お宝映画・番組私的見聞録 -42ページ目

人喰い(火曜日の女シリーズ)

今回も「火曜日の女シリーズ」から「人喰い」(70年)である。制作は東宝で、原作は前回の「男と女と」と同じで笹沢佐保の同名小説である。笹沢は「男と女と」の原作である「結婚って何さ」を書いたのと同じ60年に「人喰い」を書き、直木賞の候補になったようである。
主演は十朱幸代(花城佐紀子)で、恋人役が児玉清(豊島宗和)、咲子の妹が江夏夕子(花城由記子)である。原作では佐紀子が妹のようだが、ドラマでは逆になっている。姉妹や豊島が務めるのは本多火薬工業浦磯工場で、その性質から都心から少し離れた地域にある。その社長役が辰巳柳太郎(本多裕介)なのだが、個人的には時代劇以外での辰巳を初めて見た気がする。
役柄的には、もっと悪役っぽい佐々木孝丸とか金田龍之介辺りでも良さそうな気がするが、頑固で時代遅れな経営理念を持つワンマン親父ということで辰巳になったのであろうか。
その一人息子役が宮浩之(本多昭一)で、実は由記子と付き合っている。豊島のかつての恋人役がしめぎしがこ(浦上美土利)で、豊島や花城姉妹にやたら絡んでくる。しめぎしがこは漢字で書くと標滋賀子と書き、本名のようである。読めない人が多かっただろうから漢字から平仮名に芸名は変えたようだ。滋賀生まれと言うわけではなく東京生まれのようだ。いかにも悪女といった風貌で「ザ・ガードマン」等によく悪女ゲストとして出ていたが、70年代半ばには引退してしまっている。他に川口敦子(社長夫人)、高橋昌也(柏村専務)、磯野洋子(武藤洋子)等が出演している。
さて、あらすじだが前述のように花城由記子は社長の息子・本多昭一と交際していたが、昭一に縁談が持ち上がる。相手は銀行頭取の娘である武藤洋子だった。社長夫人に二人の仲を裂かれ、由記子と昭一は結婚できないなら心中すると言い残して、昭一と共に行方不明になってしまう。数日後、甲府の昇仙峡で昭一の死体が発見される。状況は自殺だったが、由記子の姿はない。その後、由記子らしい人物が現場周辺で目撃されたことから偽装心中による殺人の疑いで警察は由記子を手配するのだった。そして、容疑者の身内ということで佐紀子も会社から一方的に解雇を言い渡される。
そんな中、今度は社長が会社の倉庫内で殺される。警察はこれも由記子の犯行を疑うのだった。最後に社長と会ったのは鶴巻建設の吉原(佐伯徹)という男だったが、その話から佐紀子は社長殺しのトリックを推理し犯人は複数犯であるという説を導き出す。警察もその説には理解を示すが、犯人が由記子ではないということにはならない。
佐紀子は柏村専務は社長夫人と密会していたり、社長が死んで一番得をするであろう人物であることから疑っており、吉原が直接専務の指示で会いにいったのかを確かめようと吉原にもう一度会いに行くが、彼は事故死してしまう(もちろん殺人なのだけれども)。ここまでが第3話で、毎回一人づつ死んで行く。ここまでは見ている方も犯人は「?」という人も多いと思うのだが、誰かが由記子になりすましていることは当初からわかるであろう。第4話で由記子の共犯者になりうる人物として花火屋の大野(佐田豊)が浮かび上がるが、大野も佐紀子の眼前で謎の死を遂げる。こうなると、誰が犯人かほぼわかってしまうのでは?吉原と大野は佐紀子の先回りをするかのごとく殺された。その行動を知ることができた唯一の人物と言えば…。ところで、大野役は佐田豊と書いたが、縛られて登場しあっという間に死ぬので、おそらくである。基本的には東宝の大部屋俳優だが、黒澤明監督の「天国と地獄」では間違えて誘拐された子供の父親という大役を演じた人である。次回に続く。

 

