9割フィクション小説~Door Breaching~ #10 | 横須賀どぶ板通り巡り人

横須賀どぶ板通り巡り人

横須賀在住の主がどぶ板通りの飲み屋をメインにどぶ板の魅力を発信するサイド

3月のうららかな日、


真砂一郎は雲1つない空の中


唯一屋外の喫煙所にてタバコに火をつけていた。


もちろん勤務中だが、幸いか、一人占め状態。


タバコの煙をゆっくりと,くゆらす。


ベンチに座りながら、銜えタバコで空を見上げる。




頭をよぎるのは


新人研修生・前島広海のことだ。



今まで何人もの新人の研修に立ち会ってきた。


しかし、前島は何か違う。


なにか。と問われると明確な答えは出ないが


時々見せる、危機迫る雰囲気に


22歳という若く浮かれた姿を想像できない時がある。


仕事に対する姿勢は今の若者にしては


まずまず真面目といったとこだろう。


22才といえば、世間知らずなところは社会にでたばかりのひよっこだ。



基本、


誰かに何かに執着することも


激しい感情をもつことも無く


一定の距離を保つ。


自称・超平和主義者なのだ。


自分はこんな性分だ。



もちろん過去に恋愛などもしたし、


上手くいかない恋もしたが


2日ばかり経てば、


心が痛むことなどなく、日常が戻った。


さして、恋人を想っていなかったということが分かる。


とどのつまり、人にも物にも


あまり執着しないタイプだ。


それを、不便とも悲観とも思わない。



そんな自分が前島のことで

思考をよぎる。


時々見せる前島の表情が

理由なく、とても不愉快な気分になる。



俺はよく気長と思われがちだが


気になることがあると、早々に解決したいタイプだ。


故にコントロール出来ず、マイペースな自分が


イライラしている事態に不愉快な感情を覚える。


わからん。

全くもって、わからん。


こんな時は、やつを呼び出すしかない。


真砂はケータイを取り出すと


ある番号にメールした。