屋根を軽くするだけでは地震対策にならない?
耐震補強の正しい優先順位
地震対策の話題になると、よく耳にするのが「屋根が軽いと地震に強い」というフレーズです。確かに、屋根を軽くすることは耐震性を高める一つの方法ですが、これだけに頼るのは間違いです。今日はその理由と、耐震補強の正しい優先順位についてお話しします。
まず、「屋根を軽くする」という選択肢が耐震性に与える影響についてです。屋根を軽量化することで、耐震診断の評点が2割から3割ほど良くなると言われています。これは確かなことで、屋根の重量が建物全体にかかる負担を軽減するため、地震に強くなるのは事実です。しかし、問題はここにかかるコスト。屋根を軽量化するためのリフォームには、約200万円ほどの費用がかかることが一般的です。
ここで考えてほしいのが、「その200万円をどう使うのが最も効果的か?」という点です。答えは明確で、まずは壁の補強を優先するべきです。壁を強くすること、具体的には筋交いを増やしたり、構造的にしっかりした壁を新たに設けたりすることが、耐震補強の第一歩です。なぜなら、屋根がいくら軽くても、壁が弱ければ建物全体が壊れてしまう可能性があるからです。
壁の補強を行うことで、建物の耐震性が飛躍的に向上します。そして、どうしても耐震性が足りない場合に初めて、屋根の軽量化を検討すれば良いのです。特に昔の農家のように南側が廊下や窓ばかりで補強できる壁がないような場合は、仕方なく屋根を軽くするという選択肢になりますが、それはあくまで最後の手段です。
また、「金具を付ければ地震に強くなる」という話もよく耳にしますが、これも完全に正しいわけではありません。金具は壁を補強した際に、それをさらに強化するために必要なものです。つまり、壁の補強をしていない状態で金具だけ付けても、大きな効果は期待できません。順番が重要なのです。
ここでまとめると、耐震補強の正しい優先順位は以下の通りです:
1. 壁の補強を行う(筋交いや構造的な壁を増やす)。
2. 壁を補強した際に、必要な金具を適切に取り付ける。
3. それでも足りない場合に、屋根を軽量化する。
一部の業者さんの中には、「屋根を軽くすれば地震に強くなる」と単純に屋根のリフォームを勧めてくる場合があります。しかし、これでは本当に家を守ることにはなりません。耐震補強の正しい順番を理解し、必要な対策を計画的に行うことが、安心して暮らせる住まいづくりの第一歩です。
地震対策は命や財産を守るための大切な投資です。正しい知識を持って、無駄のない補強を目指しましょう!
/ 田口寛英