お宝映画・番組私的見聞録 -40ページ目

天下御免

前回の「男は度胸」の後番組となるのが「天下御免」(71~72年)である。この作品は、この時代のNHKドラマとしてはかなり有名な部類に入るのではないだろうか。視聴率が平均30%超えという大人気ドラマだったのだが、個人的には全く見たことはなかったと思う。
江戸時代の才人・平賀源内を主人公に、ごみ問題や鉛公害問題、受験戦争等を風刺していた。源内を演じたのが山口崇で、当時は人気絶頂だったと言えるだろう。林隆三(小野右京之介)、津坂匡章=秋野太作(稲葉小僧)、中野良子(紅)、坂本九(杉田玄白)等が源内と行動する仲間である。稲葉(因幡)小僧は実在した義賊で、名を新助といった。杉田玄白の「後見草」にも書かれているらしい。右京之介は剣の達人で、紅は寺子屋の先生である。他にレギュラーと言えそうなのが、山田隆夫(八萬)、谷啓(半六)、津山登志子(桜)、保倉幸恵(星)、太地喜和子(蓮華)、三遊亭圓生(北々斎)、仲谷昇(田沼意次)あたり。田沼意次が出てくるということは田沼時代の話である。準レギュラーという感じでは、ハナ肇(平賀茂左衛門)、内海好江(平賀はつ)、二木てるみ(平賀里与)という源内の身内が登場する。
保倉幸恵は当時18歳のモデル兼女優で、74年にモデルは廃業し女優として本格的に活動しようとしていた矢先、母親が重病を患ったことをきっかけにノイローゼとなり、一時的に活動を休止したが、75年7月に鉄道自殺を遂げている。まだ22歳であった。2011年の「マイ・バック・ページ」という映画のヒロイン(演・忽那汐里)は彼女がモデルだという。
脚本は早坂暁で、全46話中の40話に携わっている(ほぼ単独だが、4話分は大西信行との共作)。佐々木守が3話分だけ担当している。主題歌「船出の歌」は、山口、林、津坂の三人で歌っている。タイトルバックのイラストは黒鉄ヒロシで、ナレーターは水前寺清子。水前寺は最終話には出演している。
ゲストに目を向けると15話「巷に雪の降るごとく」には白浪五人男が登場。演じるのは三波伸介(日本駄右衛門)、宍戸錠(南郷力丸)、岡田真澄(忠信利平)、あおい輝彦(赤星十三)、横山リエ(弁天小僧)である。ただし、NHKアーカイブスのサイトでは15話に横山の名前は無く22話に載っており、一人だけ2度登場するのか、15話は四人だけなのかは不明である(出演者全員を載せているわけではないだろうから)。当時はまだ、てんぷくトリオが健在で三波だけでなく戸塚睦夫も伊東四朗もゲスト出演したらしいが何話かは不明。ちなみに、73年に戸塚が急死し、そこでトリオとしての活動は終了している。
96年に出た「映画秘宝・夕焼けTV番長」という本では、31話「子連れ浪士は麦畑」が取り上げられているが、それによるとゲストは内田良平であった。ムサシという浪人を演じ、右京之介と刀を交えることになるが、その際にセルスターズが歌う当時の大ヒット曲「ハチのムサシは死んだのさ」が流れるという。知っている人も多いと思うが作詞は内田自身である。
最終話では、源内一行は気球で日本を脱出するらしい。一行がたどり着いたのはフランス革命直後のパリだったという。
映像については、主演の山口が1話と最終話を録画しておりNHKアーカイブス番組公開ライブラリーで公開しているらしいが、最終話は最後の10分が欠落しているという。

