西洋の油絵を模した泥絵
過日、泥絵に関して触れましたが今日も少々。
泥絵とは、西洋の油絵を模したスタイルで、
普通の絵の具に胡粉という白い絵の具を混ぜて描かれます。
そして西洋画法よろしく遠近法も用いられた絵。
描き方のポイントとしては、
画面上部というか過半に鮮烈な蒼い空が描かれ、
建造物や風景に混じって描かれる人物像は、
そのほとんどが小さく、なおかつデフォルメされ、
一般的には顔の表情を窺うことは困難を極めます。
ゆえに見方によって泥絵の解釈は、
稚拙さがばかりが前面に強く映し出されてしまうこともあり、
おのずとその作品評価を下げる要因になったかもしれません。
幕末期から明治時代にかけて描かれ、
遠近法を強調した洋風らしさが受けて流行したとのことですが、
世上に多く流通した浮世絵とは異なり、
泥絵は一時期の興隆を経て、終息に向かっていったとされます。
それゆえに泥絵に関して詳しいことが残っておらず、
加えて作品自体に落款がないのも多く、作者名もほとんど不明。
江戸名所などが多く描かれたとのことですので、
土産物品のような扱いになっていた絵であったとも思われます。
既述のような色々な点を考察しながらも、
民藝運動の主唱者で美術評論家として著名な柳宗悦は、
泥絵のことを「民衆絵画」として評価をしていました。
個人的にも以前から泥絵のことが気にかかっていて、
東京神田の古書店街で額入りの泥絵を一枚購入しました。
「神奈川沖遠景」と題する泥絵で、
相模湾の海原にアメリカ蒸気船が浮かんでいる内容。
泥絵は錦絵の武者絵などと異なり、
絵からの躍動感を受け取れず、むしろ静的な感覚が漂う感じ。
かえってこれらが一つの魅力と捉えられるかもしれません。
過日にそんな泥絵の新たなる一枚を購入することになりました。
その内容に関してはまた明日にでも。