『ONCE ダブリンの街角で』(2007年)、『シング・ストリート 未来へのうた』(2016年)のジョン・カーニー監督作品。

 

忘れられない相手のいる男女が街角で出会い、音楽を通じて再生するという設定は、ダブリンとNYという舞台の違いこそあれ、『ONCE ダブリンの街角で』と共通するもの。そして共通の設定でありながら、二人の境遇や物語の展開に違いを持たせるところは、監督の遊び心を感じる。

 

『ONCE ダブリンの街角で』での主役の二人はプロのミュージシャンでありながら、無名の二人(グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァ)だった。本作では、マーク・ラファロとキーラ・ナイトレイが主役を演じ、ヒロインの恋人役にマルーン5のアダム・レヴィーン、友人役に「Carpool Karaoke」で爆発的人気を得ているコメディ俳優ジェームズ・コーデンを配し、脇もキャサリン・キーナー(自分の印象に残っているのは『ゲット・アウト』や『25年目の弦楽四重奏』)、ヘイリー・スタインフェルド(『トゥルー・グリット』『スウィート17モンスター』)が固めるという豪華キャスト。これで売れないわけがないと思うのだが、公開当初は全米で5館の上映だったらしい。それが口コミで人気を博し、1,300館での公開にまでヒット。それだけ面白いということ。

 

悪くない。どころか、確かに面白い。面白いのだが、ストーリーがきれい過ぎる感がある。『ONCE ダブリンの街角で』では、主役二人の恋愛感情が描かれていたが、この作品ではそれはオブラートに包まれている。マーク・ラファロ演じる音楽プロデューサーのダンには愛する娘(これを演じるのがヘイリー・スタインフェルド)がいて、よき父になれなかった男がよき父になろうとする家族愛もモチーフであるため、主人公二人の恋愛は生臭すぎるというところだろう。そして主人公二人はそれぞれ元のさやに納まるという、少々気の抜けた展開。特に、アダム・レヴィーン演じるヒロインの恋人は、本物さながらにポップス界でスーパー・スターになるという展開なのだから、無名時代を支えてくれた恋人を浮気で失った後に、やはり彼女が得難いものであることを思い知って戻ってくるというのは出来過ぎ感がある。

 

NYのゴージャス感のある少々出来過ぎ感のある本作よりも、貧乏な二人を主人公とする『ONCE ダブリンの街角で』の方がはるかにシンプルで素朴な感じで、好感度の高い作品だった。あるいは、ダブリンに舞台を戻して、少々青臭いほどの青春物である『シング・ストリート 未来へのうた』の方が自分の好みだった。ただそれも比較の問題であり、この作品自体とてもよい作品と言っていい。観て、間違いなく損はない。

 

★★★★★★ (6/10) 

 

『はじまりのうた』予告編