男と女と(火曜日の女シリーズ)その2

前回の続きで「男と女と」(73年)である。ネタバレありなのでご注意。
二話までで四人の死者が出て、三話にて真弓(范文雀)がホテルに戻ったところ隆司(村野武範)に踏み込まれる。こうして二人が正式に出会うが、隆司は自分の勘違いに気づき謝罪するが、真弓は殺人容疑で指名手配されていることを告白する。姉の良子(本山可久子)と伴幸太郎(見明凡太郎)が同じ日に死んでいることなどを知り、隆司は真弓と行動を共にすることを決意する。そして事件の謎解きが始まる。
そもそも犯人らしき人物が矢倉文彦(蜷川幸雄)、伴早苗(長内美那子)、川村佐和子(高樹蓉子)、江崎弁護士(竜崎勝)くらいしかいないし、複数犯であることも見当はつく。矢倉と佐和子、江崎と早苗は秘密のカップルなのである。
まず、真弓と美枝子(伊藤るり子)を連れ込んだ男は森川だったのかという疑問がわく。明らかに変装していたことは真弓も気づいていた。二人が入浴している間に予め隣室で眠らせておいた(あるいは死んでいた)森川と男が入れ替わるのは簡単である。そして出ていく時にドアのラッチという部分を出したまま閉めれば鍵がかかってしまうタイプであれば、密室は簡単に作れる。実際に自分が東京に出てきて初めて住んだアパートがそうだった。
また独自に調べていくうち、矢倉と早苗はそれぞれの伴侶が死んだ時間には完璧なアリバイがあったが、その逆はアリバイがなかった。これらのことからミステリーファンなら「交換殺人」という言葉が浮かぶであろう。つまり、矢倉が伴を早苗が良子を殺すわけである。これは時間的には十分可能であることも分かった。後は、一見繋がりのない矢倉と早苗の関係と森川が殺された理由である。これは三人は同い年で、いずれも伊豆下田の出身であるということがわかり学生時代の同級生であろうという推測を立てた。実際に三人は同じ中学の同級生だったのである。矢倉と早苗は同窓会か何かで再会し、今回の計画を立てたが、伴家の配達を担当していたのがたまたま森川で、二人の繋がりを知られたので、殺すに至ったのである。ちなみに森川役は中井啓輔で最終話のみ登場した。矢倉が早苗に送ったのがこけし郵便(今も存在する)で、中にメモと良子の写真が入っていたのだが、荷札が取れてしまっていたため中身の確認を行っていたことも森川を殺した動機であった。良子の顔を知らない早苗に確認させるためだったのだ。となると、真弓と美枝子をホテルに誘ったのは変装した矢倉である。彼女たちは運悪く巻き込まれてしまったわけである。
隆司の身元も警察に割れてしまい、時間がないと判断した隆司と真弓はこれらの推理を直接、早苗と矢倉にぶつけたのである。早苗は「老人の嫁であることが嫌だった」と言い放った。勿論、最初は関係なく好きで結婚したが、次第に嫌になってきたらしい。つまり、早苗も矢倉もやっぱり若い方がいい、というのが今回の動機だったといえる。
にしても設定では伴幸太郎は56歳である。56歳で老人とは…。まあ演じる見明凡太郎は実際には当時67歳で、老人に見えたし、矢倉良子も34歳の設定だったが、演じた本山可久子は当時41歳である。この前年の「レインボーマン」で、主人公タケシ(水谷邦久)の母親を演じたりしていた人である。当時はどうだったかわからんが、今見ると実年齢相応にしか見えない。そういえば、高樹蓉子も「レインボーマン」に出演していたな。
全編に流れる歌は安田南というジャズシンガーが歌っている。彼女は俳優座養成所16期生だったらしいが、途中で退所して歌の道に進んだということだ。

 

男と女と(火曜日の女シリーズ)

