耐震診断の仕事は、きれい事では済まない話
今日は、私が30年近く続けてきた「耐震診断」の仕事についてお話しします。特に、耐震診断や補強工事が「きれい事では済まない」という現実について触れてみたいと思います。
30年前、阪神淡路大震災が起きたとき、日本中で耐震補強が必要な家が3000万戸から4000万戸もあると言われていました。それをすべて診断して、補強工事を行うなんて、善意だけでは絶対にできません。結局、そこには収益性、つまりビジネスとして成り立つ仕組みが必要になります。だからこそ、多くの会社が耐震補強の分野に参入してきたわけです。
けれども、ここに矛盾や違和感を感じることもあります。例えば、耐震診断を営業活動の一環として行い、不安を煽るような形で高額な工事を提案するケースもあるかもしれません。もちろん、すべてがそうではありませんが、ビジネスの一部として耐震補強を扱う以上、こういった問題がつきまとうのも事実です。
「家を守る」「地震から命を守る」という目的と、「ビジネスとして利益を上げる」という現実は、ときに相反するものです。本来、家や地域を守ることはお金とは無関係であるべきだと思いますが、現実問題として誰も収益を得られないなら、耐震補強の仕事に取り組む人はいなくなってしまう。それが、この仕事の難しいところです。
私自身、この矛盾の中でずっと悩みながら仕事をしてきました。地震で家が壊れれば、家族が住む場所も、地域そのものも失われてしまう。だからこそ、どれだけ利益が絡んでも、本当に意味のある耐震補強を続けるべきだと信じています。
耐震診断の仕事は決してきれい事では済みません。でもその中でも、自分が何を大切にすべきかを問い続けながら、これからも家や地域を守るお手伝いをしていきたいと思っています。