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美松会館

サカイ

サカイ 春が過ぎ去ってどんどん暑くなってきたなら、日本人たるもの自ずと欲してしまう夏の風物詩……スイカ、かき氷、そしてなんといっても冷麺!である。俗に言う韓流ブームの波に乗り「冷麺=韓国冷麺」と概念がすり替わってしまうかのように、焼肉のお供として、すっかりと日本に浸透してしまった韓国冷麺。あっさりスープに極細麺、ゴムのように弾力性があり、噛み応えがある韓国冷麺は、確かにさっぱりとしていて美味いし、その存在を否定することはできない。しかし、日本人としては、やはりマヨネーズ味のジャパニーズ冷麺を欲してしまうというのは当然の道理である。北大路通りと北山通りの間に存在する新大宮商店街の一画に店を構える「サカイ」は、自ら「日本一」と豪語する冷麺を提供してくれる、希有な中華料理店である。試行錯誤を繰り返した末に完成したという冷麺、見た目は至極シンプル。しかし、箸で麺をすくってみてびっくり、なんという極太麺!この韓国冷麺に抗うかのような図太い麺は、もちもちでプリンプリンの食感。しっかりと腰があって噛み応えは十分、マジでやみつきになりそうな極上麺なのである。この冷麺の主役はまさに麺であり、あとは海苔、きゅうり、焼豚というなんともシンプルなトッピングと、からしマヨネーズ風味のスープが脇役としてもり立てる。量が少なめなのがこれまた憎いところであるが、少し奮発すれば大盛りを注文することもできるし、嬉しいことに店頭と同価格で持ち帰りを購入することもできる。一度体験してしまうと、他の冷麺で満足できない体になってしまう危険性をも孕むサカイの冷麺。とにかくこいつを食って、蒸し暑い京都の夏を乗り切るべし。

新大宮 中華のサカイ 本店 (チュカノサカイ)
★★★★ 4.0

ミスターヤングメン

ミスターヤングメン 四条通りから寺町商店街に入ってすぐの場所に店を構える「ミスターヤングメン」。口にするのも恥ずかしくなりそうなズッコケたネーミングであるが、その名の通り、世の腹を空かしたヤングメンに熱々でボリューミーなお好み焼きを、安価で振る舞ってくれる良店なのである。一般的にお好み焼きの店というと、各テーブルが鉄板になっていて、客自らがお好み焼きをひっくり返したり、切り分けたりするスタイルが主流であるが、「カジュアルお好み焼き」を標榜する「ヤングメン」の場合、店内には、ごく普通のテーブルが並べられており、鉄板はレジ横の調理場に集約されている。つまり、注文が入った分だけ、店長一人がこまねずみのようにせわしなく調理してくれるという仕組み。よって客としては、注文をした後はただ待つのみで、自らの手を煩わせることは何もない。まさにカジュアル且つナウ(死語)な都会派お好み焼き店なのである。古びた木の床にレンガ造りの壁と、昭和の香りが漂うモダンな喫茶店風の店内も、既成のお好み焼き店の概念を覆す「カジュアル路線」に一役買っている。注目すべきは「ヤングメン・ランチ」で、お好み焼きと焼きそばがハーフ&ハーフでのっけられた鉄板に、味噌汁とおにぎり2個が付いてくる。果たしてこのおにぎりをどう食うべきか。一説によると、大阪人はお好み焼きをおかずにごはんを食うという習慣があるらしい。しかし、ここはいうても京都。ポイントは3つあって「1.お好み焼きよりも先に出てくる」「2.普通の白ごはんではなく、あくまでもおにぎりという形状で出てくる」「3.おにぎり内には、それぞれ梅、おかかの具が入っている」……要は、おにぎり単品でも食えるし、お好み焼きをおかずに食うこともできる、ということ。もし茶碗に盛られた白ごはんが出てきようもんなら、京都人としては間違いなく辟易する人が多いはず。しかし、京都のお隣さんである大阪人の客もそれなりに来店するはず。その両方のメンツをギリギリのラインで保持したのが、この「具入りおにぎり」というソリューションではなかろうか。……ていうか、そもそも考えすぎ!?

