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還暦建築士の日記:リフォーム百科事典

YouTube『リフォーム百科事典』を主宰する田口が、住まいと人生の最適解を求めるために、自分で意思決定して自分の人生を歩むため家つくりについてのヒントをお届けします
 

TOTOとINAX(リクシル)の歴史から見るトイレ業界の歩み

 

今日は、日本を代表するトイレメーカー「TOTO」と「INAX」についてお話しします。ただ、どちらが良い悪いという商品比較ではなく、両社の歴史や考え方を見てみたいと思います。

 

TOTOの始まり

 

TOTO(東洋陶器)の創業者、大倉和親さんは、明治時代の終わりごろにヨーロッパを視察しました。そのとき、現地の衛生陶器、つまりトイレや洗面器などを見て、「日本にもこれが必要だ!」と感じたのが始まりです。そして、日本で初めて衛生陶器の開発をスタートさせました。

 

しかし、大倉さん一人では普及は難しいと考え、同じような道を志していた伊奈家(INAX)に技術や資金を提供しました。こうして両社は協力しながら、日本中にトイレ文化を広めていったのです。

 

TOTOの2代目社長への手紙

 

TOTO創業者の大倉さんが2代目社長に送った手紙には、こんな内容が書かれていました:

「親切が大事。お客様のために良い商品を提供することが、会社の正しい道です。利益はその歩みとして生まれる影のようなものだ。影を追い求めてはいけません。」

 

この言葉は、TOTOの社員たちに今でも受け継がれています。「お客様のため」を第一に考える会社のあり方を示しているのです。

 

INAXの変化

一方で、INAXは戦後もTOTOと共に森村財閥の一員として発展していきました。TOTOとは兄弟会社のような関係にありましたが、現在はリクシルの一部となっています。リクシルは、複数の異なる会社が合併してできた企業で、その結果、昔ながらのINAXらしい考え方や理念が薄れてきていると感じる部分もあります。

 

どちらを選ぶべき?

 

私の個人的な意見ですが、明治から続く理念をしっかり守り続けているTOTOには、特別な魅力があると感じます。「お客様のために」という考え方が商品にも現れていて、今でもその創業者の信念を大切にしているのです。

 

もちろん、INAXにも素晴らしい歴史と技術がありますが、経営方針や社風が変わってきている印象を受けるのも事実です。どちらが良いかは人それぞれですが、歴史や理念に共感できる会社を選ぶのも、面白い選択肢ではないでしょうか。

 

 

トイレひとつにも、こんな深い歴史や物語があるなんて、少し驚きますよね?これを機会に、トイレ選びをちょっと違う視点で考えてみてはいかがでしょうか。

 

/ 田口寛英

耐震診断の仕事は、きれい事では済まない話

 

今日は、私が30年近く続けてきた「耐震診断」の仕事についてお話しします。特に、耐震診断や補強工事が「きれい事では済まない」という現実について触れてみたいと思います。

 

30年前、阪神淡路大震災が起きたとき、日本中で耐震補強が必要な家が3000万戸から4000万戸もあると言われていました。それをすべて診断して、補強工事を行うなんて、善意だけでは絶対にできません。結局、そこには収益性、つまりビジネスとして成り立つ仕組みが必要になります。だからこそ、多くの会社が耐震補強の分野に参入してきたわけです。

 

けれども、ここに矛盾や違和感を感じることもあります。例えば、耐震診断を営業活動の一環として行い、不安を煽るような形で高額な工事を提案するケースもあるかもしれません。もちろん、すべてがそうではありませんが、ビジネスの一部として耐震補強を扱う以上、こういった問題がつきまとうのも事実です。

 

「家を守る」「地震から命を守る」という目的と、「ビジネスとして利益を上げる」という現実は、ときに相反するものです。本来、家や地域を守ることはお金とは無関係であるべきだと思いますが、現実問題として誰も収益を得られないなら、耐震補強の仕事に取り組む人はいなくなってしまう。それが、この仕事の難しいところです。

