アルマ・マーラー:5つの歌より第3番「見分ける」(佐々木絵里子編)
③メラニー・ボニス: 起き上がれ、わが魂 op22(佐々木絵里子編)
④ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」
◆後半
⑤ワーグナー:マティルデ・ヴェーゼンドンクへの手紙の楽譜(佐々木絵里子編)
⑥ワーグナー:チューリヒの恋人(佐々木絵里子編)
⑦ワーグナー:M.W.夫人のアルバムのためのソナタ 変イ長調(佐々木絵里子編)
⑧ワーグナー:女声のための5つの詩「ヴェーゼンドンク歌曲集」(佐々木絵里子編)
◆アンコール

⑨リスト:「おお、愛しうる限り愛せ」S298 (愛の夢 第3番)(佐々木絵理子編)

編曲はいずれもピアノ曲あるいは伴奏の弦楽四重奏への編曲

 

演奏:松井敦子(s) ②③⑧⑨

   佐々木絵里子(vn)、田村安紗美(vn)、脇屋冴子(va)、矢野晶子(vc)

 

2023年10月26日 すみだトリフォニーホール

 

なかなか気合の入ったプログラム。というか、本人は「マニアックなプログラム」とトークで言われておりました。ヤナーチェク以外はすべて松井さんの編曲。素人目には、準備は選曲から含めて大変そうと思いました。その松井さんも、トークや鮮やかなブロンドの髪にビロードのワンピースということで、密かにファムファタールを演じられていました。なかなかの徹底ぶりです。ある意味余技的なプログラムという感じもしますが、すべてはこの一夜のために楽団員がプロデュースするという意味で、まさに芸術家魂ですね。

 

4人の取り合わせも、ファムファタールの松井さん、違うタイプのファムファタールになりそうな田村さん、清楚な脇屋さん、スポーティな矢野さんと四者四様という感じでお見事という感じでした。演奏は息のあったもの。オーケストラからの四重奏の編成で大変安定です。音も尖ったところはなく、大変美しい演奏でした。松井さんはイタリア歌曲が本業とのことですが、今日はドイツ語とフランス語。最後はずっと歌い詰めですが、アンコールのリストまでくると流石に大変そうな感じがしました。

 

メインは、前半がヤナーチェク、後半がヴェーゼンドンク歌曲集という事と思います。ヤナーチェクは改めて実演で聴いて、とても面白い曲と思いました。家にもCDが1枚あったので、今度復習に聴いてみようと思います。さて、新日フィルですが、本拠地が墨田区なのですが、総武線住民の私としては地元のオーケストラ気分で時々聴きに行っていましたので、愛着があります。また、時々聴きに行こうかなと思いました。というか、来週も音楽監督の佐渡さんのチケットを確保しております(笑)

買ったCDはちゃんと聴こうシリーズ ⑨

【CDについて】

①作曲:シューベルト

 曲名:ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調 op99 D898 (33:30)

②作曲:メンデルスゾーン

 曲名:ピアノ三重奏曲第1番 ニ短調 op49 (28:19)

演奏:スーク・トリオ

録音:1964年9月7-9日 プラハ 芸術家の家①

   1966年9月13-15日 プラハ ドモヴィナ・スタジオ②

CD:COCO-70527

   (レーベル:Supraphon、販売:コロムビアミュージックエンタテインメント)

 

【曲について】

シューベルトは晩年に3曲のピアノ三重奏曲を作曲しており、これらは晩年の3曲のピアノ・ソナタの作曲時期と同じころになります。名作がたくさん生み出された時期ですね。第1番変ロ長調はとても明るく輝かしい曲となっています。そしてメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番は、シューベルトの約10年後に作曲された作品で、シューベルトの交響曲第9番と共に、メンデルスゾーンによって初演されました。

 

【演奏について】

普段あまり聴かない曲が2曲入ったCD。録音時期が違う2曲なので、それぞれ別のLPで発売されたものと思われます。帯にはベートーヴェンとブラームスを繋ぐ2曲と書かれていますが、どうもそう書くと、シューベルトとメンデルスゾーンが格下みたいな気がして、いまいちだと思うのですが…。オリジナルLPはどういう組み合わせだったのだろうと思って調べてみたら、シューベルトは、ノットゥルノop148と。メンデルスゾーンはブラームスの3番との組み合わせでした。シューベルトは同じ組み合わせで再録音されていて、そちらは聴いたことがあります。スーク・トリオは常設のトリオでもあり、それぞれがソロとしても活躍された名トリオですね。

 

シューベルトのピアノ三重奏曲第1番は、冒頭からスークの美しいヴァイオリンの音が明るい第一主題で輝かしく入っていくのが印象的でした。この曲はバランスのとれた素晴らしい曲だと思いますが、特にヴァイオリンの奏でるメロディが主導していく曲という印象を持ちました。チェロとピアノはどちらかというとサポートに回りながらうまく溶け合っていく感じです。美しい第二楽章はピアノの伴奏に乗ってヴァイオリンが哀愁を帯びたメロディを奏でていく美しい楽章でした。スークを中心とした常設トリオの魅力が楽しめる演奏だと思います。

 

後半はメンデルスゾーン。ピアノ三重奏曲第1番は比較的後期の作品になります。円熟のメンデルスゾーンのロマンティックが味わえる作品です。こちらはシューベルトは雰囲気が少し違って、3人の技巧的な掛け合いが豪華に展開していく雰囲気の曲です。ソロ活動でも一流の三人の演奏が聴きどころ。ロマン派の音楽の魅力が詰まっています。メンデルスゾーンの特徴的なスケルツォも円熟味を増して激しく展開していきます。このCDは曲もさることながら、当時のスーク・トリオの魅力が存分に楽しめる、素晴らしい録音でした。

