大阪の I さんのLP−Std
2016 1005
今日のヨコハマはまだ晴れてます。
本日のメニューは大阪のI さんご依頼のギブソンLP−Stdの指板修正&リフレット、そしてニアCF加工でのフレット加工、新たにWBHナット交換です。
このLPは以前にt.m.p tuneが施された個体です。
このレスポールはバインディングエッジのフレット仕様からオーバーバインディング仕様に変更となりフレット横幅がバインディング厚分広くなりますのでナットの弦溝ピッチも少し広がる関係上、ナットも作り変える必要があります。
また例によって、このギブソンもネックの仕込み角が深く、4.5度で仕込まれていますので、ずっしりした個体の割に音の定位が高めなので指板の上面角を0.3度変更して仕上げていきます。この角度が0.1度下がるとブリッジの位置では高さ変動が約1ミリ変化しますので、たかが0.1度!ってバカに出来ないのですよ。
技術屋さんなら「0.1を笑うものは0.1に泣く」って肝に据えましょうね。
写真は元のフレットを抜き去り、指板上面角を修正した直後のショットです。
そこそこ指板材に削りを加えましたので一晩寝かして様子を見ます。
リフレットが終わったら、そこからニアCF加工に移行します。
今回は1〜6弦の内角が89.318度ですから両サイドの弦の延長線上の交点は0フレットから1512.134ミリ先にあります。12フレットでは1824.134ミリの半円ということになります。
なぜ、数値を公表しているかと申しましたら、ワタシが死んだらこの設定でどなたかがメンテなりリペアーなりをすることになると思うからです。なので設定数値を残しているんです。
I さん、明日からフレット打ちを行い次にニアCF加工に進めますのでお楽しみにお待ち下さい。
ギタリスト Sさんの7弦ガット
2016 1004
本日のメニューはギタリスト Sさんの持ち込まれた7弦ガットのニアCF加工とWBHナット加工の仕上げです。
ギター族の中でもナット幅設定とブリッジサドルのピッチ設定の差が少ないのがガットギターです。その為にノーマルフレッティングであってもエレキ系の楽器よりもピッチズレは少ないのですが、それでも不協和音は免れませんからCF加工を行う価値は充分あります。
実際にこの個体は7弦ですから1本弦が多い分、各弦の不協性は余計に気になります。
今回もナットにおける弦間隔とサドルでの弦間隔と弦長設定から弦の延びる内角を求め、そこからナットの上方にある1、7弦の交点位置を算出してナットの0フレットのCF/R(円弧半径値)や各フレット上でのCF/R値を得て加工を進めました。
その算出結果、今回は0フレットから2m以上も離れた位置が起点でしたから0フレットでの円弧半径も2メートルを超えています。
結果的にガットギターでこんなに音程が出てる個体は初めてです。全体がひとつのスケールに統一されたフレッティングでしか得られない音程感と和音の美しさはたいへん魅力的です。
このニアCF加工を依頼された方が、他の手持ち楽器もニアCF加工に持ち込んで来られるのも至極当然だと思いますね。
ワタシ自身、もうノーマルフレッティングのままの楽器を弾きたいとは思いませんね。
近々、ニアCF加工で持ち込まれる楽器の到着が数本予定されてますので、またリポート致します。
JB系規格ベースへのCF設定
2016 1003
また大きな台風が発生してます。
以前は作業で塗装を頻繁に行っていましたから天候に大きく作業進行が影響していましたが、今ではその心配も少なくなり、更に屋外での塗装で何リットルものラッカーやシンナーの吹き返しを浴びることがなくなりましたから体調が良くなりましたね。
今日はベーシスト Kさんご依頼のFJ製のジャガーベース(基本的にはJB設定モデル)のニアCF加工とWBHナットへの交換、仕込み設定変更の作業を行っていました。
このモデルは限定生産品の様子ですが、基本的にはジャズベース規格ですので、算出値は 0フレットでのCF値が887,994ミリ、そして12フレットでは1319,994ミリです。
以上、ネックの仕込み部にも手を加えて今回も無事に作業は終了。
ちなみに今回の仕込み部分は通常のタイト設定で、フローティング設定ではありません。
*フローティング設定とは:
