「大江健三郎 作家自身を語る」を読んだ! | とんとん・にっき

「大江健三郎 作家自身を語る」を読んだ!

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家では長年朝日新聞をとっているので、どうして読売新聞の記事が切り抜いてとってあるのか、思い出せません。記事のタイトルは「大江健三郎さん新作『晩年様式集』 今後、日本人が担う『忍耐』 震災、原発事故・・・細部まで濃く」とある、2013年11月8日の記事です。「編集委員 尾崎真理子」の署名記事です。いま、ネットで検索したら、その記事が出てきました。

http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20131105-OYT8T00414.htm


大江健三郎の「晩年様式集」については朝日新聞も、書評欄では佐々木敦(批評家・早稲田大学教授)が2013年11月24日に、文化欄では編集委員の吉村千彰が2013年11月5日に取り上げていて、その切り抜きもあります。いずれも「晩年様式集」について丁寧に解説してはいますが、僕はなぜか 読売の尾崎真理子の記事がよく書けているように思いました。そこで初めて尾崎真理子の名を知った、というわけです。


尾崎の名前で検索してみると、「大江健三郎 作家自身を語る」という文庫本が見つかり、その本の「聞き手・構成」として尾崎真理子がありました。その本のカバー裏に短く以下のようにありました。尾崎真理子:1959年宮崎県生まれ。読売新聞編集委員。著者に「現代日本の小説」「瀬戸内寂聴に聴く 寂聴文学史」ほか。


「大江健三郎 作家自身を語る」(新潮文庫:平成25年12月1日発行)を読みました。本書は2007年5月、新潮社より刊行された「大江健三郎 作家自身を語る」を増補・改訂したものです、と書かれていました。単行本の刊行から6年半、「美しいアナベル・リイ」「水死」「晩年様式集」、3つの長篇小説がその間に完成し、文庫化に際して再び大江健三郎への長いインタビューが実現し、それまでの6章に加えて7章を加えたものになった、というわけです。


もともとの単行本の刊行について尾崎は、以下のように語ります。読売新聞文化部の担当記者として15年、何十回も大江に接してきた尾崎は、作家・大江健三郎とは魅力的な語り手である。世田谷区成城の大江の家を訪れ、居間のソファーに腰を下ろすと、たちまち会話に引き込まれ、別の時間が流れはじめた、という。そしてある時から、同時代に数多くのこの作家と作品についての批評が著され続けているし、すぐれた作家がすぐれた批評家であるのは当然でもあるけど、これほどまでに的確で痛烈で執拗な、「大江健三郎」に対する批評家は作家自身しかいない―そう確信するに至った。何とかして大江の語りを丸ごと記録しておきたいと思うようになったという。


僕は、下に載せた「読む人間」や「『話して考える』と『書いて考える』」などを読んでいたので、おおよそ大江の考えてきたことは知ってはいますが、これほど執拗に詳細に自分自身を語る大江には驚きました。それはもちろん、尾崎の聞き出し方が巧妙で周到だからにほかなりません。大江の作品を初期の作品から現在まで、信じられないくらいよく読みこなしています。そして大江の作品のもとになっている「翻訳詩」についても、よく知っています。


尾崎は以下のように述べています。

私の方で小説の本文からの引用を質問の中に埋め込んでいったのは、50年間にわたって幾度となく変貌を遂げた文章の、その時どきの切実な美しさをもう一度、思い出してもらう、あるいは若い読者に発見してもらう手がかりにしたいと考えたからだった。



この本のカバーに、この本の内容について以下のようにあります。

なぜ大江作品には翻訳詩が重要な役割を果たすのでしょう? 女性が主人公の未発表探偵小説は現存するのですか? 世紀を越え、つねに時代の先頭に立つ小説家が、創作秘話、東日本大震災と原発事故、同時代作家との友情と確執など、正確な聞き取りに定評のあるジャーナリストに1年をかけ語り尽くした、対話による「自伝」。最新小説「晩年様式集(イン・レイト・スタイル)」を巡るロング・インタビューを増補。


大江健三郎:略歴

1935(昭和10)年、愛媛県生まれ。東京大学仏文科卒業。在学中に「奇妙な仕事」で注目され、58年「飼育」で芥川賞受賞。以後、常に現代文学の最先端に位置して作品を発表する。94(平成6)年、ノーベル文学賞受賞。


大江健三郎 作家自身を語る 目次

第1章 詩

     初めての小説作品

     卒業論文

第2章 「奇妙な仕事」

     初期短編

     「叫び声」

     「ヒロシマ・ノート」

     「個人的な体験」

第3章 「万延元年のフットボール」

     「みずから我が涙をぬぐいたまう日」

     「洪水はわが魂に及び」

     「同時代ゲーム」

     「M/Tと森のフシギの物語」

第4章 「『雨の木』を聴く女たち」

     「人生の親戚」

     「静かな生活」

     「治療塔」

     「新しい人よ眼ざめよ」

第5章 「懐かしい年への手紙」

     「燃えあがる緑の木」三部作

     「宙返り」

第6章 「おかしな二人組」三部作

     「二百年の子供」

第7章 「美しいアナベル・リイ」

     「水死」

     「晩年様式集」

大江健三郎、106の質問に立ち向かう+α

あとがき

文庫本のためのあとがき


ooe4 「読む人間」

集英社文庫

2011年9月25日第1刷

著者:大江健三郎

発行所:株式会社集英社
ooe3 「『話して考える』と『書いて考える』」

集英社文庫

2007年6月30日第1刷

著者:大江健三郎

発行所:株式会社集英社






teigi 「定義集」

2012年7月30日第1刷発行
著者:大江健三郎

発行所:朝日新聞出版











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大江健三郎について