 

【録音について】

室内楽の雰囲気が全体的に美音で捉えられた、いい録音だと思います。

 

【まとめ】

スーク・トリオはチェコや独墺系のトリオを中心にたくさんの名盤を残しています。このCDもその魅力の一端に触れることのできるいい録音だと思います。いろいろと聴き返してみたいトリオだと思います。

 

購入:不明、鑑賞:2023/10/14

いままで記事に登場していない交響曲名曲5選 ①

ちょっと縛りを緩めてこんなタイトルで…。5曲はあるな…と目途はたっております(笑)。

まずは、「リンツ」から、なんとなくここ数年、モーツァルトの交響曲の中では一番好きで、それもこのCDを聴いてから好きになったのです。

【CDについて】

作曲:モーツァルト

曲名:交響曲第36番ハ長調 K425「リンツ」 (25:04)

   交響曲第31番ニ長調 K297「パリ」 (17:29)

   バレエ「レ・プティ・リアン」 K299b 序曲 (3:32)

演奏:ライトナー指揮 バイエルン放送交響楽団

録音:1959年4月11-12日 ミュンヘン ヘルクレスザール

CD:PROC-1244(レーベル:DG、発売:タワーレコード)

 

【曲について】

モーツァルトの交響曲第35番から第41番(37番は欠)の6曲はモーツァルトの後期六大交響曲と呼ばれています。その中のひとつである交響曲36番は、モーツァルトが1783年にリンツ滞在中、依頼を受けて4日間で書き上げた作品。私は、第36番の第三楽章のオーボエとファゴットによる美しい二重奏のトリオがとても気に入っています。

 

【演奏について】

モーツァルトの後期交響曲の中で何が好きかと言われると、昔は最もポピュラーな第40番だったのですが、いろいろ聴いていくと、あまりにポピュラーな所からは離れていくもので、第38番だったりした時期もあります。そして、今はこの第36番になっています。第一楽章とメヌエットのトリオが特に好きですね。

 

さて、ライトナーの演奏です。第一楽章は普通に始まりますが、これぞモーツァルトだなぁ…という感じです。というか、モーツァルトの交響曲はそんなに奇をてらった演奏は聴かないですね…。この演奏、基本は音の輪郭がとてもはっきりしていますが、それだけではなく爽やかに流れていく感じがいいです。さらに、柔らかで暖かみもあります。このあたりは私にとって、モーツァルトの必須条件。弦の音も素晴らしいと思います。第二楽章も旋律が美しく演奏されています。そして、お待ちかねの第三楽章のメヌエット。この演奏はトリオのオーボエとファゴットがとても目立つように演奏されていて、それが大変美しいのですね。この曲が好きになったのも、普通に流せば埋もれがちなこの部分を、はっきりと美しく聴かせてくれたところが大きいです。そして、第四楽章は快活な演奏で締めくくられました。基本的にインテンポで手堅くまとめられていると思いますが、その中にある活き活きとした躍動感や、優雅さが素晴らしい演奏です。

 

パリの方も同じ傾向の演奏で、輪郭がはっきりして躍動感のあるものになっています。第一楽章のテンポがとてもいいです。第二楽章は、美しく、第三楽章は快活にというのは、まぁ曲の通りではありますが、その曲の表情が、ストレートに表に出ている、とても好印象の演奏でした。

 

バレエ音楽の「レ・プティ・リアン序曲」がカプリングされています。普段聴かない曲ですが、明るく楽し気な曲でした。

 

【録音について】

50年代末の優秀録音だと思います。弦の音も適度に柔らかく表現されて、分離も良く、大変聴きやすい音でした。

 

【まとめ】

これは、お気に入りのCDの一つだったものですね。オリジナルジャケットもなかなかいいですし、カプリングも1959年8月リリースのオリジナルの組み合わせです。リマスタリングされた音も凄く優秀でした。いいCDです。

 

購入:2012/12/23、鑑賞:2023/10/23(再聴)

買ったCDはちゃんと聴こうシリーズ ⑧

【CDについて】
作曲:メンデルスゾーン
曲名:劇音楽「真夏の夜の夢」抜粋 (42:31)

   ・序曲 op21,MWV P 3

   ・劇付随音楽 op61,MWV M 13 より8曲

演奏:ファレヴィス(s)、シュプリンガー(ms)

   ヘルビッヒ指揮 ベルリン・シュターツカペレ、ベルリン国立歌劇場合唱団
録音:1977年4月4日、1976年9月21-23,27,30日、ベルリン クリストス教会
CD:TKCC-15169

   (レーベル:Deutsche Schallplatten、販売:徳間ジャパンコミュニケーションズ)

【曲に関して】

シェイクスピアの戯曲「真夏の夜の夢」を元に作曲された作品。序曲は、1826年にピアノ連曲として作曲され、翌年オーケストラ用に編曲されました。一方、劇付随音楽はプロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム4世の勅命により、1943年に劇付随音楽として作曲されました。劇付随音楽は12曲からなっており、さらにop21の序曲をそのまま流用して加えた形となっています。

