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~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

秋に聴くブラームス①

急に寒くなったので、今更ながら秋を感じました。いままで紅葉とかいろいろ見ていたのですが、やはりこの寒さに身を置くと寂しさも増し、晩秋という言葉が現実感を持ってきます。それでは、今日からブラームスを聴いてみましょう。全部で3回にして、火・木・土の一日おきにしましょうか。

買ったCDはちゃんと聴こうシリーズ ⑭

【CDについて】

作曲:ブラームス

曲名:ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調 op78 (25:04)

   ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調 op100 (19:17)

   ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調 op108 (22:11)

   FAEソナタ 第3楽章 ハ短調 (5:50)

演奏:シュンク(vn)、シュミット(p)

録音:1987年 ドレスデン ルカ教会

CD:TKCC-15243

   (レーベル:Deutsche Schallplatten、販売:徳間ジャパンコミュニケーションズ)

 

【曲について】

ヴァイオリン・ソナタ第1番は、「雨の歌」とも呼ばれています。これは、作品59の8つの歌曲と歌の第3曲、「雨の歌」のメロディが、第三楽章の主題として使われていることから来ています。ただし、この愛称はブラームスは特につけていなかったとのことです。「雨の歌」は幼い日の夢を歌った曲です。そして、ブラームスからクララにあてた手紙により、この作品がクララと危篤状態にあったクララの四男フェリックスを勇気づけ、あるいはフェリックス亡き後クララを励まそうというブラームスの想いが流れている曲であると言われています。

 

【演奏について】

11月に入っても暖かい日が続いていましたが、中旬になると、やっと秋らしくなってきました。といっても、冬ももうすぐそこまで来ていますね。ブラームスは秋のイメージとよく言われています。その起源はよくわかりませんが、実際にブラームスの後期の音楽を聴けば、そうだよねと納得してしまいます。人生の秋にあって、心中を表現し続けたということでしょうか。

 

さて、第1番からCDは始まります。久しぶりに聴くブラームスのヴァイオリン・ソナタです。演奏するシュンクは、東ベルリンのオーケストラのコンサートマスターを歴任してきたヴァイオリニストです。その音は心なしか円熟の音で、侘び寂びを感じる風情でした。そんな音色で聴くこの曲は、秋の風情にピッタリと思います。シュミットのサポートはしっかりしていますが、本来はパワフルなソリストだけあって、ちょっと前に出がちな所が、時々顔を出しているかもしれません。

 

第2番は、ピアノから始まる曲。シュミットのピアノはとてもエレガントで、そこにヴァイオリンが美しいメロディを奏でます。両者とも強めの音で、決して飾り立てるような音ではありません。むしろ、ゴツゴツしたくらいの感覚で、重量感もあります。第3番は短調の曲。ここでも、朴訥で力強さを感じます。まっすぐな演奏が最後まで続きました。最後に収められたFAEソナタ。スケルツォを単独で聴いても、この曲集でいままで聴いてきた雰囲気によく馴染んでいました。

 

【録音について】

ルカ教会の録音ですね。素直ないい音で録音されていると思います。

 

【まとめ】

やはり、秋はブラームスなんですね。秋と言ってももう晩秋という頃なのですが、なんとなく暖かいまま来ましたので、急にもの寂しさを感じます。そうですね。今週はブラームスにどっぷり浸りましょう…。

 

購入:不明、鑑賞:2023/11/12

 

10/28(土)土合から清水峠まで登った時の写真です。湯檜曽川の紅葉です。錦秋ですね。

ショスタコーヴィチの時代 ⑯

ショスタコーヴィチは、1931年に当時ソ連で有数のエンターテイナーであったレオニード・ウチョーソフと出合いました。その結果劇音楽として作曲されたのが「条件付の死者」になります。このCDには、マクベス夫人作曲の時代から、プラウダ批判の直後までの、ショスタコーヴィチ20代後半の充実していた時代の音楽が収められています。

【CDについて】

作曲:ショスタコーヴィチ

曲名:①劇音楽「条件付の死者」op31a (39:18)

   ②プーシキンの詩による4つの歌曲(弦楽合奏版) op46b (11:58)

     (第1曲~第3曲:ショスタコーヴィチ編、第4曲:マクバーニー編)

   ③5つの断章 op42 (10:25)

   ④ジャズ組曲第1番(1934) (9:14)

演奏:エルダー指揮 バーミンガム市交響楽団 D.ハリトーノフ(Bs)②

録音:1992年12月16-18日 バーミンガム Symphony Hall

CD:88001(レーベル:UNITED)

 

【曲と演奏について】

この4曲のうち、「4つの歌曲」以外は、「ムツェンスク郡のマクベス夫人」の頃からプラウダ批判前まで。そして、「4つの歌曲」がプラウダ批判直後になります。このCDは、このライナーノーツを書き、このCDの2曲の編曲者で、ショスタコーヴィチの研究や未完の曲のオーケストレーションなども手掛けている、マクバーニーの企画によるものではないかと思います。