 

私自身、この矛盾の中でずっと悩みながら仕事をしてきました。地震で家が壊れれば、家族が住む場所も、地域そのものも失われてしまう。だからこそ、どれだけ利益が絡んでも、本当に意味のある耐震補強を続けるべきだと信じています。

 

耐震診断の仕事は決してきれい事では済みません。でもその中でも、自分が何を大切にすべきかを問い続けながら、これからも家や地域を守るお手伝いをしていきたいと思っています。

 

屋根を軽くするだけでは地震対策にならない?

耐震補強の正しい優先順位

 

地震対策の話題になると、よく耳にするのが「屋根が軽いと地震に強い」というフレーズです。確かに、屋根を軽くすることは耐震性を高める一つの方法ですが、これだけに頼るのは間違いです。今日はその理由と、耐震補強の正しい優先順位についてお話しします。

 

まず、「屋根を軽くする」という選択肢が耐震性に与える影響についてです。屋根を軽量化することで、耐震診断の評点が2割から3割ほど良くなると言われています。これは確かなことで、屋根の重量が建物全体にかかる負担を軽減するため、地震に強くなるのは事実です。しかし、問題はここにかかるコスト。屋根を軽量化するためのリフォームには、約200万円ほどの費用がかかることが一般的です。

 

ここで考えてほしいのが、「その200万円をどう使うのが最も効果的か?」という点です。答えは明確で、まずは壁の補強を優先するべきです。壁を強くすること、具体的には筋交いを増やしたり、構造的にしっかりした壁を新たに設けたりすることが、耐震補強の第一歩です。なぜなら、屋根がいくら軽くても、壁が弱ければ建物全体が壊れてしまう可能性があるからです。

 

壁の補強を行うことで、建物の耐震性が飛躍的に向上します。そして、どうしても耐震性が足りない場合に初めて、屋根の軽量化を検討すれば良いのです。特に昔の農家のように南側が廊下や窓ばかりで補強できる壁がないような場合は、仕方なく屋根を軽くするという選択肢になりますが、それはあくまで最後の手段です。

 

また、「金具を付ければ地震に強くなる」という話もよく耳にしますが、これも完全に正しいわけではありません。金具は壁を補強した際に、それをさらに強化するために必要なものです。つまり、壁の補強をしていない状態で金具だけ付けても、大きな効果は期待できません。順番が重要なのです。

 

ここでまとめると、耐震補強の正しい優先順位は以下の通りです:

    1.    壁の補強を行う(筋交いや構造的な壁を増やす)。

    2.    壁を補強した際に、必要な金具を適切に取り付ける。

    3.    それでも足りない場合に、屋根を軽量化する。

 

一部の業者さんの中には、「屋根を軽くすれば地震に強くなる」と単純に屋根のリフォームを勧めてくる場合があります。しかし、これでは本当に家を守ることにはなりません。耐震補強の正しい順番を理解し、必要な対策を計画的に行うことが、安心して暮らせる住まいづくりの第一歩です。

 

地震対策は命や財産を守るための大切な投資です。正しい知識を持って、無駄のない補強を目指しましょう!

 

/ 田口寛英

耐震診断の曖昧さと正確性の問題

 

今日は、耐震診断や耐震補強について、その曖昧さ、不正確さ、そして専門家と住む人の立場の違いについてお話ししたいと思います。

 

まず、耐震診断とは何のために行うのでしょうか?答えはシンプルです。命を守るため、そして財産を守るためです。

しかし、その診断の正確性や手法については、多くの疑問が残るのが現状です。

 

例えば、これを医療に置き換えてみましょう。

皆さんが健康診断を受け、その結果、お医者様から「手術をしましょう」と言われたら、どう思いますか?