【演奏についての感想】

ドイツ・シャルプラッテンはLP時代は廉価版シリーズが無くて、貧乏学生時代は少々縁遠い存在でしたが、CD時代になってしばらく経つと、突然価格が崩壊し、1000円CDが続々出始めました。最初はジャケットが紙一枚という感じで、一定数揃えて応募券を送れば、本になったライナーノーツがもらえるという仕組みでしたが、シリーズも回数を重ねるにしたがって、最初からライナー付きのジャケットになりました。当時のCDの価格破壊と言えば、このシリーズと、新星堂の1000円シリーズがインパクトがあったと思います。これは!と思ってけっこう買いました。(笑)

 

さて、この1000円シリーズは、LP時代の収録構成をそのままでCD化しているので、好感が持てます。最近SACDになっていろいろ出ていますが、カプリングをいろいろ組み合わせて、詰め込んでいるのが今一つで、オリジナルにして欲しいなぁ…といつも思っています。30数分の内容でも、聴きたいのであれば買いますが、余計なものが入っているので、買うのをついつい見送ってしまったりします。組み合わせも録音や製作にあたっての意図があると思うのですよね。このCDは42分で劇音楽の12曲中4曲(情景が3曲と葬送行進曲)が収録されていませんが、尺も含めてそういう意図であれば、それでいいと思います。

 

序曲はメンデルスゾーンの17歳の作品。八重奏曲とか作っていた時代ですね。もう完成の域に達しています。メンデルスゾーンらしい音楽に溢れています。劇音楽も楽しい曲が多いので、気軽にメンデルスゾーンの音楽を聴くことができます。ヘルビッヒの演奏は尖ったところが無く、あえて輪郭を目立たせようという事もなく、穏やかで美しい演奏ですね。暖かな自然体の演奏で、実はメンデルスゾーンの明るさや面白さがよく出ているのではないでしょうか。ベルリン・シュターツカペレもいい音が出ていると思います。

 

【録音について】

残響が多めの穏やかな柔らかい録音で、大変聴きやすい音になっています。

 

【まとめ】

曲よりのCDの販売に関するコメントが多くなってしまいました(笑)。このCDもいつか何気なく買ったものと思いますが、ゆったりした気分で聴けるCDでした。名盤を頭をフル回転させて聴くのもいいですが、こういう脱力して最後まで聴けてしまうCDもいいものだと思います。

 

購入:不明、鑑賞:2023/10/06

ショスタコーヴィチの時代 ⑬

ついに、ショスタコーヴィチの初期のエポックメイキングな作品である、歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」までやってきました。これまでの創作活動で取り組んできた成果が全て揃った傑作とも言えると思います。そして、この作品が以後のショスタコーヴィチの歩む道を大きく変えることとなりました。1932年に完成されたこのオペラは、1934年の初演以来、ソビエトのみならず、国外でも大成功を収めることになります。

【CDについて】

作曲:ショスタコーヴィチ

曲名:歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」op29 (154:51)

演奏:ロストロポーヴィチ指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

   アンブロジアン・オペラ合唱団

   ヴィジネフスカヤ(s)、ゲッダ(t)、ペトコフ(bs)、クレン(t)、ティアー(t)、

   ヴァリャッカ(s)、他

録音:1978年4月1-22日、ロンドン アビー・ロード・スタジオ

CD:TOCE-7639/40(レーベル:EMI、発売:東芝EMI)

 

【曲と演奏について】

ショスタコーヴィチは、ロシア・アヴァンギャルド以降、1920年代当時のソビエトの芸術の発展の中で、舞台や映画などに数々の作品を残し、1930年に歌劇「鼻」以来のオペラ製作に取り掛かります。それは、これまでの創作活動や、社会主義リアリズムの流れに阻まれながらも発展してきたソビエトの芸術を集大成したものにもなりました。原作はレスコフの同名小説。岩波文庫の「真珠の首飾り」という短編集に収録されていますので、日本語でも読むことができます。

 

「ムツェンスク郡のマクベス夫人」は大成功をおさめ、頻繁に舞台にかかるようになり、世界各地でも上演され、ショスタコーヴィチの名声は不動のものとなっていきますが、1936年1月26日、スターリンが劇場を訪れ観劇中に途中退席すると、1月28日のプラウダに「音楽のかわりの荒唐無稽」という批判記事が掲載されました。以降「人民の敵」というレッテルを貼られ、ショスタコーヴィチの演奏会には、「本日は人民の敵ショスタコーヴィチの演奏会です」といった宣伝がなされるようになりました。

 

無記名のプラウダ批判は党の意思、つまりスターリンによるもの、当時の大粛清の嵐の吹き荒れる中で、ショスタコーヴィッチも以降無難な作品を発表するようになり、準備されていた交響曲第4番なども、しばらく演奏されることはありませんでした。「ムツェンスク郡のマクベス夫人」には、過激な性表現や性的虐待の場面も含まれ、そういった部分も含め批判の対称になったものですが、そもそも大粛清は革命以降のソビエト政権安定化と発展のために尽力した党員たちが悉く粛清され、スターリンに批判的態度の出る可能性をつぶすものであったことから、なにがしか目立つ活躍をすれば対象になりうるものであったという事も出来ると思います。

 

さて、久しぶりにこの曲を聴いてみたいと思います。聴くのには気合がいるので、めったに聴かないのです(笑)。全体は4幕9場から成り立っています。

 

第1幕
第1場:イズマイロフ家居間

カテリーナは裕福な商家のイズマイロフ家に嫁いできましたが、舅のボリスからは、常に良き妻であるようにと小言を言われ、一方、夫ジノーヴィとは愛のない生活。若い希望と時間を持て余し、人生に失望しています。そこに女癖の悪いことで有名なセルゲイが新しい使用人として加わりました。

まずは、物語の背景が作り上げられます。不穏な音楽を主体に進行し、これからの展開を暗示していきます。

 