 

まず、「条件付の死者」は、人気エンターテイナーであり、ソビエトにおけるジャズバンドやコミカルな舞台なども手掛けている、ウチョーソフとのコラボから生まれた作品のようです。内容はおかしな軍人の訓練に関するもののようですが、社会風刺のドタバタ劇で、軍人や聖人を扱っていることが、批評家から厳しく非難され、すぐに演奏されなくなったとのこと。スコアも台本も失われたものとされていましたが、ピアノスコアが一部残っているのが発見され、管弦楽相当部分をすべてマクバーニーが再オーケストレーションしたのがこのCDとのことです。

 

曲はその作曲目的の通りで、小編成のコミカルな曲が多く、聴いたことのある有名なメロディも登場します。ショスタコーヴィチは演奏されなくなってしまった曲を捨てるのではなく、ところどころ他作品に転用しているようです。ちょうど作曲中だった「ムツェンスク郡…」に使用された部分もあるとのこと。コミカルな曲とはいっても、この時代のショスタコーヴィチの曲なのでとてもパンチが聴いていて、刺激的でした。演奏は、あっさりしたものと感じましたが、この曲を知るには貴重な録音と思います。

 

次は、「プーシキンの詩による4つの歌曲」op46です。プラウダ批判後、自らや周囲に危険が及ぶのを避けるために、1936年後半は沈黙を守っていましたが、年末の新しい年に向かうタイミングでこの曲を作曲します。20代後半の華々しく技巧を凝らした音楽とは一転したものになりました。そこには深い人間の意思が存在します。そして、この曲の作曲時の意思や音楽を散りばめつつ、交響曲第5番op47が書き上げられることとなります。この曲の第1曲復活の歌詞はいかにも作曲家の決意を感じるところです。

(以下マクバーニーによる英訳を和訳したもの)

 

1.復活
眠そうな筆を持った野蛮な芸術家、
天才の絵を真っ黒にする。
そして彼の無法な絵
無意味に落書きする。

しかし、年月が経つにつれて、塗られたものは、
古い鱗のように剥がれ落ちます。
天才の創造物が我々の前に現れる
かつての美しさのまま。

こうして妄想は消え去っていく
疲れきった魂から、
そしてその中に湧き上がる
オリジナルの純粋な日々の夢想。

 

ショスタコーヴィチがプーシキンの詩から選んだものは、絵を音楽に置き換えれば、かなり意味深ですね。

 

この曲は、ピアノとバスの歌唱で演奏されますが、のちに、第1~3曲の自筆の弦楽合奏編曲スコアが発見されました。そして、マクバーニーが第4曲をオーケストレーションした、全4曲がここに収められています。20代のショスタコーヴィチの曲とはかなり肌触りが違う曲調を感じることができます。ここから30代以降のパワーアップした大作曲家ショスタコーヴィチがスタートします。

 

「5つの断章」は、交響曲第4番の直前の曲にあたります。20代ショスタコーヴィチの管弦楽曲の集大成となる交響曲第4番へのステップとして作曲されたいくつかの断章は、短いながらも当時のエッセンスの詰まった作品になっています。それぞれ異なったタイプの短い曲で構成されており、特に第3曲のラルゴは、身を切るように冷たい感じのする、秀逸な音楽です。当時の溢れる楽想を垣間見ることができました。

 

「ジャズ組曲第1番」は、ジャズと言ってもキャバレエのダンス的な明るい音楽です。こういったタイプの音楽は、いろいろな舞台音楽に埋め込まれていて、しっかり輝いているのもショスタコーヴィチの大きな特徴と思いますが、この時代は純音楽というよりも、映画にバレエに歌劇や舞台にと、劇場に入り浸っていたことが多いでしょうから、このタイプの曲は流石にうまいと思います。楽しい曲でした。

 

【録音】

小さめの音量だと思います。どちらかというとソリッドな感じでしょうか。素直な録音だと思いますが、オーケストラの音もあっさりしたものに聞こえます。

 

【まとめ】

このCDは、あまり聴く機会のない曲が3つ入っていて、とても興味深いものでした。最初の2曲は、ヴァージョン的にはワールドプレミアです。史料価値的にも高いものだと思いますが、大粛清時代の中での音楽を伝える貴重なCDだと思います。

 

購入:1994/01/16、鑑賞:2023/11/03(再聴)

買ったCDはちゃんと聴こうシリーズ ⑬

【CDについて】

作曲:ベートーヴェン

曲名:①ピアノ・ヴァイオリン・チェロと管弦楽のための協奏曲 ハ長調 op56 (34:35)

   ②七重奏曲 変ホ長調 op20 (39.23)

演奏:ブロンフマン(p)、シャハム(vn)、モルク(vc)

   ジンマン指揮 チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

録音:2004年10月20-21日①、2004年10月30-31日②、チューリッヒ Tonhalle

CD:82876 64015 2 

   (レーベル:ARTE NOVA、発売:SONY BMG MUSIC ENTERTAINMENT)

