徳川三国志
今回は「徳川三国志」(75~76年)である。前項で柳生十兵衛を若林豪が演じているもう一つの作品としてちょっと触れたが、その登場人物も「江戸を斬る 梓右近隠密帳」と似通っており、制作は同じ東映で、敵役となるのが由井正雪と言うのも同じなのである。
本作での主人公は梓右近のような創作キャラではなく、松平伊豆守信綱(松方弘樹)である。前項では書き漏れていたのだが、「江戸を斬る」で信綱を演じていたのは神山繫であり、ここでは若い頃の信綱ということになるようだ。そもそもどういう人物だったのか、一言でいえば非常に優秀な人物であったことは間違いないようだが、その反面で堅物すぎて付き合いも悪く、人望はあまりなかったという評もある。つまり神山が演じていたのは堅物な老中のイメージだったと思うが、松方が演じるとなれば、もっとざっくばらんな感じだったと思われる。人望の薄い人物を主役にはしないだろうし。ちなみに自分は本作を一度も見たことはない(と思う)。
他のレギュラーだが、妹・楓(いけだももこ)、鴉の甚兵衛(松山英太郎)、笠井孫兵衛(長門勇)、笠井弥一郎(三ツ木清隆)なと信綱により近い人物は創作もあると思う。松山英太郎は「江戸を斬る」等と同じような役だが、本作では忍びである。笠井親子は信綱のお守役らしい。
徳川家光(片岡孝夫=現・片岡仁左衛門)、土井大炊頭利勝(中村竹弥)、一心太助(目黒祐樹)、太助の女房・お仲(津山登志子)。ここにも一心太助が登場、しかも演じるは松方の実弟・目黒祐樹。何故か信綱の家に出入りしているという設定。まあ太助は架空の人物ということなので、何とでもなるのだが。その女房役の津山登志子だが、実は「江戸を斬る」でも同じお仲役で出演していた。中村竹弥は「江戸を斬る」では違う役だ。
そして敵役となる由井正雪(中村敦夫)、丸橋忠弥(佐藤允)、金井半兵衛(岸田森)のトリオ。どちらかというと正義役の多い顔ぶれ。まあ悪役と言うわけではないのでこういうキャストなのかもしれない。それに対して悪役っぽい扱いなのが徳川頼宣(芦田伸介)、その家老である関口隼人正(田島義文)。本作で頼宣は次期将軍の座を狙っているという位置づけ。「江戸を斬る」では江原真二郎だったのが、20近く上の芦田になっている。ちなみに、実際には信綱の方が年長である。当時、松方は34歳、芦田は59歳であった。まあ、この辺りを気にして見ている人はあまりいないだろうけれども。
そして紀伊徳川家の忍びで根来衆の当主が根来幻幽斎(近衛十四郎)である。つまり、近衛、松方。目黒の親子三人共演ということになる。二人が揃うというパターンは結構あったと思うが、三人揃うのはあまりなかったのではないだろうか。根来衆が信綱を襲うところから始まるようなので、やはり敵役ということになるのだろう。ちなみに、近衛は本作の翌77年に亡くなっている。
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江戸を斬る 梓右近隠密帳 その2
前回に続き「江戸を斬る 梓右近隠密帳」(73~74年)である。
書き忘れたのだが、松山英太郎演じる葵小僧と松山省二演じる一心太助とは生き別れの兄弟と言う設定。実の兄弟俳優が兄弟役を演じるという、よく見かけるケースである。
前回挙げた以外にも準レギュラーといえる存在が何人かいた。石谷定清(中村竹弥)は、あまり知られていないと思うが、家光の頃の北町奉行で、有名な遠山景元(金四郎)はその約200年後の奉行だ。笹尾喜内(牟田悌三)は大久保家の御用人。松平信綱(神山繁)や土井利勝(水島道太郎)は幕府の老中。土井は19話のみ宇佐美淳也である。