第2場:イズマイロフ家の庭先

セルゲイや使用人たちが、女中のアクシーニャをいじめているところにカテリーナが通りかかり、カテリーナはセルゲイを叱責しますが、セルゲイはカテリーナを押し倒します。その場を見たボリスは、言い訳をするカテリーナに対し、息子に言いつけてやると怒ります。

このアクシーニャへの虐めのシーンは、音楽も台詞も刺激的な内容であり、刺激的な音楽になっています。なかなか衝撃的な印象を与えるものでした。

 

第3場:カテリーナの寝室

その夜遅く、寝室で一人でいたカテリーナのもとにセルゲイが忍び込み、カテリーナをものにすると、カテリーナもセルゲイの虜になってしまいます。

第3場への間奏曲が、この場を象徴するような、刺激的な音楽になっています。そして、孤独を嘆くカテリーナのアリアは美しく、セルゲイが入ってきてからのレイプ・シーンは、成るべくして成ったという雰囲気で進行します。この性行為を描写した音楽は過激なもので、ショスタコーヴィチのこれまでの舞台音楽の一つの成果ともいえるものです。しかし、批判の対象となったのも、まさにこの部分にありました。

 

第2幕
第1場:イズマイロフ家庭先

ボリスは夜半庭に出て、カテリーナに対する欲望を歌います。そこへセルゲイがカテリーナに別れを告げて出てくると、ボリスはセルゲイを捕まえ、怒りに任せて激しく鞭打ちを与えます。ボリスは打ち疲れると疲れると、カテリーナに食べ物を要求。カテリーナはキノコスープに殺鼠剤を入れて差しだします。ボリスはすぐに苦しみ始め、司祭を呼んで懺悔し、カテリーナを恨めしげに指さして息絶え、カテリーナは悲しむふりをして、キノコによる食中毒と訴えます。

ボリスが、あと10歳若かったらと、性欲をあからさまに表に出して歌うところに、更にセルゲイに先を越された格好になって恨み百倍、激しい鞭打ち場面が展開します。鞭の音が大変リアルで執拗に続く激しい音楽です。そして、カテリーナに毒殺されたとわかったボリスの恨みの場面を経て、第1場は終ります。そして第2場との間に壮大で悲劇的な間奏曲が差しはさまれます。この曲の中でも有名なパッサカリアです。あたかも後年の交響曲を聴いているような壮大な音楽であり、またこの場はこの歌劇の中でも核心部の一つになっています。ショスタコーヴィチの素晴らしい管弦楽も聴きものですね。

 

第2場:カテリーナの寝室

カテリーナは寝室でセルゲイとの逢瀬を楽しんでいますが、ボリスの亡霊に悩まされていました。そこへジノーヴィが帰ってきて、不義の現場を押さえられ、カテリーナは革のベルトで打たれますが、隠れていたセルゲイに助けを求め、二人でジノーヴィを殺すと穴蔵に隠してしまいます。
舅を殺し、二人は愛の逢瀬を重ねるうちに、夫までも邪魔だと考え始めます。寝室でのシーンの中で、感情がエスカレートしていく様子や、亡霊に代表される罪の意識が巧みに表現されていきます。脚本はショスタコーヴィチ自身が書いていますが、素晴らしい心理劇が展開する場面です。すぐ眠ってしまうセルゲイの様子から、カテリーナとセルゲイの微妙なずれ、つまり愛情にすっかりはまっている女性と、遊び人の男の描写が未来を暗示させていきます。カテリーナの眠りの場面は美しいヴァイオリンのメロディで表現されますが、心なしか不安定な音楽になっています。


第3幕
第1場:イズマイロフ家納屋の前

カテリーナとセルゲイの結婚式が自宅で行われる日、穴倉に隠したジノーヴィの死体を気にするカテリーナですが、セルゲイは人にそんな様子を人に見られると大変と諫めます。しかし酔っぱらった農夫が死体を発見してしまいます。

二人の結婚式の日、カテリーナには罪の意識に苛まれています。そして、死体が発見されます。この死体発見の場面の音楽はショスタコーヴィチの音楽によく出てくるスケルツォです。それもかなり賑やかで複雑で聴きごたえがあります。そして…

 

第2場:村の警察署

警察では、署長も警官も手持無沙汰で、収入の少なさを愚痴っています。そこに死体を発見した農夫が飛び込んできます。

暇で、儲け話はないかと愚痴っている警官たち。ショスタコーヴィチの風刺劇の場面です。この歌劇の中でも息抜き的場面になっています。

 

第3場:イズマイロフ家納屋の前(宴会場)

宴もたけなわとなり、披露宴に参加した客や司祭は盛り上がって、二人にキスを求めています。しかし、カテリーナは死体が見つけられていることに気付き、二人はその場から逃げようとしますが、警官隊が現れ逮捕されてしまいます。
酔いつぶれた客や、二人を讃える司祭、警官の行進曲など、諧謔的な場面が続きますが、最後に二人は捕らえられ、物語的には一つの展開が終わります。

第4幕
第1場:シベリア街道 湖のほとり

カテリーナとセルゲイはシベリアに流刑となり、2人と流刑者たちは途中の湖のほとりで休憩します。カテリーナのただ一つの心の支えはセルゲイですが、セルゲイは自分の流刑はカテリーナのせいだと言い放ち、別の女囚ソネートカと関係を持ってしまいます。カテリーナは絶望し、ソネートカを道連れに湖に身を投ると、役人は出発を告げ、囚人たちは物悲しい歌を歌いながら行進していきます。
セルゲイの心変わりと、ソネートカや囚人からの侮蔑にあい、すべての希望を失ったカテリーナが最後に悲痛なアリアを歌います。ロシア文学や音楽の伝統を引き継ぐ、荘厳で哀愁溢れる名場面が展開し、劇的なクライマックスを迎えます。このけた外れの無常観や因果応酬は、ロシアの芸術や映画などの中でもよく見られる大変魅力的な場面だと思います。音楽は美しくもあり、厳粛でもあります。