 

【曲について】

「ピアノ、ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏曲」は題名が長いので、一般に三重協奏曲と呼ばれています。この曲、昔々何かの本で、ベートーヴェンの「凡作」と書かれているのを見た記憶があります。その時あげられていたのは、この三重協奏曲と戦争交響曲でした。どうもその印象が強くて、今まであまりいい印象を持っていなかったのでした。

 

【演奏について】

三重協奏曲は、そもそも印象に残っていなかったので、もしかして初めて聴く?と思っていましたが、すでに2枚ほど、聴いたことのあるCDがありました。でもここは、改めで初めて聴くつもりで聴き始めます。最初は何かモヤモヤして始まります。そこから主部に入っていくと、簡潔な感じのわかりやすい曲だと思いました。このCDはジンマンの廉価レーベルCDですが、ジンマンは、このARTE NOVAにベートーヴェンの交響曲の全集も録音しています。とても明るくて歯切れのいい、キビキビした演奏という感じがしました。と思ったら、これもしかして、モダンオーケストラによるH.I.P演奏というものですかね。であれば、なかなか面白い試みです。

 

この曲は、チェロ主導で展開していくのですね。最初に主題を演奏するのも、常にチェロになっています。短い第二楽章はじっくり歌われて、美しい演奏です。第三楽章の主題も美しいメロディでした。3人のソロの掛け合いもなかなか面白くて、最後はしっかりと力強く終わりました。なかなか聴きやすくて、楽しめるCDだったと思いました。

 

次は七重奏曲です。弦楽器のソロの二人に加えて、トーンハレ管のメンバーによるものと思います。これもキビキビした演奏が楽しめます。ベートーヴェンのディヴェルティメント的作品で、作曲当時は大ヒットしたそうです。序奏が終わると、こ気味よい第一楽章が始まります。楽しく軽快な音楽です。第二楽章は、クラリネットの美しいメロディが聴きどころ。第三楽章はピアノソナタ第20番からの転用らしいですが、はっきりとメロディを覚えていないので、ビンときませんでした。第四楽章は変奏曲。いろいろな楽器を登場させて面白く展開していきます。そして、第五楽章はスケルツォになっていて、これはベートーヴェンらしい新しいところ。といっても大人しいスケルツォで、ホルンが活躍しています。最終楽章は序奏付きソナタで、軽快な音楽でした。

 

七重奏曲は、古典派のディヴェルティメントの発展形というところでしょうか。もちろんベートーヴェンらしく新しい工夫はあるのですが、どちらかといえば、気軽な名曲というイメージだと思います。キビキビした安定の楽しい演奏で、とても好感が持てました。

 

【録音について】

問題なく、よくまとまった、バランスのいい録音だと思います。

 

【まとめ】

三重協奏曲、改めて聴きましたが、なかなか楽しめる曲でした。チェロ主導のピアノ三重奏曲をオーケストラがサポートする形ですね。昔聴いたフリッチャイ版なども聴き返してみないといけないなと思いました。

 

購入:不明、鑑賞:2023/11/01

買ったCDはちゃんと聴こうシリーズ ⑫

【CDについて】

①作曲:ブラームス

 曲名:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op77 (42:06)

②作曲:ブルッフ

 曲名:ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調 op26 (23:48)

演奏:ヘルシャー(vn)、テンシュテット指揮 北ドイツ放送交響楽団①

   ワイル指揮 バンベルク交響楽団②
録音:1979年11月20-23日、ハンブルク Friedr. Ebert-Halle①

   1982年12月8-10日、バンベルク Kurturraum②
CD:TOCE-4104 (レーベル:EMI、発売:東芝EMI)

 

【曲について】

一般に3大ヴァイオリン協奏曲といえば、ベートーヴェンとメンデルスゾーンと、このブラームスのものを指すらしいですね。そして、ブラームスのこの曲の作曲動機は、ブラームスがブルッフのヴァイオリン協奏曲第2番を聴いたことらしいです。同時代の作曲家であり、お互いにいろいろ影響しあっているようです。

 

【演奏について】

 ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、機会あるごとにいろいろ聴いてはいましたが、これだ!というところまでは聴いていないと思います。今回もそんな一つの機会ということで、いつ買ったのか、未聴棚にあるこのCDが目についたので、手に取ってみました。お恥ずかしながら、ヘルシャーも未知のヴァイオリニストです。

 

さて、演奏はずっしりとしたオーケストラの序奏で始まります。そしてヘルシャーのヴァイオリンが入ってきますが、印象としては、繊細優美な音に聞こえました。このCDは音量を上げると高音が目立つのので、少し静かめに聴いた方が良さそうです。録音は演奏の印象に大きく影響しますので、頭の中で負のスパイラルに入ると鑑賞が台無しになってしまいます。曲は繊細かつゆったりしたテンポで進み、その中に時折感情の噴出も感じられます。第二楽章はとても美しいメロディが奏でられています。そして、第三楽章は活気のある演奏でした。全体としては、テンポは遅めでよく歌われていて、かつ節度が保たれている美しい演奏だったと思います。テンシュテットと北ドイツ放送響も、穏やかな好サポートです。

