耐震診断について、今日は少しお話ししたいと思います。最近、YouTube「リフォーム百科事典」のチャンネルを見た全国の方からセカンドオピニオンの依頼をいただくことが増えました。
依頼の多くはこうです。「耐震診断を受けたら、点数がとても悪かった」「高額な補強工事を提案されたけど、本当に必要なのだろうか」というものです。
診断結果が「推測」で変わる理由
耐震診断の結果が必ずしも正確とは限らないという現実があります。たとえば、診断書で「0.1」という、建築基準法の求める基準の10分の1しかないという判定が出た場合でも、改めて計算し直すと「0.5」になることも珍しくありません。どうしてこんなことが起きるのかというと、耐震診断は建物を壊さずに行うため、推測に頼らざるを得ないからです。
調査データを元に計算ソフトに入力していく際、診断する人の考え方や経験によって結果が変わってしまう。これが耐震診断の限界とも言えます。
危険を煽る診断書の背景
もちろん、診断書が「危険」と示されることには意味があります。安易に「安全」と断定するよりも、「危険」と警告するほうが人々の注意を引き、耐震補強に取り組むきっかけになります。そして実際に補強工事をすることで、安全性が高まるのは事実です。
しかし、住む人の立場で考えるとどうでしょう?
多くの方が「正確な現状の診断書が欲しい」「無駄な工事は避けたい」「最低限の補強で済ませたい」と考えるのではないでしょうか。命を守ることが最優先ではありますが、それでも無駄なお金をかけたくないというのは、当然の感情だと思います。
耐震診断の現状と住む人の思いの乖離
耐震診断の専門家と住む人の間には、思いの乖離があるように感じます。診断の専門家は「念のため」の安全を重視し、住む人は「現実的な必要性」を求める。そのギャップが、時には必要のない高額な補強工事につながってしまうこともあるのです。
残念ながら、診断書を受け取った住む人の多くは建築の素人です。出された診断結果をそのまま信用するしかない場合がほとんどでしょう。でも、その結果、本当に必要だったのか疑問が残る工事をしてしまっているケースがあるかもしれません。
住む人の立場で考える耐震補強
私は、住む人の立場に立って耐震補強を考えていきたいと思っています。そのために、セカンドオピニオンという形で相談を受け付けています。診断書を見直し、現状に即したアドバイスをすることが私の役目だと考えています。
耐震診断や補強工事は、命を守るための重要な行為です。でも、それが過剰になりすぎても、逆に不安を煽るだけになってもいけません。住む人が安心して暮らせるように、適切な診断、適切な補強工事を行うことが本当の目的であるはずです。
もし耐震診断や補強工事について不安なことがあれば、ぜひ相談してください。住む人の視点に立ったアドバイスで、無駄なく安心な住まいづくりのお手伝いができればと思います。