 

さて、最後まで一気に引き込まれてしまう20世紀の名作歌劇でした。ショスタコーヴィチはこの後歌劇に関しては成功作を作り出せていませんが、あまりにこのオペラの内容が深く、政府から受けた批判の衝撃も大きかったこと理解します。その後、雪どけの時代に多少毒気を抜いた形で、「カテリーナ・イズマイロヴァ」op114として改作され、当時のソビエト国内でも演奏されるようになりました。その時代にあっても人々を引きつけてやまないこの歌劇は、ロシア文学の伝統と、ショスタコーヴィチのよく練られた台本と管弦楽による、曲そのものの持つ力が、大変大きいものだということだと思います。

 

このCDを録音したロストロポーヴィチは、1974年に亡命して、ソビエトを離れました。そして、ショスタコーヴィチとも親交のあったロストロポーヴィチは、原典版のスコアによって、この曲の世界初録音を果たしました。主演は妻のヴィジネフスカヤが担当しています。当時も大いに話題になった録音です。ヴィジネフスカヤの強い声で演じられるカテリーナの強烈で悲痛な歌や、華やかで強靭な管弦楽が再現され、大変な力を感じることができる演奏だと思います。いつも聴くわけではありませんが、私にとっても、最も感銘を受けたCDの一つです。

 

【録音】

何かと問題のある当時のEMIの録音ではありますが、これは演奏者の気持ちが乗り移ったような素晴らしい録音になっています。

 

【まとめ】

ショスタコーヴィチの前半の最高傑作だと思っている「ムツェンスク郡のマクベス夫人」を久しぶりに聴くことができました。この後もしばらく、1936年のプラウダ批判を受けるまでの間、充実した作品を作曲し続けることになります。まだまだ続きます。

 

購入:不明、鑑賞:2023/10/09(再聴)

【CDについて】

作曲:シューベルト

曲名:交響曲第9番ハ長調 D 944 (59:29)

演奏:スウィトナー指揮 ベルリン・シュターツカペレ

録音:1984年9月20-24日、東ベルリン キリスト教会

CD:COCO-73003

   (レーベル:DENON、発売:コロムビアミュージックエンタテインメント)

 

【曲について】

私は、この曲についてはいつも第9番としていますが、いろいろと番号が変わってきています。かつては第7番(未完の物を除くと7番目)と呼ばれていたようです。その後D番号を附番して以降は第9番というのが一般的になり、この時期には、第9(7)番と表記されていたLPなどもありました。最近は、自筆譜のみで演奏できる曲として8番目であることから第8番となりました。そして、表記は今度は、第8(9)番とすることも多いようです。私は、最初に親しんだ時は第9番だったので、ずっと第9番です(笑)。

 

【演奏について】

スウィトナーはこの時期、DENONとドイツシャルプラッテンの共同制作で、ベートーヴェン交響曲全集などいくつかの録音を残しています。当時NHK交響楽団にもたびたび登場し、日本でもおなじみで、モーツァルトの演奏などファンも多かったと思います。そんな時期に録音されたシューベルトのグレイトを見つけたので、入手して聴いてみました。

 

シューベルトのグレイトは好きな曲なので、一応たくさんの演奏を聴いてきたつもりですが、今回久しぶりに聴いてみると、最近ブルックナーをいろいろ聴いてきたためか、このCDを聴いて、序奏が速い!と思ってしまいました。どうも、ブルックナー的序奏の進み方が、感覚に沁みついていたみたい(笑)。そんな感じで聴きはじめたので、序奏からスルスルと進んでいって、そのまま主部へと流れるように加速していったように感じました。ただし、いずれにしてもこの演奏の第一楽章は速めだと思います。細かなニュアンスやテンポの揺れなどもあまり無いようです。細かい所まで良く表現されていると思いますが、残響が多い録音なので、輪郭がはっきりという感じでもないかな…と思いました。

 

オーケストラの音は、柔らかな弦の音が素晴らしいと思います。さすが、ベルリン・シュターツカペレの、伝統のある音ですね。第二楽章も端正な印象で、緩徐楽章ではありますが、キビキビした印象を受けました。そして、じっくり盛り上がっていくところは雄大に感じます。全体的には、冒頭感じたように、大変流れのいい演奏と思います。第三楽章で、速度は幾ばくか落ち着いて少し重く感じましたが、第四楽章は気分よく颯爽と走っていきました。全体には飾らない感じの端正な演奏で、あまりニュアンスをつけると言ったことはなく、テンポの動きも自然体でした。ドイツ統一前夜のこの時期、こういった東独の素朴感が当時受けていたかもしれません。久しぶりにこの曲のありのままを見た感じで、楽しませていただきました。

 

【録音について】

弦の音が柔らかく艶があります。残響が多めではないかと思います。全体の雰囲気はとても良く、細部はあまり目立たないけれども、深みのある音になっていると思います。

 

【まとめ】

当時のDENONは、独自のPCM録音を駆使して、東欧の素晴らしい演奏を、優秀録音でたくさん残しています。西側のパフォーマンスに染まらない録音の数々は、今となっては貴重なものだな…と思いました。