由井正雪(成田三樹夫)の一派では、林戸右衛門(伊吹聰太郎)がいる。伊吹は強そうな浪人を演じることが多く、無論チャンバラトリオの伊吹太郎とは別人である。伊吹太郎の東映時代の芸名は伊吹幾太郎であり、多少ややこしい。伊吹聰太郎は新国劇出身で強面だが、何故か松竹新喜劇に在籍したこともある。チャンバラトリオといえば、本作の1話や5話に出演している志茂山高也がメンバーだったことをご存知だろうか。志茂山は東映ピラニア軍団のメンバーで、このナショナル劇場枠では、(主に)斬られ役で何度も出演していた。94年に伊吹太郎と結城哲也が脱退した際に、入れ替わりで志茂山(と前田竹千代)がチャンバラトリオ(4人だけれども)に加入している。その後、前田と南方英二が亡くなり、15年に解散した。最終的には山根伸介と志茂山の二人だったわけである(山根はその半年後に死去)。
話がそれたが、本作にも「決闘鍵屋の辻」(第9話)のエピソードが存在しており、荒木又右衛門(夏八木勲)や渡辺数馬(小川真司)、敵である河合又五郎(中田博久)が登場する。意外なのは数馬役の小川真司であろうか。その名を聞いてもピンと来ないという人もいるかもしれないし、実際自分も顔が浮かばない。しかし声は浮かぶ。マイケル・ダグラスやロバート・デ・ニーロの声の人と言えばわかるだろうか。声の仕事が中心になるのはこれ以降で、当時32歳の小川が(若侍)の数馬役でもおかしくはないが、声がおっさんぽかったのではないだろうか。
志村喬や加東大介が準レギュラー的に出ているが、ゲストとして稲葉義男や木村功も登場しており、「七人の侍」のうち四人が顔を揃えた。後の三人(三船敏郎、千秋実、宮口精二)はナショナル劇場自体に縁がないが、三船が「江戸を斬るⅣ」に一度だけ出演したことがある。加東が75年に亡くなり、木村が81年、志村が82年に亡くなった。よく言われるが、映画では生き残った三人が現実では先に亡くなったわけである。そして映画では最初に死んだ千秋が最後の一人(99年没)になったのである。
話がそれまくったが、ラスト二話には徳川頼宣(江原真二郎)、安藤帯刀(島田正吾)が登場。頼宣は家康の十男で、紀州徳川家の祖であり安藤はその家老。帯刀は通称で本名は直次という。由井正雪が頼宣の印章文書を偽造していたため、幕閣に謀反の疑いをかけられ頼宣は10年間紀州に帰れなかったというエピソードが史実ではある。
柳生十兵衛(若林豪)も久々(14話以来)に登場するが、妹の奈美(松坂慶子)はヒロインなのに登場しなかったようだ。なお若林豪は「徳川三国志」(75~76年)でも柳生十兵衛を演じことになる。
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江戸を斬る 梓右近隠密帳
今回は柳生十兵衛が主役ではなく、登場人物の一人である作品として「江戸を斬る 梓右近隠密帳」(73~74年)を取り上げたい。まあナショナル劇場の作品として「水戸黄門」「大岡越前」両シリーズと共に名高いと思われる。しかし、「江戸を斬る」シリーズは遠山金四郎が主人公というイメージが強いと思うのだが、この1作目のみ金さんではなく、タイトル通り梓右近(竹脇無我)なる人物が主役である。
ちなみに本作は「水戸黄門 第4部」と「第5部」の間に放送されたもの。三作品がどのようなサイクルで放送されていたかと言うと、「水戸黄門」毎年のようにあり(約8カ月)、次の水戸黄門までの合間に「大岡越前」か「江戸を斬る」が放送されるスタイルだが、必ず代わり万古というわけではない。たとえば「大岡越前」の4部と5部の間には、3年の期間がある(つまり「江戸を斬る」の「Ⅱ」と「Ⅲ」が放送されている)。
さて梓右近とは、徳川家光(長谷川哲夫)の異母弟で保科正之の双子の弟でもあるという設定。右近は創作キャラだが、保科は実在の人物であり数回登場する彼も竹脇無我が二役で演じている。家光といえば柳生十兵衛なわけだが、本作では若林豪が演じている。さらに、その妹である柳生奈美を松坂慶子が演じる。十兵衛の妹というのは他作品でも見受けられるが、この奈美に関しては創作であろう。さらに、その父である柳生宗矩は志村喬である。本作ではこの親子の出番はさほど多くないようで、いずれも7~8回の登場に留まっている。