男は度胸

「男は度胸」ってタイトルだけだと、どんな番組かさっぱりわからないが、原作は柴田錬三郎「徳川太平記」と言えば、ああ時代劇なのかなと想像がつくと思われる。順番は前後するが、高橋英樹の「鞍馬天狗」の後番組がこの「男は度胸」(70~71年)なのである。
ただ自分世代だと「男は度胸」と言えば、後に続くのは「~女は愛嬌、お手て出しても足出すな、グリコがっちり買いましょう」と夢路いとし・喜味こいしの声だったりする。まあ、ここからそのタイトルになったわけではないだろうが。
話はそれたが、主役となるのは八代将軍徳川吉宗である。吉宗が主役とといえば、やはり松平健の「暴れん坊将軍」を思い出す人が多いであろう。また、主役ではないが「大岡越前」に登場する山口崇演じる吉宗も印象に深いと思われる。どちらも30年に渡り吉宗を演じているのだ。それに比べると「男は度胸」で吉宗を演じるのは浜畑賢吉で、1年のみなので印象には薄いかもしれない。加えて「開化探偵帳」や「鞍馬天狗」同様にNHKに映像は残っておらず、再放送されることもなかったので(直後はあったかもしれないが)、語られることもあまりなく、覚えている人も少ないと思われる。
実在の人物とオリジナルキャラが混在しているが主な登場人物は次の通り。寺田農(山内伊賀亮)、三田佳子(多藻)、笑福亭仁鶴(多吉)、米倉斉加年(大岡忠相)、笠智衆(加納政直)、二谷英明(柳沢吉保)、柴田侊彦(柳沢吉里)、片岡孝夫(浅野長矩)、中村翫右衛門(大石内蔵助)、天知茂(土屋主水正)、中尾彬(堀部安兵衛)、あおい輝彦(徳川継友)、志垣太郎(天一坊)、寺尾聰(土子番作)、大滝秀治(常楽院天忠)、フランキー堺(雲霧仁左衛門)、森繫久彌(紀伊国屋文左衛門)、中村メイコ(文左衛門の妻)、三木のり平(小猿七之助)、岡田茉莉子(絵島)、中村扇雀(生島新五郎)、今陽子(本徳院)、中村鴈治郎(淀屋辰五郎)といったところで、役名が不明なところでは、波乃久里子、森光子、沢村貞子、吉沢京子、加東大介、野川由美子、梶芽衣子、新藤恵美、高松英郎、小沢栄太郎、伴淳三郎といった面々が出演していたようだ。
映像はNHKには残っていないと書いたが、第1話を主演の浜畑賢吉が所持(モノクロ)、また最終話を担当プロデューサーの家族がカラー映像で録画したテープが見つかり、それぞれアーカイブスに提供されている。有名なエピソードである江島生島事件や忠臣蔵事件、天一坊事件なども描かれており、最終話は天一坊事件を描いたエピソードになっている。
全編を通して悪役である寺田農演じる伊賀亮は、志垣太郎演じる天一坊が吉宗の落胤(父親に認知されない子)であると主張するが、吉宗は取り合わない。そこで、伊賀亮は証人として三田佳子演じる多藻を呼ぶ。多藻は天一坊の母で、かつて吉宗が愛した女であった。彼女は何を語るのか‥。という話になっているようだが、勿論結末は自分も知らない。講談などでは天一坊らが死罪になるのだが、本作では登場人物も一部違うようだし、独自の結末な気がする。

人形佐七捕物帳(NHK版)