フェンダー80’sの3点止めネックのベースの鳴りを好まれるプレイヤーさんは結構多いのですが、なんせアジャスタブルの3点止め方式はネックとボディの接面積が少なく、80’s製造品は塗装も分厚い為にネックとボディの仕込み部での密着度は低く隙間だらけなんです。
その為にネックがすぐにズレ易いので4点止めに変更して欲しいと昔から要望があるのですが、そこでネックとボディの仕込み部を精度を上げて密着させ4点止めに変更すると、元の3点止めの楽器特有のコンプレッションサウンドが出なくなっちゃうのです。これはネックの仕込み部とボディの仕込み部をがっちり密着させることで、がっしりした鳴りに変化してしまう為です。
通常、JB/PB系のネックとボディが接する面積は約90cm2ですが、3点止めの楽器はその半分も密着していない為に「ブーーン」とは響かず「ブンッ」とすぐに音が減衰する傾向になります。
それが、ロングトーンの楽器の場合は音の長さを音符に合わせて短くしたい場合、ミュートしたり弾く強さをコントロールしないといけなくなりますが、80’s/3点止めのベースの場合にはそもそも「ズドーン」とは鳴らないので音の強弱や長さをコントロールし易いのです。
しかもそれがスラップ時のコンプレッション掛かった独特の跳ねる鳴りにもなっている為に、あの鳴り方が好き!って人もかなり多いのです。
その独特な鳴りを再現するにはネックの底面とL字側面の全てをしっかり密着させてはダメなんです。
かと言って、元の3点止めの様にネックがすぐに首を振ってしまうのは問題ですからその双方を解消する為には密着させるのはネックのL字側面部分(ネックの低音弦側と端末の断面のL字部分/底の平面部分を除く)だけにして、あえて底面を名刺1枚挟める程度僅かに隙間を与えたフロート設定の4点止めにしてやると、ドーンと言うがっしりした鳴りにはならず、かと言ってネックがすぐに首を振っちゃう、と言うトラブルも防げるのです。
勿論、どの程度の強さでネックとボディを密着させるかでも音は変化します。
このライトな鳴り方はオールディーズ系やリバプールサウンドを好む方にも適しています。
音が重けりゃいいってわけじゃないですから音の重さ感は重要なエレメントです。
また、フローティング設定の場合では4本のネックセットスクリューを太いものに変更してボディの4つの縦穴にスクリューをねじ込む様にしてセットします。
*(通常ではネックセットスクリューはボディの縦穴径が太い為にスカスカの状態)それをボディにもスクリューが、ねじ込まれた状態でセットしますとネックの底面に少し隙間を与えてもネックがガタ付くことは防げますしダイナミクスは増加します。
ちなみに、L字断面さえ密着しているだけで接面積の30%を確保出来きます。
ネックとボディの仕込み平面部分をがっしり密着させたり、軽く圧着する程度にしたり、僅かにフローティングさせたりすることで音質音色は変化しますので、それを音作りに利用するのです。その設定を変更できるようにするためにもネックセットスクリューは太めのものを使用してボディに食い込ませる様にします。
まあ早い話が、何でもネックとボディをより広く密着させてあれば良い、と言うそんな単純なものではなく、最終的な鳴り方/サウンドを目的とした場合、あえて接面積を落としてあげないと出せない音質音色もあると言うことです。
以上、参考までに。
ニアCF加工/B-25の場合
2016 1001
10月突入ですね。早いですね〜
写真はギタリスト YさんからニアCF加工でのリフレットのご依頼で持ち込まれた、オールド/ギブソンのB-25です。
この楽器の場合のCF値はナット部分での1と6弦の間隔、そして630ミリ離れた位置にあるサドルでの1と6弦の間隔から、弦の内側への傾斜角度が89.18度であることが算出できます。
この角度でナットのずっと先にある両サイドの弦の交点を算出しますと交点から0フレットまでの距離が1222.69ミリ、これが12フレット位置では0フレから312ミリ離れてますから1534.69ミリと言う数値が求めることが出来ます。この数値で円弧状にフレットが設定されていれば、全弦がひとつのスケール上でのフレッティングに統一され、従来の単に平行にフレットを設定されていた場合と比較して音程がずっとキレイに整います。とてもシンプルな話なのです。
