模型づくりとか趣味の日々リターンズ -13ページ目

【映画評】65 いかにも配信専用っぽい、低予算ほどほど娯楽SFアクション

65でございます。

 

Amazonprimeのオリジナル作品です。これもアレですね。配信会社の製作モノにありがちな、一人だけ有名俳優出すけど低予算映画だし出来はほどほど。

ぶっちゃけ言ってしまえば観なくても困らない類のものですが観たらそれなりに楽しめる、というモノ。

 

はるか昔、宇宙の果てにいる生命体のパイロットが宇宙の探検に乗り出す途上で隕石群に遭い不時着。その不時着した先が恐竜の闊歩する6万5千年前の地球だった。パイロットは生き残った唯一の乗員の少女と2人、救命艇の落ちた地点まで徒歩で移動しなければならない。やがて数時間後に地球に大隕石が墜落するとわかり…

 

昔の宇宙人の見た目が人間そのものというのが既にアレだけど、まあそこは置いといてw

ジュラシックパークやらアバターを思わせる、大小の恐竜に襲われたり撃退したりの流れがメイン。古代の地球の森はなにやらコロラドあたりにありそうな景色で、やけに地面が平らで全力疾走しても転ばない!言葉の通じない少女との徒歩移動は、なにやらNetflixのオリジナル映画「ミッドナイトスカイ」を思わせるが、こちらの方がだいぶマシ。そこはやはりアダム・ドライバーの手抜きの無い演技に支えられている。話が進むほどに事故やらケガやらで、だんだんと体がヘロヘロになる。高い木から落ちて「うむおおおう」と痛がる。足引きずって走る。その芝居ひとつひとつが中々に説得力がある。

 

まあ観なくても困ることはないが、まずまず楽しめますので、お正月のお楽しみにどうぞ(明日から仕事だけど)。

【読書記】『還暦不行届』マンガじゃなくてエッセイです これがオトナの事情か…

『還暦不行届』でございます。庵野秀明監督と漫画家安野モヨコ夫妻の日々を描いた傑作エッセイコミック『監督不行届』の続編です。

 

『監督不行届』は159pで800円。『還暦不行届』は240pで1600円。『監督』が1Pあたり5.0円で『還暦』は同6.7円と、後者が割高と言ってしまって良いのかどうかわかりませんが。

 

問題は、『還暦』がマンガでなくてエッセイ、しかも紙面スカスカで、エッセイとしてもさして面白くも無いことです。

庵野監督のウォッチャーで、病んでた時期について夫人がいかに支えていたか、等々知りたい人でもなければ、この文章にはさして魅力を感じないでしょう。そもそも暗いし楽しくも無い。

 

ところどころにマンガがあると思ったら、前作からの抜き書きだったり。

ラストにやや長めのマンガがあると思ったら、youtubeで見放題の「おおきなカブ(株)」のマンガ版だったり。

おそらく出版社から「続編出して」の要望が強くあったんだろうなあ。

あとがきで作者自身が「マンガの量は少なめですが」と言い訳ともつかない言葉を書いてますが、その辺の大人の事情が垣間見えて少々切ないです。

半分で読むの止めました。同じ額だしていくらでも面白いエッセイや小説買えますし。金を生むマニア相手の商売を読者も見切る必要があるなと自省した次第です。

【読書記】『幽玄F』 中二病氏の迷惑千万な物語

『幽玄F』でございます。

 

直木賞受賞の大傑作『テスカトリポカ』をモノした佐藤究氏の最新作長編でございます。

 

『テスカトリポア』はすごかった。読むほどにアステカの神の呪術に自身が取り込まれているかのような錯覚を覚え、夜な夜な喰らいつくように読みふけった(あるいは自分が本に喰らわれているのでは)ことを思い出します。

 

まあそうは言っても、そう簡単に賞獲得レベルの傑作を乱発出来る訳も無く。

佐藤氏には次回作を期待したいです。

 

主人公の易永透は幼少のころより飛行機に憧れ、高校生で初めて戦闘機を見てからは戦闘機のパイロットを志し、心身と鍛え勉学に励み、航空機マニアの一人を除いては友人も作らず、遂に航空自衛隊でパイロットとなる。周囲には変わり者と呼ばれつつもその技量には秀でたものがあり重用されるも、訓練中の事故で戦闘機パイロットとしての道を断たれる。

 

その後は東南アジアで民間の遊覧飛行パイロットとなり糊口をしのぐ日々を送る。さしたる目標も無く過ごす日々が長く続くも、思いもよらぬ方向で再び戦闘機に乗れるチャンスを掴む。その実現のため彼は奔走し地元ゲリラとすら接触を持ち、ついに夢を実現する。

 

え~と…

帯に「三島由紀夫」に挑んだなどと書かれていますが、三島に詳しくない私は(学生のころに文庫を1冊か2冊読んだ気がするが、なんかぜんぜんピンとこなかった)この作品が三島してるのかどうか解りかねます。

作中には「護国」「天誅」「義」などの言葉がちりばめられ、この辺が三島っぽい感じもしますが、それが易永の行動を変えるものでもない。

易永の行動は徹頭徹尾、「戦闘機に乗りたい」という動機からのみ発生していて、そこにつながらない行為は生活のため以上の意味を持たない。

ついに戦闘機に乗れても、それでなにかをするわけでも無く(日本に戻ってクーデターでも起こすのかと思ったがさにあらず)、ただ撃墜されておしまい。

それを実現するプロセスで、何人の人を殺めるかもわからない兵器を売り渡すという行為をする。自身で「世界にたいする裏切り」と理解しているにも関わらず。

 

なんでそれが自身で納得できちゃうのか。それが出来る分別の無さは中二病こじらせ以外の何物でもないだろうよ。単に迷惑なだけなんだこの人。それがこの物語の狙いだというんなら、この本にはなんの感心も持てないっす。以上。