松坂慶子の奈美の出番が少ない分、ヒロイン役というのは小夜(榊原るみ)とお艶(鮎川いづみ)ということになるのだろうか。この頃、榊原のヒロイン率は高かった気がする。
そして、葵小僧(松山英太郎)、一心太助(松山省二→政路)の松山兄弟。ガリガリの兄と太目の弟というこの兄弟の共演って兄が早くに亡くなったこともあるが意外に見かけない気がする。ちなみに英太郎の本名はヒデタロウと読む。一心太助といえば、大久保彦左衛門がセットだが、その彦左衛門を片岡千恵蔵が特別出演扱いで演じる。あとは、このナショナル劇場枠ではお馴染みの大坂志郎、高橋元太郎といったところがレギュラーである。
また、宿敵として由井正雪(成田三樹夫)が登場する。正雪といえば、丸橋忠弥(加東大介)や金井半兵衛(川辺久造)などの浪人を集めて挙兵し、幕府転覆を計画した人物として知られる。加東は強そうだが、川辺は強そうには見えないと思う。
丁度、現在CSのTBSチャンネルで放送されているので、見れる環境にある人は見てみてはどうだろう。まあ自分もあまりまともに見たことはないのだけれども。
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柳生十兵衛(山口崇版)その2
前回の続きで、山口崇主演の「柳生十兵衛」(70~71年)である。
17話に外山高士がゲスト出演している。悪役でお馴染みの外山だが、何故ここで注目したかと言うと、実は外山は過去に柳生十兵衛を演じているのである。それも「柳生旅日記独眼竜参上」(60~62年)というドラマの主演である。外山はこの60年前後では「怪傑黒頭巾」(59~60年)や「牛若天狗いざ見参」(60~62年)等で主演を張った時代劇ヒーロー役者だったのである。中村竹弥、大瀬康一、江見俊太郎なんかもその路線だったが、中村と大瀬は正義路線が続いたが、江見や外山は悪役へと転じていった。
連続テレビドラマとしての柳生十兵衛役はどうやら外山が第一号となるようである。そして、24話には映画版十兵衛である近衛十四郎もゲストで登場している。話が前後するが18話には露口茂、天津敏、19話には伊吹吾郎、中村竹弥、尾崎奈々が出演。尾崎奈々は松竹の女優だが、何本か東映のドラマにも出演している。73年に「必殺シリーズ」の撮影技師(後に監督)である石原興と結婚し早々と引退している。20話には天知茂、小笠原弘という新東宝スターレット1期生が揃って出演。
21~22話は前後編のようで、22話のサブタイは「決闘、鍵屋の辻」となっており、とくれば準レギュラー緒形拳(荒木又右衛門)の出番である。それぞれのワードは知っていたが、荒木又右衛門が柳生新陰流とか、その辺のことは知らんかった。史実通りなら荒木は堀雄二(河合甚左衛門)と瀬川新蔵(桜井半兵衛)を斬ることになる。堀雄二ってやはり「七人の刑事」とか「警視庁物語」シリーズとか刑事役の印象が強いので、こういった敵役みたいのは珍しい気もする。緒形本作ではこれが最後の出番のようだ。
23話では江原真二郎(柳生連也斉)、原健策(柳生兵庫介)、住吉正博(柳生又十郎)といった柳生一族が登場する。ちなみに兵庫介と連也斉は親子で、又十郎は十兵衛の弟である。住吉正博だと弱そうに思えてしまう。
27話には美空ひばり、北島三郎の大物歌手コンビ、加えて桜木健一、吉沢京子の「柔道一直線」コンビが出演という豪華ゲスト回である。4月の1週目に放送ということで、スペシャル感を出したのであろうか。28話は若山富三郎、大信田礼子、石川進、29話は加賀まりこ、大友柳太朗がゲスト。
