横須賀どぶ板通り巡り人 -46ページ目

横須賀どぶ板通り巡り人

横須賀在住の主がどぶ板通りの飲み屋をメインにどぶ板の魅力を発信するサイド

夏目公一郎。


この名前をメディアで見たことのある人は多いのではないだろうか。


自分もその1人である。


株式会社アニプレックスの代表取締役という肩書きながら


数多くのアニメの企画ヒットメーカー。



冒頭に夏目公一郎の名前が登場するだけで


この作品は面白いとさえ思ってしまう。




この下記事項はあくまで自身の妄想の妄想に過ぎないが


代表取締役という仕事をしながら


この企画力。


だからこそ、


この人は少年のような人物ではないか。


と思ってしまう。


肩書きを物ともせずに


ひたすらに面白いモノの探求とイマジネーションを繰り返し


それを具現化すること。


それを飽きることなく、なんなくこなしてしまう。


そんな大人の少年像を


夏目公一郎に勝手に


イメージしてしまう。



そして、その品質の高い作品の数々から


情熱を感じつつ


本日も妄想にふける自身なのであります。








自分のことを、ガキだと自覚したあの日から


俺は少し変わったような気がする。



以前は、ただの作業と思っていたことの1つ1つに


〝仕事〟としての何かが生まれたような。


そして、それを行う人たちの姿勢みたいなモノも


教わりたいと思うようになった。



正直、教わるというより、仕事の中で盗み見る感じになる訳だが…



改めて、みんなをよく見ると始めと感じが違う。




栗栖さんは見かけは怖くて口は悪いが


意外と面倒見が倉庫一だ。


しかも頼まれた仕事以上のことをしている。


あと、アノ外見で怖がりらしい。



狩野さんは結構な完璧主義。


基本無口で私語もしないけど、仕事のことになると


根気よく丁寧に教えてくれる。


多分奥さんにはもっと優しいんだろう。


よく、メールしてるのを見る。



杉野さんは倉庫のグルメ王兼オリコン王。


とにかく、オリコンの仕事が早い。


俺が30分以上かかるのを10分で終わらせる。




ケニーは最年少の細身ながら


軽々と仕事をやってのける。


最近の興味は四文字熟語らしい。

(杉野さんと狩野さんが変な日本語を教えていたけど。)