今回も「火曜日の女シリーズ」から「男と女と」(73年)である。主演は范文雀と村野武範で、制作は国際放映。笹沢佐俣の「結婚って何さ」を原作とする全6回のサスペンスドラマである。この「結婚って何さ」というタイトルだけ聞くと全然サスペンス感がない気がするのだが、「男と女と」だとそれっぽくなる。まあ「結婚」がテーマになっていることは確かなのだが。
新労連の委員長である矢倉文彦(蜷川幸雄)は再選の準備のため、河口湖の組合寮に一人で滞在することになった。彼の妻である良子(本山可久子)は彼より年上の後妻で、彼が事務員の川村佐和子(高樹蓉子)と浮気していることを知っていた。良子の弟である水木隆司(村野武範)もそのことを聞いており、義兄には不信感を抱いていた。
一方、弁護士の伴幸太郎(見明凡太郎)も大きな訴訟を控え、準備のため西湖にあるホテルに向かった。彼には、丁度二回り年下の妻・早苗(長内美那子)がいるが、彼女は同行を断っている。また伴の弁護士事務所には江崎(竜崎勝)という若い弁護士が所属している。
そんな時、実家に身を寄せていた良子の元に矢倉から「河口湖に来ないか」と電話があり、夜の中央線で河口湖に向かい駅で矢倉が待っていたが、良子は河口湖駅に到着しなかった。また、伴幸太郎もホテルから散歩に出たきり戻って来なかったのである。翌日、伴は西湖の湖畔で、良子は立川~八王子間の線路わきで遺体となって発見された。どちらも転落死であり、事件と事故とも判断がつきにくいものだったが、警察は事故の線を有力視していた。当時の電車は走行中でも手動でドアを開けることも可能だった。
第1話が半分過ぎたところで、ようやく本作ヒロイン遠井真弓(范文雀)が登場。彼女は臨時のタイピストであったが、契約期限が来たため友人の疋田美枝子(伊藤るり子)と共に解雇となる。今でいう派遣切りみたいなものである。真弓は兄(内田勝正)と二人暮らし。兄は会社の偉い人の娘と結婚を控えていた。
その夜、やけ酒を飲んでいた二人の元に帽子とサングラスとヒゲの男が現れ、二人は酔った勢いもあり、その男と共にホテルに入るが、男は着くなりソファーで横になってしまう。真弓と美枝子は入浴してその後寝てしまうが、翌朝が気が付くと男が首を絞められて死んでいるのを発見するのだった。
と、ここまでが第1話である。初回から三人死ぬとか中々ない展開ではないだろうか。と同時に、この先特に新キャラの登場もないので犯人になりそうな人物もこの時点で絞られる。一見、繋がりのない三つの事件だが、勿論繋がっていくのである。殺された謎の男は、伴幸太郎の名刺と河口湖行きの切符を持っていたのである。
真弓は、無実を証明する術がないし、このままでは犯人にされてしまうからと逃亡することを選択。パニック状態にある美枝子を連れて外へとでるが、たまたま警官と出会い、逃げ出した美枝子は踏切で列車に跳ねられる。その場を立ち去るしかなかった真弓はニュースで、美枝子の死と死んでいた男が郵便局員の森川という男であること、そして自分も指名手配されたことを知る。
真弓はとりあえず河口湖に向かって見ることにしたが、電車の中で不審な男に出会う。それは隆司であったが、彼も姉の死に不信を抱き河口湖に向かっていた。そして真弓を矢倉の浮気相手である佐和子ではないかと勘違いしたのである。逃げるように富士急線に乗り換えた真弓は社内で偶然知り合った女と同じホテルに泊まることにする。後に彼女が名刺にあった伴幸太郎の妻である早苗であることを知る。そして、早苗が楽しそうに弁護士の江崎と会っているところを目撃するのである。あらすじだらけになってしまったが、次回に続く。

 

