京都1975 -9ページ目

祗園祭(菊水鉾)

新福菜館本店

yusoshi+codomoshow
京都を代表するラーメン店のひとつ、たかばしの「新福菜館」。JRの線路を跨ぐ登り坂のはじめ、周りになんもない辺鄙な場所に名店「第一旭」と「両雄並び建つ」。行列の数はいつ見ても「新福菜館」のほうが多いが、店の前で両店の店員同士が談笑していたりと、和やかに共存している模様で、ちょっと微笑ましい。持ち前の「へんこ」ぶりから言って、ここでひとまず「第一旭」派を高らかに宣言したいところではあるが、私も人の子、普通に「新福菜館」派なのである。店内は狭く、客がひしめき合い、とにかくせわしない。やんちゃ系店員の怒号、焼きめしをひっくり返す中華鍋の音、麺をすする音……これらの騒音が渾然一体となって鼓膜に襲いかかり、いやがおうにも焦燥感を喚起させる。しかも1~2人で来店すると高確率で相席に。こうなると当然、目のやり場に困るし、ラーメンが来るまでの間、無意味にメニューを再確認したりと、ほんまに居心地が悪い!しかし、この居心地の悪さが奏功し、ラーメンが来たなら食う行為に全神経を集中できるのである、「はよ食って、はよ帰ったれ!」と。店内のやけに明るい蛍光灯の照明が、白いテーブルを明るく照らし出し、結果としてどす黒いラーメンのスープが、コントラストとして眼前にリアルに浮かび上がる。歯ごたえがあるぶっとくて固い麺はスープとの絡みが抜群ではあるが、逆に早く食わないと麺がスープを吸いすぎて伸びてしまうという焦燥感を、舌を通して食う人に訴えかけてくる。そのせいかどうかは分からないが、周りを見渡すとみんな食うスピードが早い!ズルズルッと無心に食らう。そんなこんなで、こんなにぶっとい麺の、濃い口のラーメンではあるが、食い終わるのはあっちゅう間。ラーメンと同じように濃いきつね色をした焼きめしもこれまた美味い。中華鍋でガツガツいわせながら、あんなに激しく炒めた焼きめしが美味くないわけがないと、何故か根拠のない確信を抱かせてしまう雰囲気は、ある意味卑怯である。ラーメンと焼きめしをダブルで食うと、もう腹はパンパン。「食ったった!」食後のこんなに気持ちのいい満足感は、実はあんまり経験できなかったりする。「天下一品」など他のチェーン店と同様に、やはり本店の店内はなんとも名状しがたい、凄まじいエネルギーで満ちあふれている。

新福菜館 本店 (しんぷくさいかん)
★★★★★ 4.5

小金

小金 国道24号線を奈良方面に車で走っていると、木津川・泉大橋を渡る手前(北詰)にポツンと存在する、なにやら怪しげな屋台。横目で「なんかあるな」程度に看過しがちではあるが、目を凝らしてよく見ると、ゆらゆらと揺らめく赤提灯に「ぎょうざ」の文字。その正体は、木津町のこの場所で屋台を開いて実に11年!の、世に珍しい餃子専門屋台「小金(こがね)」なのである。餃子の種類は「餃子」「ちび辛餃子」「しそ餃子」「手羽先餃子」の計4種類。最も安価な「餃子」が6個で¥400と、一般的な相場から考えると決して安くはない。しかし、さすが餃子一筋だけあって、食ってみて納得のお味。見た感じ「王将」より一回り大きいサイズの餃子で、中身がパンパンに詰まっており、咀嚼する度にシャキシャキとした野菜の食感が楽しい。タレが不必要なくらいに濃い味付けではあるが、餃子のタレと共に、ニンニク、からし味噌、マヨネーズが付いてきて、好みによって色々と味を変えて食べられる。このちょっとした遊び心が嬉しい。ご夫婦二人で切り盛りされるこの屋台、バンが到着し、開店するのは夕方からで、それまでは何もない、ただの河川敷の状態。もし運良く開店時に前を通りかかったなら、ちょっと車を停めてしばしの餃子休憩タイム!なんていかがでしょ。

