【映画評】宇宙大怪獣ギララ 斜陽を迎えつつある日本映画の終わりの始まり
宇宙大怪獣ギララでございます。
主題歌の作詞は永六輔だそうです。
なんで今更1967年の映画を取り上げるかというと、一応特撮ファンを自負しながらも、これ見たことが無かったんですが、ムービープラスでやっていて、ようやく見たからであります。
一応背景を説明すると、1954年に東宝による初代ゴジラが公開され大ヒット、続編含めモスラやらラドンやらバランやら、怪獣映画を量産し大儲けした後、二匹目のドジョウを狙って大映が1965年に「大怪獣ガメラ」を公開しこれまたヒット、シリーズ6作品が作られた(「宇宙怪獣ガメラは再編集モノなのでオレ的に認めない)中、四大映画会社のあと二社、松竹と日活は、怪獣映画は儲かるとは言っても技術とお金がかかるため二の足を踏んでいた中ようやく、大映が「ガッパ」松竹が「ギララ」を作ったというわけです(続編が作られなかった理由はは、まあ推して知るべし)
んで、ギララです~
他の怪獣映画と違って宇宙を全面に押し出している。ロケット(宇宙船AAB)による宇宙探索、月基地の存在等、なかなかにSFチックです。
いずれにしろ真面目に見てられるものでもないので~wwwビール片手に適当に見流しました。
【いいところ】
・ペギー・ニールなる外国人女優。実質的な主役。生物学者との設定だが、なかなかの存在感。月基地のバーでのシーンでドレス姿で悠然と足を組んで座る様なぞ実に絵になっている。宇宙服も白衣もかっこいい(日本側のヒロインがあまりにも華が無い…とも言える…)。
・ところどころセットが豪華。対ギララ作戦指令室など結構大きく、壁一面に張り出された作戦地図など壮観。月基地のバーなどは「2001年宇宙の旅」の影響か。宇宙船の実物大セット(下半分だけだけど)も良い。「NO STEP」なんてコーションマークも書いてあり芸細。ミニチュアは地球のロケット打ち上げ基地などはパラボラアンテナの作りが精密で驚く。ギララに壊される街も見どころだが、奥の方は書き割りとわかってしまうwwwまあこれも味のうち。
・円谷特撮では見られないミニチュアワーク 同じ人がやっていれば映像は似てくるのが当たり前だが、特撮ファンは円谷を見過ぎていて、それに慣れきってしまってるのがわかった。ミニチュアによるF104の編隊飛行は見事。そして同機によるカミカゼアタック?直接ギララにぶつけてくるのワロタ。一回当たってちょっと跳ね返ってから爆発。この安っぽさ。
・ギララのデザイン どの怪獣とも似てない。肩に筋肉の集まった独特のプロポーションと、黒目の無い無表情の(バカっぽい)顔。印象としては昆虫。目的があるのか無いのかよくわからない、ひたすら暴れるギララのキャラに合っている。
正直、斜陽を迎える日本映画の迷走っぷりを象徴する映画とも言えます(行き当たりばったりに作ってる感)。まあこの手のモノに細かいツッコミは野暮というものでしょう。まあ楽しく見られたのでヨシ!(でも2回は観ないだろう)
【映画評】RRR 「イヨッ!待ってました!!」が3時間続く幸福感。
RRRでございます。
なんと日本では昨年の10月からのロングランだそうです。おめでとうございます。
3時間の長尺(インド映画ではありがち)ですが、ぶっ飛びました!!これはスゴイ!!
