【映画評】イコライザーTHE FINAL アメリカ版水戸黄門または暴れん坊将軍の本領発揮
イコライザー THE FINAL でございます。
さてさて、水戸の御老公とそのご一行。本日は伊太利のとある風光明媚な宿場町にやってまいりました。
しかし御老公、ちょっとつまづいた拍子に足をくじいてしまいました。
これを助けたのが新米岡っ引きの時雄と町医者の延造でございます。思わぬ長逗留をすることになる御一行ですが、町の人は明るく親切で、御一行はすっかりこの町が気に入ったようであります。
しかしながらこの町には影の部分もありました。やくざの親分である鬢銭がこの一帯を仕切っておりました。弟の丸公は手下を引き連れやりたい放題。今日もみかじめ料を払えない魚屋をシメております。
鬢銭はさらに大きく稼ごうと、町に新たな賭場を立てることにしました。「逆らうやつが居やがったら徹底的にやっちめえ」と丸公に命じると、丸公は岡っ引きの時雄とその家族を締め上げ思い通りに働かせようとします。
今日は飯屋で時雄一家を見かけるや、無理難題をふっかけます。そこにたまたま居合わせた御一行。丸公と一味にキツ~いお灸をすえるのでした。
こうなると鬢銭も黙っちゃいません。手下共を引き連れ御一行の元に乗り込みます。「やいやいやい!俺っちの可愛い弟にナニしてくれたのは手前らか!無事じゃ済まねえから覚悟しな!」
「仕方ない。助さん、角さん、懲らしめてやりなさい!」
そして始まる大立ち回り!
「もうこの辺で良いでしょう。」「静まれ静まれぃ!この紋所が目に入らぬか!」(ジャ~ン)「ここにおわす方をどなたと心得る、恐れ多くも…」
とはならないんですけど(笑)
というようなフォーマットにピッタリと嵌めることのできる、まあ実にわかりやすいストーリー。もちろん今風にゴア描写だとかいろいろ演出面ではありますが、難しい謎解きがあるわけでも無く、ストーリーはあくまで王道。。そこを楽しむと割り切ればヨシ。
でも最後、マフィアの親分が衆目の中でマッコールにしてやられた後で、「明日やっちまおう!」と息巻いて、今夜はぐっすり寝ちゃうとか、部下も含めて警戒感無さすぎで、そんなわけで最後の一戦があっさり終わりすぎなところとか。
地元マフィアのさらに上には巨大なテロ組織があって、末端の一部をつぶされて黙ってる訳も無いが、そこはCIAに任せっきりで一件落着、と安直なところとか。
細かいところ挙げればキリがないが、そもそもこの映画って元はTVシリーズだったとか。それこそ水戸黄門やら暴れん坊将軍とか必殺仕事人の米国版だとしたら、この流れこそシリーズの原点回帰なのかも。
せっかく原点回帰したけど映画シリーズはこれで終了とか。再々リブート版のTVドラマもあるようなんで、日本での放映に期待したいところです。
ちなみにCIA職員の役でダコタ・ファニング出てます。トム・クルーズと「宇宙戦争」で共演した元天才子役ですが、また女優さんしてたんですねえ。メインキャストではありますが、特に印象に残ることは無かったですねえ。
【映画評】あのこは貴族 久々に力のある演出家!岨手 由貴子氏の今後に期待!
宇多丸印にハズレ無し!
「あのこは貴族」でございます。
華子は渋谷松濤に居を構える名家の出身。何不自由無く育ちつつも、28歳で働いたことも無く家事手伝いを自称する、筋金入りの箱入り娘。結婚を期待される年齢だが婚約者と別れることになり焦る。イロイロと男性を紹介されるもロクなのがいない中、弁護士の幸一郎と出会い、一発でゾッコンに。一郎は政治家も輩出する名家中の名家の出。二人は結婚を約するが、華子は幸一郎宛の、美紀なる女性からの親し気なLINEを目にしてしまう。
美紀は地方出身者。苦労して慶応大学に合格するも、家庭は裕福とは言えず、水商売で働きながら学費を稼ぐこととなり、結局中退。幼稚舎からの生え抜きの慶応大生との経済格差を思い知らされる。引き続き水商売で生活する中、学生時代に出会った幸一郎と再会し、以後付き合ってるとも言えないズルズルの関係を続けることとなる。
華子の友人のバイオリニストが、幸一郎と美紀の出席するパーティで演奏したことから二人の関係に気づき、後日美紀と華子を引き合わせ、幸一郎と華子が婚約していることを伝える。美紀は、自分はいわゆる都合のいい女、幸一郎とは二度と会わないと話す。そして華子は美紀にこう尋ねる。「幸一郎さんってどんな人ですか?」
やたらとセリフで説明し、分かりやすいが浅いばかりのドラマが横行する中で、久しぶりに力のある演出に出会うことが出来ました。
観客にちゃんと考える余地を与えるし、状況をシンプルなシーンで説明することも上手い。あーそれってあるよね。わかる。ちょっと痛い。っていうシーンがいろいろと。東京のパーティ会場と地方都市のホテルの宴会場が出てくるが、ホントに地方のホテルの雰囲気上手い。あるある。
描かれるテーマは、現代社会を覆う、逃れようの無い格差。学生時代の美紀が体験する「ちょっとお茶」の場面で、まざまざと見せられる隔たり。
上流の中でもさらに格差があり、そのランクに生まれた瞬間に決定づけられた人生。あるものはもがき、あるものは当然のこととして粛々と受け止める。そこで生まれ育った人間にとって、いいも悪いも無い。そういうものだと思っている。だからこそ悲劇的。
唯一美紀だけが、友人の協力も得ながら、自分の生活を、自分の人生を歩んでいこうと決意する。それは散々勉強して有名大学入学を獲得し、それまでも自分の人生を自力で何とかしようと闘い続けてきた美紀だからこそ出来ること。
それだけにあのラストは唐突だぁ~。残念。出来るわけないでしょそんなの。2時間少々の映画の中で何かオチをつけないとならないのはわかるが、それは無理。まあ同情した友達の方に逆に助けてもらってると解釈すればアリか…
【映画評】AIR/エア 王道のサクセスストーリー 王道すぎて普通
1984年、シューズメーカーのナイキはランニングシューズでは成功していたが、バスケットボール用シューズでは、アディダスとコンバースの2社に大きく水をあけられていた。
テコ入れのため雇われたソニーは、バスケットボールに詳しく、試合のビデオを見ては研究に励んでいた。自社製品の宣伝のため、どの選手を契約を結ぶかの会議の中、ソニーはこれまで数人の選手に予算を割り振る従来のやり方を覆し、ある有望選手に全予算を投じるアイディアを持ちかける。その選手こそ後の名選手マイケル・ジョーダンであった。彼に対し、他社をも巻き込む争奪戦が始まった。
アメリカ人の好きそうなビジネスサクセスストーリーです。主役のマット・デイモンはこういった、ひたむきに頑張る人物の役が多いですが、今回もラスト近くで演説ぶつシーンがはまります。
元の話が感動的なんだから、感動的にならないとおかしいし、その意味で実に安定の内容です。逆に言えばこれと言って特筆すべき点も無いなあ。印象に残ったのは最後のプレゼンが終わって電話を待つシーンのハラハラ具合とか。
外しはしませんので、週末のお楽しみにいかがでしょうか。はい。