9割フィクション小説~Door Breaching~ #4 | 横須賀どぶ板通り巡り人

横須賀どぶ板通り巡り人

横須賀在住の主がどぶ板通りの飲み屋をメインにどぶ板の魅力を発信するサイド

「前島!!」


栗栖さんがモーレツな勢いで俺を呼んだ。



「は、はい!」


条件反射のごとく、返事をしたが


怒られるようなことをしたか、思考を反復させる。


倉庫には3分前に来たばかりで


遅刻もしていない。


昨日は栗栖さんは休みで会っていないし。


怒りまがいに呼ばれることに覚えがない。



目の前まで来た栗栖さんをまともに見れず、つい下を向く。


「前島!!今日お前の歓迎会やるから時間空けとけ!!」


それだけを言い放って、さっさと去ってゆく。


…え?それだけ?…


ぽつねーんとその場に立ち尽くす。



…俺の歓迎会?それだけで朝からあの怒り系のテンションって…


…軽く嫌われてる?…


ネガティブな思考に自分が落ちていくのがわかる。


基本、俺は〝棚からぼた餅〟系でモノを考える。



常に最悪を想定して、結果それより現実が良い方向なら


最悪な気持ちになることはない。


そうすれば、深手の傷を負うことはない。


俺は人生の半分をそんな考えで生きてきた。


こんな思考をネガティブと判定できるか分からないが


俺は人に嫌われるのが酷く苦手だ。


世界中の人、全てから愛されたいということではない。


嫌われず、


愛されず、


どうでもいい存在でいたいのだ。


いい意味でも、悪い意味でも、特別な人間になりたくない。


この考えは俺に軸になっているといってもいい。



「早いな、前っち!」


肩を後から叩かれ、我に返った。


真砂さんだ。


…やはり、ここは聞いておこう…


「あの、さっき栗栖さんが俺の歓迎会のことでテンション高めだったんですけど

真砂さんなんか聞いてます?」



「聞いてるも、何も、企画したの俺だし、栗栖に伝言当番させたの俺だし」


…この人、じゃあなんで自分でやらないかな?…



「じゃあ、栗栖さんが怒って…じゃなく、テンション高めなのって?」


「はははっ、栗栖怒ってたんだ?!予想通りだけど」

「栗栖にはカシあるし、でも主役の前っちにキレるってあいつ相変わらず短気だよなー」



…真砂さん、そこまで理解しているなら…

…真砂さんも理解出来ない人かも…


…でも!企画してくれたら、先輩だしお礼言わなきゃ!…


「真砂さん!ありがとうございます!」



「ん?歓迎会?」

「というか、開くの遅いくらいだし。倉庫は商品の搬入にも波あるから最近は特に忙しかったから。」

「多分、栗栖が強制召集してバイトも全員くるし、きちんと紹介してなかったもんな」


…ちゃんと考えてくれてたんだ…


…真砂さん、つかみ所ない感じの人だけど、親睦の場とか考えてくれたんだ…


「っー訳で、主役は朝まで飲んで最後までいるのがウチのシキタリだから♪」


…え?今聞き逃せない事実をサラッと言ったような…


「ま、真砂さん!俺明日も仕事なんですけど!」


「前っち~業に入れば業に従えだよ。

つまり虎穴に入らずんば虎子を得ずだよ」



…筋肉の次に必要なのは、アルコールへの抗体なのか?!…