於:国立新美術館
http://www.emily2008.jp/
オーストラリアの「アボリジニ」と言われる人の作品展。
英語でaborigineっていうとオーストラリアに必ずしも限定されず、
先住民っていう意味にすぎないのでちょっと変な感じもしますが。
こんな大規模なものはたぶん日本では初でしょう。
公式ホームページによれば、
「エミリー・カーメ・ウングワレーは、アボリジニを代表する画家であると同時に、20世紀が生んだもっとも偉大な抽象画家の一人であるというべきでしょう。オーストラリア中央部の砂漠で生涯を送った彼女の絵画が示す驚くべき近代性は、西洋美術との接点がまったくなかったことを考えるなら、奇跡的にさえ思われます。」
ということです。
この展示を見て面白いなと思ったのは、西洋における抽象画というのは、
あくまでも意味がある絵画に対抗するものとしての「意味がない」絵画であるのに対して、
彼女の絵は祈りであり、
まったくそういった西洋美術史の文脈の中に存在していないということです。
製作中に犬が歩いて足跡がついていても問題がなかったり、
上下が決まっていなくて、展示とカタログで向きが違ったり。
「本展覧会は、製作年代および作品の主題に基づいた章立てにより構成されています。これらの章は展覧会を構成する上で設けたものであり、さまざまな要素が相互に分かち難く結びついているエミリー自身の芸術観とは別の視点から彼女の芸術を紹介するものです」
と、HPにも展覧会にも注意書きがあります。
そういう、私たちの絵画に持つ基本的な考えを根本から打ち崩す、
それが日本で彼女の作品を見る一番の魅力に感じます。
ある意味、我々の支配下におけない芸術を、
我々の理解できる言語でむりやり分析を試みた展示ともいえますけれども。
そんなことは抜きにして、色彩がすごく素敵だ、そんな部分ももちろんあります。