【映画評】空白 暴走中年に甘すぎる
空白でございます。
宇多丸印からの視聴。
漁師の添田は粗暴で独りよがりな性格のせいで周囲から疎まれ、嫁とは離婚、同居する娘の花音は添田を怖がりロクに話も出来ない。ある日スーパーで万引きを疑われた花音は逃亡し、追う店長から逃げる途中で軽自動車とダンプに衝突し死亡する。添田は怒り、スーパーの店長に付きまとい、学校には「いじめがあった」と難癖をつけるなど暴走を始める。
「空白」というタイトルはなかなか上手いです。添田はやがて自分が娘のことを何も知らないことに気づき、知るための努力を始める。娘との溝=空白を埋めようとする。心を壊し店も何もかも失い、埋めがたい大きな空白を作ってしまう店長、自身の心の空白を埋めようとするが、方法が間違っているために埋められず途方に暮れるスーパーのパート従業員と。皆が持ってる空白についての物語なんですね。
なんですけど、添田はさんざん周りに迷惑かけといて、急にしおらしくなったからって、自身が新たに作った多くの空白は埋められるものではないし、本人も別れた嫁さんに謝ったぐらいで他に贖罪をしてないし。添田さんいい人になりましたメデタシで終わっていいはずはない。
あれスーパーの店長に責任があるって、作り手は思ってるんですかね?店長に責任ありという観点なら、最後の添田とのやり取りはああいう描き方もアリだと思うけど、万引きをしたのかしてないのか、はっきりさせてないので、その辺が見てる側には判断つかない。そこは観客に判断投げていいところじゃないでしょ。
それと、日本映画だから低予算だし、ロケ中心だからしょうがないかもしれないけど、なんか絵作りがテレビドラマみたいで、あまりにチープ。添田の家の中も、一般家庭のリアルな室内の再現ではあるんだが、何の意図も感じられない。「プロダクトデザインの出来てない映画はダメ」と某監督が言ってましたが、その部分は実に物足りない映画でした。
あー悪口ばっかりになったけど、ボランティアおばさんのキャラクターは秀逸。痛い!キツイ!こういう人いそうだなあ…