「人形佐七捕物帳」は金田一耕助シリーズ等で知られる横溝正史の時代小説だが、何度か映画化テレビ化されているコンテンツである。映画版なら若山富三郎で、テレビ版なら林与一版か松方弘樹版が知られているだろうか。今回取り上げるのは松方版だが、大体の人が思い浮かべる77年の東映制作版ではなく、65年にNHKで放送されたものである。その65年版も松方が人形佐七を演じていたのだ。
このNHK版の正確なタイトルは「大衆名作座 人形佐七捕物帳」という。現在も続く娯楽時代劇枠の第1作でもあった。半年の予定が好評で1年(全50回)の放送となった。
松方弘樹は当時21歳。人形佐七の「人形」とは人形のように美形という意味での異名なのだが、後のイメージから松方は美形というタイプではないように感じるが、当時はまだ若いし、もちろん任侠映画ノイメージもないので視聴者も違和感なく見ていたようだ。69年には映画で眠狂四郎を演じたりもしているし。だが、77年に再び佐七を演じた時は、女房が人形焼き屋を営んでいるからという理由に変えられている。
他のキャストだが、小林千登勢(お粂)、渥美清(辰五郎)、克美しげる(豆六)、岩井半四郎(神崎甚五郎)、谷幹一(宗吉)、殿山泰司(鳥越の嘉平次)、岸旗江(千代)、矢田稔(寅八)、村田正雄(寅松)、穂積隆信(源次)、大塚周夫(三次)、伊藤智子(おりき)、水島道太郎(このしろの吉兵衛)といったところである。
お粂は佐七の女房で、辰五郎と豆六は下っ引き、神崎は南町奉行所与力で佐七の雇い主、嘉平次は佐七をライバル視する岡っ引きで、吉兵衛は佐七の親代わりでもある古参の岡っ引きだ。
ここで注目すべきは、岩井半四郎である。知っている人も多いと思うが、松方が後に結婚することになる仁科亜季子の父上である。このドラマでは上司と部下の関係になるわけだが、まさか自分の娘と結婚するとは思ってもみなかったであろう。この当時仁科はまだ12歳だし。
佐七の下っ引き役である渥美清と克美しげるだが、その後の二人の明暗は大きく分かれた。渥美はNHK「若い季節」や「夢であいましょう」への出演で既に人気タレントではあった。克美も人気歌手となっていたが、デビューしたきっかけはNHKが開催したオーディションなので、その縁での出演だろうか。渥美は「男はつらいよ」シリーズで国民的人気スターとなって行くが、克美は76年に愛人殺害事件を起こしてしまう。模範囚ということもあり83年には出所しているが、そう間単に復帰はできず、2008年に都内で30年ぶりのライブをしたのが復帰と言えるのだろうか(13年に死去)。
ところで、松方弘樹は東映の俳優というイメージが強いと思うが、専属というわけではなく、当時は企画制作の重役だった岡田茂(後に社長)の個人預かりだったという。岡田は渥美清を東映で売り出そうとしたこともあり、「列車シリーズ」が制作されるが東映で喜劇は伸びなかった。岡田は、松竹から話があったこともあり渥美を松竹に送り出す。それが「男はつらいよ」に繋がっていったのである。

鞍馬天狗(高橋英樹版)

前回の「開花探偵帳」の後番組となるのが「鞍馬天狗」(69~70年)なのである。
誰もが知っており、何度も映画化テレビ化されているコンテンツなのだが、今回の「鞍馬天狗」の主演は高橋英樹である。「桃太郎侍」をはじめ、何作もテレビ時代劇主演のある高橋だが、実は初主演作となるのがこの「鞍馬天狗」だっただが、これ意外と知られていないのではないだろうか。
高橋英樹は、日活ニューフェイス第5期として61年にデビューし、翌62年に赤木圭一郎が事故死したことで、主演格に引き上げられスター俳優となった。68年にNHK大河ドラマ「竜馬が行く」に武市半平太役で出演したのが、初の時代劇経験である。この翌年に「鞍馬天狗」への主演となったわけだが、当時はまだ日活在籍していた。出演を決めた背景には、離島で映画撮影をした際に、テレビドラマに出ていた脇役俳優はサインを求められのに自分は求められなかったからだという話がある。世の中は映画からテレビ中心の時代になりつつあり、テレビにも積極的に出るべきと言う判断が働いたのであろうか。
主演の高橋は当時26歳。他の出演者だが、坂東八十助(杉作)、露口茂(黒姫の吉兵衛)、古今亭志ん朝(長次)、近藤勇(瑳川哲朗)、柳生博(小野宗房)、前田昌明(土方歳三)、浜木綿子(お艶)などである。坂東八十助は当時14歳で、後に10代目坂東三津五郎を襲名するが、15年に59歳の若さで亡くなっている。
2~4話で一つのエピソードが完結する形式になっており、ゲストもそれに合わせて連続出演している人がほとんどのようだ。ざっと名を連ねてみると、大原麗子、富士真奈美、光本幸子、原保美、長谷川明男、大友柳太郎、志村喬、田村高廣、田村正和、太田博之、小山明子、中村竹弥、扇千景、田崎潤、水野久美、緑魔子、村松英子、鮎川いずみ、辰巳鉚太郎、藤田進、江原真二郎、野川由美子、観世栄夫、藤田佳子、十朱幸代、近藤洋介、井上昭文、東千代之介、小山田宗徳、山本学、小林千登勢、安部徹、早川保、淡島千景といったところである。
69年の「紅白歌合戦」の応援コーナーでは高橋英樹、古今亭志ん朝、浜木綿子、瑳川哲朗らの「鞍馬天狗」メンバーが登場している。ステージで高橋と瑳川の一騎打ちが繰り広げられたりしている。
本作があまり知られていないのは、やはり映像が残っていないからであろう。当時はテレビドラマに関しては映像を保管するという概念が乏しく、放送用の録画テープが高価だったため、重ねどりを行っていたという事情がある。しかし、16年に出演者の瑳川哲朗が所持していたオープンリールで録画された39~41話の映像がNHKアーカイブスに提供されている。このように個人で当時の映像を所持している人もいるわけで、NHKではそういった映像の提供を呼び掛けているようだ。

