事件狩り
時代は逆行するのだが、「夜明けの刑事」の前番組が「事件狩り」(74年)である。ドラマでは、ホームコメディで続いていた石立鉄男がシリアスな弁護士ドラマに挑んでいる。大映テレビ室制作のドラマは石立の出世作ともいえる「おくさまは18歳」(70~71年)があったが、その後は「おひかえあそばせ」(71年)から始まるユニオン映画制作のホームコメディに「水もれ甲介」(74~75年)まで5作連続で主演を務めた。
4作目の「雑居時代」(73~74年)までは、日本テレビ系の水曜20時に放送されていたが、「事件狩り」は、TBS系の水曜20時からの放送であった。やはり、水曜20時の男だった石立のイメージに合わせて、局が変わってもその時間帯に決定したのだろうか。
主人公は石立演じる弁護士・大山竜介。その事務所には調査員である石橋正次(坂井秀夫)と鈴木ヒロミツ(谷口六郎)、そして事務も兼任する森田日記、経理担当の中条静夫(時田武夫)がいる。
森田日記は当時17歳で、前年に歌手デビューしている日本とフランスのハーフで、おそらく本作がドラマ初出演だと思われる。役名はそのまま「ニッキー」で、本名は不明だ。細身の長身で、17歳には見えなかった。セクシー系ではなかったが、本作の後は「プレイガールQ」(74~76年)にレギュラー出演している。歌手としてはシングル2枚のみで一度引退しているが、02年に歌手活動を再開させ、シャンソンなどを歌っているらしい。
ドラマ上、弁護士といえば対立する検事が出てくるものだが、その検事役が川津祐介(西条文彦)である。西条と大山は同期という設定だが、実年齢でいえば、川津は石立より7歳ほど上である。この川津はOPでクレジットされるが、前述の中条静夫はあまり物語には絡まないせいかOPに姿は確認できるがクレジットはされない。同じ「ザ・ガードマン」出身でありながら、この差はなんだと当時は思ったり思わなかったり。
大山が弁護する被告は大抵無実だったりする。事実を法廷であばき、(大抵)傍聴席にいる真犯人をその場で告発するというのがパターンであった。そのため、法廷で罠を酢掛けたりするのだが、個人的に印象に残っているのが第2話「ストリーキングの女を見た」である。ストリーキングは日本ではこの73~74年あたりが一番はやったそうだが、この回では法廷内を裸の女が走りまわるのである。女優は確か芹明香だったと記憶している。
ゲストに目を向けると第1話は山口百恵、織田あきらに加え、鈴木瑞穂、仲谷昇、渥美国泰といった重鎮どころが揃って出演。神山繁もおり、「ザ・ガードマン」繋がりでは、宇津井健や稲葉義男も後に出演している。第10話「うそ」というサブタイ回には中条きよし、第11話「ひと夏の経験」では前述の山口百恵が三浦友和と共にゲスト出演している。
全14話で終了するが、石立、石橋、ヒロミツの三人はそのまま「夜明けの刑事」にスライド出演することになったのである。
秘密のデカちゃん
「噂の刑事トミーとマツ」の第1シリーズと第2シリーズの間に放送されたインターバル番組と位置づけれれているのが「秘密のデカちゃん」(81年)である。インタバールというと1クール全13回くらいをイメージしてしまうが、放送期間9か月で全30話が放送されている。
刑事ものではあるのだが、タイトルからしてコメディだと予想はつくと思う。主演は石立鉄男と大場久美子である。石立鉄男といえば、70年代のユニオン映画制作のホームコメディでは必ず主役だった役者である。しかし、大映テレビ制作のこの枠(TBS水曜20時)では「夜明けの刑事」「トミーとマツ」とどちらも鬼刑事課長の役で、主役ではなかった。その前の「事件狩り」(74年)では主役ではあったが、1クールで終了している。その石立がこの枠では久々の主役である。それも得意分野のコメディ作品だ。
その石立が演じる中年ヒラ刑事・日暮庄助と大場久美子演じる年の離れた新人婦人警官の妻・祥子とのラブコメだが、署内では二人は親子(養子縁組)ということになっている。いや、実際に血のつながりはないが親子として過ごしてきたのだが祥子が20歳を迎え、庄助は祥子の実父との約束を守って結婚したのである(ただし入籍はしていない)。この二人の関係性を説明するのが難しいし、理解しにくい。
