『トゥルー・グリット』 (2010) ジョエル/イーサン・コーエン監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

ジョン・ウェインに唯一のオスカー主演男優賞を授けた1969年の西部劇名作『勇気ある追跡』(原題『True Grit』)のリメイク。ストーリーはほぼ忠実にオリジナルを踏襲しているが、細部では異なる部分もある。

 

父を殺された14歳の少女マティ・ロスが、犯人のトム・チェイニーを、連邦保安官のルースター・コグバーンとテキサス・レンジャーのラ・ビーフの助けを借りて仇を討つ話。リメイクがオリジナルと異なるのは、同行していた二人が仲違いをしてラ・ビーフが途中一行から離脱することや(チェイニーはお尋ね者のラッキー・ネッド一味と共に逃亡しているのだが、彼らの隠れ家を襲撃するのは、オリジナルではルースター・コグバーンとラ・ビーフであるのに、リメイクではルースター・コグバーン一人。オリジナルで、隠れ家にいた二人のうちの一人「ムーン」を、同年『イージー・ライダー』で印象的なデニス・ホッパーが演じていた)、オリジナルではラ・ビーフは最後に死ぬのに対しリメイクでは最後の最後まで生き残っていることや、最後におまけ的なラスト・シーンの展開(オリジナルでは翌冬、リメイクでは25年後)。

 

しかし、そうしたストーリーの細かな差異ではなく、オリジナルとリメイクの大きな差は、少女マティ・ロスと無頼な連邦保安官ルースター・コグバーンとの関係だろう。ジョン・ウェイン演じるルースターはマティを当初子供扱いし、道中のお荷物としか思っていなかったが、彼女の聡明さや気丈さに徐々に魅かれ、親愛の情を持つようになっていくことがうまく演じられていた。マティも評判の芳しくないルースターを最初から信頼し、亡くした父の代わりのように思っていたからこそ、身寄りのないルースターに彼が死んだ時には一家の墓地に弔うことを申し出るラストシーンが生きてくる。それを軽くいなして去っていくルースターに男の美学を感じる。

 

リメイクでは、そうした親愛の情が双方に芽生えるとまでの関係とは言えず、例えばラ・ビーフが一行から離脱する際には、マティに「信頼する相手を間違えた」とまで言わせている。それでは、ラストシーン(リメイクでは25年後に再会なるかと思った直前にルースターが死んだことを知り、遺体を引き取って一家の墓地に葬るという無味乾燥なもの)を敢えて変えたことが生きてこない。

 

また、主役はあくまでマティとルースターであり、脇役のラ・ビーフは死ぬことで舞台袖に下がるのがオリジナル。ラ・ビーフが生き残り、25年経った後、マティが彼の行方を捜すようなリメイクは情緒に欠ける。

 

オリジナルを意識しないわけにはいかないリメイク制作だが、改悪でしかないとすれば評価は厳しくならざるを得ない。オリジナルより優れている点は、本作で映画デビューを果たしたマティ役のヘイリー・スタインフェルド。彼女が主演の『スウィート17モンスター』(2016年)の演技もとてもよかった。やはりコーエン兄弟の名作『ファーゴ』(1996年)、『ビッグ・リボウスキ』(1998年)を自ら越えることは依然無理ということか。

 

★★★★ (4/10)

 

『トゥルー・グリット』予告編