30話で十兵衛は江戸に舞い戻り、里見浩太朗(幡随院長兵衛)が再登場。左卜全、野川由美子、御木本伸介(水野十郎左衛門)らがゲスト。そして最終31話は佐藤友美、進藤英太郎(紀州大納言頼宣)らが登場した。どこまで描かれたのかは見ていないので不明だが、恐らくは再び家光に出仕することを許される辺りまでではないだろうか(1638年)。
ところで十兵衛の最後って意外と知られてないのではないだろうか。史実では1650年に鷹狩のために出かけた京都で急死したという。享年44で、死因は明らかではないという。
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柳生十兵衛(山口崇版)
今回は柳生十兵衛を山口崇が演じたバージョンで、タイトルはそのまま「柳生十兵衛」(70~71年)である。主演の山口崇は当時の人気スターではあるが、この作品が語られることはあまりない気がする。実は、この半年前に「大岡越前」(70~99年)がスタートし、お馴染みの徳川吉宗役を30年に渡って演じることになる。また71年には「天下御免」で主役の平賀源内を演じて人気を得ている。これらに挟まれた形になり山口版十兵衛は影が薄くなった感じがする。まあ正直言えば、本作の存在は知らなかったのだが、最近CSで放送されていたのを数回見て、初めて知った感じである。
改めて調べて見るとゲストも中々豪華である。制作はフジテレビと東映。企画に岡田茂(当時東映常務、71年に社長就任)の名がある(岡田の名はテレビシリーズではあまり出てこない)。十兵衛が江戸から西日本一円を旅するオリジナルドラマで、山口は強そうな剣豪には見えないが、それも敢えての狙いだったようだ。
毎回出演は山口だけのようだが、準レギュラーが中山仁(松平信綱)、山本亘(徳川家光)、永原和子(松平瑞代)、緒形拳(荒木又右衛門)、田中邦衛(からっ風の三九郎)らがいる。山本亘(せんと読む)は山本学、山本圭の弟。三兄弟では一番目立たないと思う。永原和子はほぼ新人で誰?という人も多いと思うが、最終話では上村香子と名が変わっており、上村香子ならお馴染みであろう。ちなみにウエムラではなくカミムラと読む。田中邦衛は「江戸の旋風」でも由良三九郎という役をやっていたのを思い出す。準レギュラーと言ってもいずれも全31回中の7~8回程度の出演である。あと、序盤の4回だけのようだが、十兵衛の父・柳生宗矩役で片岡千恵蔵が出演している。
ところで、本作の十兵衛は左眼に傷はあるが隻眼というわけではないという設定。そもそも柳生十兵衛こと柳生三厳が隻眼であるという記録を示した資料は存在しないらしく、本当に隻眼だったかどうかは不明なのである。ただ、幼い頃に目を負傷したという言い伝えがあるようで、そこからイメージが膨らんだのかもしれない。
しかし本作では幼い頃の負傷ではなく、第1話(か2話)にて中谷一郎演じる奥平図書助によって十兵衛は左眼付近に傷を受けるのである。奥平を無事討ち果たし、職を辞して旅に出た十兵衛は伴淳三郎演じる京の医師・夢庵の治療を受け回復するという流れになっているようなので、ちゃんと両目とも見えるという設定なのだ。
ここまで(6話)のゲストだが、里見浩太朗(幡随院長兵衛)、坂口徹(徳川忠長)、中村翫右衛門、中村玉緒など。坂口徹は赤影でお馴染み坂口祐三郎のこと。牧口徹→坂口祐三郎→坂口徹→坂口徹郎で最終的に祐三郎に戻している。ちなみに本名は中村徹だ。
7話以降のゲストは、池部良、田崎潤、笠置シヅ子、葉山良二、嵐寛寿郎、田村高廣、河津清三郎、山形勲、浜木綿子などと続き、14話では丹波哲郎(宮本武蔵)が登場する。前述の幡随院長兵衛とか他時代劇で主役になっているような人物が顔を出すのも本作の特徴かもしれない。以下、次回。
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柳生武芸帳(65年)