二人の結婚報告を受けた名古屋章演じる旭日奈署長は、親子で結婚などとんでもないとそのことを秘密にさせたのである。実は戸籍上では二人の関係は親子ではなく兄妹になっていたことが後に判明し、法律上では結婚できるのだが、かたくなに秘密にさせている。夫婦関係は秘密なので、庄助も祥子も異性に非常にもてる。このシチュエーションは、石立の出世作でもある「おくさまは18歳」に非常によく似たものである。
祥子にアタックをかけるのが庄助の同僚たちで、秋野太作(夏井刑事)、鈴木ヒロミツ(秋葉刑事)、岡本達哉(春野刑事)、宅麻伸(小川刑事)で、夏井は部長刑事のようだ。みんな庄助の後輩だが秋葉以外は彼をバカにしている。役名だが、春夏秋がいて何故冬がいないのかが謎である。名古屋章は「ウルトラマンタロウ」でも(字は違うが)朝日奈隊長を演じており、偶然とも思えない。鈴木ヒロミツは石立とは「夜明けの刑事」以来であろうか。岡本達哉は現在は岡元八郎名義で活動している。芸名っぽい八郎の方が本名である。宅麻伸は当時25歳。「七人の刑事」(79年版)でも新人の中野刑事を演じていた。これほど息の長い役者になるとは当時は思えなかった。
上司は谷幹一(福山係長)で、当時48歳と刑事課では最年長、そして峰岸徹(松岡課長)。庄助とは同期だがエリート意識が強く部下には高圧的に接する。実年齢でも石立とは同世代(1歳下)である。「夜明けの刑事」から続くこの枠の刑事ドラマは大映テレビ制作でありながら、何故か大映出身の役者のレギュラーはいなかった。しかし峰岸徹は大映末期のスターである。あと、女性レギュラーである嘱託医の岡まゆみ、旭日奈の娘である比企理恵、中堅婦警の由紀さおりはそろって庄助が好きである。ただし由紀さおり演じる丘婦警は他の独身刑事に色目を使うこともある。既にベテラン感が漂っているが当時32歳と意外と若い。48年生まれとなっているが、46年説もあるらしい。
噂の刑事トミーとマツ その2
前回の続きである。「噂の刑事トミーとマツ」(79~82)年において最大の変化といえば、課長の交代であろうか。
御崎課長役の林隆三が43話にて降板。これはおそらく「ハングマン」への出演のためだと思われる。その後任となったのが相模管理官の石立鉄男であった。警視正が所轄の課長などをやることはまずないということもあってか警視へ降格させられた上での左遷であった(警視も所轄課長はなさそうだが)。まあトミマツの上司としては、石立の方があっている気はする。
この44話より、OPに若干の変更があった。前回も書いたとおり、成川哲夫(東刑事)、神山卓三(南田刑事)、井上和行(西山刑事)の三人がEDに役者名だけクレジットされていたのが、OPに役名つきでクレジットされるようになった(三人揃ってだが)、そして同様に石井めぐみ(森村万里子婦警)もOPに移行してクレジットされるようになった。彼女の登場は21話からで、それ以前にも森村婦警は登場していたようだが、別の役者(清嶋智子、ナンシー・チェニー)が演じていた、徐々にトミマツとの絡みも多くなりヒロインとなって行き、コンビものがトリオもののようになって行くのだった。
石井めぐみは当時21歳で早稲田大に在籍していた。この番組がテレビドラマデビュー作だが、この森村役ではなく、3話前の18話にゲスト出演したのが最初である。
81年3月の65話にて、番組は一旦終了。サブタイにも「しばしお別れ」とあるので、復活は当初からの予定だったようである。この後、81年内は石立鉄男主演の「秘密のデカちゃん」が放送されている。
そして年が明けた82年1月から「噂の刑事トミーとマツ」の第2シリーズがスタートする。レギュラーメンバーに特に変更はなかったようである。
自分は見たことはないが、片桐警部補役の清水章吾が病気で休んだことがあり、代役を藤木敬士が務めた回が何回かあるという。石立が課長の時だったら、「夜明けの刑事」の上司コンビが復活ということになる。藤木と清水が似ているとは思わないが、近い雰囲気は持っている気がする。
