お宝映画・番組私的見聞録 -111ページ目

日活ロマンポルノ史 村川透監督デビュー

「白い指の戯れ」(72年)で監督デビューした村川透だったが、続いて「官能地帯/哀しみの女街」と「哀愁のサーキット」を撮った。
「哀愁のサーキット」の主演は峰岸徹(当時は隆之介)で、彼が出演した唯一のロマンポルノである。話は人気レーサーだった福沢幸雄の事故死と恋人だった歌手・小川知子とのロマンスがモデルとなっているという。
峰岸は大映の若手スターであったが、倒産しフリーの状態になっていた時である。村川は峰岸と相手役の木山佳を自分の家に泊めて、予め恋愛関係にさせてから、撮影に臨んだという。木山佳については、詳細は不明だが、映画出演はどうやらこれ1作だけだったようである。
他には日高晤郎や歌手の石川セリも出演している。石川セリは本人の役で、彼女の歌が全編にわたり流れるという。
日高は元々は大映京都の俳優で細谷新吾としてデビュー、市川雷蔵や勝新太郎にも可愛がられていたという。65年に大映を退社し、活動の場をテレビに移し、芸名も飛鷹一とした。その名では「特別機動捜査隊」の犯人役で出演していたのを見たことがある。飛鷹一が日高晤郎だとは知らなかったけれども(後に刑事役としてレギュラーとなる)。
67年に歌手デビューした時に、日高吾郎となったのである(後に晤郎に改名)。峰岸同様、ロマンポルノはこれ一作のようである。
話が横にそれたが、村川透はこの3作でロマンポルノから去っていった。「白い指の戯れは」高評価を得たが、本人は自分向きの世界ではないと思ったようである。
73年に日活退社後は、故郷の山形に帰って鉄工所の経営などをやっていたというが、76年になって舛田利雄などの計らいで、石原プロ制作のドラマ「大都会 闘いの日々」で、監督復帰を果たしたのである。
彼が最初に担当した第4話「協力者」のゲストが松田優作だった。これを機に村川は78年、角川映画で「最も危険な遊戯」を松田優作主演で撮り、映画監督としても復帰した。以後の松田、村川コンビの活躍は有名であろう。
「大都会」には、石原裕次郎、渡哲也、宍戸錠といったロマンポルノ以前の日活スターも大挙出演していたが、以前も書いたが粟津號が刑事役でレギュラー、岡本麗、宮下順子、伊佐山ひろ子、江角英明、芹明香といったロマンポルノで活躍した面々もゲスト出演している。

日活ロマンポルノ史 主演女優賞・伊佐山ひろ子

今回も「日活ロマンポルノ全史」からのネタである。
前回、神代辰巳の「濡れた唇」(72年)に俳優小劇場から、絵沢萌子、谷本一、粟津號らが出演したと書いたが、俳小に研究生として在籍していたのが、風間杜夫であり伊佐山ひろ子だったのである。
その伊佐山ひろ子も「白い指の戯れ」(72年)で映画デビューを飾ることになったのである。また、監督の村川透もこれがデビュー作であった。脚本は村川と神代が担当している。
主演は荒木一郎で、これ以降、スターと言われる男優がロマンポルノに顔をだすようになっていくのである。本作には伊佐山の他、谷本、粟津といった俳小勢も出演していた。
続けて、伊佐山が出演したのが「一条さゆり/濡れた欲情」(72年)である。この作品には関西ストリップの女王と言われた一条さゆり本人が出演し、実話を元に構成されている。監督、脚本とも神代が担当しており、出演者は、白川和子、高橋明、絵沢萌子、粟津號らに加え、小沢昭一、中田カフス・ボタンも姿を見せている。
実はヒロインは、一条にライバル意識を燃やす若いストリッパーで、それを演じるのが伊佐山である。
実はこの2作、72年度のキネマ旬報ベスト・テンで「一条さゆり/濡れた欲情」が8位、「白い指の戯れ」が10位と、ベストテン入りを果たしたのである。両作の脚本を書いた神代は脚本賞に選ばれ、伊佐山ひろ子は新人でありながら主演女優賞に選ばれたのである。
前年に誕生し白眼視されていたロマンポルノは、わずか1年で市民権を得たのである。
ちなみに、キネマ旬報で主演女優賞を獲得したその近年の顔ぶれは、司葉子、岩下志麻、若尾文子、倍賞千恵子、藤純子と来ての伊佐山ひろ子なので、その異質感がわかると思う。
彼女が栗原小巻に一票差で競り勝って主演女優賞を獲得したとき、「賞なんてクジ引きみたい」という感想をもらしている。ところが、「ポルノ女優が受賞するなんて」と怒って、長年務めた選考委員を降りてしまった評論家も数人いたのである。
勢いにのっていた神代だったが、「女地獄/森は濡れた」(73年)という作品では、乱交しながら相手を射殺していくという場面があり、封切りから三日目に警視庁から映倫に再審査の要請があり、三度目の摘発を恐れた日活は、ただちに上映を自主的に中止し、この作品を封印してしまったのである。しかし、この後に神代が撮った「四畳半襖の裏張り」(73年)は、73年度のキネマ旬報ベストテンの第6位にランクインしている。