クラスメート-高校生ブルース- その2 

前回の続きで、「クラスメート-高校生ブルース」(71年)である。ネタバレもありなのでご注意。
生徒以外のキャストも勿論おり、洋子(武原英子)の同僚教師が、校長(浜田寅彦)、市川(加藤嘉)、そして佐伯(勝呂誉)が登場する。校長は演じるのが浜田寅彦ということもあり、洋子の敵かと思いきや実はとてもいい人で、PTAが彼女を解雇すべきと主張しても首を縦に振ろうとはしかなった。佐伯はすぐに洋子に近づき味方のように思わせるが、どこか怪しい。PTAとしては河合(沖雅也)の父(内田朝雄)。河合物産の社長で裏社会とも繋がるあくどい人物。そして矢吹(近藤正臣)の母・初江(高森和子)。矢吹医院の未亡人で息子に病院を継がせようと思っている。
そして事件を追う原口刑事(新克利)。最初は洋子に反発していたが次第に彼女に惹かれていく。惹かれていくと言えば、河合も彼女に夢中になって行く。つまり、沖雅也と新克利という「必殺仕置屋稼業」(75年)のコンビがライバル的な関係となるのだ。
さて、洋子はメモも日記も残していない竜崎(田村高廣)のクセを思い出し、入学願書やテスト用紙を捜すが、何故か竜崎のクラス分だけなくなっていた。しかし竜崎が自分の教科書の余白にメモを残していたことを発見した。そこにある「HとKがホテルに」の書き込みのHを花村(沖田駿一)と勘違い。実はHは日野(水谷邦久)でKは香川(佐藤燿子)のことだったのだが、花村が日野を呼び出し、もめた末に山県(鎌田英男)が日野を刺してしまうという事件に発展する。責任を感じた洋子は教師を辞め、故郷の長崎に帰るが原口と河合も長崎へ飛ぶ。そこでも何者かに襲われ河合に救われ、結局復職を決意する。今度はクラスも彼女のことを歓迎。刺された日野も姿を見せていた。
再び教科書メモの「完璧な答案」という書き込みが矢吹の生物の答案を示していることが分かった。そして、矢吹と殺された加東(岩上正宏)が小中と同じでかつては仲が良かったことや、矢吹の母・初江と佐伯の意外なつながりも判明したが佐伯は姿を消していた。
まあ6話完結なので、物語は5話くらいから一気に進み、6話の最初で犯人は矢吹に確定となるのだが事は単純ではなかった。佐伯が矢吹の前に姿を現し自首を諭す。佐伯は殺人には関係ないが、初江に弱みを握られており、先の入学願書やテスト用紙等を盗み出していた。佐伯は学校を辞め、大学研究室入りの話も断り、警察に出頭すること矢吹に告げ物語から退場する。そして矢吹も警察に出頭し、事件の概要を語り始める。
矢吹はたまたま職員室で金庫を開けるところを目撃し、ダイヤルを覚えてしまっていたのである。医学部志望でありながら、生物を苦手していたこともあり、職員室に侵入し問題を事前に把握して試験に臨み「完璧な答案」に至ったのである。翌日も金庫を開け問題を見ていたところを、不信に思っていた竜崎に見つかってしまったのである。事情を知った初江は竜崎に見逃してくれるよう頼みこむが、竜崎は「ただのカンニングではないから」と突っぱねる。激怒した初江は学校に戻った竜崎を待ち伏せて…。竜崎殺しはまさかの初江だったのである。当時の視聴者で見破っていた人はいたのだろうか。2話と5話に少し出ていた程度だったので難しかったのではないだろうか。加東殺しに関しては矢吹本人の犯行で、アリバイ工作に利用したがバレるのも時間の問題と思っていたところ呼び出されたので…。
ラストは逮捕された矢吹に恨み言を言うのではなく、空席となった矢吹の席に向かって花村や河合までもがエールを送るという綺麗なラストになっている。そこは個人の好みだろう。
近藤正臣や沖雅也の出世作と言われるのもわかるドラマであった。

 

クラスメート-高校生ブルース-

年明け第1弾だが、ここしばらく時代劇が続いていたので、一旦他のジャンルに変えたいと思う。
昨年10月~11月にCSで「火曜日の女シリーズ」(69~73年)の数本が放送されたのである。「火曜日の女シリーズ」とは、タイトル通り火曜日に放送されていた女優を主人公とするサスペンスドラマシリーズで、1つのタイトルについて6話前後で完結するようになっている。
原作ものもあれば、オリジナルもあり、制作会社も東宝、国際放映、ユニオン映画、日活、松竹、大映テレビとタイトルによって違っているというバラエティに富んだシリーズだったのである。今回は7作品が放送されたが、その中でも元々好きだった「クラスメート-高校生ブルース-」(71年)を取り上げたい。制作は国際放映、脚本担当である池田一朗(隆慶一郎)のオリジナル作品で、主演は武原英子である。武原は当時25歳で、80年ににしきのあきらと結婚するが、96年に50歳の若さで亡くなっている。
武原演じる山賀洋子は元高校教師。生徒に襲われ退職したという過去を持つ。そんな彼女を日向高校に務める恩師である竜崎(田村高廣)はウチでまた教師をやらないかと誘っていた。しかし、その竜崎が何者かに殺されたことで、洋子は教師復帰を決意し日向高校に赴任する。本来、エリート進学高なのだが洋子の担任クラスには4人の不良生徒も混じっていた。数日後そのリーダーである花村(沖田駿一)が、竜崎の殺害容疑で逮捕され、洋子は警察のスパイではと生徒たちから疑われる。そこで洋子は真犯人を見つけ出すことで、自分と花村の容疑を晴らすことを宣言する。しかし、今度は不良グループのパシリ的存在だった加東(岩上正宏)が殺されてしまう。という感じである。
まあ何と言って生徒役が豪華なのである。不良グループは前述の沖田、岩上の他、沖雅也、鎌田英男で、鎌田の彼女が沢井孝子。彼等は堂々と私服である。優等生役が近藤正臣、水谷邦久でその彼女が佐藤燿子、落ちこぼれが赤塚真人といった具合だ。
設定は高校二年生なので、16~17歳ということになるが、大半の役者は20歳過ぎである。当時はそれが普通で、さして違和感も感じていなかった。何と言っても矢吹役の近藤正臣は当時29歳。屈折したエリート学生といった役柄は似合っていた。河合役の沖雅也は当時19歳で設定に近かった。解説には本作が近藤や沖の出世作と書かれていたりするが、確かに当時はブレイクという段階までは行っていなかったかもしれない。
沖田駿一は当時25歳で、改めて見ると高校生には見えない。日活ニューフェイス出身ではあるが、当初からチンピラや不良の役が多かった。山県役の鎌田英男の詳細は不明だが、67年くらいから活動記録があり子役出身かもしれない。おデブの岩上正宏は「しゃあけえ大ちゃん」(64年)では主役、「図々しい奴」では丸井太郎の少年時代とか実績のある子役だった。彼も詳細なプロフィールは不明だが、20歳前後だったとは思われる。役名はカトウマサルで、加藤優だと「金八先生」を思い出す人も多いと思うが、本作では加東勝という表記のようだ。
日野役の水谷邦久は当時23歳。翌年「レインボーマン」の主役に抜擢される。金沢役の沢井孝子もこの後「ミラーマン」でヒロイン役に抜擢される。赤塚真人は当時20歳で、60年代青春ドラマでは生徒役として活躍していた。ちなみに「マサト」ではなく「マコト」と読むのが正解である。次回に続く。