丹下左膳は隻眼隻手だが、隻眼の剣士といえば柳生十兵衛を思い浮かべる人が多いだろう。十兵衛を主人公とした映画やテレビドラマも多く存在する。役者のイメージとしては、映画ではやはり近衛十四郎、テレビでは千葉真一といった感じであろうか。
近衛十四郎は映画で「柳生武芸帳」シリーズ全九作(61~64年)で十兵衛を演じたがテレビシリーズでも十兵衛を演じたのをご存知だろうか。というわけで、今回はテレビ版「柳生武芸帳」である。映画版シリーズが終了した翌65年に放送されており、制作は映画版と同じ東映である。とは言ってもフィルムは第1話のみ現存という、東映によくあるパターンの作品なので詳細についてはほぼ不明である。その第1話は東映チャンネルで放送されてはいるので、そこから判断するしかない。
原作は五味康祐が56~58年にかけて書いた小説だが、あまりにも錯綜したストーリーであり原作は中断(ウィキペディアより)。その後再開されることはなく、五味は80年に亡くなったため、未完のまま終わっている。映画化は57年の東宝版が最も早かったが、これは主人公が十兵衛ではない。というよりそもそも原作の主役が霞の多三郎、千四郎兄弟なので、原作どおりといえる。多三郎は三船敏郎、千四郎は鶴田浩二で二作品が作られた。ちなみに十兵衛役は戸上城太郎であった。
そして、近衛演じる十兵衛を主役としたのが東映版で人気を呼び、全九作が制作された(ただし二作は五味の原作ではない)。こちらでは、多三郎を品川隆二、千四郎は一作のみ尾上鯉之助で、次に近衛の長男である松方弘樹(6作目~8作目では全て違う役)が演じている。近衛と品川と言えば、どうしても「月影兵庫」「花山大吉」を思い出すが、本作で二人のコミカルな掛け合いがあるはずもない(敵役だし)。
でテレビシリーズである。脚本は結束信二、森田新、演出は小野登といった当時の東映時代劇ではお馴染みの顔ぶれ。近衛以外の出演者だが香川良介(柳生宗矩)、原健策(山田浮月斎)、北龍二(松平伊豆守)、北村英三(土井大炊頭)、嶋田景一郎(徳川家光)、御影京子(於季)、そして松方弘樹も五島隼太役で出演。東宝版十兵衛だった戸上城太郎や次番組(新撰組血風録)の主役となる栗塚旭もゲスト出演したようだ。
予定通り全26話で終了し、近衛十四郎のスケジュールが空いた形となった。時を同じくして品川隆二の主演時代劇(こちらも東映制作)である「忍びの者」も終了し、二人の主演スターが空いた形となったので、二人を一緒にしてしまおうと企画されたのが前述の「素浪人月影兵庫」(65~68年)だったわけである。シリアス路線を歩んできた二人は共に難色を示したようだが、最終的には了承しヒット作へと繋がったのである。
その後、息子の松方弘樹もスペシャルドラマ「柳生武芸帳」(90~92年・全5作)で十兵衛を演じた。しかし十兵衛を演じたのは実は弟の目黒祐樹の方が早かった。「柳生新陰流」(82年)での十兵衛役がそれである。
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丹下左膳(高橋幸治版)
もう一回だけ「丹下左膳」である。今回は高橋幸治版(74~75年)を取り上げて見たい。今のところ。テレビのレギュラー放送としての「丹下左膳」はこの高橋版が最後となるようだ。その語は藤田まことが年一のスペシャルドラマ(90~94年)として計4回、中村獅童が04年にやはりスペシャルドラマとして左膳を演じている。
この高橋版だが、つい最近に時代劇専門チャンネルで放送され、見ることができた。スタッフの名を見ると監修・演出の市川崑を始めとして、脚本の久里子亭、鴨三七、大藪郁子、美術の西岡善信、殺陣の美山晋八、制作CALなどほぼ「木枯し紋次郎」のスタッフである。まあ放送局はフジテレビではなく日本テレビ系だが。ちなみに脚本の久里子亭は「くりすてい」と読み、アガサ・クリスティのもじり。その正体は市川崑とその妻でもある和田夏十の共同名義で、後に市川と日高真也の共同名義となる。また鴨三七はその日高の別ペンネームである。