開花探偵帳 その2

前回に続いて「開花探偵帳」(68~69年)である。「NHK放送史」というページを見ると全47話のサブタイや主なゲストがわかる。それを見ると水野久美や姫ゆり子は何度も登場するようなので、役柄は不明だが彼女らもセミレギュラーだったと思われる。まあ、毎回違う役という可能性もないではないが、モブ的な役割の大部屋役者ならいざ知らず、それなりに名のある女優なら1年シリーズでも2~3回くらいが限界だろう。
タイトルは「探偵帳」であるが、謎解きが中心かというとそうでもなかったようだ。ウィキペディアなどによれば、捕物が主体で殺陣も多かったということだ。江戸時代の「捕物帳」と区別する意味で「探偵帳」というタイトルにしたようである。殺陣師は当時は主に日活でアクションを担当していた高瀬将敏だった。
日活と言えば、郷鍈治も当時はまだ日活の所属で、テレビレギュラー、加えてNHKへの出演も初めてだったのではないだろうか。ドラマ期間中に公開された日活作品にも、月1本くらいの頻度で出演している。
川崎敬三は大映の役者だったが、当時は既にテレビ出演が多く、お茶の間には実写の「サザエさん」(65~67年)のマスオ役でお馴染みであった。小山田宗徳は俳優小劇場の旗揚げに参加。声優としての仕事も多くヘンリー・フォンダは彼が担当することが多かった。この68年には脳溢血で倒れているが、無事回復し本作に望んだようである。花柳喜章は幼い頃に新派の役者・花柳章太郎の養子となり、本人も新派の役者となった。ちなみに、歌舞伎など「旧派」に対して新派と呼ばれている。緒形拳は新国劇、香山美子は松竹、水野久美は東宝と言うふうに色々な映画会社や劇団の役者が集っていたわけである。この中では、小山田宗徳、郷鍈治、花柳喜章はいずれも50代の若さで亡くなっている。
ゲストに目を向けて見ると15話「浅草流人控」には宍戸錠が出演し、郷鍈治との兄弟共演があったようだ。兄弟といえば、16話に河原崎長一郎、18話に河原崎建三、そして45話に河原崎次郎と河原崎三兄弟が揃ってゲスト出演している。
あと、目立ったゲストとしては、第1話は日下武史、殿山泰司、10話に佐藤慶、21話に津川雅彦、小松方正、根岸明美、23話に真屋順子、榊原るみ、25話に中村梅之助、27話に三波伸介、28話に水谷良重、31話に常田富士男、佐藤蛾次郎、34話に小林昭二、小林千登勢、35話に田村正和ときて、36話には藤原釜足、工藤堅太郎、岩井友見、砂塚秀夫、人見明、南利明と大挙出演。39話に金井克子、長谷川明男、42話は森川信、曾我廼家一二三、北林早苗などがいる。
ちなみに、最終47話「秋風薩摩歌」だが西郷隆盛らの挙兵で、薩摩士族である屯所長の水木(小山田宗徳)が、それに加わるため職を辞して去って行くというものらしい。水木は主人公・京介(緒形拳)が尊敬する人物として描かれている人物だ。
この辺の時代の15年くらい後を舞台にしたのが、ここでも何度か取り上げた「新十郎捕物帖・快刀乱麻」(73年)なのである。どちらももう見ることはできない(と思われる)のが残念である。