今回の写真は単にこのB-25の場合での 0フレットの円弧数値を求めるためですから0フレットからおよそ1m20cm離れたところに円弧起点があるわけですが、これが最終フレット位置まで円弧ラインをマーキングするには治具のシャフトを延長してマーキングすることになるためにエラく場所を取るというわけです。ましてや更に弦長が長いベースの場合などシャフトの長さたるや、もうウンザリします。(`△`;
とは言え、ニアCF加工済みの楽器を弾かれたプレイヤーの皆さんの喜ぶ顔を見たら作業の苦労はサラリと流れていきます。
ノーマルフレッティングのままでピッチの悪さを我慢しながらプレイする必要なんて、もう無いのですよ。過去の設定に拘らず是非お試しくださいね。
弾き始めたとたん、笑顔になりますよ。
(^0^)ご依頼をお待ちしています。
この長〜いのがシャフト部分
デカイ治具
2016 0930
9月も終わりですね〜
今日は、ニアCF加工の際に弦長も規格も違う楽器のサークルフレッティングの円弧状のR出し加工はどのようにやっているのですか?とのご質問に対してです。
基本的にはナットとサドルの両サイドの弦溝の延長上の交点が基準となりますので、まずはどんな規格設定の楽器であっても両脇に張ってある弦の延長上のヘッドのずっと先に位置する交点を計算で求めます。
その交点からまず0フレット位置にマーキングピンをセットしてそこでの円弧状のラインをナットにマーキングします。
あとは1フレット、2フレットとスケール割りした距離を加算させた位置までマーキングピンを移動させて同じように円弧状にラインマーキングして各フレットのマーキングからブリッジ側の側面を1本1本ヤスリ加工していきます。(写真)
写真の左側のずっと先にある交点から長々とアームが延びております。
これで結果的にCFと同じ状態になります。この場合、元に打ってあるフレットが非常に細いタイプですと幅にゆとりが無いのでこの作業が出来ません。ミディアムサイズ以上のフレットであれば問題なく処理可能です。
とにかく、このCF位置出し治具は全長が1.5mを超えますのでデカイ!
やたら場所とって仕方ない。
もう大昔のことですが、初期のワタシが行っていたCFSのフレット溝加工は、この治具の先に細〜いビットを取り付けた小型のルーターを固定して円弧状のフレット溝を浅く入れて、それをあぜ挽きノコで適正な深さまで溝切りを行っていました。
計算で割り出した数値に合わせて正にアナログ極まりない加工でしたね。
こうしたこれまでに無かったアイテムの開発は設計と治具作りから始まるのです。
それを1から全て自分ひとりで行うか、会社組織で行うかの違いですね。
現代ではCFSのパテント譲渡先であるフジゲンさんがプログラミングマシン加工でCFSの指板及びCFS仕様の楽器を正確丁寧に製作されていらっしゃいます。
喜んで頂けると思います。
2016 0928
蒸し蒸しした1日でした。
企業さんとのスピーカー開発は、なんせお相手が企業さんですから今やってることは来年からのお話。しかも国内の老舗オーディオメーカーさんは今や外資の傘下にあって、もはや純粋な国内メーカーさんではないので話がややこしい。早い話が長期戦です。
そんな訳で、じゃあまたギターの製作以外の仕事で何か始めるか、という事で
とっておきの技を活かした皆さんが喜びそうなことを始めたのがニアCF加工です。
早くも連日 作業依頼を頂いております。ありがとうございます。
皆さんノーマルフレッティング仕様の楽器のピッチの悪さが悩みの種でしたでしょうから、新たな技に興味津々と言った様子で各地から問い合わせを頂いています。
写真はニアCF加工済みの個体達です。
サークルフレッティング設定の算出値を元にナットとフレットを加工して仕上げます。考案者ならではの奥の手的な技であります。蛇の道は蛇ってやつですね。
和音/コードの響きがCF仕様と比較しても遜色無いので喜んで頂いています。
通常のレスポール、フルアコ、多弦ベースにも、セットネック/デタッチャブル関係なしに作業可能ですのでお勧めです。元のピッチの不協性のストレスから解放されますよ。まずはメールをくださいね。
ニア CF 加工について
2016 0927
サークルフレッティングを考案してから、長らく年月が経過し、その間ノーマルフレッティングのCF化の作業も数多く対応させて参りましたが、セットネック仕様の楽器へは高額な工賃が掛かるCF指板に貼り替え作業以外に対応策がありませんでした。
