模型づくりとか趣味の日々リターンズ -6ページ目

【映画評】鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 この映画自体が謎だわい

鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 でございます。

 

帝国血液銀行の社員、水木。得意先「龍賀製薬」の社長である龍賀克典とは懇意であったが、その義父であり龍賀一族の当主である龍賀時貞が死去。水木は一族の本拠である哭倉村へ向かう。水木には社から与えられた別の目的…龍賀製薬が製造し秘密裡に流通させている血液製剤Mの謎を解くことがあった。

龍賀の屋敷、広間に多くの人が集まる中、時貞の遺言が伝えられるが、克典の思惑と異なり、次期当主には龍賀家長男の時麿が指名され、その場は大混乱となる。

 

龍賀家の一族。

当主 龍賀 時貞

長男 龍賀 時麿 

次男 龍賀 孝三

長女 龍賀 乙米 ー 夫(入り婿)龍賀克典 龍賀製薬社長

 乙米の娘 龍賀 沙代 

次女 龍賀 丙江

三女 長田(龍賀)庚子 ー 夫 長田 幻治(哭倉村村長 乙米と懇意)

 庚子の子 長田 時弥

 

時麿が惨殺され、謎の男が長田幻治に捉えられる。行方不明の妻を探しに来たと言う彼はその場で殺されそうになるが水木によって止められる。名を名乗らぬ彼を水木はゲゲ郎と呼ぶことにする。

 

時麿に続き、丙江、庚子が殺される。犯人とその目的は。血液製剤Mの正体は。

 

 

えーと、「八つ墓村」に着想得たとウィキペディアに書いてありましたが、「犬神家の一族」ではなくて?

 

それはともかく、なんかもうワヤクチャな映画で。肝心なところが全然わからない。

まず哭倉村に向かう水木にタクシーの運転手が「あんなところ誰も行かない」とか言うんだが、着いてみたら寒村どころか結構なデカい村で、その中心に龍賀家の巨大な屋敷がある。屋敷がデカければ食材やら日用品もそれなりに消費するわけで、出入りの業者やら御用聞きがたくさん来るはず。そして屋敷には当主の遺言聞きに、親戚だか関係者だかよくわからない人が、ざっと数えたんだが80人は来てる!こんな大量の人が押し寄せれば周辺で話題にならないわけも無く、タクシーの運転手が気づかない訳も無く、当然話題にするでしょ…

 

まあ予想通り、血液製剤の正体は幽霊族を拉致してそのエキスを搾り取って作ってるんだが、その場面のすぐ後で、実は時貞が生きていて、そこには幽霊族から血を吸い続けて大きくなる桜というのが出てくる。なんで同じようなものを2回出して観る側を混乱させる?紗代が血液製剤の工場を破壊している間、時貞は何をしてた?時貞は狂骨なる妖怪を操り、これにゲゲ郎と水木を襲わせるんだが、紗代も工場破壊するのに狂骨に襲わせてるんだよね。狂骨はどっちの味方なの?特に意思はもたず、操る人間の指示に従ってるだけと解釈できなくもないが、映画的には観る側を混乱させるだけでしょ。

 

血液製剤が、というより龍賀製薬が時貞のビジネスのごく一部でしかなく、血液製剤が作れなくなることなぞ些細なことでしかないということなんでしょう。水木にも会社を2つ3つ持たせてやる、と言ってるぐらいだから。

でもそのことは映画の中で語られてない。

 

映画の脚本を書く上で陥りがちなことで、特に有名どころの別の映画からモチーフを集めて切り張りするような作り方をしていると起きがちなんだが、元ネタの映画で説明されてたことが、自分の作ってる映画でも既に説明済みであると勘違いしてしまうことが、どうやら多いようなんだ。

 

このブログで何度も書いてるんだが、映画撮る前に脚本に矛盾がないか、客観的に見る人(ストーリーアナリストというんだそうだ)が必須だと思います!多分映画の製作決定に至るプロセスが日本とハリウッドでは違うからじゃないかと思うんだが(ハリウッドでは脚本書いて検討して、採用されて製作、てなるところを日本では企画ありきで「鬼太郎の映画作ろう」から脚本書き始めるからとか?詳しいことはわからんが)

 

ゲゲゲの鬼太郎といえば一番最初は漫画「墓場鬼太郎」第一話なわけで、今回はその前日譚を作ろうというのが企画の始まりだったそうです。この映画を鬼太郎前日譚としてどう評価するか、と言われれば、評価以前の問題ですね。作ってしまったものは無かったことには出来ないので、「最後のジェダイ」みたいに黒歴史にならなきゃいいんですが。