あまり大物ゲストはいなかったようだが、22話のゲストが由利徹と南利明。もと脱線トリオ(もう一人の八波むと志は64年に死去)の二人が揃ってドラマにゲスト出演というのも珍しい気がする。 第2シリーズ11話には植木等が出演している。
第2シリーズは82年いっぱい放送されたが休止なども多く全41話であった。第1シリーズと合わせると全106話となる。CSのTBSチャンネルでは、通番で放送していた。松崎しげるによれば、最初は1クールで終了の予定だったそうだが、4話目にして裏番組の「銭形平次」を視聴率で抜いたのだという。
噂の刑事トミーとマツ
「明日の刑事」が終わった翌週からスタートしたのが「噂の刑事トミーとマツ」(79~82年)である。コメディ色の強いというかコメディに徹した刑事ドラマというべきであろうか。
トミーこと岡野富夫刑事に国広富之、マツこと松山進刑事が松崎しげるという二人が主演。国広はスタート時26歳で、松崎は30歳になるところであった。松崎は歌手として脂ののっている時で、役者経験はほぼなかった中での抜擢であった。もちろん、これが初のドラマレギュラーである。
普段は刑事とは思えないくらい臆病でなよなよしたトミーがピンチに追い決まれ「男女のトミコ!」と(ほとんどはマツに)言われると人格が豹変し、とてつもなく強い男に変身。どんな相手でも倒してしまうのである。毎回これの繰り返しなのだが、番組は人気となり100話を超えるシリーズとなった。基本的には多重人格なのとか催眠術なのとか理屈を考える必要はないドラマなのだが、そこに至る原因はあるようだ。元々子供の頃に拳法を習っていたが、ある日逃亡犯を正当防衛とはいえ、自らの拳で殺してしまったのだという。それがトラウマで拳法の記憶が失われているという設定だ。それがなぜ「トミコ」で蘇えるのかは不明だけれども。
他のレギュラーだが、彼らが所属する富士見署のメンバーだが、林隆三(御崎捜査課長)、清水章吾(片桐警部補)、井川比佐志(髙村部長刑事)といった上司先輩がおり、他にも成川哲夫(東刑事)、神山卓三(南田刑事)、井上和行(西山刑事)という当初はその他扱いな感じだった三人もいる。加えて石立鉄男(相模管理官)。管理官とは本庁刑事部に所属しており捜査課のお目付役である。階級は警視正だが、プライベートでは御崎とは親友という設定。実際に石立は当時37歳、林は36歳と同世代で、清水章吾も37歳である。清水演じるは嫌な上司の典型で、年長の高村を呼び捨てにする。演じる井川は年配感があるが、若い頃から老け顔で当時は43歳と印象よりは若い。
「その他」の三人はエンディングに名前が出るだけだったが、44話より三人揃ってではあるがOPに移行し、役名も出るようになった。成川哲夫は当時35歳で上司役の三人とほぼ同世代。スペクトルマンで知られるが、「明日の刑事」では田島刑事を殺害したりしていた。神山卓三は当時48歳で、顔出しよりも声優業の方が有名だろう。「チキチキマシン猛レース」のケンケン役が特に知られており、あの笑い方は中々マネできないのではないだろうか。西山刑事は経理を担当しており捜査に加わることはないが、れきっとした刑事。定年が近いので署内で勤務させているという設定らしい。演じる井上和行は見た目どおり一番年長ではあるが当時まだ50歳で、定年はまだ先である。
他の出演者は志穂美悦子(岡野幸子)、トミーの姉役である。姉役といっても当時24歳で国広より年下だったのだが、違和感はなかった。徐々に出番が減っていき、42話で原田大二郎演じる麻薬Gメンと結婚し降板した。そして石井めぐみ(森村巡査)。交通課の巡査だがトミーが好きで追いかけている。マツは彼女が好きという三角関係になっている。
明日の刑事 その2
前回の続きである。「明日の刑事」(77~79年)は、「夜明けの刑事」に比べるといシリアス度が高めになっていたと思う。谷隼人の太田警部補が殉職した翌47話からは後任の橋本功(佐藤警部補)が登場する。ハンサムな谷からいかつい顔の中年にチェンジとなった。中年といっても橋本は当時36歳で、印象よりは若い。役名は佐藤で、坂上二郎の鈴木と合わせて日本の苗字1位2位が揃った(当時は鈴木が1位とされていた)。このシリーズは割かし平凡な苗字を役名としていることが多い。ちなみに、橋本が有名となった「若者たち」(66年)での役名は佐藤次郎だった。