今回は指板を貼り替える必要も無く、しかも安価でCF仕様に近いピッチ感が得られる加工技法を編み出しましたのでご要望の方には受け付けさせて頂きますね。
それが[ ニアCF加工 ]とネーミングした新たな技法です。
そもそも随分昔の話になりますが、30年以上前にはNCマシンによるCF溝加工が出来なかったものですから関数計算から導き出したナットを含む各フレッティングR値での溝加工の手法を流用して今回はナットとフレットの形状変更を行うことで結果的にCFに近いピッチ感を備えさせるに至っております。
試験にあたってはノーマルフレッティングのセットネック仕様の楽器にこの作業を施し、サークルフレッティング仕様の楽器で普段から演奏しているプレイヤーさん達に試奏して頂いた結果、CF仕様の楽器と比較してもピッチ感の良さは遜色無い、と非常に良好な評価を頂いております。
但し、このニアCF加工を行うには
元のフレットの現状が良好な高さと形状を保っている事と、ネック自体に捻れや波打ちなどのトラブルが無い事が前提となります。
状態により、指板修正とリフレットが必要になります。
工賃は元のフレットとネックの状態が正常でフェンダー系のミディアムサイズのフレット仕様への加工で¥13.000〜15.000
ジャンボフレットタイプへの処理加工で ¥15.000〜17.000を目安として下さい。
*状態により多少コストは異なります。
くれぐれも、現状フレットにエグれがあったり、フレット高が低くペタペタの高さの場合、また指板自体にトラブルを抱えている場合にはリフレット作業が前提でのニア CF加工処理となりますので、その点をご了承の上お申し込み下さい。
指板修正&リフレットの場合、セルバインディング仕様で¥46.000〜
セルバインディング無しの場合で¥43.000〜を目安として下さい。
(メイプル指板はセル無しでも塗装処理がある為、¥48.000〜)
エレキ、アコギ、ギター、ベース、またデタッチャブル/セットネック方式を問わず処理可能です。
従来のコード和音の不協性など、ピッチの悪さでお悩みの方はこの手法がお役に立てると思います。殆どピッチ感に関しては気にならないレベルにまとまります。
お申込み後、楽器が到着次第あらためてお見積もり致しますので、まずメールにてご連絡ください。
@あまりに神経質な方はご遠慮くださいね〜
お問い合わせに関して
2016 0907
相変わらず台風がまるでセール中みたいに放出されてますね。
現在、チューン作業などのご依頼を相変わらずのペース行わせて頂いておりますが、
「受けていただける作業内容を教えてください」とのお問い合わせを多数頂戴しておりますので、ここにお知らせさせて頂きますね。
受注可能な作業項目:
*以前からご要望が多い「t.m.p 製に限らず」に変更して受注いたします。
(エレクトリック&アコースティックのギター&ベース限定)
指板修正&リフレット、WBHナット&サドル加工、
既存楽器へのリビルド作業(セッティング変更/鳴りの向上を目的としたチューン)
電装パーツ系(ポット、SW、ジャック、フラットケーブル配線処理、
LCV(ローカットヴォリューム回路)回路変更作業、
アコースティックギターのブリッジ段差加工&ボールエンド位置修正
以上が受付可能な作業内容となります。詳しくはメールにてお問い合わせください。
注)現在、カスタム製作、燻煙処理、ボディ塗装処理作業は終了致しております。
再度 お知らせ
残暑お見舞いを申し上げます。
カスタム製作を終了してから早くも8月が終了ですね。
その後もどうしてもリフレット作業などは受けていただきたいとのご要望が多く、月に数本のペースでリフレット作業や現状の状態を組み上げ直すリビルド作業を行わせて頂いております。
そんな中でそろそろ専用のフレットや t.m.pのパーツやピックアップの在庫も尽きてきましたのでお知らせを致しておきます。
特にリフレットのご要望の方はお早めにどうぞ。
尚、新たな t.m.p のHPは現在スピーカー関連での企業さんとの動向が見切れていないために、現状で何を何処まで公表して良いかの判断に迷う状況ですので、もう暫くはオープン出来そうに無いのが実情です。時期が参りましたらリニューアルオープン致しますのでお楽しみにお待ちくださいませ。