当初は原田芳雄を左膳に考えていたというが、原田は左眼の視力が弱い為、断念したという。その原因は若い頃の栄養失調だったらしい。そこで代わりに選ばれたのが、当時人気だった高橋幸治である。と言ってもピンと来ない人も結構いるかもしれない。60年代は「七人の孫」、そして「太閤記」の織田信長役で人気を得た。80年代までは活躍も目立ったが90年代に入るとドラマ出演も大幅に減り2001年の舞台を最後に、公の場に姿を現すことがほぼ無いようである。まだ健在と思われるが現在は86歳になっており、もう復帰することはないのかもしれない。
個人的には映画版「必殺仕掛人」(73年)の西村左内役やテレビ「子連れ狼・第一部」(73年)の柳生烈堂役が印象に深い。まあ柳生烈堂は当時38歳の高橋では無理があると思ったけれども(白髪白髭のキャラ)。
話を戻すとこの高橋版「丹下左膳」は、最初の8話が「乾坤編」、次の7話が「こけ猿の壺編」に分かれており、全15話扱いではなく全8話と全7話のドラマという扱いになっている。出演者だが、「乾坤編」は田村高廣、浜畑賢吉、清水紘治、尾藤イサオ、鮎川いずみ、三田和代、浜村純、日下武史、岸田森、蟹江敬三などがレギュラー。「こけ猿の壺編」は
柴俊夫、高橋レナ、市地洋子、藤岡重慶、浜田東一郎、村上不二夫、藤原釜足などで、尾藤イサオ、三田和代はこちらにもレギュラー出演している。高橋レナという人はドラマ出演歴は本作と「新木枯し紋次郎」くらいしか見つからないが、どうやら本業はミュージシャン(キーボード奏者)であるらしくロシアとのハーフであるらしい。ちなみに本名は「ひさゑ」というようだ。
さてこの「こけ猿の壺編」の最終話が75年1月9日という中途半端な日なのだが、打ち切りかどうかは不明である(しっかりとは見ていないので)。読んだことはないが、原作自体は「乾雲坤竜の巻」「こけ猿の巻」「日光の巻」という3部構成のようだが、凝縮して2部構成にしたとも考えられる。
「丹下左膳」を始め「座頭市」等、俗にいうハンディキャップ時代劇はこの辺りから地上波では減って行ったように思える。
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丹下左膳(緒形拳版)
さて今回も「丹下左膳」だが、前回ちょっこと触れた67年の松山英太郎版に関しては、ほぼ情報がないので70年の緒形拳版を取り上げて見たい。とは言っても全く見たことがないし、再放送などもされたことはあるのだろうか。終了直後ならあったかもしれないが、少なくともここ40年はされていないであろう。制作は東映なのだが、CS東映チャンネルでも放送されたことはないと思われる。そもそも映像が存在しているかどうかが不明だ。東映ならフィルム撮影だとは思うのだが、原版不良と言うこともあり得る。まあ隻眼隻手ということで、当時なら差別用語が飛び交っていても不思議はないので、その辺の問題もあるかもしれない。
ネット上の資料によれば、緒形拳以外の出演者は朝丘雪路(櫛巻お藤)、雷門ケン坊(ちょび安)、多々良純(蒲生泰軒)、京春上(萩乃)、倉丘伸太郎(柳生源三郎)、役柄は不明だが左卜全、天草四郎、そして天知茂がオリジナルキャラの義賊・霧の弥三郎を演じる。本作は60分ドラマであり長丁場を持たせるためでもあったようだ。
他にレギュラーではないが、高松英郎(柳生対馬守)、中山仁(徳川吉宗)、そして左膳の先輩でもある中村竹弥(大岡越前守)も登場。前回書き忘れたが、中村は前作で左膳に加えて大岡越前も演じる二役だったのである。その大岡越前で登場したわけである。あと、目立ったゲストとしては松島トモ子、鈴木やすし、上田吉二郎、カルーセル麻紀、田崎潤といったところであろうか。