 

2021年回顧録 その2

更新が一日遅れてしまったが、前回の続きである。大晦日なので、当然今年最後の更新である。
まず、今年亡くなった方々の声優編。森山周一郎(86)、菅谷政子(83)、若山弦蔵(88)、太田淑子(89)、八奈見乗児(90)といった大ベテランの訃報が目立った。森山周一郎は顔出し役者としての活躍も多く「特別機動捜査隊」でも大村刑事役を4年ほど演じていた。チャールズ・ブロンソンの吹替は大塚周夫の次に担当することが多かったが、森山の本名は大塚博夫という。後はアニメでの活躍が目立つ面々で、個人的なイメージでは菅谷政子は「エースをねらえ」の愛川マキ、若山弦蔵は「わんぱく探偵団」の怪人二十面相、太田淑子は「リボンの騎士」「ひみつのアッコちゃん」でそれぞれ主役(サファイア、加賀美アッコ)、八奈見乗児は「巨人の星」の伴宙太であろうか。全員が揃って出演している作品もあるかもしれんが、改めて調べると若山はアニメが少ない割には印象に残っている。「宝島」で主役のシルバーを演じたが、1度だけ登場したその女房を演じたのは菅谷であった。太田は宝塚歌劇団の出身で、前述のようなヒロインも演じたが藤子不二雄アニメの少年役イメージも強い。初代のび太くんは彼女である(日テレ版ドラえもん)。
また、今年は漫画家の訃報も相次いだ。富永一朗(96)、三浦建太郎(54)、サトウサンペイ(91)、みなもと太郎(74)、さいとう・たかを(84)、白土三平(89)、古谷三敏(85)、平田弘史(84)、佐伯かよの(69)といった面々である。漫画家は早逝なイメージがあるが、三浦を除いては長生きしたのではないだろうか。その三浦は「ベルセルク」を連載中であったが、作品の継続や終了については明言されていないようだ。さいとう・たかをと言えば「ゴルゴ13」だが、彼の死後も作品はさいとうプロダクションらによって継続されている。白土三平と言えば「カムイ伝」。その「第二部」は2000年に完結し、第三部が構想中とのことだったが発表されることはなかった。その第二部は「画・岡本鉄二」となっているが彼は白土の実弟である。白土が亡くなったその4日後に岡本も88歳で亡くなっている。
アニメーターの大塚康生(89)、特撮などの音楽で知られる菊池俊輔(89)、すぎやまこういち(90)等いずれも90歳前後まで活躍していたのは凄い。
他にも橋田壽賀子(95)、細木数子(83)、瀬戸内寂聴(99)、ワダエミ(84)、メリー喜多川(93)といった各分野の女性重鎮たちも相次いで亡くなったのも本年である。
海外に目を向けると「気狂いピエロ」「勝手にしやがれ」のジャン・ポール・ベルモンド(84)やアラン・ドロンの元妻ナタリー・ドロン(79)。ローリングストーンズのドラマーであるチャーリー・ワッツ(80)、モンキーズのギタリストであるマイク・ネスミス(78)、ベイシティ・ローラーズのボーカルであったレスリー・マッコーエン(65)といった日本でもお馴染みであろう面々も亡くなっている。とりあえず合掌。