 

次は、ブルッフ。こちらは好んでよく聴いた曲で、曲調も変わり、オーケストラも美しい音を持つバンベルク響に変わって期待大です。まず、オーケストラのパワーが格段に上がった感じです。静かでロマンティックに入って、ヘルシャーの安定した美しい音が流れます。軽めの音色と思いますが、潤いがよく出ています。静かで透明感もあるブルッフというのは、今まであまり聴かなかった雰囲気ではあります。オーケストラはニュアンスやキレは多少物足りないところも感じますが、美しく厚みのある音がよく出ていました。ブルッフのこの曲は、絡みつく濃厚なイメージがあったのですが、ちょっと爽やかなブルッフもなかなかいいものだと思いました。

 

【録音について】

あまり良くないと思います。特にブラームスは、音量を上げると、ソリッドで厚みがない音に聞こえてしまいました。

 

【まとめ】

私はどうもブラームスというと交響曲第1番の印象が強く、重厚なイメージがあって、それがドイツ的でもあるみたいなイメージがあったのですが、そういう先入観でこの演奏を聴くと、ちょっとあてが外れた感じになりました。美しく繊細で節度を保った表現の中から出てくる楽興。このCDはそういったことを気づかせてくれるものだったと思いました。

 

購入:不明、鑑賞:2023/10/24

最近リリースされた新譜から ⑬

今回の新譜は、グリモーの新譜で、For Claraと題されたCDです。シューマンとブラームスの作品が収められており、クララ・シューマンに対する二人の関係を表す作品を集めたものとなっています。グリモーが追い続けてきた音楽を、最新の録音を楽しみたいと思います。

【CDについて】

作曲:シューマン

曲名:クライスレリアーナ op16 (35:34)①
作曲:ブラームス

曲名:3つの間奏曲 op117 (16:28)②

   歌と歌曲(プラーテンとダウマーによる) op32 (21:15)③

演奏:グリモー(p)、クリンメル(Br)

録音:2022年6月、ポリング Kloster Polling, Bibliothekssaal ①

   2022年8月、ベルリン Turbinenhalle am Stienitzsee ③

   2023年3月、ハノーヴァー Tonstudio Tessmar ②

CD:486 4202 (レーベル:DG)

 

【曲と演奏について】

シューマンとブラームスは、クララとの関係から数々の名曲を作曲しています。クライスレリアーナは、二人の恋がクララの父から妨害されている時期のシューマンがクララに想いを込めて作曲した曲の一つで、ホフマンの音楽評論集から霊感を得て作曲されたということです。

 

このCDはまずクライスレリアーナから始まります。グリモーの演奏は主旋律と共に、裏の旋律や装飾音まで、すべてが輝かしく、よく目立つ演奏で、大変ゴージャスに聞こえます。ニュアンスもかなり強くつけられていると思いました。この曲はアルゲリッチの演奏で聴きなれているのですが、それとは異なる演奏スタイルで、目新しく感じました。この演奏では、いろいろな場面で、それぞれに表情がつけられていると思うので、部分によって印象が全く違う感じがします。残響も多くとって、思い入れたっぷりに弾かれていると思います。雄弁に音を響かせ、力強く迫力があり、音が横に広がってその場を満たすという感じの演奏だと思いました。

 

3つの間奏曲は、ブラームス晩年の名曲。シンプルな中にブラームス晩年の夢想的な楽想が詰まった曲です。クララはこの曲の存在を知り、ブラームスに手紙を書いって送ってもらったということです。第1曲は、もちろん静かに始まります。ニュアンスはよくつけられ、重めの雰囲気を醸し出しています。第2曲は、美しく哀愁を帯びた音が流れてきます。第3番は陰影を持った演奏で、静かに進んでいきます。グリモーの演奏はこの曲の雰囲気をよく描き出した、抑制的で美しい演奏と思いました。

 

最後に収められているのは、歌と歌曲と題されたブラームスの9曲からなる歌曲集。プラーテンとダウマーの詩による歌曲集で、初めて聴く曲集ですが、恋の歌が多いのですが、かなり力強い印象を受けました。一つ一つ聴くと、決してそういうことではないと思いますが、全体的そういった印象を受けたのは、きっと二人とも(特にグリモー)パワーがあって、雄弁な演奏をしているのかなと思います。前半は強めの歌が多く、後半は恋や失恋と諦観などが多く歌われていた気がします。

 

クライスレリアーナ第3曲の演奏

 

9つの歌と歌曲 op32 - 第1曲: 夜なかにはね起きて

 

グリモーにとって、シューマンやブラームス、そしてクララを巡るこれらの音楽は、ライフワークとも言える位置づけだと思います。現時点のグリモーのシューマンとブラームスの演奏が存分に楽しめるCDではないでしょうか。