そして、もう一人若手の東竜也(大谷刑事)も同じ47話より加入する。東は当時22歳で、特撮ドラマ「スターウルフ」(78年)で主役を演じていた。その終了直後、本作にレギュラー入りした。80年からは芸名を本名の村嶋修に改めている。
65話からは、本庁に転属していたはずの田中健(村上刑事)がしれっと復帰し、志穂美悦子(山口刑事)、田島真吾(田島刑事)と合わせて20代の若手刑事が4人揃うことになった。そのせいかどうか69話で田島が去ることになるのだが、かなりブルーな気持ちになれる回である。
田島の活躍を妬むストーカー男(伊東達広)と田島の恋人(長谷直美)をを横恋慕する男(成川哲夫)の二重攻撃を受け、精神的に追い詰められた田島は退職を決意。最後の事件とばかり伊東の逮捕に成功し、恋人の待つ元へ向かう田島だったが、すれ違い様に刺される。男はスペクトルマン成川哲夫だった。その場で絶命する田島、待ち続ける長谷直美で終了。サブタイには「田島刑事殉職」とあったが、退職していたので正確には違うと思う。まあ、とにかく深く印象に残るエピソードであった。
番気味終盤はほとんど見ていなかったのだが、主演の坂上二郎がスケジュールの都合で出番を減らせざるを得なくなり、実質梅宮辰夫演じる浅倉課長が主役のようになっていたという。そして、最終話。その浅倉課長が凶弾に倒れる。「不良番長」シリーズではラストで死んだかと思いきや、次作では何事もなかったように復活していた辰兄イがである。しかも上層部の命令無視しての捜査を行ったため殉職扱いにならないという。結果的に後味の悪さの残るドラマとして記憶している人も多いかもしれない。
丸二年の放送期間であったが、野球中継などの影響か全90話となっている。「夜明けの刑事」から5年に及んだシリーズはこれにて完結した。
出演者では梅宮辰夫が昨年末に亡くなったのは記憶に新しいと思うが、橋本功は00年に58歳で、鈴木ヒロミツは07年に60歳で、石立鉄男も07年に64歳と若くして亡くなった役者も多い。坂上二郎は11年3月10日に亡くなったが、これは東日本大震災の前日であったため、あまり大きく取り上げられなかった。追悼番組は翌12年になってから長年の相方だった萩本欽一の主導で放送されている。
明日の刑事
「新・夜明けの刑事」(77年)が半年ほどで終了し、新たにスタートしたのが「明日の刑事」(77~79年)である。
前作からは主役の坂上二郎(鈴木刑事)はもちろんのこと、鈴木ヒロミツ(小林刑事)、そして梅宮辰夫(浅倉課長)という太っちょ系の三人が残留。そのぶん新加入の三人は二枚目と美女である。谷隼人(太田警部補)、田中健(村上刑事)、志穂美悦子(山口刑事)という顔ぶれである。
このシリーズは大映テレビの製作なのだが、梅宮、谷、志穂美と東映出身が並び、東映の製作だと思っていた人もいたかもしれない。大映出身者もいないし。おまけに梅宮、谷とくれば「不良番長シリーズ」である。映画では法律無視で暴れまわっていた二人が日の出署刑事課のトップ2を演じるのである。まあ、むろん当時はそんなこと意識していなかったけれども。「不良番長シリーズ」は、当時見たことがあったかもしれないが、見たとしてもシリーズ後期の作品であり、谷が出演していないやつだったと思う。
谷隼人は当時31歳。鈴木ヒロミツは同い年となる。この若さで警部補ということでエリートで堅物という設定だ。前作までの藤木敬士の役柄を引き継いだ感じである。この人が鈴木刑事を呼び捨てにしていたか忘れてしまった。初対面では「鈴木さん?」と言っていたのは記憶にあるのだが。志穂美悦子は22歳になる直前だったが、既に「女必殺拳シリーズ」の主演を務めるなど女性アクションスターとして確立していた。そして田中健は当時26歳。「俺たちの旅」(75~76年)などでお茶の間にも知れている若手俳優だった。当初は転属を拒否し、正式に刑事課に配属となるのは3話からである。
