横須賀どぶ板通り巡り人 -45ページ目

横須賀どぶ板通り巡り人

横須賀在住の主がどぶ板通りの飲み屋をメインにどぶ板の魅力を発信するサイド

前島は夢の中にいた。


夢を見るには嫌いだ


いつも心の中で泣き叫んでいた自分だ出てくるからだ。


この光景を何度も見てきた…


見えない鎖で自分は自由を束縛されている。


俺は父親の奴隷だ。


売り買いされるような人間で駒のように生きる。


幼い頃から支配されてきた。


支配という恐怖を刷り込まれ、心が痩せ枯れてゆく。


そうすれば、もうあがらう気力などない。


過去の恐怖が己を縛りつける。


だから幼い頃からの自分は孤独が好きだった。


あの男の怒鳴り声を聞かなくて済むから。


それ故に人が側にいないことが幸せだと思っていた。


子供の頃から嫌な思い出しかなく

今も漠然と生きてる。


逆に何かに夢中に生きるのが怖い


失うなら何も持っていないほうがいい


定番の言葉だが


絶望的な状況から抜け出すには勇気を持つこと。


自分の人生を選べるのは自分だけ。


そんな希望的見解を考えたこともある。


でも、できない。


不可能だ。


刷り込まれた支配と恐怖から抜け出すことは容易ではない。


自分は何の為に生まれたのか。


何の為に存在するのか。


誰から愛されるために

今が在るのか。


そんな自分に勇気や明るい未来など想像すること事態、無理だ。


自分には

逃げるのが関の山。


しかし、

俺はいつまで逃げられるのか?


そして、逃げた先には何か在るか?








栗栖のケータイに短い文章を送信した。


少し経って、いかにもダルそうに栗栖がきた。


「タバコを吸わない俺を何故ここに呼び出す?!」


合いも変わらず、栗栖はすでに切れ気味だ。


そんな栗栖にいつもの調子で俺も切りかえす。


「俺がここにいたから」
「っていうか、そのイカツイルックスでタバコと酒が駄目って相変わらずウケルんだよなー」



真砂が聞く。
「仕事は?」


栗栖が

「狩野たちがやってる。今のとこはトラブルないし、今日のメンツはいいからな」


メンツがいいとは、仕事ができるやつが揃ってるという意味だ。


…当分任せといても大丈夫だろう…




栗栖貴央とは、この家電量販店がグランドオープンした時からの同期で気心しれた仲だ。


過激な発言とヤクザばりの格好で誤解を受けやすいが


少しいれば、情に脆く、面倒見がいいのがすぐわかる。


仕事中の呼び出しにも何だかんだ文句を言いながらでも来てくれる。



「で?」

俺のタバコの煙にイラツキながら

栗栖が本題を聞いてくる。



「うーん、前っちどう思う?」

俺はあえて、漠然といった。



「前島?どうって普通じゃね?」


「あーだよな。俺もそう思う」


…成立しない回答をしてしまった…


しかし、すぐに栗栖が言ってきた。


「でも、普通じやないと思ったから、お前はこんなとこで俺に聞いてんじゃないのか?」


 …ぐっ…


栗栖は変態エロ魔人のくせして

まれにするどい。


…こうなったら、栗栖にぶっちゃけた方が、いらん墓穴を掘るはめにはならない…


…変にごまかすといい方向へはいかないな…



「わからん。わからんからお前に聞いてんの」
「長い付き合いなんだから、空気読めよ」


投げやりな俺の言葉に、冷静に栗栖が言ってくる。


「少なくとも、前島のことは俺にはフラグが立たなかった」


「でも、お前にはフラグが立った。それが何フラグかは知らんが?」


切れない態度で話す栗栖が親身さを語っている。


かと思うと、次の瞬間には、いつも栗栖だった。


…こいつの親身時間って短いな…



「俺が分かるのは、お前がらしくないことに、


少しイラついてることくらかなー


しかも最近吸いすぎ!」


…シケモク並の気の短さの栗栖のくせに…


「イラつきに関してはお前だけには言われたくない」



栗栖が時計をみて


「もう現場戻るわー」


スタスタと去っていった。



去り際に


お前も早々に戻れよとばかり、早足で栗栖が倉庫に向かっていった。



…吸いすぎか…


栗栖が言った言葉を反復させる。


確かに増えた気はする。


この、些細な不愉快な感情を


一方的に前島のせいにするのは、大人としても上司としても


身勝手すぎるのは理解できる。


前島に非はないのだから。


ただ、この感情がどこから発生しているかを知れば


自分の理由無き不快感が解き明かせる気がした。


それと同時に


自分の中で、そんな感情がまだ存在していることに


驚いた。


知りたい。


探求したい。


解き明かしたい。



そんな面倒くさいことをしたい歳でもタイプでもないのに…


とりあえず…



これ以上ここのベンチにいても


栗栖の怒鳴り声が響いてきそうなので


重い腰を上げ、タバコの煙を消した。



知ってしまいました。


「機動警察パトレイバー」が実写化することを…


いや、近年のアニメからの実写化は不思議ではありませんし


パトレイバーは世界的にも人気の作品と思うので


より、不思議ではありません。



しかし、


だからこそ恐れていたのです。


個人的にですが


アニメ→実写→イマイチ


的な法則がインプットされているので。



やはり、アニメの世界観はアニメで存分に表現し


それを見てるほうをその世界観に入っていけるものだと思います。



ちなみに


アニメの「ヘッドギア」は押井守さんを中心に構成された


ドリームチームです。



「ヘッドギア」が在ったからこその今のパトレイバーだと


思っています!!



