【映画評】ザ・クリエイター/創造者 災害レベルの脚本の破綻 今年度ラジー賞確定。
ザ・クリエイターでございます。
なんか一生懸命宣伝しておるようで。
日本の映画関係者との対談やら提灯記事がたくさん出ております。
しかしながら。
10/20公開よりわずか9日目にして、近所のシネコンではIMAXかDolby Theatorでの一日一回の上映の他は60席程度のホールで2回+レイトで300席で1回のみの上映。これだけの大作としては少々厳しい結果では。
本日IMAXで観てまいりました。う~ん…
脚本が未整理で、なにしろツッコミどころが多すぎる。
・裏切者とされているはずのジョシュアがなぜふたたびアルフィーに会わされ「お前が始末しろ」とか言われてしまうのか。これがきっかけでアルフィーの逃亡を許すことになるし不自然過ぎ。
・手で運べるぐらいの爆弾1発で、体育館ぐらいのサイズの巨大戦車を破壊できるってすげえなあ、と思っていたらなんと、ノマドまで破壊してしまう。「ミサイルに誘爆した」とでも理屈をつけたいのかもしれないが、だったらコントロールを失って地上に激突したミサイルだって爆発してないとおかしい。
・そのノマドが破壊されてめでたしめでたし…で終わるのもどうかと。もう一台作ればいいだけの話。出来ない理由はなにも説明されていない。そもそもノマド無くてもあの戦車あれば勝てるのでは?
・ロサンゼルスでの核爆発の真相が最後に語られるが、西側のAI殲滅したのは隠蔽のため?だとしてもアジアにまで戦争しかける理由の説明になっていない。
・ジョシュアと御一行の目的が、ノマドを破壊できる兵器の破壊なのか、その兵器を作った人物(クリエイター)の発見と確保なのか、途中で分からなくなる。最後クリエイターは発見され、その状態をジョシュアの上官は元々知っていたって話になっていたようだが、じゃあ探して殺す必要はそもそも無かったのでは?
・結局ジョシュアは嘘の映像を見せられて、嫁さんの所在を発見するため泳がされていたということ?現代よりも大幅に技術が発達しているであろう未来に、当節話題のディープフェイクに騙された?
・アルフィーひとりでノマドの中走り回って制御室にたどり着く、途中ほぼ攻撃されず??
・ジョシュアとアルフィー追って空港にたどり着いた米軍大佐。警備の兵隊に向かって「飛行機ぜんぶ止めろ」??移動中に電話すれば?そもそもそこいらにいる兵隊にそんな指示出してどうする?
シナリオの破綻以外にも。
・遠景に巨大建造物が見える画面がたくさんあったんだけれども、都市はともかく田園地帯みたいなところに忽然と巨大な建造物があったら、その機能や目的や、誰のモノなのか説明されないとおかしいでしょ。米軍はこのいかにも重要そうな建物を攻撃せずいきなり村を攻撃していたが、それほど重要な建物ではない?じゃあナニ?張りぼて?
・日本の渋谷、東南アジアのどこか(タイかベトナムあたり?)、チベット等で撮影が行われたようで、建物や文字、AIの服装に至るまで、そういった国の意匠が随所に用いられているが、あくまでデザインとして面白いから使われているといった印象で、それら文化や土地、民族に対するリスペクトは皆無。こういうのはスターウォーズだったらやっても良いが、架空の場所ではなく地球の実在の国や土地を舞台にやるのはNG。失礼すぎる。・
まあそんなわけで、これは世紀の怪作となってしまいました。ラジー賞は確定でしょう。渡辺謙の無駄使い。
スターウォーズのスピンオフ作品としては、別格の仕上がりと言っていい大傑作「ローグ・ワン」で大いに名を上げた、ギャレス・エドワード監督ですが、いやはや自分で企画脚本すると上手く行かないようで…まあそういう監督はいくらでもいますので、これに懲りず、次はいい脚本に巡り合って、良い作品を残していただきたいと切に願います。これで潰れてしまうには惜しい監督さんなので。