そして、俺の研修担当。真砂さん。


この人だけは始めのイメージから変わらず…


仕事が出来る情報が以前聞いたが


基本ヘラヘラして


よく、栗栖さんを怒らせて遊んでるし。


今は俺の担当だから研修を優先して


真砂さんが仕事っぽいことをしてるところを見ない。


俺を育てるのが、今の仕事なのかもしれなけど。



真砂さんは少し変な人だ。


自分の担当正社員を〝変〟といっては失礼なんだろうと思うけど


この人からは〝怒〟みたいなイメージを連想できない。


仕事ができない俺にイライラしていいものなのに


それが全然ない。


トラブルが起きても


スルッとかわし、いつの間にか事態は落ち着いている。



いつも〝怒〟の感情に支配されていたから


特に真砂さんを異端のように感じるのか。


自分のほうが異端なのか。



異端なのは自分だ。


あんな環境で育ったせいか

俺はどんな人間の〝怒〟の感情に敏感だ。


出来れば、そんな感情に触れたくない。

触れたくないから、自分の心のなかに誰も入れない。


誰も入れなければ、怒の感情で傷つき怯えることもない。


つまり、俺は1人だ。


でもそれを寂しいとか、悲しいとか感じたことは無い。


これが合理的だからだ。


俺は、ずっとこの合理性という言葉を支えに生きてきた。


子供は親を選べない。


どんなに納得いかないことでも


正しいと思えないことでも


親に逆らうことができない自分は


合理性で自分を守り、合理的に生きてきた。


人から非難されようと知ったことではない。


その非難を買って、合理性を失って傷つくのは自分だ。



自分でも捻じ曲がっているのは自覚している。


しかし、あんあ支配的な教育で育った俺には


心に誰もいれない。


という選択が、唯一最善の道だった。



表向きには、人あたりいいキャラを演じてるといってもいい。


しかし、真に心の中に入ろうとするやつはいらない。



だから、真砂さんみたいなタイプは不思議と同時に苦手だ。


〝怒〟の感情がない人間なんていない。


いないから


今の自分がいるんだ。














悪夢から覚めて


先輩たちに謝ろうと思って起きたが


時、すでに遅し…



真砂さんを残し、皆解散していた。


罪悪感いっぱいに、とりあえず真砂さんに謝る。


「すみません。俺酔って寝てたみたいで…みんなになんて言えばいいか…」



謝られた方の真砂さんは今だグラス片手に飲みながら


「ああ、いいって!俺も栗栖も前っちがそんな酒弱いと思わずに

飲ませたし、狩野たちも心配してたくらいだし」


そんな真砂さんは酒、強いんですね…



真砂さん手酌で酒をついだ。


「狩野たちも事情つうか、心配してたけど遅くまでは残れんのよ」


「え?事情?」


「ああ。杉野は実家が家業やってて、明日朝から九州まで出張だし、


狩野の嫁さんは障害者で介護するから基本残業も飲み会もでないしな。


ケニーは明日テスト。今年にはアメリカの大学に行くからなー」


「そんなんで、みんなお前が酔いつぶれてることに呆れて帰った訳じゃないんだよ」



そっか…


俺、心の中で少しバイトしてる狩野さんや杉野さんたちを


見下してた部分があったかも。


自分は正社員で、バイトと違いはあるけど


実際、バイトの狩野さんや杉野さんより全然仕事できなくて。


どうしてバイトという立場を選択したかを考えずに


手前勝手な思考で


みんなを見下していた自分が恥ずかしい。



俺なんて仕事場では正社員の名札をつけたお荷物だ。



…ポンッ…


真砂さんに見透かされたように頭を軽くこずかれる。


「正社員とバイトの違いなんて、実はそんなにないんだよ。


出来る仕事を、出来る人が行う。


バイトはバイトの。


正社員は正社員の。


あとは、ひたすら経験の積み重ねだ。


んで、失敗した時は上のモンが責任をとる!


