山種美術館で「日本画の教科書 東京編―大観、春草から土牛、魁夷へ―」を観た! | とんとん・にっき

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山種美術館で「日本画の教科書 東京編―大観、春草から土牛、魁夷へ―」を、前回の「日本画の教科書 京都編」に引き続き、観てきました。


山種美術館顧問の山下裕二は、山種美術館のコレクションは、近代日本画に関してはもっとも「蔵が深い」コレクションだという。「蔵が深い」とは、美術史家、古美術の専門家たちが、コレクションを評して使う業界用語だと山下はいう。さて、「日本画の教科書」も「京都編」に続いて「東京編」です。展示されているこれらの作品はすべて、自前のコレクションだというから、驚きです。今回の展覧会、筆頭に展示されているのは松岡映丘の「春光春衣」です。


今展のみどころ

(山種美術館ホームページによる)


1. 東京画壇の代表的な日本画家の作品が一堂に!

横山大観、菱田春草、川合玉堂、東山魁夷など近代日本画壇を牽引した画家たちの名品を多数紹介。
50周年ならではの選りすぐりの豪華ラインナップをお楽しみください。

2. 切手や教科書などでもおなじみの作品が勢ぞろい!
切手になった前田青邨《腑分》や教科書に掲載された小堀鞆音《那須宗隆射扇図》、
松岡映丘《春光春衣》、安田靫彦《出陣の舞》、東山魁夷《年暮る》など、各作家の代表作といえる
珠玉の作品約50点を取り揃え、展示します。

3. 創立者・山崎種二と画家たちとの深い交流を通して形成されたコレクション
種二は戦前・戦後を通して日本画家たちを支援。直接交流しながら作品を蒐集したことによる
画家とコレクターの知られざるエピソードもご紹介します。


ここでは下の三作品だけ、「解説」を載せておきます。
(「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」より)


下村観山「老松白藤」

六曲一双の金屏風の中心に見事な枝振りの老松が堂々と画面いっぱいに描かれている。そして絡みつく藤の枝と上から垂れ下がっている藤の大房が、この上下が切れて見えない松全体の大きさを想像させる。華やかさと迫力のある、琳派を意識した装飾的な画面となっている。観山は「自然をすっかり頭に入れて自由に描く」ほうが「精神がこもる」と述べており、本作も対象を見つめ租借したのちに緻密さと大胆さを織り交ぜながら描いている。明治神宮の依頼により、伏見宮家のために描かれたと伝えられる。


落合朗風「エバ」
「旧約聖書」「創世記」を主題とする。左隻にはエデンの園で蛇に唆され禁断の実に手を伸ばすエバと美しく咲く罌粟や百合。右隻には画面を覆う無花果の葉とその背後に二羽のホロホロ鳥。しかし、禁断の実は桃を、エバの姿はインド女性を思わせる点は奇妙ともいえる。キリスト教信者の父をもち、藤田嗣治らフランスをよく知る洋画家とも親しかった朗風らしく、宗教的画題をフォービスムのごとき色彩、ルソーやゴーギャンを想 起させるユニークな構図で仕上げている。二年前、文展で脚光を浴びたのちの、初の院展出品作であるが、本図は発表と同時に賛否両論をよんでいる。酷評が渦巻くなか、鏑木清方は、「可なり問題のある画」としながらも、「一番努力した作」、「充実した力」と高い評価を与えている。


奥田元宋「奥入瀬(秋)」

古希を過ぎた元宋は、大作に取り組むのは八十歳までが限度と考え、一年に一点大作を制作しようと決意する。まずは本図を三ヶ月かけて描き上げ、その四年後にはほぼ同寸の「奥入瀬(春)」(個人蔵)を完成させた。秋では左から右へと流れていた渓流は、春では逆向きとなり、この二図が対照的な構図となることを意図したという。元宋は、四季折々の中でも「自然の霊気を最も強く感じる」として新緑と紅葉の時期を好んだが、奥入瀬についても「新緑や紅葉の時期を迎えると、体がうずうずしてくる」と述べている。のちに「元宋の赤」と称される赤い色彩美が際立つ作品。


速水御舟の昆虫二題「葉蔭魔手」「粧蛾舞戯」のみ、写真撮影は可能です。


第1章 近代の東京画壇











第2章 戦後の東京画壇








「日本画の教科書 東京編―大観、春草から土牛、魁夷へ―」

開館50周年記念特別展の最後を飾る本展では、前回展の「京都編」に続き、「東京編」として東京画壇の日本画家の作品をご紹介します。

激しい近代化の波が押しよせた明治時代、画家たちは新しい日本画のあり方を求めて模索していました。 東京美術学校の岡倉天心による指導のもと、横山大観、下村観山、菱田春草らが古典研究を重視しながらも、時代にふさわしい画題や表現を追求していきました。天心によって1898(明治31)年に創設された在野の美術団体・日本美術院は、紆余曲折を経ながらも現在まで続き、小林古径、安田靫彦、奥村土牛、平山郁夫など、数々の著名な画家を輩出しています。一方、1907(明治40)年、初の官営の美術展覧会として始まった文展は、日本画の近代化の上で重要な役割を担い、帝展、戦後の日展へと継承され、川合玉堂、東山魁夷、杉山寧、髙山辰雄など多くの画家が活躍する舞台となっています。本展では、院展と日展の日本画家の作品を中心に、東京画壇の歴史に名を刻む主要な作品を一堂に展示いたします。

当館の創立者で初代館長の山崎種二は、戦前・戦後を通して同時代の画家たちを支援し、直接交流しながらそのコレクションを築いていきました。開館のきっかけは、大観の「世の中のためになることをやったらどうか」という言葉であり、また周年などの節目の年に、画家たちが種二の依頼で揮毫した作品が当館コレクションに加わるなど、50年の歩みの中には、画家たちとの交流の軌跡が残されています。美術の教科書に登場するような名品の数々と、当館創立者・山﨑種二と画家とのエピソードを交えながら紹介し、近代から現代にいたる東京画壇の歩みをご覧いただきます。


「山種美術館」ホームページ

yama1 前回展覧会:

「日本画の教科書 京都編」

―栖鳳、松園から竹喬、平八郎へ―
2016年12月10日~2017年2月5日








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