 

開花探偵帳

前回の「科学捜査官」は島田一男原作だが、そこから辿って行って目に留まったのがNHKドラマ「開花探偵帳」(68~69年)である。「事件記者」が終わって、一旦NHKを離れる形になっていたが、二年ぶりにNHKに復帰したドラマとなる。
開花とは「文明開化」のことで、本作は明治7~8年頃の浅草が舞台となっており、「金曜時代劇」というドラマ枠で放送されたようなので、ジャンル的には「時代劇」となるのが正しいかもだが、ここでは「サスペンス」ということにした。主演は緒形拳で、彼が演じる新宮寺京介は元武士で、チョンマゲからざんぎり頭となって背広に身を包み、警視庁に奉職し、浅草伝法院屯所の探索方(現在の刑事)として活躍するという話である。正直、自分は全く見たことはない番組であり時代を考えると映像は残っていない可能性が高いと思う。
島田はこのドラマのために、毎日のように警視庁に通い、神田の古本屋で300冊以上の資料を購入したという。明治初期の警察のことなど、あまり知られていない為である。
伝法院屯所の顔ぶれは、緒形演じる新宮寺京介・二等巡査の他は、川崎敬三(藤井弥太郎・二等巡査)、小山田宗徳(水木一郎太・大警部=屯所長)、郷鍈治(門司勝之助・二等巡査)、巌金四郎(庄司孫右衛門・小警部)、木下秀雄(難波竹丸・三等巡査)、花柳喜章(駒形の浅吉)、滝那保代(お源)となっている。
京介と勝之助は洋装で、弥太郎は元南町同心で着流し姿と、この時代らしく和装洋装が入り乱れている。水木、庄司、竹丸は制服を着ている。浅吉は元目明しで、探索方の手先であり、お源は雑役婦という役割だ。屯所とは私服刑事の詰め所のことである。
階級は今よりも細かいらしく警視は大、権大、小、権小の4階級あり大警視は現在の警視総監にあたる。警部は大、権大、中、権中、小、権小の6階級があったらしい。そして巡査は一等から四等まであったといい、京介や弥太郎の二等巡査というのは、まあ今でいう巡査長あたりではないだろうか。
他のレギュラーだが、中原成男(蕎麦屋の伊之助)、小柳弥栄(伊之助の女房お富)、香山美子(浅草芸者・小梅)、内田朝雄(質屋の長十郎)、鮎川いずみ(長十郎の娘・お金)等がいたらしい。
緒形拳は、大河ドラマ「太閤記」(65年)で主演・秀吉役に抜擢され一気に有名となっていた。「開花探偵帳」が始まった68年は両立が難しくなった新国劇を退団した年でもある。鮎川いずみは当時17歳で、京介に恋心を抱くも子供扱いされるといったような役柄だったようだ。当初はこの鮎川演じるお金が京介と結ばれる予定だったらしいが、結局は変更となり彼女は幼馴染と結婚することになったという。

 

