尾崎真理子の「大江健三郎前小説全解説」が届いた! | とんとん・にっき

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尾崎真理子の「大江健三郎前小説全解説」(講談社:2020年9月15日第1刷発行)が届きました。
 
購入の直接のきっかけは、11月14日の、朝日新聞読書欄のいとうせいこうの記事です。副題は「作品の真ん前で考え、深い納得へ」とあります。すぐにアマゾンに注文し、次の日、届きました。「年譜」や「文献一覧」、「索引」を入れると、500ページを超す大作です。
 
いとうせいこうの記事のちょうど裏側には、紀伊國屋書店全店調べの「週間ベスト10」が載っていました。なんと第1位は高樹のぶ子の「NHK100分de名著 2020年11月」でした。そうです、「伊勢物語」ですね。「NHK100分de名著」、売れてますね。高樹のぶ子の「小説伊勢物語 業平」は、450ページもある分厚い本ですが、売れ行き好調だそうです。「小説伊勢物語 業平」、もちろん僕も買って持っています。
 
僕はそれを読む前に、ということで、日経プレミアシリーズの「在原業平 恋の誠」を読みました。これ、わかりやすい。わかりやすいといえば、NHKテキストの100分de名著の「伊勢物語」を毎週録画して、テレビで見ています。伊集院光のハラハラドキドキのコメントが面白い。
 
話は元に戻して、尾崎真理子とは、元読売新聞の記者です。今は早稲田大学教授のようですが…。尾崎の対抗は、朝日新聞記者の吉村千彰ですね。僕は、もう何十年も朝日しかとっていないので、読売新聞のことは詳しくないのですが…。尾崎は、なにしろ大江健三郎の信頼を一手に引き受けている人です。僕は、6年前に文庫本で「大江健三郎 作家自身を語る」(2013年12月1日発行)を読みました。もともとは2007年5月に新潮社より単行本として刊行されたものの聞き手・構成として関わり、それを増補・改訂したものです。単行本の刊行から6年半の間に、「美しいアナベル・リイ」「水死」「晩年様式集」がその間に完成し、文庫化に際して長いインタビューと、第7章が追加されました。
 
尾崎真理子の「大江健三郎全小説全解説」、届いたばかりで、もちろんまだ読んでいませんが、この本は、ノーベル文学賞受賞者でもある大江健三郎が「1957年に22歳でデビューして以来の、約60年間に書かれた小説―長編30作、中・短編66作をすべて解説した一冊です。「全小説全解説」というところが凄い、誰でも真似できることではありません。いずれにせよ、読むのが楽しみです。
 
尾崎は言う。「これまで難解だと言われ続けてきた大江小説は、やはり易しくはない。けれども、難しさには理由があるし、ここを知っておけばうんと面白くなる、理解が深まるというポイントが数多く存在し、大勢の批評家、研究者が懸命に掘り進めてきた成果もすでにある。本書では、梗概(あらすじ)をほぼすべての作品について結末まで書き、登場人物や状況設定、創作当時の時代背景、作者が置かれていた環境等々、読解の手がかりをできる限り盛り込んで、入り口を広げている」。
 
本書の初出は、2018年7月から翌19年9月にかけて講談社から刊行された「大江健三郎全小説」全15巻の各館に寄せた解説だという。もちろん、ぼくも全巻持っています。
 
 
「大江健三郎」等身大
講談社の講演会
 
朝日新聞:2020年11月14日
 
いとうせいこうは、「ファンであるからには、語られる作品はすべて私も大学時代から読んできたのだが、それでも40年はゆうに過ぎているから今取り上げられて新鮮に感じる初期作も多く、さらに中期、後期と網羅される著者尾崎真理子の解説はどれも新しい大江像を提示する」。
 
尾崎真理子は「大江健三郎の全小説が眼前に存在するという、今までの評者にはない画期的な条件がある。おそらくもはや新作は書かれないという前提ですべてを振り返って見通すことが出来るからこそ、各作品の付置を最もあり得べき方向で解説出来る」。そして、「この奇跡的な「全小説全解説」をパラレルワールドで大江健三郎が書いた一冊のように感じる」と、いとうせいこうは言う。
 
「大江健三郎 作家自身を語る」
平成25年12月1日発行
新潮文庫
著者:大江健三郎
聞き手・構成:尾崎真理子
発行所:新潮社

 

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