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【映画評】ブルータル・ジャスティス 映像も物語も徹底的にストイックなクライムアクション

ブルータル・ジャスティスでございます。

例によって宇多丸印からの視聴です。

2018年の映画だそうで、もう5年も前の作品ですね。

 

齢60近い老刑事ブレッドは、成果を出しているにもかかわらず昇進にも昇給にも縁が無い。治安の悪い地区で、年頃の娘と病気の妻と一緒に暮らしているが引っ越しもままならない。業を煮やしたブレッドは、いっそ取引中の売人から売上金を強奪してしまえ、と考える。結婚を考える相手と同棲中の若い同僚トニーも、将来に不安を感じ、ブレッドに同調することになる。目を付けた売人に張り込みと尾行を続けた彼らの前に、思わぬ事態が起きる。


音楽が一切なく(カーラジオから流れる音楽のみ)、セリフも絞られている。出てくる部屋はどの部屋にも極端に物が無く、壁が広い。時間の経過はゆっくりで(途中一回寝てしまった…)、映画全体が徹底的にストイックに作られている(タルコフスキーのような…)。その中で、犯人たちは結果を出すための最短距離をひたすら行動する、そのシンプルさと容赦の無さぶりが際立ってくるし、ゴア描写もありますが、シーンとしてはごくわずかで、それでいきなり来るのですごい効果を出してくる。

 

ラストは切なく、やりきれないです。一人だけうまく行く奴がいて、犯罪に加担したから最後不幸になるわけでもない。因果応報が必ず起きるわけでも無いという、そこも含めてストイックに徹している(ついつい悪いことしてるやつはヒドイ目にあって終わりって書きたくなるけど)。そんなわけで観てスッキリする映画では無いし、賛否は分かれるでしょう。自分としても、人に「是非!」と勧められる気はしませんが、なんともこう、熱帯夜の不快感のような、澱のような、いつまでもまとわりついてくる映画、という感じ。

 

この監督さんの他作品は観たことがありませんが、自分のスタイルを強固に持っているお方とお見受け。シナリオも自分で書いている。次作が楽しみです。SFやってほしいですね!救いの無いやつ!エイリアンのリメイクなんてどうすか?

あーあと、メルギブソンがすげー渋くなってて驚いた。かっこいいです。

【映画評】ザ・クリエイター/創造者 災害レベルの脚本の破綻 今年度ラジー賞確定。

ザ・クリエイターでございます。

 

なんか一生懸命宣伝しておるようで。

日本の映画関係者との対談やら提灯記事がたくさん出ております。

 

しかしながら。

10/20公開よりわずか9日目にして、近所のシネコンではIMAXかDolby Theatorでの一日一回の上映の他は60席程度のホールで2回+レイトで300席で1回のみの上映。これだけの大作としては少々厳しい結果では。

 

本日IMAXで観てまいりました。う~ん…

 

脚本が未整理で、なにしろツッコミどころが多すぎる。

 

・裏切者とされているはずのジョシュアがなぜふたたびアルフィーに会わされ「お前が始末しろ」とか言われてしまうのか。これがきっかけでアルフィーの逃亡を許すことになるし不自然過ぎ。

 

・手で運べるぐらいの爆弾1発で、体育館ぐらいのサイズの巨大戦車を破壊できるってすげえなあ、と思っていたらなんと、ノマドまで破壊してしまう。「ミサイルに誘爆した」とでも理屈をつけたいのかもしれないが、だったらコントロールを失って地上に激突したミサイルだって爆発してないとおかしい。

 

・そのノマドが破壊されてめでたしめでたし…で終わるのもどうかと。もう一台作ればいいだけの話。出来ない理由はなにも説明されていない。そもそもノマド無くてもあの戦車あれば勝てるのでは?

 

・ロサンゼルスでの核爆発の真相が最後に語られるが、西側のAI殲滅したのは隠蔽のため?だとしてもアジアにまで戦争しかける理由の説明になっていない。

 

・ジョシュアと御一行の目的が、ノマドを破壊できる兵器の破壊なのか、その兵器を作った人物(クリエイター)の発見と確保なのか、途中で分からなくなる。最後クリエイターは発見され、その状態をジョシュアの上官は元々知っていたって話になっていたようだが、じゃあ探して殺す必要はそもそも無かったのでは?

 

・結局ジョシュアは嘘の映像を見せられて、嫁さんの所在を発見するため泳がされていたということ?現代よりも大幅に技術が発達しているであろう未来に、当節話題のディープフェイクに騙された?

 

・アルフィーひとりでノマドの中走り回って制御室にたどり着く、途中ほぼ攻撃されず??

 

・ジョシュアとアルフィー追って空港にたどり着いた米軍大佐。警備の兵隊に向かって「飛行機ぜんぶ止めろ」??移動中に電話すれば?そもそもそこいらにいる兵隊にそんな指示出してどうする?