科学捜査官 その2

前回の続きで「科学捜査官」(73~74年)である。
前回も書いたとおり、園井啓介が降板を余儀なくされ、福田豊土(大島技官)がレギュラー入りし、香山美子(牧村技官)も1クールで降板となった。既に「銭形平次」のお静役を演じていたが、大河ドラマ「勝海舟」にも出演が決まったためではないかと思われる。代わりに起用されたのが那智わたる(明日香技官)である。那智は当時37歳、宝塚歌劇団出身で、男役のトップスターであった。76年以降の活動記憶は見当たらないので、その辺りで引退してしまったしたようである。役名の明日香は苗字で、下の名はリョウコというようだ。ちなみに、全国で10件程度のレア苗字ということになる(下の名前としてはポピュラーだが)。福田豊土は「リンゴを齧ると歯ぐきから血が出ませんか」というデンターライオンのCM知られる。読みは「とよと」なので、「土」と書くのが正しいのだが「士」とクレジットされることも多かったようだ。
また、中野誠也が演じる円城寺次長は元々は捜査課の刑事だったことが第2話のセリフから分かるが、捜査一課に返り咲き、円城寺警部(主任)となる。前項でも書いた通り3~18話は未見なので、何話からかは不明だが、恐らく14話からではないだろうか。それに伴い芦田伸介演じる湯浅警部も警視に昇進し、ポストも課長補佐となっている。
刑事側のメンバーが強化され、稲葉義男(古田部長刑事)や山本清(清水刑事)がレギュラー入りし、中原成男(庄司刑事)、橋本功(守田刑事)と共に活動する。他にモブ的な存在ではあるが渡辺紀行(島本刑事)、沖秀一(沖刑事)、田尻丈人(江藤刑事)が終盤の回では固定されている(役名と俳優は推定)。渡辺紀行は第1話から姿を見せていた。刑事役の数が増えた分、刑事側からのドラマが増えた気がする。それに伴い、原保美(吉岡部長)や大森義夫(浜松技官)は登場しないことも多くなる。
科捜研側では、明日香絡みの話が多くなり、最終話も彼女が変質的な連続殺人犯(夏夕介)に狙われるというもので、それを捜査課総出でガードするというような話になっている。勿論、逮捕されるのだが、彼は学生時代の内ゲバ事件で頭を殴られ、その影響から犯罪に手を染めるようになり、責任能力がないと判定される可能性があるというようなラストであった。そういう会話を原保美と警察(芦田伸介、中野誠也)がやると「怪奇大作戦」(68年)を何となく思い出す。こちらも科学捜査で怪奇な犯罪を暴くというもので、SRIの所長を原保美が演じていたからだ。このSRIとは科学捜査研究所の略称なのだが、こちらはフィクションの民間組織で実在の科捜研とは無関係である。

 

科学捜査官

月が替わったので、違う話題に行こうと思うのだが、最近CSで放送された「科学捜査官」(73~74年)である。今年になってからこの欄で取り上げてる「火曜日の女シリーズ」と同じチャンネル(AXNミステリー)で放送されていたのだが、専ら海外ドラマをやる局だったので番組表をチェックしておらず、気が付いた時には19話だったのである。全25話なので、終盤の方だけ見ることができたのが、今年に入って何故か1~2話のみ放送され、以降は予定なしとのことなので、3~18話については未見の状態なのである。ただ、前半と後半ではレギュラー出演者が変更となったり、追加されていることはわかった。
「科学捜査官」とは、間単に言えば、科学捜査研究所つまり科捜研を舞台にしたドラマである。沢口靖子の「科捜研の女」がもう20年以上に渡って放送されているが(個人的にはほぼ見たことがない)、その元祖のような番組だと言っていいと思う。
レギュラー出演者は第1話の時点では、芦田伸介(湯浅警部)、田中邦衛(徳丸技官)、中野誠也(円城寺次長)、大森義夫(浜松技官)、園井啓介(中山技官)、原保美(吉岡部長)、香山美子(牧村技官)というメンバー(クレジット順)。他に中原成男(庄司刑事)、橋本功(守田刑事)、守田比呂也(石田鑑識課員)などがいる。科捜研が主役ではあるが、トップクレジットは捜査一課刑事役の芦田である。
ここで注目なのは、園井啓介であろう。おそらく、本作が最後の出演ドラマだと思われる。このドラマが始まったタイミングで当時で1億円を超える巨額な脱税が発覚したのである。俳優としても売れっ子であったが、ほぼ株で得た収入だったらしい。そんなわけで、何話かは不明だが、ドラマの方は序盤で降板しており、そのまま引退となったようだ。8話くらいから福田豊土(大島技官)が替わりのレギュラーになったようだ。園井は執行猶予付きの判決を受け、姿を消していたが2017年に「映画論叢」という雑誌に回想録のようなものを寄せている(事件には触れていない)。この時点で80代半ばだが、元気な様子であった。
ところで、前述の出演者の中で、原保美、大森義夫、中原成男、守田比呂也、そして園井啓介という顔ぶれを見て、自分より上の世代の人は、その全員がNHKドラマ「事件記者」(58~66年)のメンバーであることに気が付くかもしれない。「事件記者」と言えば、原作は島田一男だが、この「科学捜査官」も島田の原作(脚本も数話担当)なのである。
「事件記者」の終了が判明すると民放各社が、番組と島田をそのまま引き取ろうと画策するのだが、俳優陣の分裂騒動が起きてしまう。前述のメンバーと島田はフジテレビを選択し、同じ「事件記者」のタイトルで新メンバー(天知茂、多々良純、山本学など)を加えて半年間放送された。NET(現テレビ朝日)を選択した永井智雄、滝田裕介、近藤洋介、山田吾一らは広島の「暴力追放キャンペーン」を基にしたセミドキュメンタリードラマ「ある勇気の記録」に出演することになったのである。
つまり、この時に島田に付いていく形になったメンバーが、そのまま「科学捜査官」にも起用されたわけである。また、中原、守田、橋本功はやはり島田が原作の「同心部屋御用帳江戸の旋風」(75~79年)では、揃ってレギュラーの岡っ引き役に起用されている(田中邦衛、近藤洋介は同心役で出演)。

