9割フィクション小説~Door Breaching~ #6 | 横須賀どぶ板通り巡り人

横須賀どぶ板通り巡り人

横須賀在住の主がどぶ板通りの飲み屋をメインにどぶ板の魅力を発信するサイド

自分の歓迎会で、早くも俺は潰れかけていた。


基本、酒は強くない。


しかも、父親は酒が飲めない。下戸ってやつで


遺伝子的にも飲めるのは優秀なほうかもしれない。





…頭が痛い…


…グラグラする…


完全に酔って落ちかけてる。




体がフワフワして、


空を見上げている。


…夢かぁ…


不思議と夢と冷静に判断している自分がいる。



ここは、地元の公園のベンチだ。


事実、よく来ていた。


夢に出てきても不思議じゃない。



遠くで、父親の怒鳴り声が聞こえる。


血の気が引くような恐怖が全身を走る。



我が家は父親の独裁家庭と言っていい程


父親の支配の元、成り立っていた。



幼い頃から、父親はよく世間で言う企業戦士ってやつで


しかし、家に遅い時間に帰宅しては仕事のストレスを母親に向けて


怒鳴りちらしていた。


気の小さい母親は下を向きながら、従っていた気がする。


幼い頃から、週末が一番大嫌いだった。


父親が休みで家にいるからだ。


父親が些細な気の食わないことで、怒鳴る雰囲気を察すると


4つ年上の兄と2階の押入れに二人で入った。


そして、手で耳を覆った。



父親の信念は自身の正義にあった。


それが故にその正義に反したものは家族でも許されない。


その確固たる意思があったから家族を養えたのかもしれないが


幼い頃から、独裁的教育を受けてきた俺は


常に、親に恐怖に念を感じ


逃れることのできない鎖で支配されている感覚だった。



夢に中でも父親の声が聞こえる。


最悪だ。


結局、自分は夢の中でも解放されない。


逃げたい。


もう終わりにしたいという感情から


〝あんなコト〟をした訳だが。



俺は結局、乗り越えることも


父親を克服することも


許すこともできずに


今も恐怖の支配下にいるだけなんだ。


こんな俺ができた唯一の反抗は地元を飛び出すこと。


チキン野郎もいいとこだ。



ひやりとした感覚が


夢を覚ます。


「お前、酒弱いのか?言えよー」


うっすらと目を開けると、真砂さんが


おしぼりをおでこに乗せてくれているみたいだ。



…夢から覚めてよかった…


まだ、吐き気はするが


悪夢からの帰還に安堵する。



チキン野郎だろうが


なんだろうが、俺はココにいる。



まずは、一応な主役が早々に潰れたことを


先輩に謝ろう。