まあ、来年も同じペースで更新していきたいとは思っているがどうなることやら。

 

2021年回顧録

さて、年末恒例の回顧録である。とは言っても今年亡くなった人を振り返るだけなのだけれども。
まずは俳優部門だが、いきなり1月1日に福本清三(77)が亡くなっている。おそらく日本一有名な斬られ役であり、「5万回斬られた男」の異名を持つ。2002年にはハリウッド映画「ラストサムライ」にも出演した。出演作はほぼ時代劇だが、石原プロの「大都会」シリーズや「西部警察」シリーズ等に悪役で出たこともある。本名は橋本だが、先輩に橋本某がおり、変えろと言われ咄嗟に福本を名乗ったという。その一月後、同じ東映剣会出身で福本の先輩だった小峰隆司(87)も亡くなっている。こちらは「1万回斬られた男」と呼ばれていたらしい。70年代途中までは小峰一男名義であった。高齢だが現役の役者であった。本年も「HOKUSAI」という作品に出演している。
やはり東映で悪役・斬られ役をやっていたのが、チャンバラトリオ4人目のメンバーだった結城哲也(79)である。彼も年明けの1月4日に亡くなっている。最終的な名義はゆうき哲也であった。ピラニア軍団にいた井上茂は実弟である。
同じく東映繋がりでは、スター候補であるニューフェイス。その6期生が亀石征一郎(82)である。東映専属の期間は短かったが、同社の「特別機動捜査隊」では主任役も務めた。亀石の死で主任役で健在なのは里見浩太朗だけとなった。年齢を重ねてからは悪役の方が多かったと思われる。その亀石とニューフェイス同期だったのが千葉真一(82)である。早くから「七色仮面」「アラーの使者」等テレビヒーローとして活躍し「キイハンター」でアクションスターとしての地位を確立した。亀石とは親友で千葉が主宰するJACの幹部を亀石が務めたりしていた。その亀石の死から約1か月後に千葉も逝ってしまった。
個人的なことを言うと千葉の死は自分が入院していた時の出来事だった。この8月14日~21日の間に千葉の他にも、ジェリー藤尾(81)、辻萬長(77)、二瓶正也(80)、俳優ではないが笑福亭仁鶴(86)、メリー喜多川(93)等も亡くなっているが、自分は外界の情報がわからない状態にあり、いずれも後から知ったことである(意識不明とかではなく知る手段がなかったという意味)。
辻萬長は存在は昔から知っていが名前が読めなかった(ツジカズナガが正解)。二瓶正也といえば「ウルトラマン」のイデ隊員でお馴染み。ドイツと日本のハーフだがあまりそういうイメージがない。晩年は随分と太っていたイメージがある。二瓶は東宝ニューフェイスの15期生だが、子役から東宝入りしたのが江原達怡(84)である。「若大将シリーズ」ではその友人・江口役でレギュラー出演していたが、「ハワイの若大将」(63年)のみ二瓶が江口役を演じている。しかし二瓶は泳げないため、そういったシーンを嫌って一作のみで降板した。江原は70年代には実業家に転身したが、俳優の仕事もたまにやっていた。「若大将シリーズ」といえば、青大将・田中邦衛(88)である。実は2012年の地井武男の葬儀に現れたのが、公の場での最後の姿だったようだ。ちなみに死因は老衰だという。
そして、田村正和(77)、中村吉右衛門(77)も今年の出来事である。田村は「同じセリフは二度と言いたくない」という理由でセリフは完璧に覚え、NGを出すことはほとんどなかったという。18年の「眠狂四郎 The Final」が遺作となった。中村吉右衛門はつい最近なので、記憶に新しいと思うが、全然元気だったイメージである。今年の3月頃に体調を崩していたようだ。瑳川哲朗(84)、船戸順(82)、本郷直樹(70)、隆大介(64)などの名前も挙げておきたい。たまたまだろうが、77歳の人が多かったりする。ひとまず合掌。

 

