9割フィクション小説~Door Breaching~ #5 | 横須賀どぶ板通り巡り人

横須賀どぶ板通り巡り人

横須賀在住の主がどぶ板通りの飲み屋をメインにどぶ板の魅力を発信するサイド

…本日は俺の歓迎会にお越し頂き…

って、皆さんもう俺より出来上がってますよね?


K電気店から居酒屋などがある繁華街までは徒歩で行ける。


正社員の上がりの時間に合わせて


その日シフトが入ってないバイトさんや休日の社員が着てくれた。



しかし、何故か主役の俺が〝ウコン〟を買いにダッシュさせられて


先に居酒屋に皆は移動。


ウコン片手に皆のいる居酒屋に到着した頃には


軽くできあがっていたのだ。



…ただ単に、俺を口実に飲みたいって線も絶対あるよな?!…


とりあえず皆にウコンドリンク(自腹!!)を配る俺。



「おーい!ちょっと注目!!」


ビールジョッキ片手に真砂さんが声をかける。


そして、自分の隣の席の空間を指さす。


…ココに座れってことか…



真砂さんが俺が腰を下ろしたのを見計らって

再度言う。


「今日は一応、春から正社員になる現在研修中の前島くんこと

前っちの歓迎会でーす」


「ドンドン飲ませて、愉しませてあげましょう!! カンパーイ♪」



皆とジョッキを合わせていく。


…っていうか、俺ビール飲めないんだけど、さすがにいいづらいな…


とりあえず、苦手なビールに少し口をつける。



隣の真砂さんが


「あー、記憶無くす前に軽く紹介しとくよ」


といって、長テーブルに座る倉庫メンバーを呼んだ。



「まずは、狩野な。狩野はよく知ってるよな?」


狩野さんはウーロン茶のジョッキを上げて対応してくれた。


「前っちは気づいてるかわからんが狩野は倉庫唯一の既婚者だ」


…ええっ?全然気づかなかった。

っていうか、結婚しててフリーターって普通に生活していけるのかな?…


そんな俺の疑問を他所に、真砂さんはサクサク紹介していく。


「んで、こいつは杉野。シフトの調整で合ったことはないだろうが

バイトの中じゃ、一番のベテラン。ただ、喘息持ちと家業のせいで休みがちだがな」


「事実ですが一言多いですよ」

杉野さんんがぼそっと言う。


杉野さんの腕の太さを見ると、明らかな腕力の違いが分かる。


…身長は俺より少し高いくらいなのにな…



「そして、最後にケニー。見かけ通りのハーフくん。

ここはベース基地もあるし、地元の人間なら珍しくないんだけど。」


「本名はケネスだけど、みんなケニーって呼んでるし、倉庫の若きエースかな?」


…ケニーってハーフだけあって、足反則的に長すぎじゃね?…



「あとは…ああ。社員の栗栖ね。以上かな?」



「真砂!俺あっさりしすぎじゃね?!」

栗栖さんがヤジをいれた。


「まぁまぁ。夜は長いんだし、小出しで話していけばいいんじゃね?」

真砂さんが笑って栗栖さんの怒りを流す。



…夜は長いって…


俺は最早、飲みきれないであろうビールに暗中模索。


男6人の飲み会。


しかもほとんどの人間が初対面みたいな状態で。


大学の経験を参考にすると、あまりいい記憶は残らないはずだ。



店に来てまだ1時間も経たないうちに


「帰ります」とは言えない。


これが社会に出た下っ端研修の儀式だと思うと


俺は息を止めてビールを喉に押し込んだ。