よしおか | 京都1975

よしおか

よしおか 仏光寺交番のある仏光寺高倉。少し上がると「天麩羅」の文字が書かれた黒い暖簾、見上げると「天」と書かれた白い、小さな提灯。必要最低限の「店」としての意思表示。しかし、その正体は、お昼時になるとたちまち満席になる、知る人ぞ知る天麩羅の名店「よしおか」なのである。カウンター席のみのコンパクトな店内をご夫婦だけできりもりされている。ポスター一つ無い、清廉潔白な店内。ここは、天麩羅を作るための場所であり、食べるための場所であり、それ以上の意味はないし、余計な華美など必要ない。お昼のメニューは3種のみ。天丼・かき揚げ丼・コース。海老5匹の天麩羅だけがのせられた、シンプル且つ豪快な天丼もいいが、この店での一番人気はなんといってもコース。昼飯に¥1,500(税込み¥1,575)の出費は一瞬辟易するかもしれないが、食後の感想は間違いなく「これで¥1,500は安い……!」なのである。目の前に小さな扇状の金皿が置かれ、決められた順番通りに揚げられてゆく天麩羅。海老で始まり、海老で〆る全14種のコースは、穴子、いか等の魚介類に、茄子、さつまいも等の野菜類、かき揚げ等を含むバリエーション豊かな内容。一品一品が大将の手によって目の前で丁寧に揚げられていく。驚かされるのは、天麩羅が揚げられるタイミングで、金皿に置かれた天麩羅を箸で掴んで口元に運んだ瞬間、油鍋からささっと次の天麩羅が金皿に置かれる。揚げ置きが全くないし、逆に待たせもしない、この当意即妙のタイミングにより、常に熱々でサクサクの天麩羅を享受できるのである。客それぞれの食の速度を阿吽の呼吸で掴む、これぞまさに職人芸!白髪で端正な顔つきの大将が、余計な言葉を発せず、ただ黙々と天麩羅を揚げ続けていくその横顔が、なんともかっちょよく、素敵なのである。

天ぷら よしおか (吉岡)
★★★★★ 4.5