 

山峡の章(火曜日の女シリーズ)

今回も「火曜日の女シリーズ」から「山峡の章」(72年)である。原作は松本清張だが、このシリーズで松本清張原作というのは、この一作だけである。松本清張原作のテレビドラマは57年の「地方紙を買う女」が第1号となるらしいのだが、50年代だけで30作品近くあり、一番多かったのは62年で、46作品100回以上のドラマが放送されていたということなので、ミステリードラマの定番中の定番だったわけである。ゆえに、この「火曜日(土曜日)の女シリーズ」では、あえて避けたていたのでは、と予想する。
で、今回の「山峡の章」だが、これが二回目のドラマ化だったようで、70年に「霧氷の影」というタイトルで全4回の構成で放送されたらしい。ちなみに出演者は浜美枝、原田芳雄、菅貫太郎、大谷直子などである。
72年に放送された本作だが、制作は東京映画で全7回。個人的には実家にいた頃に見たのが最後だった気がする。つまり40年は目にしたことがないと思う。なので、内容から出演者から全く記憶にない。CSとかで近年、放送されたかどうかも不明で、少なくとも自分は見ていないはずだ。唯一覚えているのがOPの音楽で、何故か録音していた。もちろん、家庭用ビデオなどなかった時代であり、カセットテープレコーダーで音だけ録音していたのだ。
というわけで、ネット上等の情報から書かせてもらうが、原作のあらすじは、女子大を卒業したばかりの朝川昌子は九州旅行の山中で、官公庁に務める堀沢英夫とその友人・吉木と出会う。やがて、昌子は堀沢と結婚するが、堀沢はエリート意識が強く冷たい男であった。そんな中、堀沢と昌子の妹である怜子が失踪。そして、二人の遺体が宮城の作並温泉付近で発見される。二人の不倫関係を信じられない昌子は真相究明の乗り出すのだった。となっている。
どこまで原作に沿っているかは不明だが、ドラマ上のあらすじでは、堀沢昌子は仕事一筋の夫に多少の不満を抱きつつも、幸せな結婚生活を送っている。夫の英夫はエリートコースを歩んでいたが、ある時官公庁主導の土地開発計画を巡って内部情報の漏洩問題が浮上する。英夫の友人であるフリー記者の吉木が、事件を嗅ぎ付け新聞に掲載したのである、となっており、ドラマでは既に二人が結婚しているところから始まるようだ。その後、原作通りに展開していくのかどうかは不明なのだが、基本的な部分は改変されていないのではないだろうか。
出演者だが、主人公の昌子は大空真弓で、夫の堀沢英夫は久富惟晴。吉木信弘は藤竜也で、怜子は(恐らく)田島令子と思われる。確定情報がなく、他の出演者も幾野道子くらいしかわからないのだ。幾野は既にベテランで、田島は当時23歳ということもあり、おそらく彼女が怜子役だろう。田島は声優としても活躍しており、「バイオニック・ジェミー」の主演リンゼイ・ワグナーの吹替は有名であろう。
ちなみに、「山峡の章」は81年には「土曜ワイド劇場」で放送されており、出演者は音無美紀子(昌子)、目黒祐樹(堀沢)、小野寺昭(吉木)、風吹ジュン(怜子)となっている。それから、2010年にもスペシャルドラマとして放送され、菊川怜(昌子)、平岳大(堀沢)、岡田義徳(吉木)、星野真里(怜子)等が出演している。