本作の特徴としては、ゲストに歌手がよく登場することが挙げられる。1話から森昌子、2話に岡田奈々、4話で森進一、そして10話に中島みゆきである。中島みゆきはこれがドラマ初出演だった。と言ってもその後もドラマに出ることはほとんどなく(テレビ自体ほとんど出ない)、次は15年後(「親愛なる者へ」)となるようだ。他にも都はるみ、小柳ルミ子、太田裕美、松本ちえこ、和田アキ子、山口百恵、世良公則とツイスト、サーカスなども出演している。森昌子などは全部で3回出演しているようだ。
さて、レギュラー陣だが、田中健の村上刑事は本庁へ移動という形で24話で一時降板。続く25話からは田島真吾が登場。役名はそのまんま田島刑事であった。当時23歳で77年に歌手としてデビュー。78年には俳優活動をスタートさせ、本作が初のドラマレギュラーだった。
そして46話で太田警部補が殉職。このシリーズ初の殉職者となった。しかし、70年代の谷隼人はよく死んでいる。「バーディー大作戦」(74年)の最終話で爆死したかと思えば、「大非常線」(76年)の最終話で殉職、そして今回と2年毎にレギュラードラマで死んでいたのである。次回に続く。
新・夜明けの刑事
「夜明けの刑事」が終了し「明日の刑事」になったのは覚えている人は多いと思うが、その間に「新・夜明けの刑事」(77年)があったのは結構忘れられているかもしれない。なにしろ、全20話と短い上、レギュラー陣も前作ほとんど変化していない。
坂上二郎(鈴木刑事)、山本伸吾(中村刑事)、鈴木ヒロミツ(小林刑事)、藤木敬士(黒田刑事)はそのままで、前作の終盤に加わった佐藤允、長山藍子は姿を消し、新しく梅宮辰夫(浅倉課長)が着任する。、そして石橋正次(池原刑事)が1年半ぶりに復帰する。つまり新顔は梅宮だけということもあり、タイトルに「新」が付いたのを目立たなくしている気がする。
梅宮辰夫は当時39歳だったが、十分に貫録があった。当初はいつも顔を本で覆って寝ているキャラであった。世間的には、まだ「不良番長シリーズ」や「仁義なき戦いシリーズ」のイメージが残っていたかもしれないが、72年にクラウディアと再婚、74年に睾丸腫瘍を患ったことから、夜遊びをやめ早起きをして料理に励むようになったという。最近まであった梅宮のイメージ(料理上手等)はこの時期からのものであったと思う。
石橋正次は以前と変わって坊主頭での登場。青春スターも29歳になっていたが、薄毛が気になり始めた頃かもしれない。
ゲストに目を向けると20話と短かった割には二度出演している役者が目立つ。初回の夏夕介、麻丘めぐみは10話にも揃って登場(違う役と思われる)。大石悟郎や石川さゆりも二度出演しているようだ。
前作もそうだったが、本作ではゲストにその時話題の人を出したりすることが多い。前作ではキャロルやダウンタウンブギウギバンド、はしだのりひこ、デイブ平尾といったミュージシャンから中ピ廉の榎美沙子まで、あまりドラマでは見かけない人が出演していた。
今回もサブタイでなんとなくゲストが想像ついたりする。5話「ゴット姉ちゃんの愛」にせんだみつお、9話「なみだ涙の電線音頭」に小松政夫といった具合である。
前作からの音楽担当・星勝は鈴木ヒロミツが在籍したモップスのメンバーである。ヒロミツの横で、ギターを弾きながらコーラスもいれるヒゲづらの男が星である。ちなみに「ホシマサル」ではなく「ホシカツ」と読むようだ。
予定通りだったかどうかは不明だが、番組改変期9月末で番組は終了し「明日の刑事」へと繋がって行くのである。
夜明けの刑事
70年代人気刑事ドラマの一つには「夜明けの刑事」(74~77年)も挙げられる。スタート時期、終了時期、二年半という放送期間は「非情のライセンス(第二シリーズ)」とほぼ一緒であるが、総話数は「非情」124話に対して、野球中継などの影響か本作は全111話である。こういったドラマでは二枚目が主役となるのが通例であったが、本作では、まだコント55号のイメージも強かった(解散はしていないが)坂上二郎が主役に起用された。役名も当時国内に同姓同名が150人はいたという鈴木勇刑事となっている。坂上二郎はスタート時、丁度40歳を迎えるところであった。