京都芸術センター

おやじ

yusoshi+codomoshow
「おやじ食いに行こうや!」と京都人が言えば、それは右京区花園にある「ラーメン親爺」に行くことを指す……というのは冗談。東山界隈に、同じ「おやじ」という店名を掲げる焼きそば屋さんがある。鉄板焼きなのに、メニューは焼きそばのみ。お好み焼きなどの余計なメニューは作らない、この潔さに思わずそそられる。店の扉をガラリと開けると、そこに登場するのはしかめっ面のガンコおやじ!……ではなく、なぜか恰幅のいいおばちゃんが登場……なんやそれ。おやじさんはというと、おばちゃんのサポート役で、食べ終わった鉄板の後かたづけを担当、見た感じ権力は全くなさげ。力の抜けたような愛想笑いをしながら、そそくさと焼き跡をこすり取る様は、ある意味滑稽であり、そこはかとなく哀愁を漂わせている……店名は「おかん」のほうがええんと違う?と、ここで余計なツッコミを一発いれたくなるのは関西人の性分なのか……。記憶を辿れば、「カキおこ」で有名な兵庫県日生の「浜屋」というお好み焼き店も、同じような「かかあ天下系」であったことをふと思い出してしまった。店内は、おばちゃんが調理するどでかい鉄板がそのままテーブルになっており、その鉄板を囲うように無造作に置かれた椅子に客が座る。その光景は、さながら親鳥とヒナのようなもので、早く自分の番にならないかと、目の前で次々と調理されてゆく他の人の焼きそばを、よだれが垂れそうになるのを我慢しながら、じっと眺めてしまうという体たらく。男顔負けの手際の良さで次々と調理されてゆく様はなかなかの迫力で、当然ではあるが熱い!いざ自分の焼きそばができあがると、汗をダラダラと垂らしながら、はふはふ!とかき込む。ノビがあって腰のある太麺に甘辛ソースが絡み、食べ応えは十分、さすが焼きそば専門店!と舌鼓を打ってしまう。普通の焼きそばが一玉¥500で、キャベツ、イカ、天かすなどの具が付いてくるが、これにプラスアルファで、キャベツ¥200、豚肉¥100、天かす¥50などと、自分好みに細かく具を増量・トッピングできる方式になっている。しかし、家で作る焼きそばと同じような感覚でトッピングしまくると、いつの間にやら¥1,000オーバーということもざらにあり得るので、やり過ぎにはご注意をば。お勧めトッピングは、干し桜エビとニンニクで、ソースの辛みに旨味、香りがプラスされ、味に深みが増す。営業時間が昼と夜それぞれ2時間だけと、かなりピンポイントな設定なので、気軽にいつ行っても開いているというカジュアルな店ではないが、近辺の鉄板焼きの店のなかでは一番にお勧めしたい店である。

おやじ
★★★★ 4.0

yusoshi+codomoshow

yusoshi+codomoshow
御幸町御池を上がった場所にそびえ立つ漆黒のビルディング「COMME des GARCONS」。その脇にあるエレベーターを昇ると5Fに「yusoshi+codomoshow」がある。広島県発祥の「和カフェ」で、ロンドンのデザイナー集団「TOMATO」と、辻村久信氏率いる「codomoshow」が内装デザインを担当。個人的には、ライブに行く程の「underworld」好きではあるが、「TOMATO」のアートは正直よう分からんし、その善し悪しが分かるような審美眼はあいにく持ち合わせていない。ただ、壁一面が巨大なライトになっていて、モノクロの月面写真の壁紙を浮かび上がらせる大胆な手法は独創的で面白いと思うし、一見インパクト重視と見せかけて、夜になるとなんともしっぽりとした、スペーシーで落ち着いた空間を演出するのに一役買っている。ソファー、テーブル等、インテリア関係は同じビルに同居する京都発の和ブランド「sousou」のものを採用。これまた辻村久信氏が手がけるブランドで、なかなか巧い具合に商売してるなあという印象。開店当時から「TOMATO」という言葉に対するミーハー心もあって、ちょくちょく通っていた同店であるが、最近足が遠のいてしまっている。帰りに立ち寄るのが楽しかった「sousou」がインテリア専門になってしまったり、まばらだった客の入りが徐々に知名度が上がって混み出してきたり……しかし、そんなもんは微々たる理由、一番の理由は大好きだった「豆腐のババロア」がいつの間にかメニューから消滅してしまっていたこと。齢30手前のおっさんが声を大にしては言えない、とても恥ずかしい理由なのであった。

和カフェ yusoshi+codomoshow (ワカフェ ユソーシ・コドモショウ)
★★★★ 3.5

天天有(COCON KARASUMA)