緒形拳といえば新国劇出身だが、師匠である辰巳鉚太郎は丹下左膳の先輩でもある。殺陣や演技に新しいものを出そうとかなり必死だったそう。
当時の読売新聞「試写室」には、「全体の描き方では夜8時の放送を意識しすぎたのか、視聴対象を子供において制作されているようなのが気にかかる。そのせいか中途半端のドタバタが余分なものとして目に付く」と書かれている。まあ子供も見る時間帯ではあろうが、あまり意識はしないだろうと思いつつサブタイトルを見ると驚く。
第1話「ナゾナゾナーニの巻」、第2話「とんとんトンガリ長屋の巻」から始まり、第6話「たんたん丹下危機の巻」、第8話「どんどん土佐衛門の巻」、第9話「かまかまカマキリ剣法の巻」と来て、パターンが破れたのが第10話「スタコラ逃げるが勝ちの巻」となり、普通なのが第13話「ばてれん長崎の巻」、そして最終14話が「おどみゃ島原の巻」となっている。このサブタイを見るだけで、前述の視聴対象を子供においているや中途半端なドタバタというのが想像できてしまう。先の記事では全26話の予定であるかのように書かれており、番組打ち切りだった可能性も高い。
脚本は12話まで押川国秋が一人で書いていたが、13話と14話のみ松山威、永野靖忠が担当。永野は監督も兼ねている。
この翌週から始まったのが中村橋之助主演の「遠山の金さん捕物帳」(70~73年)で、169話のロングラン番組となっていることもあり、余計に緒形版「丹下左膳」は陰に隠れた存在となった感がある。
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丹下左膳(中村竹弥版)
必殺シリーズは前回で一応終了し、次はどうしようかなと思っていたのだが、時代はまた遡り唐突だが「丹下左膳」(66~65年)である。何故かというと、つい先日まで時代劇専門チャンネルで放送されていたからである。丹下左膳は色んな役者が演じているが、今回は中村竹弥版である。「丹下左膳」はあまり好きなコンテンツではないが、この中村竹弥版は全く見たことがなかったので、録画しておいて後から一気に見た。全26話をじっくり見ている余裕もないので、早送りも多用したけれども。
主演の中村竹弥は当時47歳。歌舞伎役者としては長い下積みを送っていたが、53年のテレビ開局に伴いテレビ時代劇に進出した。KRテレビ(現TBS)の専属俳優となり「半七捕物帳」「右門捕物帖」「旗本退屈男」「新選組始末記」等のテレビ創成期時代劇の主演を次々と努め、歌舞伎出身のテレビスター第一号と言われている。そんな中村が次にやりたいと言い出したのが「丹下左膳」だったのである。TBSは「月光仮面」や「隠密剣士」で知られる宣弘社プロダクションに制作を依頼したという。
宣弘社と言えば、子供向け番組のイメージだが本作は21時からの放送、つまり大人向けである。中村竹弥の主演では子供向けにはならないだろうし。しかし、監督・船床定男、脚本・川内康範をはじめとする主要スタッフは「月光仮面」とほぼ同じである。ちなみに30分番組だ。
さて出演者だが、これが中々豪華なのだ。女性レギュラーは中原早苗(おふじ)、小山明子(おれん)、光本幸子(萩乃)。光本は「仕事人・激突!」で話題にしたばかり。砂塚秀夫(鼓の与吉)は左膳の子分的存在で、意外と腕はたつ。そして「隠密剣士」では周作を演じていた大森俊介(ちょび安)。当時小6で、船床監督のお気に入りだったが、本作終了後まもなくに引退したらしい。