他の日の出署メンバーは坂上より若い。石立鉄男(相馬課長)、石橋正次(池原刑事)、鈴木ヒロミツ(小林刑事)の3人は前番組だった「事件狩り」からそのままスライド。石立は当時32歳と若くアフロに近いモジャモジャヘアーなのでエリートには見えないが、不思議と貫禄がありリーダー感にあふれていた。階級は警視だが、本人の意向で所轄の現場配属となっている。残る一人が藤木敬士(黒田刑事)で、60年代初頭はツイスト歌手として人気を得ていた。俳優転向後は、ほとんど悪役だったので、この刑事役は嬉しかったそうだ。本作では堅物の巡査部長で、一見嫌な中間管理職といった感じだが悪い人間ではない。相馬も黒田も階級が自分より下なので、年長でも「鈴木」と呼び捨てにしている。
一番刑事っぽく見えるのは坂上二郎で、後はまあ見えない。特に鈴木ヒロミツはモップスのボーカルから役者活動を始めてまもない頃で、長髪の丸眼鏡で当初は演技も堅かったと記憶している。第1話の犯人役であった中山仁の方がよっぽど刑事っぽく見えたが、それも狙い目だったのかもしれない。
石橋正次が42話で降板し、続く43話から登場したのが水谷豊(山本刑事)であった。今や刑事ドラマではお馴染みの水谷だが、当時23歳で本作が初めての刑事役だった。水谷は半年のみの出演で降板したが、すぐに新人は現れず68~72話二かけては4人体制であった。73話から登場したのが山本伸吾(中村刑事)。この回のゲストである三浦友和の主演映画「陽の当たる坂道」(75年)で、デビューした当時24歳の若手で、バンド「三浦友和と仲間たち」でギターを担当していた。
そして82話。1話から頑張っていた石立鉄男が辞職という形で番組を降板。これは何と裏番組となる「気まぐれ天使」への出演のためだったという。ここでまた、すぐに後任が来るわけではなく神山繁演じる石田警視が課長代理という形で83~86話まで指揮をとった。意図的にすぐに後任を選ばないのか、急な降板で対応できなかったのかは不明である。
で、87話から赴任したのが佐藤允(柴田課長)と長山藍子(大野警部補)であった。柴田の階級は警部で、演じる佐藤允は坂上二郎とは同い年である。長山藍子は当時35歳、ホームドラマ女優というイメージが強く、こういう刑事役は珍しいと思われる。
111話を持って取り敢えず終了となったが、翌週よりそのまま「新・夜明けの刑事」(77年)が始まるのであった。
非情のライセンス(第3シリーズ)
前作から3年の時を経て、復活したのが「非情のライセンス(第3シリーズ)」(80年)である。
出演者は天知茂(会田刑事)、山村聰(矢部警視)は変わらず登場で、捜査一課の渡辺文雄(橘警部)もそのまま登場する。
特捜部メンバーは様変わりしている。柳生博(山路刑事)は一見、天知茂より年長に見えるが当時43歳で天知より6歳下である。小野武彦(北里刑事)は「大都会」シリーズ3作(76~79年)で大内刑事を演じており、そのイメージが強い仲での起用である。高田洋(村井刑事)については詳細は不明である。20代の若手であろうが、出演記録は本作と「俺たちの朝」にゲスト出演しているくらいしか発見できなかった。実際にそれしかないのかもしれないが。水野靖子(沢田婦警)も80年代の短期間に活動していた女優のようである。
そして、左とん平(浦川刑事)。1,2シリーズでいずれも死んでしまう役だったが、またしても復活。前作の右田刑事と似たようなキャラだが、元は捜査一課所属、つまり橘の部下で免職された過去があるという設定になっている。
他のセミレギュラーだが、まず野川由美子(高坂しずえ)。特捜部行きつけの喫茶店の店主であるが、会田の動きを監視する役割を担っていたことが2話で明らかになる。その後も事件に巻き込まれることが多い。演歌歌手の角川博(伴兼次)は、しずえの店の従業員役。角川のドラマ出演は本作以外はほとんどない。共に24話に殺されてしまう。そして、岩城力也(岩田)。かつての特捜部メンバーで警視庁を退職後はしずえの店で働いていた。会田の捜査に協力することもある。3作とも同じ役で出演したのは前述の三人と岩城だけである。