 

購入:2023/10/02、鑑賞:2023/10/13

ブルックナーを聴こう第2部

 ~巨匠たちのブルックナー⑧~

第8回:ゲオルク・ショルティ

ショルティは、ブルックナーの演奏が有名かというと、そおーでもないかな?という気もしますが、それはショルティの録音におけるレパートリー自体がかなり広範囲にわたっていて、目立たないからかもしれません。しかし、全集も完成させていますし、初期にはDECCAのウィーンフィルによる全集にも、第7番・第8番という核心部を担当しています。そんなショルティの演奏を今日は聴いてみます。

【CDについて】
作曲:ブルックナー

曲名:交響曲第3番ニ短調 第2稿(1877)ノヴァーク版 (59:33)

演奏:ショルティ指揮 シカゴ交響楽団
録音:1992年11月16-17日、シカゴ  Orchestra Hall
CD:440 316-2(レーベル:DECCA)

 

【曲について】

交響曲第3番は、いくつかの稿が存在します。まず、1873年に第1稿(1873年稿)が完成します。この初稿によって初演を試みましたが、実現はしませんでした。次に1877年に第2稿(1877年稿)が完成しました。この稿で初めてブルックナー自身の指揮により初演されましたが、演奏会終了時にほとんどお客さんが残っていなかったと言われています。さらに10年後の1889年に第3稿(1889年稿)が完成し、これは1890年に初演され成功を収め、現在でも最も多く演奏されています。

このCDは第2稿を採用していますが、第2稿にはエーザー版とノヴァーク版第2稿がありますが、大きな違いはスケルツォのコーダあるなしになります。このノヴァーク版はコーダ付きです。

 

【演奏について】

ショルティのブルックナーといえば、当時の批評などを見ても賛否が分かれていた印象があります。摩天楼のブルックナーとか言われていたのも記憶に残っています。しかし、そもそもブルックナーの演奏自体がかなり幅が広いところがありますし、一つの演奏の形としてとらえて見るのも面白いと思った次第です。

 

ショルティは、マーラーもブルックナーも両方を演奏している数少ない指揮者だと思います。だいたい得意分野はどちらかになりがちだと思うのですが、そこはたぶん、ショルティのマーラーであり、ショルティのブルックナーを演奏していたからではないか?と思ったりします。

今回は、全集の中でも録音が新しい第3番を選んでしました。まず、聴いてみての印象は、細部を作り込んだ演奏で、もの凄く精緻に構成されており、その積み上げで成り立っているという感じです。しかし、これはショルティの演奏はだいたいそうですね。

 

そんなショルティの演奏の特徴通り、盛り上がる部分は壮大に大きく盛り上がりますし、輪郭がはっきりした演奏でした。そして、シカゴ響の音が大変明るく、華やかに聴こえます。金管の音も大変華やかです。ブルックナーということに限って言えば、休止が目立つ曲ですので流れが悪く感じるところがありますが、これは曲の性格だと思いました。第二楽章はとても美しい演奏で、精緻な演奏の賜物だと思いました。

 

この演奏に使われているのは第2稿で、普段聴きなれない演奏でした。あちこちに細かな気づきがありましたが、やはりスケルツォのコーダには驚かされます。一風変わった面白い感じです。そのスケルツォは、テンポがよく活き活きとしています。そして、そのまま第四楽章も切れのいい演奏でした。全体として想像した通りではありましたが、美しく活気があって素晴らしい演奏だと思いました。

 

【録音について】

オーケストラの音が素晴らしく輝いていて、最高レベルの録音だと思います。管の音も軟らかく、弦の音も輝いていました。

 

【まとめ】

ショルティは、演奏の音響的効果はかなり重視していると思いますが、第2稿のノヴァーク版というのも、そのあたりの効果を狙っているのかな?という気がしました。しっかり構築されて密度が高く美しいショルティの演奏ですので、ブルックナーの管弦楽を存分に楽しめると思います。

 

購入:1993/12/04、鑑賞:2023/10/15(再聴)

最近リリースされた新譜から ⑩

今回の新譜は、ヴィラ=ロボスが自身の映画音楽から改編した曲である「アマゾンの森」を聴いてみました。ヴィラ=ロボスはブラジル風バッハが有名ですが、たくさんの作品を残したブラジルの20世紀前半の作曲家で、わずかながら映画音楽も残しています。この曲は、映画「緑の館」のために作曲されたもので、ヴィラ=ロボスはその音楽を演奏会用に改編しました。シモーネ・メネゼスがこのCDで演奏しているのは、その中からの11曲の抜粋になります。

【CDについて】

①作曲:ヴィラ=ロボス

 曲名:組曲「アマゾンの森」 (48:11)

②作曲:フィリップ・グラス

 曲名:メタモルフォシス I ~「アマゾンの流れ」 (12:55)

演奏:メネセス指揮 フィルハーモニア・チューリヒ

   プロヴェンツァーレ(s)

録音:2022年10月、チューリヒ Opera House

CD:ALPHA990 (レーベル:Alpha)

 

【曲と演奏について】

この曲は「緑の館」という映画のために作曲されました。原作はハドソンの同名小説。映画はオードリー・ヘプバーンが主演で製作され、監督はメル・ファーラーでした。メル・ファーラーとオードリー・ヘップバーンは当時は夫婦で、メル・ファーラーは妻の美しさを映像に残すべく、自身が監督として製作に臨んだと思われます。しかし、メル・ファーラーと言えば俳優として数々の映画に出演していたものの、映画監督経験は少なく、残念ながらこの作品は不評であったと言わざるを得ないでしょう。オードリー・ヘプバーンが出演していながら、今ではなかなか見る機会のない作品となってしまいました。私も、見ておりません。そんな不遇の映画の音楽は、ブラジルを舞台にしたものだけに、ヴィラ=ロボスに曲の依頼があったという事でしょうか?