 

購入:2023/10/14、鑑賞:2023/11/07

【CDについて】

作曲:モーツァルト

曲名:幻想曲ニ短調 K397 (6:24)

   ピアノ・ソナタ第5番ト長調 K283 (17:08)

   ピアノ・ソナタ第11番イ長調 K331 (24:42)

演奏:ポゴレリッチ(p)

録音:1992年6月 ハンブルク Friedrich-Ebert-Halle

CD:437 763-2(レーベル:DG)

 

【曲について】

トルコ行進曲が有名なK331のソナタ。その成立については、未だ不明とのこと。このソナタは、ソナタの楽章がありません。第一楽章はいきなり変奏曲。そして第2楽章がメヌエットで、第三楽章のトルコ行進曲はロンドとなっています。ソナタとは何ぞやということで、この時代では珍しいものだったということです。こういった型破りな所から名曲は生まれてくるものなのですね。

 

【演奏について】

鬼才と言われたポゴレリッチのCDを聴くのも久しぶりです。かつて、アルゲリッチがポゴレリッチの落選に抗議して審査員を降りたという事件がありましたが、あれからもう43年。ポゴレリッチも既に65歳を迎えました。センセーショナルなデビューでもあり、奇抜な演奏というイメージで聴いていた時代もありますが、今や多様な演奏スタイルが受け入れられる時代になって、改めて聴くポゴレリッチはどんな感じでしょうか。

 

幻想曲といえば、いろいろなスタイルで表現できると思うので、ポゴレリッチの演奏を妙に期待してしまいましたが、そういう先入観で聴くと、わりとノーマルに聞こえるものです。とても美しく輝く音で、情感を込めて演奏されています。実はこの曲はK284や、K311が続くことを想定して書かれているということらしいですが、ここに入っているのはK283とK331。う~む…微妙にずれているのですね(笑)。

 

さて、K 283です。「デュルニッツ・ソナタ」と呼ばれる第1番~第6番のソナタの中の一曲になります。K284ではないのですが、続けて聴くとなんとなく幻想曲がいい前奏曲になっているような気がします。ポゴレリッチのピアノはキラキラと輝かしくて、とてもいい感じです。今になって聴くと奇抜なイメージではなく、普通に聴けてしまうのが不思議なところ。ポゴレリッチの大胆なニュアンス付けによって、モーツァルトの純粋な音楽が、ロマン派の音楽のように豊かな感興をもって入ってくるところは、素晴らしい表現だと思いました。

 

さて、メインのK 331です。ここでも可憐なニュアンスと音で始まります。軽く明るい音で、とても繊細に聴かせる音楽です。変奏曲、メヌエット、ロンドという構成で、ソナタのないソナタなのですが、実はK283はすべての楽章がソナタ形式という曲なので、このあたり意図的な組み合わせなのでしょうか。変奏曲はこれだけ独立しても完結するといった感じの立派な音楽ですし、次のメヌエットはポゴレリッチによって、大きな構えで演奏されています。そして最後の流れるようなトルコマーチと、この演奏は一つ一つの楽章の性格を、それぞれ独立した音楽として弾き分けて、立派に作り上げたような感じがしました。なかなか工夫を凝らしたCDだと思いました。

 

【録音について】

ピアノの輝かしい音がそのまま表現された、素晴らしい録音です。

 

【まとめ】

今や、ピアノも管弦楽も、表現は何でもありの時代なので、ポゴレリッチを聴いても随分おとなしく聞こえるのですが、そういった鬼才という表現以上に、考え抜かれて構成され、演奏されていると思いました。やはりただ者では無いと思いました。

 

購入:不明、鑑賞:2023/11/02

いままで記事にしていなかった交響曲名曲5選 ③

3回目は、フランクの交響曲ニ短調です。前回のサン=サーンスのオルガン交響曲と同時期の作品で、循環形式をとることで、感触もかなり似た曲と思います。解りやすいメロディと循環形式ということで、何かと耳に残る曲でもあり、何か低音の魅力のようなものを感じる曲でもあります。

【CDについて】

作曲:フランク

曲名:交響曲ニ短調 (37:35)

演奏:バルビローリ指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1962年3月23-25日 プラハ 芸術家の家

CD:COCO-70502

   (レーベル:Supraphon、発売:コロムビアミュージックエンタテインメント)

 

【曲について】

フランクは、フランスで活躍した作曲家ですが、ドイツ系の血を引いてのベルギー生まれで、ベートーヴェンをはじめドイツの音楽からの影響が色濃い作曲家です。この作品は最晩年の作品で、当時はサン=サーンスの「オルガン交響曲」や、ダンディの「フランスの山人の歌による交響曲」といった作品が相次いで発表されたのを受け、フランクも交響曲の作曲を開始しました。この作品の成立は「オルガン交響曲」の2年後のことで、循環形式をとる交響曲の代表的な作品とされています。

 