いただき勘兵衛旅を行く

「素浪人天下太平」の後番組が「いただき勘兵衛旅を行く」(73~74年)である。主演は同じ近衛十四郎で、素浪人シリーズの4作目となる。予定通りかどうかは別として、共演者や設定のテコ入れが入った形となっている。
素浪人シリーズと言っても、今回近衛が演じる月田勘兵衛は素浪人ではない。元直参の大番組頭で、諸国を巡る隠密巡察使に任命された為に素浪人スタイルで旅をするという設定である。勘兵衛は大酒飲みで喧嘩好きなので、タイトルこそ「いただき勘兵衛」だが「はみだし勘兵衛」と呼ばれている。彼を任命した土井正篤(山形勲)は、不安を感じて監視役として宗門改方与力の有賀透三(目黒祐樹)を渡世人の仙太として同行させる。同時に町娘のお紺(江夏夕子)も金銭面の管理者として同行させ、この三人が諸国の悪を退治していくという展開である。さらに、三人の実績と成果を江戸の土井に知らせる監視役として通称・貧乏神(吉田義夫)が尾行する。その正体は公儀御庭番・真庭仙太である。何故か「仙太」が二人いて、ややこしい設定となっている。レギュラーは以上の4人である。中学時代だったか土曜の昼くらいに再放送をやっていて、OPでは目黒祐樹の役を「アリガトウサン」と表示していたのを思い出すが、実際はトウゾウと読ませるようだ。
さて、今回近衛の相棒となるのは息子の目黒祐樹である。半年間もの間がっつりと共演するのは、おそらく初めてであろう。さらに、後に目黒の嫁となる江夏夕子が一緒である。実は二人の共演は今回が初めてではない。目黒が子役を経て進学などのため芸能界を離れていた時期があるが、復帰したばかりの69年の映画「栄光の黒豹」で既に共演していたのである。二人は同い年で当時は共に22歳。その時分から付き合っていたかは定かでないが、近衛が亡くなった後ではあるが、79年に結婚することになる。
キャラ設定として、勘兵衛には坊主恐怖症というのがあり、貧乏神を見ると逃げ出してしまう。また仙太こと有賀透三は筋金入りの女たらしである。
73年末に放送された12話には松方弘樹がゲスト出演し、親子三人のテレビ共演が叶ったわけである。この後の「徳川三国志」にも三人揃って出演することになるが、テレビでの三者共演は「いただき勘兵衛」が初だったと思われる。
そういった親子共演が話題となった本作だったが、やはりかつてのような人気を取り戻すことはなく、近衛自身が「愛着はあるが進歩がない」とコミカル路線からの撤退を申し出たため24話で終了となり、これにて素浪人シリーズも幕を閉じたのである。
近衛の素浪人シリーズには上記の1本しか出演していない松方だったが、95年に「素浪人花山大吉」、07年に「素浪人月影兵庫」のそれぞれリメイク版に主演を果たしている。ちなみに、半次役は田原俊彦、小沢仁志である。後者には品川隆二もゲスト及びナレーションで出演している。

 

素浪人天下太平

前回は「徳川三国志」においての近衛、松方。目黒の親子三人共演の話題を出したが、実は「いただき勘兵衛旅を行く」(73~74年)でも三人の共演が実現している。しかし、今回はそこに行く前に「素浪人天下太平」(73年)を取り上げたい。
近衛十四郎と言えば素浪人シリーズ。「素浪人月影兵庫」(65~68年)、「素浪人花山大吉」(69~70年)を品川隆二(焼津の半次)と共にやって来たが、近衛の持病である糖尿病の悪化により、70年末に一旦番組は終了していた。それから約2年3カ月の休止期間を経て再開したのがシリーズ3作目となる「素浪人天下太平」というわけである。何というか、安易なネーミングである。現在国内には天下と書いて「アマシタ」さんなら存在するようだが「テンカ」さんはいないようである。
今回の相棒は品川隆二ではなく、仮面ライダー2号として人気だった佐々木剛(うづ巻の勘太)が抜擢されている。当時はライダーのような強い役が多かった佐々木だが、本作ではとても弱い渡世人という設定である。おそらく品川にも出演のオファーはあったと思われるが、断ったのではないだろうか。半次役は嫌いだと本人が語っていたように、普通に二枚目路線だったのがすっかりコミカルな役者と認識されてしまったのが本人的には不満があったのかもしれない。
「花山大吉」の後半に近衛の負担を減らす措置として、南弘子を加えた三人体制となっていたのだが、本作でも加茂さくら(御坊のお仙)が加わった三人体制となっている。南弘子もそうだったが、当時の時代劇では大信田礼子のようにミニスカート風着物を着用するのが流行っていた。もちろん男性視聴者の目を惹くためでもあったのだが、加茂は当時36歳であり着物も普通で、お色気要員としての起用というわけではなかったと思う。佐々木は「お荷物小荷物」等の大人向けドラマにも出演していたが、やはり少年たちのヒーローのイメージが強かったのではないだろうか。夜8時からの放送だし、時代劇好きの子供を狙ったのだろうか。
オープニングではアニメの小鳥(声・平井道子)が太平に話しかけるという合成が見られる。本編にアニメとの合成はないが、太平だけに聞こえる天の声がある。
ゲストに目を向けると10話に息子・目黒祐樹が登場。同じ回には水島道太郎も出演している。水島は21話にも出ており、半年間の放送で、2回ゲスト出演している役者が結構いる。原健策、高品格、田口計、長谷川明男、江見俊太郎、亀石征一郎、北原義郎、上野山功一、菊容子といったところである。
予定通りかどうかは微妙だが、番組は半年26回で終了。シリーズ待望の復活としては寂しい結果だったといえようか。