 

ヴィラ=ロボスはこの曲の完成後、演奏会用の曲として「アマゾンの森」という曲に再編します。ここで演奏されているのは、その中から選ばれた11曲の組曲です。では、聴いてみたいと思います。

 

第1曲は、「森」。アマゾンの森の情景の展開する情景描写で、いろいろな楽器の音で森の中の音が表現されています。印象派の音楽を思い出させるものがありました。第2曲は、「森の中で」。静かに始まる森の情景で、ゆっくりと盛り上がって、森の壮大さがよく表現された曲だと思います。第3曲の「森の鳥」から声楽が入ります。静かな美しい曲で、ここまで森の美しい自然を表現した交響詩のような音楽だと思いました。第4曲は「自然の踊り」ダンスといっても、土俗的な表現ではなく、踊りそのものというより、踊りのシーンのBGMといった雰囲気です。第5曲は「陰謀と戦士の踊り」不穏な音楽ではじまりますが、全体にハリウッド映画の音楽という感じで作られていると思うので、美しくこそあれ、それほど尖った曲にはならないようです。

 

第6曲は「帆舟」歌付きの音楽となります。第7曲「狩りのための道で」行進曲風な音楽と、風景の描写という感じです。あくまで普通のオーケストラ音楽として書かれていて、土俗的な楽器や奏法ではないので、アマゾン風という雰囲気はなく、何かアルプス交響曲の情景描写とか、そういった曲を聴いている感じです。第8曲「愛の歌」と第9曲「センチメンタルなメロディ」は、歌曲が続きます。美しく、また、しみじみとしたメロディが聴かれます。第9曲は歌謡曲風でもあります。第10曲「森の火災」スペクタクルな音楽を期待しましたが、イメージほどの荒々しくはなく、当時のハリウッド映画の枠内ということでしょうか。そして、第11曲「終曲」は、声楽も入った劇的な音楽で、映画のクライマックス感が素晴らしいと思います。堂々と幕を閉じました。

 

20世紀の音楽で、アマゾンを題材にしたスペクタクル作品というよりは、アマゾンを舞台にしたハリウッド映画の情景につけられた音楽というスタイルで、美しく劇的なオーケストラ音楽が聴けるというところでしょうか。曲だけ聴いた感じですと、印象派的な情景描写や交響詩的な表現を感じました。演奏は素晴らしいものと思います。フィルハーモニア・チューリヒは、チューリヒ歌劇場管弦楽団が改称されて現在の名前になっています。

 

ナディーン・シエラの歌う「センチメンタルなメロディ」ポピュラーぽい感じのいい曲です。

 

最後にフィリップ・グラスの作品がついていますね。グラスのミニマルミュージック。ちょっとポップな感じもして、なかなか楽しい音楽だと思います。(楽しいという表現が当たっているかどうかはちょっと疑問ですが、こういった音楽は好きです…)

 

【録音に関して】

問題なくいい録音だと思います。オーケストラの音が大変クリアで美しいです。

 

【まとめ】

ヴィラ=ロボスの映画音楽からの組曲でした。アマゾンという雰囲気からするとおとなしい感じがしますが、交響詩のようにアマゾンの森の情景を描いた音楽という観点で見れば、大変美しく、雰囲気のある音楽だと思います。いろいろな音楽に接するのも楽しい限りです。

CDを聴き終わってから、YouTubeでいろいろ探してみましたが、全曲演奏の動画もありました。全部で21曲70分で、曲数は、ほぼ倍になります。こちらは男声合唱も入って、アマゾンっぽい土俗的な音楽が幾つか入っています。このメネセスの選曲自体が、アマゾンを情緒豊かに奏でる曲を選んだ結果、こういった印象になったのかもしれません。そうしてみると、全曲版をじっくり聴いてみたい気もします。

 

購入:2023/09/23、鑑賞:2023/10/15

【CDについて】

作曲:シューベルト

曲名:八重奏曲ヘ長調 D803 op166 (59:33)

演奏:エンシェント室内管弦楽団員

録音:1988年9-10月 ケンブリッジ Concert Hall of the Univercity Music School

CD:POCL-1004(レーベル:L'OISEAU-LYRE、原盤:DECCA:販売:ポリドール)

 

【曲について】

八重奏曲D803は、シューベルトが1824年に作曲した作品で、1824年といえば、ベートーヴェンの第9が初演された年にあたります。クラリネット奏者のトロイヤー伯爵の委嘱によって作曲され、ベートーヴェンのような曲をというリクエストがあったことから、ベートーヴェンの七重奏曲を意識した作品となりました。シューベルトは当時室内楽の傑作群を次々と作曲しており、また最晩年の傑作へと繋がっていく作品でもあります。

編成は、クラリネット、ファゴット、ホルンに、弦楽四重奏とコントラバスです。


【演奏について】

ホグウッドが設立した古楽器のオーケストラの、エンシェント室内管弦楽団員によるシューベルトです。当時は古楽器によるシューベルトは珍しかったと思いますが、エンシェントの演奏はどんなものかも興味があり、楽しみに聴いてみます。