【演奏について】

この曲も一時期よく聴いていました。メロディがとにかく纏わりつくように耳に残る曲という印象が残っています。誰の演奏で一番よく聴いていたかははっきりと覚えていませんが、回数で言うと、小沢さんのDG版かなぁ…というのが、なんとなくの感触。今回は、ドイツ音楽を指揮しても、がっちりとした印象を残してくれるバルビローリ指揮のもので聴いてみました。この曲は、フランス音楽でありながらも、どちらかというとドイツ系の音楽というイメージがあります。

 

冒頭の序奏部。じわじわと、ゆっくり始まります。かなり、おどろおどろしい感じがするくらいです。最も、それがこの曲の魅力なのかもしれません。そして主題へと盛り上がっていくと、キレのいい演奏に変わっていきました。そして、再び元の基調に戻っていきます。このチェコ・フィルの演奏による渋く重い音は、当時の中欧の音なのだろうかと思いを馳せます。何となく雲が垂れ込めた、暗い街並みをイメージしてしまいます。そして、展開しながらテンポも変化していきます。緩急も起伏も大きい演奏で、熱気も感じさせるドイツ系の重厚な演奏だと思います。

 

第二楽章も、フレーズがよく歌われていて素晴らしい音楽になっていますし、第三楽章も、起伏の大きな演奏で聴かせてくれます。そして、循環形式の妙で、今までのメロディが戻ってきて進行していきます。この曲の基調にある、蠢くような低音の弦の音にメロディが乗っていく、重く沈んだイメージが繰り返されることになります。さて、弦の音と繰り返される主題のバランスですが、このCDはどうも、録音のバランスのせいか、個々のパートと全体のバランスが不自然に感じるところがなんとなく違和感がありました。全体的に熱気のある振幅の大きい演奏で、この曲の面白さを十分堪能できるものでした。

 

【録音について】

ちょっと、古さを感じる音で、弦の高音がキツかったり、パート間のバランスが今ひとつな気がしました。従って、輪郭がはっきりせず、音にまとまりがなく感じたり、厚みが今ひとつ表現できてなかったりという部分があるような気がします。

 

【まとめ】

なかなか強い印象を残す曲なので、時々思い出したように聴きたくなる曲です。フランスとドイツの交わる曲ですので、いろいろな表現があって、いろいろ聴き比べてみる楽しみもある曲だと思います。

 

購入:不明、鑑賞:2023/11/01(再聴)

【CDについて】

作曲:ベートーヴェン

曲名:①交響曲第1番ハ長調 op21 (26:26)

   ②交響曲第2番ニ長調 op36 (35:50)

   ③バレエ「プロメテウスの創造物」 op43 序曲 (5:15)

   ④劇音楽「アテネの廃墟」 op113 序曲 (5:08)

演奏:ヨッフム指揮 バイエルン放送交響楽団①③④

   ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団②
録音:1959年4月3,5日①、1958年10月3日③④ ミュンヘン ヘルクレスザール

   1958年1月27,28,31日 ベルリン イエス・キリスト教会②
CD:UCCG-3990 (レーベル:DG、発売:ユニバーサル・ミュージック)

 

【曲について】

交響曲第1番についてですが、昔の「第一家庭電器」のコマーシャルで、オーケストラが演奏を始め、第5番「運命」の演奏が始まったところ、指揮者が演奏を停め「第5じゃない、第1です」と言って、第1番の演奏が開始されるというものがあったことを思い出しました。この短いフレーズで、第1番が記憶に残っているような気がします(笑)。ちなみに、この指揮者は手塚幸紀さんだったそうです。

 

【演奏について】

このCDは、ヨッフムのDGへの最初のベートーヴェン全集からのもので、この全集はモノラル・ステレオが混在し、またオーケストラもバイエルン放送響と、ベルリンフィルの二つで録音されています。そんなCD、このジャケットに惹かれてしまいました!ヨッフムが人形を持って微笑んでいるという、なにやら怖い?写真になっています…(笑)。

 

さて、第一楽章の序奏部、ゆっくり始まります。ゆっくりというより、思いっきり引っ張っている感じもします。主部に入ってもすぐに速くなりませんが、徐々に普通のテンポになっていくところは、たいへん心憎い演出でした。普通のテンポとなれば、とてもメリハリが効いたダイナミックな演奏になりました。細かいニュアンスで、キレもいいしノリもいいテンポの演奏。これは期待以上に素晴らしい演奏だと思いました。第二楽章、第三楽章はどちらかといえば、一定のテンポを確実に刻んでいく感じが武骨な所も感じます。第四楽章の入り方も第一楽章と同様でした。そして快調なテンポへと移って進んでいきます。全体に細部まできっちりと明確に表現され、構築感もある演奏でした。

 