今日は尻でコーヒーを沸かしたいと思います・°・(ノД`)・°・

3月のうららかな日、


真砂一郎は雲1つない空の中


唯一屋外の喫煙所にてタバコに火をつけていた。


もちろん勤務中だが、幸いか、一人占め状態。


タバコの煙をゆっくりと,くゆらす。


ベンチに座りながら、銜えタバコで空を見上げる。




頭をよぎるのは


新人研修生・前島広海のことだ。



今まで何人もの新人の研修に立ち会ってきた。


しかし、前島は何か違う。


なにか。と問われると明確な答えは出ないが


時々見せる、危機迫る雰囲気に


22歳という若く浮かれた姿を想像できない時がある。


仕事に対する姿勢は今の若者にしては


まずまず真面目といったとこだろう。


22才といえば、世間知らずなところは社会にでたばかりのひよっこだ。



基本、


誰かに何かに執着することも


激しい感情をもつことも無く


一定の距離を保つ。


自称・超平和主義者なのだ。


自分はこんな性分だ。



もちろん過去に恋愛などもしたし、


上手くいかない恋もしたが


2日ばかり経てば、


心が痛むことなどなく、日常が戻った。


さして、恋人を想っていなかったということが分かる。


とどのつまり、人にも物にも


あまり執着しないタイプだ。


それを、不便とも悲観とも思わない。



そんな自分が前島のことで

思考をよぎる。


時々見せる前島の表情が

理由なく、とても不愉快な気分になる。



俺はよく気長と思われがちだが


気になることがあると、早々に解決したいタイプだ。


故にコントロール出来ず、マイペースな自分が


イライラしている事態に不愉快な感情を覚える。


わからん。

全くもって、わからん。


こんな時は、やつを呼び出すしかない。


真砂はケータイを取り出すと


ある番号にメールした。


最近、倉庫の仕事の流れや


正社員にしかできない、仕入れ検品や返品、伝票入力も


少し任されるようになった。



あいも変わらず、力仕事やスピードは皆に敵わないのは確かなのだが。



「はよー」


背後から真砂さんの挨拶?が聞こえる。


「おはようございます」


俺は仕事を続けながら、真砂さんと顔を合わせず朝の挨拶をした。



しかし、肩を叩かれ話しかけられる。


…朝の倉庫は忙しいの知ってるのに…



やや不機嫌気味に

「なんですか?」



「前っちさー、朝の挨拶くらいちゃんとしようよー」


「しましたし。それに狩野さんたちだってこんなもんですよ!倉庫は朝の朝礼免除されるくらい

忙しいの真砂さんも知ってますよね?」


「うん、知ってるよー」

「でも、その調子で違う部署行ったら困るのは前っちだから言ってんの。」


「違う部署?」


「そうそう。まさか家電量販店が倉庫だけで成り立ってるとは思ってないよね?」


「はい、まぁ。」


「ザックリ分けても、レジ・売り場・品出し・ソフトコーナー・法人とあるわけよ」

真砂さんが指折り、数を数える。


「あと事務所業務もあるけどココはエライ人たちで回ってるから当分前っちには関係ないかなー」



…えっと、頭に一気に知らない情報が…


「真砂さん、つまり俺は将来的にその多くの部門の仕事を網羅しなくてはならないのですか?」


…少し想像しただけで冷や汗が…


「まぁ、網羅ってよりアレだ」

「つまりは最下層である倉庫は試しの門。

倉庫の仕事もまともにできないやつは

研修取り消しもありえるわけだ」


…それってクビ??…


「おい、前っち。顔青いぞー大丈夫かぁー」


…あああ、真砂さんの声が遠くに…


「お前、今早まった思考してるだろ?」

「何の為に研修生に正社員がついてると思う?」


「仕事教えて、簡単にクビにさせない為だろうがー」


…そっか、とりあえずよかった…


体の中の青い血液が引くのを感じる。


しかし、そこで真砂さんの1言が。


「まぁ、俺は前っちの査定員でもあるわけだから

仕事ができなかったり、ミスしたりしたらそれを上に報告する義務もある。」


「つまり、俺のサジ次第で前っちに〝サクラチル〟か〝サクラサク〟の結果がでるんだけどね♪」



…真砂さん、あんたって…


俺だって、簡単な覚悟で家を出てきたわけじゃない。


こんな人のサジ次第で、おん出されるのは嫌だ!


しかし、ここは感情的になったら負けだ。


「分かりました。ご指導、ご指南の程、宜しくお願いします。」


あからさまな丁寧な物言いで真砂さんに宣戦布告したつもりだった。



しかし…

「おー春まで頑張ろうな!」


…おいっ!!…

この人、春まで。〝まで〟っていったよ?!!


糞。


悔しいけど、ここで戦意喪失して適当な仕事して


春を待つのは自分が許せない。


結果、どうなろうと


俺には戻る場所がない。


だったら、やるしかない。


のん気に喫煙所に向かったであろう真砂さんを無視して


俺は忙しい倉庫に気持ち、ダッシュした。