まずは、古楽らしい柔らかな音色を感じますが、演奏は輪郭のはっきりした、キビキビしたものでした。むしろ現代的な演奏という感じです。ゆっくり入って主部に入ると颯爽と進んでいく感じが小気味良い演奏です。第一楽章は、シューベルトの曲だなぁと感じる、表情豊かなしっかりした展開を楽しみます。展開には第9交響曲(グレイト)を感じさせる、雰囲気がありました。


美しい旋律の緩徐楽章である第二楽章は、クラリネットの優雅なメロディがヴァイオリンと絡みながら展開します。この曲は、ベートーヴェンに似せてくれという注文で書かれたということもあり、古典派的な構成感を感じます。そのような雰囲気も感じられる第三楽章のスケルツォを経て、この曲の聴きどころのひとつでもある第四楽章。自作オペラからの主題による変奏曲で、親しみやすいメロディが、八重奏という編成のさまざまなな楽器によって変奏されていく音楽は素晴らしいものでした。


第五楽章は、のびのびして素朴な感じもするメヌエット。楽しげな音楽が展開し、最後の第六楽章は、序奏つきで展開していく音楽で再び第一楽章のような構成感が戻ってきます。リズミカルな音楽が展開し、コーダへと向かいます。再びグレイトへの予感を感じます。

 

エンシェントの演奏は、冒頭に感じたとおり明快で輪郭がはっきりして、リズミカルなもの。伝統的なロマンティシズムを前面に出したというより、現代の颯爽とした演奏というスタイルのものでした。使用している楽器は古楽器であっても、その柔らかな音色を使いながら、爽快で斬新な演奏を行なっていると思います。

 

【録音について】

大きめの音だと思いますが、大変クリアに捉えられた音だと思いました。

 

【まとめ】

古楽器のシューベルトは久しぶりではありますが、あまり古楽器という事を感じさせない演奏だったと思います。この頃の演奏は、より真摯な研究からスタートしているのかなと思いました。

 

購入:2023/10/02、鑑賞:2023/10/12

シューマンの交響曲 ④
シューマンの交響曲第4番は、作曲順では2番目の作品となっています。でも第4番という番号がついているので、気持ち的にどうしても最後の交響曲という重みづけをして聴いてしまします。この曲もあまりCDを持っていないのですが、ここは、長らく決定的名盤の地位にあったフルトヴェングラーで聴いてみましょう。

【CDについて】

①作曲:ハイドン

 曲名:交響曲第88番ト長調 Hob1-88「V字」 (37:56)

②作曲:シューマン

 曲名:マンフレッド序曲

③作曲:シューマン

    交響曲第4番ニ短調変ホ長調 op 120 (33:07)

演奏:フルトヴェングラー指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1951年12月5日①、1953年5月14日③、ベルリン イエス・キリスト教会 (M)

   1949年12月18日②、ベルリン ティタニア・パラスト (ライヴM)
CD:POCG-2358 (レーベル:DG、販売:ポリドール)

 

【曲について】

交響曲第4番は、シューマンの2番目の交響曲であり、1841年にクララの22歳の誕生日に贈られました。しかし、当時は充分な評価が得られず、出版には至りませんでした。その後1854年にオーケストレーションなどを見直した改訂版が出版され、第4番op120が付されています。その後、ブラームスとヴェルナーにより初稿に基づき、最終稿の要素をも取り入れたヴェルナー版が出版されています。

 

【演奏について】

今回は、もちろんシューマンの交響曲第4番を楽しみに聴くのですが、例によってCD収録順に聴いていきます。

 

まずは、ハイドンの交響曲第88番です。私は、ハイドンの交響曲に関しては、どの音楽がどの曲か全く見分けがつきません。そんなハイドンですか、聴いてみて、あぁこういう雰囲気だよね、と思う程度でした。フルトヴェングラーは、ゆっくりした序奏から始まり、ちょっとゴツゴツした感じだ進んでいきます。第二楽章もインテンポですが、曲自体ににちょっとしたアクセンがあって、意表をつかれました。第三楽章から一気に走り出し、最後まで快調な演奏でした。フルトヴェングラーは、インテンポと決めたら、徹底して守るような気がします。

 

マンフレッド序曲だけは、ライヴ録音。少々音質は落ちますが、それを補って余りある、雄大でロマンティックな演奏でした。旋律は絡みつくように歌い、テンポも動いて、たいへん雄弁の音楽です。

 

そして、やっと交響曲第4番。久しぶりに聴くこの演奏は、長らくこの曲の第一の名盤の地位にいたと思います。フルトヴェングラーのロマンティックな表現が見事な演奏です。そして、かなり熱くて濃い演奏です。細かなテンポの変動などでつけられた表情が、あちこちでハマっていることは、言うまでもありません。

もちろん、そのニュアンスすべてが、自分の好みと合っているという訳ではありませんが、雄弁でうねるような音楽の流れは、聴くと言うより、体感しているということかもしれまさん。まさに身体が揺さぶられるようなイメージなのでした。

 

【録音について】

 スタジオ録音の2曲については、十分この演奏の魅力を伝えるものだと思いました。マンフレッドも音楽は十分楽しめますが、少し雑音が多い気がしました。

 

【まとめ】

久しぶりに聴いて、この演奏の感覚を再び味わいました。これからも繰り返して聴いてみたい演奏だと思います。もちろんこの曲にもいろいろなタイプの演奏がありますので、それらを幅広く聴いてみたいと思わせるようないい曲だと思います。

 

さて、今回聴いたシューマンの4枚です。それぞれに特徴があって面白かったと思います。第2番が3回登場して、かなり身近になりました。

 

 

 

 

購入:不明、鑑賞:2023/10/01(再聴)