 

シナリオの破綻以外にも。

 

・遠景に巨大建造物が見える画面がたくさんあったんだけれども、都市はともかく田園地帯みたいなところに忽然と巨大な建造物があったら、その機能や目的や、誰のモノなのか説明されないとおかしいでしょ。米軍はこのいかにも重要そうな建物を攻撃せずいきなり村を攻撃していたが、それほど重要な建物ではない?じゃあナニ?張りぼて?

 

・日本の渋谷、東南アジアのどこか(タイかベトナムあたり?)、チベット等で撮影が行われたようで、建物や文字、AIの服装に至るまで、そういった国の意匠が随所に用いられているが、あくまでデザインとして面白いから使われているといった印象で、それら文化や土地、民族に対するリスペクトは皆無。こういうのはスターウォーズだったらやっても良いが、架空の場所ではなく地球の実在の国や土地を舞台にやるのはNG。失礼すぎる。・

 

まあそんなわけで、これは世紀の怪作となってしまいました。ラジー賞は確定でしょう。渡辺謙の無駄使い。

 

スターウォーズのスピンオフ作品としては、別格の仕上がりと言っていい大傑作「ローグ・ワン」で大いに名を上げた、ギャレス・エドワード監督ですが、いやはや自分で企画脚本すると上手く行かないようで…まあそういう監督はいくらでもいますので、これに懲りず、次はいい脚本に巡り合って、良い作品を残していただきたいと切に願います。これで潰れてしまうには惜しい監督さんなので。

 

 

【映画評】イコライザーTHE FINAL アメリカ版水戸黄門または暴れん坊将軍の本領発揮

 

イコライザー THE FINAL でございます。

 

さてさて、水戸の御老公とそのご一行。本日は伊太利のとある風光明媚な宿場町にやってまいりました。

しかし御老公、ちょっとつまづいた拍子に足をくじいてしまいました。

これを助けたのが新米岡っ引きの時雄と町医者の延造でございます。思わぬ長逗留をすることになる御一行ですが、町の人は明るく親切で、御一行はすっかりこの町が気に入ったようであります。

 

しかしながらこの町には影の部分もありました。やくざの親分である鬢銭がこの一帯を仕切っておりました。弟の丸公は手下を引き連れやりたい放題。今日もみかじめ料を払えない魚屋をシメております。

 

鬢銭はさらに大きく稼ごうと、町に新たな賭場を立てることにしました。「逆らうやつが居やがったら徹底的にやっちめえ」と丸公に命じると、丸公は岡っ引きの時雄とその家族を締め上げ思い通りに働かせようとします。

今日は飯屋で時雄一家を見かけるや、無理難題をふっかけます。そこにたまたま居合わせた御一行。丸公と一味にキツ~いお灸をすえるのでした。

 

こうなると鬢銭も黙っちゃいません。手下共を引き連れ御一行の元に乗り込みます。「やいやいやい!俺っちの可愛い弟にナニしてくれたのは手前らか!無事じゃ済まねえから覚悟しな!」

「仕方ない。助さん、角さん、懲らしめてやりなさい!」

そして始まる大立ち回り!

「もうこの辺で良いでしょう。」「静まれ静まれぃ!この紋所が目に入らぬか!」(ジャ~ン)「ここにおわす方をどなたと心得る、恐れ多くも…」

 

とはならないんですけど(笑)

 

というようなフォーマットにピッタリと嵌めることのできる、まあ実にわかりやすいストーリー。もちろん今風にゴア描写だとかいろいろ演出面ではありますが、難しい謎解きがあるわけでも無く、ストーリーはあくまで王道。。そこを楽しむと割り切ればヨシ。

 

でも最後、マフィアの親分が衆目の中でマッコールにしてやられた後で、「明日やっちまおう!」と息巻いて、今夜はぐっすり寝ちゃうとか、部下も含めて警戒感無さすぎで、そんなわけで最後の一戦があっさり終わりすぎなところとか。

 

地元マフィアのさらに上には巨大なテロ組織があって、末端の一部をつぶされて黙ってる訳も無いが、そこはCIAに任せっきりで一件落着、と安直なところとか。

 

細かいところ挙げればキリがないが、そもそもこの映画って元はTVシリーズだったとか。それこそ水戸黄門やら暴れん坊将軍とか必殺仕事人の米国版だとしたら、この流れこそシリーズの原点回帰なのかも。

 

せっかく原点回帰したけど映画シリーズはこれで終了とか。再々リブート版のTVドラマもあるようなんで、日本での放映に期待したいところです。

 

ちなみにCIA職員の役でダコタ・ファニング出てます。トム・クルーズと「宇宙戦争」で共演した元天才子役ですが、また女優さんしてたんですねえ。メインキャストではありますが、特に印象に残ることは無かったですねえ。