人喰い(火曜日の女シリーズ) | お宝映画・番組私的見聞録

人喰い(火曜日の女シリーズ)

今回も「火曜日の女シリーズ」から「人喰い」(70年)である。制作は東宝で、原作は前回の「男と女と」と同じで笹沢佐保の同名小説である。笹沢は「男と女と」の原作である「結婚って何さ」を書いたのと同じ60年に「人喰い」を書き、直木賞の候補になったようである。
主演は十朱幸代(花城佐紀子)で、恋人役が児玉清(豊島宗和)、咲子の妹が江夏夕子(花城由記子)である。原作では佐紀子が妹のようだが、ドラマでは逆になっている。姉妹や豊島が務めるのは本多火薬工業浦磯工場で、その性質から都心から少し離れた地域にある。その社長役が辰巳柳太郎(本多裕介)なのだが、個人的には時代劇以外での辰巳を初めて見た気がする。
役柄的には、もっと悪役っぽい佐々木孝丸とか金田龍之介辺りでも良さそうな気がするが、頑固で時代遅れな経営理念を持つワンマン親父ということで辰巳になったのであろうか。
その一人息子役が宮浩之(本多昭一)で、実は由記子と付き合っている。豊島のかつての恋人役がしめぎしがこ(浦上美土利)で、豊島や花城姉妹にやたら絡んでくる。しめぎしがこは漢字で書くと標滋賀子と書き、本名のようである。読めない人が多かっただろうから漢字から平仮名に芸名は変えたようだ。滋賀生まれと言うわけではなく東京生まれのようだ。いかにも悪女といった風貌で「ザ・ガードマン」等によく悪女ゲストとして出ていたが、70年代半ばには引退してしまっている。他に川口敦子(社長夫人)、高橋昌也(柏村専務)、磯野洋子(武藤洋子)等が出演している。
さて、あらすじだが前述のように花城由記子は社長の息子・本多昭一と交際していたが、昭一に縁談が持ち上がる。相手は銀行頭取の娘である武藤洋子だった。社長夫人に二人の仲を裂かれ、由記子と昭一は結婚できないなら心中すると言い残して、昭一と共に行方不明になってしまう。数日後、甲府の昇仙峡で昭一の死体が発見される。状況は自殺だったが、由記子の姿はない。その後、由記子らしい人物が現場周辺で目撃されたことから偽装心中による殺人の疑いで警察は由記子を手配するのだった。そして、容疑者の身内ということで佐紀子も会社から一方的に解雇を言い渡される。
そんな中、今度は社長が会社の倉庫内で殺される。警察はこれも由記子の犯行を疑うのだった。最後に社長と会ったのは鶴巻建設の吉原(佐伯徹)という男だったが、その話から佐紀子は社長殺しのトリックを推理し犯人は複数犯であるという説を導き出す。警察もその説には理解を示すが、犯人が由記子ではないということにはならない。
佐紀子は柏村専務は社長夫人と密会していたり、社長が死んで一番得をするであろう人物であることから疑っており、吉原が直接専務の指示で会いにいったのかを確かめようと吉原にもう一度会いに行くが、彼は事故死してしまう(もちろん殺人なのだけれども)。ここまでが第3話で、毎回一人づつ死んで行く。ここまでは見ている方も犯人は「?」という人も多いと思うのだが、誰かが由記子になりすましていることは当初からわかるであろう。第4話で由記子の共犯者になりうる人物として花火屋の大野(佐田豊)が浮かび上がるが、大野も佐紀子の眼前で謎の死を遂げる。こうなると、誰が犯人かほぼわかってしまうのでは?吉原と大野は佐紀子の先回りをするかのごとく殺された。その行動を知ることができた唯一の人物と言えば…。ところで、大野役は佐田豊と書いたが、縛られて登場しあっという間に死ぬので、おそらくである。基本的には東宝の大部屋俳優だが、黒澤明監督の「天国と地獄」では間違えて誘拐された子供の父親という大役を演じた人である。次回に続く。