 

 

【映画評】チェルノブイリ アメリカさんはロシアの悪口言う時は元気だなー。

チェルノブイリでございます。

映画では無くてAmazon prime videoのシリーズ全5話です。2019年の作品で少々時間が経ってしまっているのですが、連休の一気見にオススメと某ネット記事にあったので観てみました。

 

えと…史実に沿ってるんだよね?ひでえじゃんこれ。だれも防護服なんて着てないし、原子炉の蓋がぶっ飛んで炉心が露出してるのを「お前見に行ってこいや」と部下に行かせるし、原発周辺の住民は火事見物に来て全員死んでるし、偉い人が集まった会議では屁理屈つけて情報隠蔽を決めて、その場にいた全員が大喝采したり。いや~まさしく全体主義の恐怖ですな。

その中で事実を公にして当時の責任者を告発する科学者が最後にどうなるか…というところが作品のラスト。

 

米英が作ったドラマで、全員英語でしゃべってるのに、ロシア人に見えるところが不思議。セットも完璧で隙が無く全編ロシアロケに見えてくる。細部のリアリティの積み上げが全体のリアリティを生み出している。1h×5話というボリュームも適切で、飽きずに全話観られる。

 

技術面もすごい。被爆者の全身の細胞が壊死し、やがて死に至る描写とか。本当に凄惨。被爆の悲惨さをリアルに再現し世に問おうとする、特殊メイク班の執念が感じられる。

 

福島の原発事故を経験した国民として、「あったかもしれない」原発事故とその悲惨な経過を、我々は観ておいた方がいい。うむ。

 

ただ一方で…

 

これだけ被爆の描写が出来るなら、広島長崎の描写も出来るよねえ…

オッペンハイマーで被爆者の姿を妄想する場面あったけど、なんか顔の皮膚がヒラヒラしてて…あれ、リアルには作れない理由があるのかと思ってたけど、そうじゃないんだと思い…

 

自分の方は棚に上げてロシアの悪口言う時は元気だなー、とも思いました。ハイ。

 

【読書記】『ゼロからトースターを作ってみた結果』思った通りの展開 ツメの甘さが惜しい

英国在住のデザイナーで元カレッジの学生だった筆者が、ふと約4ポンド(500円!)のトースターをゼロから作ったらどうなるだろうと思い立つ。分解すると概ね100種以上の材料で作られた400種ほどのパーツに分けられた。生産の過程で有害物質を発するものもあり、いくつかの機能を省略して、プラスチック、鋼鉄、銅、ニッケル、マイカの大きな5つの材料で作れる様に計画。各々の原料を作るためイギリス全土を飛び回り、自宅で時に危険な材料作りに取り掛かる。

 

大体予想通りの展開。こういう作業を経て、世の中の仕組みやら環境破壊やら、モノにあふれる世界で見過ごされがちなマイナス面に気づき、思いを馳せ、みんなもっと自然に対して謙虚に生きようよ、的なオチになる。大体そのことは分かった上で読むので、読み手が期待するのはプロセスが如何に印象的だったり大胆だったりバカバカしいか、だ。

 

で、残念なのはこのプロジェクト、カレッジで単位を取ることが目的だったので、期限がある。なので後半はだんだんと開き直りが顕著になり、ニッケルが国内で手に入らず、期限が二週間しかない段階で、外国のニッケル硬貨を溶かしてニッケルを得たりするのだな。

プラスチックを得るためにBP社(英国最大の石油会社)に交渉して挫折したり、鉄鉱石を得るために自宅に溶鉱炉を作って大失敗したり。この辺面白いので残念だなー。

で、結局トースターは完成しない。パンを焼くというデモンストレーションが失敗する。そこで「僕の9か月のゴールはトーストを焼き上げることだったのだろうか?」と自問する。その問いへの彼の答えがどうだったのかは読んでいただくとして…

トースターを完成してくれれば完璧だったのに!とりあえずカレッジの学位は取っといて、それで終わらず後日にでも足りないところを補完してトースターを完成してくれてれば…(あーでもその辺は日本人的な、完璧主義的な考え方なのかも)。

 

彼の今後の活動に期待ですね。っと、っこれ2012年の本か。もう12年経って彼も良い大人になったんでしょうね。何?ヤギになったって?