お気に入りと言えば、後半から登場する牧冬吉(月形左門)や、瑳川哲郎(峰丹波)、菅貫太郎(柳生源三郎)、戸上城太郎(蒲生泰軒)などもレギュラーだ。名前だけ聞くと牧と瑳川が味方で、スガカンと戸上が敵役だと予想すると思うが、実は逆である。スガカンや戸上は敵ではなく、瑳川や牧が敵役なのだ。中村と瑳川は23話で対決し瑳川が斬られてしまうのだ。この二人は「大江戸捜査網」(70~84年)で長く共演することになるが、川内康範も監修として関わっており、この「丹下左膳」がきっかけになっているのかもしれない。
丹下左膳と言えば「こけ猿の壺」の争奪戦が印象に深いが、牧演じる左門は壺を奪取しようとする藩士のリーダー的な存在で、最終話で左膳と対決する。腕を斬られるが死にはしない。もう一人、天津敏も宣弘社のドラマにはかかせない存在だが本作では18話の1回だけの登場に留まった。
他にも藤原釜足、山本学、花沢徳衛、小栗一也、江見俊太郎、伊達正三郎、楠トシエなども出演しており、出演者だkでも見どころ十分なドラマである。この2年後に同じTBSで「丹下左膳」を再度ドラマ化している。主演は松山英太郎で、恰幅のいい左膳からひょろりと痩せた左膳になったわけである。
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必殺橋掛人
必殺シリーズは前回で終了と思っていたのだが「必殺橋掛人」はやらないの?という問い合わせがあったので、次に何をやるか考えていなかったので、順番は前後するが「必殺橋掛人」(85年)である。「必殺仕事人Ⅴ」と「必殺仕事人Ⅴ激闘編」の間に放送されたシリーズ24作目である。
主水シリーズの合間の作品は山田五十鈴、京マチ子、高峰三枝子などの大物女優が元締(又はリーダー的存在)を務める1クール作品が主となっていたが、「橋掛人」ではシリーズ初期でクセの強い悪人を演じてきた津川雅彦が主演である。シリーズ10年ぶりの出演となる。監督に工藤栄一を復帰させたり、シリアスな作風を目指したようだが、個人的には、あまりまともに見たことがなかったこともあり出演者の顔ぶれからコミカルな作風だと勝手に思っていた。第1話は監督にその工藤、脚本に吉田剛、野上龍雄、保利吉紀というシリーズ常連の三人が名を連ねており力が入っている事を窺わせる。ただし、吉田と野上は本作ではこの1話のみである。
橋掛人の顔ぶれは、柳次(津川雅彦)、新吉(宅麻伸)、おくら(萬田久子)とその亭主の松(斉藤清六)、尼僧である春光尼=おこう(西崎みどり)となっている。当時25歳の西崎が元締役だが、これは父親の多助(長谷川弘)が橋掛人の元締であり、第1話で殺されたので彼女が後を継ぐ形となったのである。長谷川弘も基本は悪役で「仕置人」の最終話で悪徳奉行を演じていたのが印象に深い。その多助の残した13の仕事を完遂させるのが本作の大筋である。
他のレギュラーは、柳次の妻お紺(高部知子)。設定は19歳の若妻で演じた高部は当時18歳だ。柳次先妻の子お咲(安孫子里香)、柳次の先妻お藤(鷲尾真知子)。演じる鷲尾は、個人的にはアニメ「うる星やつら」のサクラの声の人というイメージが強い。しかし基本的には顔出しの女優である。そして9話から登場する岡っ引きの伊太郎(ぼんちおさむ)。当時のクレジットは「オサム」となっていたようである。斉藤清六やらおさむやらが出ていたこともあり、コミカルな作風だと思っていたわけである。
それぞれの殺し技だが、柳次は反物の中に仕込まれた硬質な糸で絞め殺す。新吉は鳥寄せの笛を吹き矢のようにして針を発射する。おくらと松はコンビで、松が標的を誘導したり足止めしたりするところに、おくらが鋭く研いだ瓦をカードのように投げつけ相手の首筋を切り裂く。前述のようにあまり見た記憶はないのだが、これらの殺し技自体は覚えていた。
主演となった津川雅彦だが、11年後の映画「必殺!主水死す」(96年)では、やはり悪役に戻り、中村主水(藤田まこと)を殺す?役を演じることになるのだった。
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