多くの人は、「本当に必要なのか?」「きちんとした検査をしてから判断してくれ」と疑問に感じるはずです。

同じことが耐震診断にも当てはまります。

 

耐震診断には大きく分けて2つの方法があります。ひとつは建物を壊さずに行う「一般診断法」、もうひとつは建物を壊して調べる「精密診断法」です。

現実にはほとんどが「一般診断法」によって行われています。この方法は建物を壊さないためコストを抑えられますが、診断結果が曖昧になるという問題があります。

診断者の技術や経験、考え方、さらには利益を優先するような意図によって、評価が大きく変わる可能性があるのです。

 

さらに、耐震診断の結果は行政の考え方によっても大きく左右されます。

同じ建物でも、地域によって評価が変わることがあるのです。例えば、2割3割違うことすらあります。

私がさいたま市だけでなく、全国各地で耐震診断を行ってきた経験や、セカンドオピニオの相談を受ける中で何度も目にしてきました。

 

こうした現状を踏まえると、耐震診断の結果や評点を鵜呑みにするのは危険だと言わざるを得ません。

補強工事を進める際にも、その計画をそのまま受け入れるのではなく、セカンドオピニオンを求めたり、きちんとした説明を依頼したりすることが大切です。無駄な工事を避け、業者の言いなりになる必要はありません。

 

耐震診断は、診断する人の技術や考え方一つで結果が変わり、助成金制度を利用する場合は行政区域の方針次第で数値が左右されます。それほどに耐震診断は曖昧なものであるということを、ぜひ覚えておいていただきたいです。

 

命を守るための耐震診断だからこそ、正確で透明性のある判断を求めていきましょう。

そして、疑問を感じたら必ず専門家に確認し、必要に応じて別の意見を取り入れることで、納得のいく選択をしてください。

 

/ 田口寛英

タカラスタンダードが嫌われる理由とその魅力

 

リフォーム業界において、タカラスタンダードというメーカーは「値引きしないメーカー」として知られています。この事実から、「タカラはやめたほうがいい」と勧める業者も少なくありません。では、実際のところ、タカラスタンダードはどうなのでしょうか?

 

実は私も昔はタカラスタンダードが嫌いでした。メーカーとしてどこか高飛車で、上から目線という印象があり、正直付き合いにくい存在だと思っていました。ただ、今になって冷静に考えると、この「上から目線」の背景には、自社の商品に対する絶対的な自信があるのだと気づいたのです。

 

タカラスタンダードの商品は、特に「ホーロー製品」の品質が素晴らしいとされています。この「品質に絶対の自信を持つ姿勢」こそが、値引きをしない理由の一つです。無理に営業を仕掛けるようなこともなく、商品そのものの良さで勝負する会社。だからこそ、業界内では嫌われがちな面があるのかもしれません。

 

また、値引きしないことで、タカラスタンダードの価格は非常に明快です。カタログに記載された価格が、実際にユーザーの手に届く価格とほぼ一致するため、他メーカーのように「この商品は何%引き」「あの商品は違う割引率」といった複雑な計算をしなくても済みます。この点は、一般の消費者にとって非常にわかりやすいポイントです。

 

さらに、業者の都合で値引き率を操作して「今がお得ですよ!」と煽るような販売手法ができないという点も、タカラスタンダードの特徴です。これは、消費者にとっての透明性を確保するだけでなく、「目先の値引き」に惑わされることなく、本当に必要な商品を適正価格で購入できる環境を提供しているとも言えます。

 

こうした理由から、リフォーム業界内ではタカラスタンダードを嫌う業者もいます。しかし、消費者目線で考えれば、良心的な価格設定と高品質な商品構成は、非常に魅力的です。特に、リフォームという大きな買い物において、価格の明確さや商品の信頼性は何よりも大切です。

 

最初は私も距離を置いていたタカラスタンダードですが、今では胸を張っておすすめできるメーカーだと感じています。「高品質で長く使えるものを」という方には、ぜひ検討してほしいブランドです。