 

徳川三国志 その2

前回に引き続き「徳川三国志」(75~76年)である。書き忘れていたが、原作は柴田錬三郎である。
スタッフに目を向けると制作は東映、そしてANN系列フルネット局共同制作のドラマ第1作でもある。原案に葉村彰子とあるので そこは「ナショナル劇場」枠と一緒だが、本作のメインライターは植木昌一郎である。葉村彰子が個人名ではなく創作集団の共同ペンネームであることは知られているが、植木はその中心人物(監修)であり、個人名があまり表に出てこないイメージがある。よく調べるとナショナル劇場の枠でその名が出てこないだけで、ユニオン映画制作の石立鉄男主演ドラマのシリーズでは植木の名はよく見かけられる。
さてこの「徳川三国志」にも準レギュラー扱いの人物が何人かいる。服部一夢斎(宇野重吉)は半蔵の兄で信綱(松方弘樹)に仕えている。志乃(坂口良子)はその孫娘で、彼女も信綱に仕えている。幡随院長兵衛(中谷一郎)、青山伯耆守(金子信雄)、春日局(岸田今日子)、お吉(和泉雅子)、楠不伝(戸浦六宏)、駿河大納言忠長(田村正和)なども登場回数は少ないが準レギュラー扱いである(ウィキペディアでは)。駿河大納言は徳川家康の孫、つまり秀忠の子で、家光の弟だ。本作では田村正和、「江戸を斬る梓右近隠密帳」では中村敦夫が演じていたりするのでなんとなく名君を想像してしまうのだけれども、母の死をきっかけに、周囲の者を手打ちにするなどの乱行が目立つようになり、家光の怒りを買い甲府への蟄居を命じられる。そして28歳の時に幕命で切腹させられるのである。そんなわけで、本作には二回しか登場しない。
そして本作にも山口崇版「柳生十兵衛」や「江戸を斬る」同様に「決闘鍵屋の辻」のエピソードが存在する。それが第6話「白昼の三十六人斬り」である。本当に三十六人斬るかどうかは定かでないが、キャストは荒木又右衛門(山崎努)、渡辺数馬(石田信之)で、宿敵河合又五郎(坂口徹=坂口祐三郎)である。つまり念仏の鉄とミラーマンが赤影を倒すという構図である。そういえば「暗闇仕留人」でも石田と小林昭二が被害者側の同心で、坂口が悪徳同心だったエピソードがあった。
そういえば、準レギュラーに名が挙がっていないが、根来衆の一郎太(村井国夫)も何度か登場するキャラである。ちなみに根来衆は一郎太から十郎太まで揃っているらしい。「水戸黄門・第4部」に登場する天草一郎太~七郎太のような兄弟ではないようだ。登場順で言うと七郎太(内田勝正)、八郎太(汐路章)、十郎太(佐藤京一)、三郎太(石山雄大)、二郎太(野口貴史)、四郎太(黒部進)となっている。五六九がいないが画面に見えないところで倒されているようだ。内田勝正は前述の「水戸黄門」で長男である天草一郎太を(恐らく)実年齢は七人中で一番年少なのに演じていた。
ところで、村井国夫の一郎太は裏切って首領である幻幽斎(近衛十四郎)を殺害するようだ。近衛もこの頃になると持病の糖尿病が悪化していたこともあり、ほとんど立ち廻りはなかったようである。あと十兵衛(若林豪)も活躍は少ないようである。