後、橘の部下である捜査一課の刑事として、前作から引き続き北町嘉朗(佐々木刑事)、北浦昭義(横山刑事)が登場する。
本作で一番大きな出来事といえば、実はこの番組のなかった三年の間に会田が結婚していたのである。しかし、その妻(上村香子)は第1話にて殺されてしまうのである。この事件を筆頭に身の回りに不幸が多いのが本作の特徴といえるかもしれない。特に柳生演じる山路刑事は13話で実妹(三浦真弓)が付き合っていた男に殺され、25話では娘がその彼氏と共に過去に山路が逮捕した男に誘拐され殺されてしまうのである。この時は、山路も会田ばりに犯人を射殺している。前述のように24話では、しずえの店に爆弾が仕掛けられ伴が死に、しずえも結婚を考えていた相手(井上孝雄)にころされてしまう。そして最終話。ついに矢部警視が拘束され車に仕掛けられた爆弾によって爆死してしまう。
半年で終わってしまったせいか、1&2シリーズに比べるとあまり話題にならない気がする第3シリーズだが、結構ハードな展開が繰り広げられているのだ。
非情のライセンス(第2シリーズ) その2
さて、「非情のライセンス」第2シリーズ(74~77年)だが、放送が二年目に突入した頃から番組が動き始める。58話にて葉山良二演じる四方刑事は天知茂演じる会田刑事と共に事件解決にあたり、その関係者だった女性(松本留美)と結ばれ教会で結婚することになるが(参列者は会田一人)、その最中に組織の生き残っていた男(佐藤京一)に背後から撃たれて絶命する。怒りの会田は男を追い詰め容赦なく射殺する。第2シリーズでは、あまり登場回数は多くなかった四方だが、前シリーズからのメンバーが初めて犠牲となったのである。
73話では江波杏子演じる江沢刑事が高校時代の同級生で殺人犯でもあった男(竜崎勝)と婚約。何やかやでボートで二人でもみ合っているうちに江沢は撃たれて絶命する。ボートで近くまで来ていた会田は、呆然と立ち尽くす竜崎を容赦なく射殺する。会田は許可でもされているかのように犯人を射殺しまくるのである。実は殺人を犯したのは彼女で、竜崎は身代わりで捕まったという説もあったことを会田は知るが真相は不明となった。
二人減ったところへ89話から松山英太郎演じる浮田刑事が特捜部に加わる。本人は突然の転属に戸惑っており、当初はあまりやる気のないキャラであった。松山は当時34歳で、この時点では一番の若手となった。
97話では、宮口二郎演じる坂井刑事の後輩(和崎俊哉)が籠城。坂井が彼の説得に乗り込むが、和崎は機動隊の催涙弾に反応して誤って坂井を撃ってしまう。いつもなら会田が彼を射殺するパターンだが、今回は周囲に一課や機動隊もいたため出来なかったようだ。坂井の亡骸を見た浮田は特捜で頑張っていくことを誓ったのだった。
そして、わずか2週後の99話。左とん平演じる右田刑事が今までの個人的な出来事がらみで死んでいった刑事たちとは違い単独で暴力団組織に乗り込み、沢山の銃弾を浴びて死んでいく。そこへ駆けつけた会田刑事、怒りにまかせて形ぱっしから悪党どもを射殺していくのであった。
100話の時点で特捜部は矢部警視、会田刑事以外は、浮田と岩城力也演じる岩田刑事だけになっていた。この回では、外に出ることも少なかった岩田が拳銃を撃つシーンもあったりする。しかし、これ以降岩田刑事は登場しない。最後に少し活躍シーンを与えたということだろうか。
天知茂、山村聰以外の古参レギュラーがいなくなった101話以降は多少路線が変わる。サブタイトルから「凶悪」の文字が消え、いきなり「恋心」「自供」「袋小路」といった単語だけのサブタイとなっている。新メンバーとして101話から篠ヒロコ演じる滝刑事、102話より財津一郎演じる堀刑事が特捜部に加入する。これに浮田刑事を加えた五人がフルメンバーとなる。しかし、滝と堀が一緒に登場することはなく、堀と浮田も同様である。つまり会田+滝+浮田(+矢部)というパターンと会田+堀(+矢部)というパターンに分かれる。会田単独も多く、最終124話も会田と矢部しか登場しない。
100話までに5人が殉職した本作は「大空港」には及ばないが殉職率の高い作品だったのである。