少なくとも映画館で観ることを強くオススメします。私はIMAXで観ましたが、映像も音もスゴイ迫力で、これは家で観たらその魅力は半減以下でしょう。
基本、アクションと分かりやすいストーリーを楽しむ映画であります。
このブログでは、「ストーリーはシンプルで分かりやすい方がアクションを楽しめる」と常々お伝えしておりますが(逆に言うと、ストーリーに理解出来ない部分があると、そこが気になってアクションに入りこめない)、この映画については、さらに踏み込んで(というか、原点に戻って)、シンプルなストーリーそのものも楽しめる作りになっております。
つまりだ。浪花節とか歌舞伎の世界ですわ。
男性が2人。互いの立場や素性を知らぬまま親友となっていきますが、やがてその立場ゆえに敵対する。でドラマがあって葛藤があって、最後は手を組んで巨悪を倒します。「行くぜ、兄弟!」「合点だぁ!」てなノリです。
そもそもこの2人が嘘くさいほど強いので、スーパーヒーロー物のような爽快感まで足されて、もうカツ丼にカレーかけて生卵乗せたような仕上がりなわけです。
いくつも見せ場がありますが、「予想を覆す」というよりは、そのキャラクターのやってくれそうな、やってくれよと期待する線をやってくれて、「キターーーー!!!!」と思わせ、その上でさらに畳みかけるように、「そこまで来るかー!!」とやってくれます。この匙加減が絶妙なんだな!
浪花節は、泣きたいところで期待通りに泣かせてくれるストーリーで、ネタは親子とか兄弟とか夫婦とか子弟とか、日常の世界で想像できる範疇で話が進みます。
歌舞伎は、観客は「ここで見得を切る」と分かっていて、そのタイミングで見得を切ってくれることに満足し、「成駒屋!」「音羽屋!」と来るわけだ。
まあ言ってしまえば「予定調和」とも言えるわけだが…
いいじゃない!
映画も配信で観ることが増えて、同じ映画を何度も観られるためか、一度観ただけではストーリーが分からないように作ってあって、何度も観て分析やら解釈やら考察やらをするような観方が主流になりつつあるが、大量に流れてくる映像作品それぞれを、それほど時間をかけて観られるわけでも無く。こういう分かりやすい映画が評価されていることに、作り手ももっと着目していいんじゃないか…と、そんなことも考えさせられる映画でした。
【映画評】ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 直球でいいじゃん
アカデミー作品賞ぜんぶ観る~ということでやっております。
今回は「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」でございます(タイトル長いって…)
普段だったらまず観ないジャンルの作品なんですが、観たら観たでイロイロと発見があるんですね~
原作は『若草物語』なんですが、Wikipediaによるとそもそもが少女時代と結婚に至るまでの二部作になっているそうで、日本で知られている若草物語は一部目なんですな。今回の映画はこの一部と二部の時系列が同時進行で語られていて、最近こういうの多いんですが、昔はセピア色、現代はブルーがかった色と、色味で区別しやすく工夫されています。
で、昔の部分、四姉妹がきゃいきゃいやっているあたりは全く入りこめなかったんですが、現代の方は全員がそれぞれ課題を抱えている。この辺から引き込まれます。旦那が稼げず貧乏で苦労する長女、作家を目指すが目が出ない次女、病気がちな三女、画家を目指すがパッとしない四女。
四女が「女性にとって結婚は経済問題」と言い放つ場面。ああ、この作品をあえて今改めて映画にする理由はこの辺なのだなと。
ただ、女性の自立がテーマというだけでなく、幸せな結婚も依然としてあるのだとの描写もあり、この辺素直で良いなと思いました。
役者さん皆さん達者です。押しも押されぬハリウッドスターであるエマ・ワトソンが、本当に貧乏で苦労してるように見えるんだ、これが。表情がいいよ実に。ただ若手の男性陣はみんな同じに見えて区別つかなくて困った。
個人的には四姉妹の母親のローラ・ダーンが良かった。姉妹たちを一歩引いた立場で見守り、大事なところでフォローする姿が実に良くて。って、「マリッジ・ストーリー」の弁護士の人か!?何やらしても上手いなー。
名作を現代なりの解釈とテーマで、変にひねらず素直に描いた本作。たまには直球もいいじゃん!と思わせました。