記事はこちら

石田食堂

石田食堂 朝も早よからラーメンとはこれ如何に。中央卸売市場内に店を構える「石田食堂」の営業時間は6:00~13:00。朝が早い市場で働く人たちの「モーニング」として、長年変わらぬ味のラーメンを提供し続ける老舗である。場所柄、さほど客には困らないわけで、どうせデパートの屋上や学食で出される程度のラーメンだろう、などとたかを括っていたら大間違い。いうても生鮮食料品が行き交う市場内、そうそう簡単に「美味さ」を知るオヤジ達の舌を満足させることはできない。「石田食堂」のラーメンは、鶏ガラベースの醤油味で、しっかりとコクがあるにも関わらず、全体としてなんとも角が立たない、優しい味のスープが特徴的。眠い目をこすりながらでもツルツルとすすれて、なんの抵抗もなく喉を通っていくラーメン。世のこってりラーメンや濃い味付けのラーメンには真似できない「朝ラーメン」たる緩やかさがそこにはある。食堂と調理場の間に垂らされた一枚の白いレース……その向こうに見え隠れするのは、齢80超のおばあちゃんであり、この方がラーメン調理のご担当である。この優しい味は、きっとこのおばあちゃんでしか作れない、これまでも、これからも。

石田食堂 (いしだしょくどう)
★★★★ 3.5

SPEAK EASY

SPEAK EASY 一乗寺に揺らめく少し場違いな星条旗が目印となる「SPEAK EASY」。国際会館にほど近い立地で、外国人御用達という「お墨付き」の飲食店である。いい感じに年季の入ったウッディーな内装の店内は、両サイドに置かれた2台のテレビからCNNニュースが流れ、中央にデカいジュークボックス、マガジンラックに英字新聞と、まさにそこは京都の中のリトル・アメリカ。9:00~18:00もの長時間に渡って提供されるモーニングがこの店の目玉メニューの一つで、かなり細かくカスタマイズできるのが特徴。「egg」(卵料理)、「toast」(パン)、「meat」(肉料理)、「hash browns」(ハッシュドポテト)が基本の4要素となり、それぞれがさらに調理法や素材により細分化され、自分の好きなようにチョイスし、組み合わせることができる。例えば「egg」でいくと、王道の「スクランブルエッグ」を始め、黄身が半熟のままの目玉焼き「サニーサイドアップ」、黄身に白い膜ができるまで焼いた目玉焼き「ベーストエッグ」、裏返してもう片面を軽く焼いた目玉焼き「オーバーイージー」等々、全部で7種類もの調理法が用意されているのに驚き。さらに、メニューと同時に運ばれてくるバスケットの中には、ケチャップ、マスタード、マヨネーズ、ソース、タバスコ(2種類)と、あらゆる調味料が揃っており、自分好みの味付けをすることも可能。よくよく考えると、卵にベーコンにトーストと、素材自体は特になんの目新しさも感じないプレーンなものばかり。飾り気のない盛りつけ、媚びない接客。でも、なぜかうきうきとしてしまう楽しいモーニング。慣れ親しんだ「朝マック」にはない、実直でリアルなアメリカン・モーニングを「SPEAK EASY」で垣間見る。食べ終わった後も、ついつい長居してしまいがちになるのは、ホットコーヒーが飲み放題という理由だけではなさそうである。

スピーク イージー 修学院店 (SPEAK EASY)
★★★★ 4.0

COLORADO

COLORADO 愛知万博の傍らで脚光を浴びる名古屋文化であるが、食いしん坊にとって注目すべきは、やはり名古屋のモーニング。コーヒー1杯分の値段で、トーストが付いてくるのは当たり前、果ては好きなだけ総菜をチョイスできる、プチバイキングの様相を呈する夢のようなモーニングも存在する、まさにキング・オブ・モーニングな名古屋なのである。で、いざ京都に目を移してみると、名古屋に比べるとなんとも心許ないというか、そもそも京都はモーニングの文化がほとんど発達していない後進国であることに改めて気付かされる。「名古屋モーニング」と、ある意味ご当地メニュー的に割り切ることもできようが、やはり京都でもボリューミーなモーニングを食ってみたい、というのが京都人の本音である。京都が誇るコーヒーメーカー「ワールドコーヒー」が、ZESTを始め、市内の各地に出店する喫茶店「COLORADO」は、名古屋のモーニングとまではいかないまでも、他店ではお目にかかれないボリューミーなモーニングを味わうことができる良店である。径が約25cmはあろうガラス製のボウルにサラダが敷き詰められ、その上にトースト1枚、くるみパン2切れ、ゆで卵2個、ベーコン、ウィンナーが盛られた内容で、これにもちろんコーヒーが付く。このモーニングは、なんといってもボウルに全ての食材を詰め込むというアイデアが秀逸。よくよく考えるとそんなに大したことのない内容であるが、ゆで卵の半切れ4個が並んだりと視覚的に豪華で楽しいし、席に運ばれてきた瞬間、思わず笑みがこぼれてしまう。ZESTということで地下鉄に近く、通学・通勤の合間に立ち寄れる好ポジション。この店のモーニングを食えば、一日がハッピーになりそうな予感!である。

カフェ・コロラド 京都御池ゼスト店 (CAFE COLORADO)
★★★★ 3.5