第2番も同様のスタイルだと思います。最初はじっくり貯めて、徐々に走り出していく感じです。そして、トップスピードに入っていく感じがとてもいいです。そうなると、颯爽とした感じで進み、輪郭もとてもはっきりしています。第二楽章は過度なアゴーギクは慎みながらも、充分にメロディを聴かせる演奏でした。第三楽章、第四楽章も同様に、明確なテンポを刻みながらのクリアでガッチリした演奏が続いています。古典派のベートーヴェンの交響曲の演奏。これは理想的な演奏ではないかと思いました。

 

改めて、何度か聴くたびに、この演奏は素晴らしい演奏だと思います。カラヤン・ベームの影に隠れてしまったのが不思議です。特に第1番はこの曲がとても面白い曲だという事が判りました。これは、ちょっと推してみたい演奏ですね。

 

【録音について】

第2番の方は、若干高音がキツく感じましたが、細かか部分までよく聞こえるいい録音だと思あいます。この時期の録音の感触は好きです。

 

【まとめ】

ヨッフムはそれほど多く聴いてこなかったのですが、改めてこの明確な構築感と、切れのいいリズムは素晴らしいと思いました。何か良さげなものを見つけたら、これから積極的に聴いてみたいです。

 

購入:2023/10/02、鑑賞:2023/10/19

ショスタコーヴィチの時代 ⑮

ショスタコーヴィチの作品30は、「黄金の丘」という映画音楽になります。ショスタコーヴィチはたくさん映画音楽を作曲していますが、このCDは、その「黄金の丘」を含む映画音楽集のCDです。こういった音楽を映画を知らないで聴くのも全体像が判らず、本当のところを理解するには今ひとつかもしれませんが、ここでは、ショスタコーヴィチの音楽の一端に触れてみたいと思います。

【CDについて】

作曲:ショスタコーヴィチ

曲名:組曲「ミチューリン」op78a (30:22)

   組曲「ベルリン陥落」op82a (23:44)

   組曲「黄金の丘」op30a* (11:47)

演奏:セレブリエール指揮 ベルギー放送交響楽団、合唱団

   ゴウェンビオフスキ(org)*

録音:1990年頃

CD:60226-2-RC(レーベル:RCA、販売:BMG Music)

 

【曲と演奏について】

このCDのは、三つの映画からの音楽が組曲として収められています。「黄金の丘」が1931年の作品で、他の2つは後年の1949年の作品になります。これは、久しぶりに取り出すCDです。さて、どんな音楽だったかな…?という感じでした。

 

組曲「ミチューリン」op78a

「ミチューリン」は、1949年の映画で、ロシアの偉人の生涯を描いた伝記映画。モデルとなった、イヴァン・ヴラジーミロヴィッチ・ミチューリンは、ロシアの生物学者・農学者で、果樹の品種改良を科学的に行なった人物です。ロシア革命後政府に認められ、ロシアの気候風土に適した300種以上の品種を作り出したということです。この映画では、その英雄的な生涯を描き出しています。

 

こういった、農学者の伝記映画といったものなので、音楽はどちらかと言えば穏やかな雰囲気となっています。映画では合唱で演奏される部分もあるようですが、組曲は管弦楽が主体で、フィナーレのみ合唱が入ります。一部には、ショスタコーヴィチの交響曲を思わせるようなところもないではないですが、全体的に牧歌的な基調。明るくシンプルな楽しい曲が続きました。そして、華々しい合唱付きのはフィナーレで曲を閉じました。映画音楽をたくさん手掛けたショスタコーヴィチの職人的作品という感じでした。

 

組曲「ベルリン陥落」op82a

スターリンが神格化された1949年の映画で、スターリンがナチス・ドイツを破った最大の功労者として描かれている作品です。この映画は、スターリン批判以降はソ連国内でも上映されることがほとんどなくなったようです。

アリョーシャは、優秀な工場労働者でレーニン勲章を授与されることになり、アリョーシャを讃える演説を担当した教諭のナターシャと惹かれあいます。ところが独ソ戦が勃発し、ナターシャがドイツに連れ去られると、アリョーシャは赤軍に参加。ナターシャを取り戻すため戦います。スターリングラード攻防戦を経て、ベルリンに進撃。スターリンは英米よりも先にベルリンを制圧するように指示。総攻撃の前にヒトラーも自殺し、アリョーシャの部隊は国会議事堂に突入、勝利を宣言します。ベルリンに現れたスターリンは大歓迎を受け、そこで再会したアリョーシャとナターシャはスターリンの前に進み出て、スターリンの栄光を称えるのでした。
 

音楽の方は、大河ドラマが始まるぞといった感じの合唱付き序曲で開始されました。そして、静かな川辺の音楽の後は、攻撃シーン。ここは短いですが、交響曲の一部のような雰囲気があります。再び静かでシンプルな曲の後、攻撃シーンが再開されます。そして、破壊された村の情景。暗い基調の弦楽で始まり、ゆっくりと盛り上がっていきます。地下鉄でのチェイス。ここでも交響曲のスケルツォに出てきそうな音楽が現れます。そして序曲と同様の華々しい合唱で曲を閉じます。