 

あの子が死んだ朝(火曜日の女シリーズ)

今回も「火曜日の女シリーズ」から「あの子が死んだ朝」(72年)である。これについては、このブログを始めた頃(つまり16~17年前)に取り上げたことがあるのだが、それ以来放送はされていないはずだし、録画(したと思う)を見直したこともない。これといった新情報もないので、昔と同じ記事になってしまう可能性もあるが、「再放送ブログ」のようなものと思って頂きたい。佐々木守のオリジナル脚本で、制作は大映テレビである。
物語はある日の早朝から始まる。「泥棒!」の叫びと共に数人の若者が、とあるマンションから飛び出してくる。すぐ近くにいた新聞配達の少年が、正義感からその中の一人を捕まえようとするが、突き飛ばされて頭部を強打する。若者たちはとりあえず、その中の一人・篠塚卓也(水谷豊)の家へ逃げ込む。丁度父親(高橋昌也)は出張中で、母親・志津子(加藤治子)しかおらず、隠れるのには絶好であった。実は彼等6人は暴力団事務所からマリファナを奪って逃げだしていたのである。やがて、突き飛ばされた少年が死亡したことを知り、彼らは警察と暴力団の両方から追われることになり、篠塚家から出るに出られない。誰が少年を突き飛ばしたかは彼等も知らないのである(もちろん本人以外)。
というのが、大まかなストーリーで、本作のヒロインは前述の加藤治子ということになる。当時40歳で、今ならヒロイン役でも全然ありな年齢だが(もちろん人にもよる)、当時の40歳はオバサン感が強かった気がする。加藤はいかにも母親という感じで、仲間の母親ということもあろうが流石の不良少年たちも変な気は起こさない。
その6人組だが、水谷豊以外は、リーダー格が沖田駿一。「クラスメート-高校生ブルース-」でも不良少年をやっていたが、そういった役が似合うのである。二瓶康一こと火野正平。当時22歳でまだ本名の二瓶名義であり、火野正平となるのが翌年のことだ。杉山光宏は詳しいプロフィールが不明だが、60年代から子役として活躍しており「眠狂四郎」等に出演していた。佐久間三雄は62年に小学6年生の時に子役としてデビューしたとあるので当時21歳と思われる。火野も杉山も同じころにデビューしたらしいので、キャリアも年齢もほぼ一緒のようだ。佐久間は翌73年に「魔人ハンターミツルギ」で主演の一人・彗星役に抜擢され佐久間亮(あきら)と改名している。紅一点が麻衣ルリ子で、この人も年齢とかはハッキリわからないが、宝塚の出身で「アテンションプリーズ」(70年)に、スチュワーデスの一人として出演していた。後に毬杏奴(まりあんぬ)を名乗り「コードナンバー108七人のリブ」(76年)でメンバーの一人として出演した(死んでしまう役だけど)。もちろん、真理アンヌとは別人だ。
刑事役が高城丈二で、篠塚家も聞き込みに訪れるのだが、志津子は不良たちから「警察に言えば、卓也が(少年を)やったことにするぞ」と脅され、彼らを匿うしかなくなる。志津子は6人の中で誰が犯人なのかを探り出そうとする。閉塞感に耐えかねて火野正平が一人で篠塚家を抜け出すのだが、暴力団に捕まり殺されてしまう。
犯人は残る5人の中で、一番目立たない人物と言えようか。女性には無理で、いかにもな感じの沖田ということもない。となると…。詳しくは覚えていない部分も多く、緑魔子やテレサ野田なんかも出演しているのだが、どんな役だったのか忘れてしまった。もう一度見直してみたい作品である。