そんなもんだ。


簡単だろ?」



「…はい…」


俺はそれ以上の言葉が出なかった。


ただ、


今日俺は自分を初めてガキだと思った。


社会に出て、正社員になれば


大人になれていると思っていた。


俺はガキだ。


多分年齢とかじゃなく。





















自分の歓迎会で、早くも俺は潰れかけていた。


基本、酒は強くない。


しかも、父親は酒が飲めない。下戸ってやつで


遺伝子的にも飲めるのは優秀なほうかもしれない。





…頭が痛い…


…グラグラする…


完全に酔って落ちかけてる。




体がフワフワして、


空を見上げている。


…夢かぁ…


不思議と夢と冷静に判断している自分がいる。



ここは、地元の公園のベンチだ。


事実、よく来ていた。


夢に出てきても不思議じゃない。



遠くで、父親の怒鳴り声が聞こえる。


血の気が引くような恐怖が全身を走る。



我が家は父親の独裁家庭と言っていい程


父親の支配の元、成り立っていた。



幼い頃から、父親はよく世間で言う企業戦士ってやつで


しかし、家に遅い時間に帰宅しては仕事のストレスを母親に向けて


怒鳴りちらしていた。


気の小さい母親は下を向きながら、従っていた気がする。


幼い頃から、週末が一番大嫌いだった。


父親が休みで家にいるからだ。


父親が些細な気の食わないことで、怒鳴る雰囲気を察すると


4つ年上の兄と2階の押入れに二人で入った。


そして、手で耳を覆った。



父親の信念は自身の正義にあった。


それが故にその正義に反したものは家族でも許されない。


その確固たる意思があったから家族を養えたのかもしれないが


幼い頃から、独裁的教育を受けてきた俺は


常に、親に恐怖に念を感じ


逃れることのできない鎖で支配されている感覚だった。



夢に中でも父親の声が聞こえる。


最悪だ。


結局、自分は夢の中でも解放されない。


逃げたい。


もう終わりにしたいという感情から


〝あんなコト〟をした訳だが。



俺は結局、乗り越えることも


父親を克服することも


許すこともできずに


今も恐怖の支配下にいるだけなんだ。


こんな俺ができた唯一の反抗は地元を飛び出すこと。


チキン野郎もいいとこだ。



ひやりとした感覚が


夢を覚ます。


「お前、酒弱いのか?言えよー」


うっすらと目を開けると、真砂さんが


おしぼりをおでこに乗せてくれているみたいだ。



…夢から覚めてよかった…


まだ、吐き気はするが


悪夢からの帰還に安堵する。



チキン野郎だろうが


なんだろうが、俺はココにいる。



まずは、一応な主役が早々に潰れたことを


先輩に謝ろう。

…本日は俺の歓迎会にお越し頂き…

って、皆さんもう俺より出来上がってますよね?


K電気店から居酒屋などがある繁華街までは徒歩で行ける。


正社員の上がりの時間に合わせて


その日シフトが入ってないバイトさんや休日の社員が着てくれた。



しかし、何故か主役の俺が〝ウコン〟を買いにダッシュさせられて


先に居酒屋に皆は移動。


ウコン片手に皆のいる居酒屋に到着した頃には


軽くできあがっていたのだ。



…ただ単に、俺を口実に飲みたいって線も絶対あるよな?!…


とりあえず皆にウコンドリンク(自腹!!)を配る俺。



「おーい!ちょっと注目!!」


ビールジョッキ片手に真砂さんが声をかける。


そして、自分の隣の席の空間を指さす。


…ココに座れってことか…



真砂さんが俺が腰を下ろしたのを見計らって

再度言う。


「今日は一応、春から正社員になる現在研修中の前島くんこと

前っちの歓迎会でーす」


「ドンドン飲ませて、愉しませてあげましょう!! カンパーイ♪」



皆とジョッキを合わせていく。


…っていうか、俺ビール飲めないんだけど、さすがにいいづらいな…


とりあえず、苦手なビールに少し口をつける。



隣の真砂さんが


「あー、記憶無くす前に軽く紹介しとくよ」


といって、長テーブルに座る倉庫メンバーを呼んだ。



「まずは、狩野な。狩野はよく知ってるよな?」


狩野さんはウーロン茶のジョッキを上げて対応してくれた。


「前っちは気づいてるかわからんが狩野は倉庫唯一の既婚者だ」


…ええっ?全然気づかなかった。

っていうか、結婚しててフリーターって普通に生活していけるのかな?…


そんな俺の疑問を他所に、真砂さんはサクサク紹介していく。


「んで、こいつは杉野。シフトの調整で合ったことはないだろうが

バイトの中じゃ、一番のベテラン。ただ、喘息持ちと家業のせいで休みがちだがな」


「事実ですが一言多いですよ」

杉野さんんがぼそっと言う。


杉野さんの腕の太さを見ると、明らかな腕力の違いが分かる。


…身長は俺より少し高いくらいなのにな…



「そして、最後にケニー。見かけ通りのハーフくん。

ここはベース基地もあるし、地元の人間なら珍しくないんだけど。」


「本名はケネスだけど、みんなケニーって呼んでるし、倉庫の若きエースかな?」


…ケニーってハーフだけあって、足反則的に長すぎじゃね?…



「あとは…ああ。社員の栗栖ね。以上かな?」



「真砂!俺あっさりしすぎじゃね?!」

栗栖さんがヤジをいれた。


「まぁまぁ。夜は長いんだし、小出しで話していけばいいんじゃね?」

真砂さんが笑って栗栖さんの怒りを流す。



…夜は長いって…


俺は最早、飲みきれないであろうビールに暗中模索。


男6人の飲み会。


しかもほとんどの人間が初対面みたいな状態で。


大学の経験を参考にすると、あまりいい記憶は残らないはずだ。



店に来てまだ1時間も経たないうちに


「帰ります」とは言えない。


これが社会に出た下っ端研修の儀式だと思うと


俺は息を止めてビールを喉に押し込んだ。