戦争を描いた作品なので、ショスタコーヴィチの得意分野かと思いますが、そこは映画音楽ということで、モチーフこそ他の交響曲のような雰囲気はあるものの、交響曲で見るような深刻な重苦しさまでは描いていないように思いました。あまり深刻に描くと、スターリン神格化の趣旨を損いかねないですね…。

 

組曲「黄金の丘」op30a
これは、1931年の映画で、作曲時期は「ムツェンスク郡のマクベス夫人」と同時期にあたります。レニングラードの工場での反戦ストライキを描いたプロレタリア映画です。貧しい村から出てきた若者が、ボリシェヴィキによるストライキのただ中にある冶金工場に代替労働者として雇われ、実業家の息子が、世間知らずのこの若者を巻き込んでストライキの首謀者を殺害しようと企てますが…というお話。

 

このCDは組曲6曲中4曲が演奏された形になっています。作曲のタイミングは、ショスタコーヴィチが次々と斬新な作品を生み出していた時期。映画音楽においても先鋭さは変わりませんでした。この感触は、このCDの他の2曲とは一線を画すものがありました。創作のパワーが違います。冒頭は、チャイコフスキーの4番のファンファーレに似た開始で、その後鋭い音楽を展開します。2曲目は、オルガン独奏に管弦楽が絡むフーガで、大変独創的なものでした。このCD全体を通してもいちばんの聴きどころでした。そして、葬送行進曲、フィナーレと続きます。諧謔的でもあり、最後はこの時代の先鋭的なショスタコーヴィチの流儀で力強く締められました。

 

3曲を通して聴いてみると、1930年前後のショスタコーヴィチが、いかに充実した活動を展開していたかが、わかる様な気がしました。

 

【録音】

優秀な録音だと思います。

 

【まとめ】

今回は、映画音楽3曲というCDでした。「黄金の丘」に見る、プラウダ批判前夜の勢いのある作品は、この時期のショスタコーヴィチを象徴するものと思います。まだまだ1930年代の作品が続きます。

 

購入:1993/10/24、鑑賞:2023/11/01(再聴)

【CDについて】

①作曲:チャイコフスキー

 曲名:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 op23 (33:23)

②作曲:リスト

 曲名:ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178 (28:55)

演奏:サイ(p) テミルカーノフ指揮 サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団①
録音:2001年2月、サンクトペテルブルク St. Petersburg Philhermonia①

   2001年4月、ベルリン Teldec Studio②
CD:8573-87009-2 (レーベル:Teldec)

 

【曲について】

リストのロ短調ソナタは、お返しという意味もあって、シューマンに献呈されました。単一楽章のソナタで、主題の変容によって大きく振れながら展開していきますが、明確に切れ目がない中で、その構造については多様な解釈が可能になっているようです。当初は賛否両論で迎えられた画期的な曲でしたが、時を経てピアニストにとっては定番の曲として定着していきました。

 

【演奏について】

 ファジル・サイについては、最近のコパチンスカヤの伴奏で聴いたのを除けば、あの「春の祭典」以来、私の中では時間が止まった状態です。ピアノ協奏曲や、ピアノ独奏曲として書かれた曲の演奏については、まだまだ私は未知数なので、期待して聴き始めました。

 

チャイコフスキーのピアノ協奏曲。オーケストラがゆっくり始まります。そしてサイのピアノが入っていきますが、ちょっと印象がいつもと違います。細かなニュアンスも含めて、和音の弾き方とかも工夫されている感じがしました。そして、音色がいろいろ聴こえてくるのは、音によって細かく弾き分けているのでしょうか。多彩な感じがして、なるほど「春の祭典」もいろいろと音色を組み合わせていたのかな?と思ったりしました。第二楽章もゆっくりしたテンポで細かいところまで聴かせてくれました。第三楽章も、テンポや音に細かくニュアンスがつけられて、聴かせる演奏になっています。過度な動きは協奏曲なので限界があると思いますので、ロ短調ソナタの方が楽しみになってきました。

 

ロ短調ソナタは、いつも聴いている感じとすごく違って聴こえます。いろいろと展開していく曲ですが、それぞれに大きくニュアンスがつけられていました。なるほど、ファジル・サイはこういったピアノを弾くのですね…と納得した次第。静かな音から大きな音までの振幅もかなり大きく、テンポもかなり動かされています。こういった表情を大きくつけたタイプの演奏をするピアニストの名前が何人か思い浮かびましたが、実際はそのどれとも違う個性がありました。一度演奏会で聴いてみたいですね…。

 

【録音について】

ピアノの音は、幅広く捉えられていてとても良かったと思います。オーケストラの音もまずまずだと思いました。

 

【まとめ】

まだ、このCDを聴いただけなので、ファジル・サイの全貌を知った訳ではないのですが、またいろいろと聴いてみたいと思う演奏でした。演奏スタイルも今や自由になっていますので、表現方法で強い個性を発揮するピアニストが増えたなと思いました。

 

購入:2023/10/02、鑑賞:2023/10/16