ミスター ヤングメン
★★★★ 3.5

MAMARO

MAMARO 「スープカレー」なる聞き慣れぬキーワードを追い求めた末、辿り着いたのが「MAMARO」である。河原町丸太町を上がった場所で、河原町通りに面する好立地。ただし、この辺りは最近、小さな店がポコポコと誕生しているので、なにげに看過してしまっている人が多いかも。店内は、ビビッドなオレンジカラーが眩しく、壁から天井へと続くラウンドフォルムが目を引く、ポップでキュートな超こじゃれ系。今時のオサレな店員が配され、トータルコーディネートはコンセプチュアルにまとめられている。で、肝心の「スープカレー」についてである。目の前に登場したのは2つの皿、右側に「スープカレー」、左側にごはん。さて、これをどう食おうかということである。店側の説明によると、一番メジャーな食いかたが、スプーンにご飯を盛り、それを「スープカレー」に浸して食べるという方法。他にも別々に食べる方法(口の中でMIX)、ご飯にぶっかける方法などがあるらしいが、ここはやはり、スプーンにご飯を盛って浸して食べるという方法がよさげっぽい。で、結論を言うと、「スープカレー」とは、要するにタイカレーの味を普通のカレー味に変えました、というものに他ならない。タイカレーは粉っぽい、ほろ甘いココナッツ味が独特で、圧倒的な個性を確立している反面、じゃあ「スープカレー」の個性って何なの?という疑問に行き着くのは至極当然。カレー味なら、やはり食べ慣れた普通のカレーを食べるし、「スープカレー」という思わせぶりなネーミングながら、本質は「カレー味のスープ」といった印象を受けるのである。こういった疑問を払拭すべく、辛めの味付け、バカでかい具、そして、前述したこじゃれた内装・店員のコーディネート等々の後付け要素によって、「MAMARO」は、苦し紛れに「スープカレー」たるアイデンティティーを確立しようとしているように思えてしまうのは、少しいがった見かたであろうか。名古屋の「あんかけパスタ」、長崎県の「佐世保バーガー」と、ご当地メニューが脚光を浴びることが多くなってきた昨今、札幌を起源とする「スープカレー」は今後どのように拡大していくのであろうか。「MAMARO」は勢いにのって大阪にも出店するというし、「話題性」という最大の武器でもって快進撃は続く。一過性のキワモノとして終焉してしまうのか、はたまた普通のカレーと同等の市民権を確保するに至るのか……今後の「スープカレー」の成長具合が楽しみな、今日この頃なのである。

ママロ 京都店 (MAMARO)
★★★☆☆ 2.5

アジェ

アジェ
「熱ぇ!(アヂェ!)」と思わず店名を叫びそうなくらいに立ち昇る炎!ホルモン焼肉店「アジェ」の目玉メニュー「ホソ」は、牛の小腸の部分で、ほぼ脂の固まり。熱々の状態で口に含んで咀嚼すると「ほわっ」と、とろけるように舌の上で消えていく、なんとも不思議な食感がやみつきになりそうな絶品メニューなのである。これを焼くのが難儀で、金網の上にのせたら最後、脂が溶け出して一瞬にして火力が最高潮(マックス)に!しかし、炎をかいくぐって裏返し続けないと瞬時に焦げる!……と「焼肉奉行」には、高度なテクニックとスピードが要求されるので要注意。そんなこんなで、店内はあちこちでぼわっ!と火の手が上がる異様な光景が繰り広げられる。木屋町通りも松原まで下がると、高瀬川のせせらぎが聞こえてきそうなくらいに落ち着いた雰囲気を取り戻すが、この店内だけはいつも熱気と活気に満ちあふれ、老若男女がホルモン焼きまくり、食いまくり、喋りまくりの、飲みまくりで、これぞまさに酒池肉林の桃源郷、日本離れした無国籍な異空間を体験することができる。かなりの人気店だけに、待ち時間なしで入れることは稀で、たいがいは店の前の予約表に名前を記入して、二件となりの「待合室」にて待機することになる。待ち時間は「待合室」に置かれたテレビ・新聞で時間を潰すも良し、「アジェ」が入居する「美松会館」2Fの飲み屋街を愉しむも良し、である。ただし、店の真ん前はごく普通の住宅が存在するので、待ち時間は、騒音・ゴミ等注意されたし。

アジェ
★★★★★ 4.5

京洛酒場街

小宝

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よしおか

よしおか 仏光寺交番のある仏光寺高倉。少し上がると「天麩羅」の文字が書かれた黒い暖簾、見上げると「天」と書かれた白い、小さな提灯。必要最低限の「店」としての意思表示。しかし、その正体は、お昼時になるとたちまち満席になる、知る人ぞ知る天麩羅の名店「よしおか」なのである。カウンター席のみのコンパクトな店内をご夫婦だけできりもりされている。ポスター一つ無い、清廉潔白な店内。ここは、天麩羅を作るための場所であり、食べるための場所であり、それ以上の意味はないし、余計な華美など必要ない。お昼のメニューは3種のみ。天丼・かき揚げ丼・コース。海老5匹の天麩羅だけがのせられた、シンプル且つ豪快な天丼もいいが、この店での一番人気はなんといってもコース。昼飯に¥1,500(税込み¥1,575)の出費は一瞬辟易するかもしれないが、食後の感想は間違いなく「これで¥1,500は安い……!」なのである。目の前に小さな扇状の金皿が置かれ、決められた順番通りに揚げられてゆく天麩羅。海老で始まり、海老で〆る全14種のコースは、穴子、いか等の魚介類に、茄子、さつまいも等の野菜類、かき揚げ等を含むバリエーション豊かな内容。一品一品が大将の手によって目の前で丁寧に揚げられていく。驚かされるのは、天麩羅が揚げられるタイミングで、金皿に置かれた天麩羅を箸で掴んで口元に運んだ瞬間、油鍋からささっと次の天麩羅が金皿に置かれる。揚げ置きが全くないし、逆に待たせもしない、この当意即妙のタイミングにより、常に熱々でサクサクの天麩羅を享受できるのである。客それぞれの食の速度を阿吽の呼吸で掴む、これぞまさに職人芸!白髪で端正な顔つきの大将が、余計な言葉を発せず、ただ黙々と天麩羅を揚げ続けていくその横顔が、なんともかっちょよく、素敵なのである。

天ぷら よしおか (吉岡)
★★★★★ 4.5

COCON KARASUMA

ミマツワールド