日活ロマンポルノ史 俳優小劇場の面々

神代辰巳、4年ぶり監督作品となる「濡れた唇」(72年)だが、例によって女優探しに苦労していた。それを見つけてきたのは、撮影監督となる姫田真佐久であった。姫田は当時、「トラ・トラ・トラ」や「戦争と人間」などの撮影を担当した日活を代表するカメラマンであった。
今村昌平とは、そのデビュー当時からのコンビであり、今回も「未帰還兵を追って」というドキュメンタリーの撮影で、タイ、マレーシア、ペナンなどに渡り、帰国したばかりで、ロマンポルノに関してはよく事情がわかっていない状態であった。
神代がカメラマンに自分を希望していると聞き、姫田はとにかく撮影所に出向いたのである。スタッフでも名前を変えて参加している人が多い中、自分は本名でやろうと思ったという。で、神代からは女優が見つからないと聞き、そこから始めようと考え、俳優小劇場を訪れたのである。今村の作品では、俳小の小沢昭一や西村晃が常連だったこともあり、多くの役者を知っていたのである。
当日の舞台で、ヌードになっていたのが松田友絵という女優であった。姫田は彼女が気に入り、神代にも会わせたが、「おばさん顔だ」と不満を述べた。シナリオでの設定は21歳であり、神代はもっと若い娘を考えていたのだが、松田は既に30半ばであった。
そこで、姫田は彼女におかっぱのカツラをさせてみたのである。すると驚くほど若返って見えたので、神代も了承した。松田友絵は絵沢萌子という名で出演することになったのである。絵沢はこれ以降は主に助演として活躍することになる。
俳小からは谷本一、粟津號も「濡れた唇」へ出演することが決まった。小柄でずんぐりした体形の粟津は後に石原プロ製作の「大都会」シリーズで、レギュラーに抜擢される。
「大都会・闘いの日々」では、渡哲也を始めとして佐藤慶、玉川伊佐男、中条静夫、高品格、草薙幸二郎、小野武彦という錚々たるメンバーと一緒の刑事役である。続く「PARTⅡ」でも同役であったが、石原プロが神田正輝と苅谷俊介を刑事役で使うことを決めたので、誰かを降板させることになり、しがらみのなかった粟津に白羽の矢がたったのである。そして粟津は、1クールで殉職という形で番組を退くことになった。
神代はこれ以降、次々とロマンポルノの名作といわれる作品を発表していくのである。

日活ロマンポルノ史 神代辰巳登場

摘発された「恋の狩人」と「牝猫の匂い」の次に、公開されたのが「濡れた唇」と「性盗ねずみ小僧」(72年)の2本である。
「濡れた唇」の監督は神代辰巳。これは神代の監督2作目、実に4年ぶりの新作だったのである。デビュー作は田中小実昌原作の「かぶりつき人生」(68年)であったが、日活開闢以来の不入りと言われるくらいの結果に終わり、長く干されることになってしまったのであった。映画を見た田中小実昌が神代に「君は文学青年だねえ」と言ったという。
ストリッパーを題材とした話で、主演は日劇ダンシングチーム出身の殿岡ハツエ、関西の舞台などでコントなどをやっていた丹羽志津。男優陣も玉村駿太郎、中台祥浩、市村博など脇役専門の役者ばかりで、スター不在ということもあったのだろうか。それにしても、題材から出演者から既にロマンポルノっぽい雰囲気が漂っている気がする。
神代は53年に松竹京都に入社。翌54年に日活が映画製作を再開すると同期入社だった蔵原惟繕、松尾昭典が移籍した。神代は松竹では助監督として重宝されていたが、55年に蔵原などの援護もあり日活へ移籍した。
一足先に日活に引き抜かれていた島崎雪子の存在も大きかった。実は神代と島崎は恋人同士であり、その口ぞえもあって、神代の日活移籍がかなったという。
島崎雪子といえば、当時はすでにスター女優である。元々は東宝の女優だが、当時はフリーで東映や松竹にも出演していた。この頃といえば「七人の侍」(54年)が公開されたあたりである。登場シーンはわずかなのに扱いは大きかった。そんなスター女優と無名の助監督の出会いは松竹京都での「伝七捕物帳/刺青女難」(54年)だったという。
そして、この55年には二人は結婚しているのである。神代28歳、島崎24歳であった。監督と女優の結婚というのはよくあるのだが、スター女優と助監督の結婚など当時は許されるものではなかった。そこは、島崎が押し切ったのであろう。彼女は「格差」というものを気にしないのか、彼が必ず監督になると信じていたからなのかは不明だ。
何となく、直ぐに別れそうなシチュエーションに見えるが、夫婦関係は約10年続き、神代の助監督生活も10年続いた。そして、67年に離婚。結婚を機にという話はよくあるが、島崎はこの離婚を機に芸能界を退いた(一時復帰)。神代は「ヒモのような生活だった」と当時を述べている。彼の映画監督デビューはこの翌年の話である。

日活ロマンポルノ裁判

日活ロマンポルノ裁判が行われている中、山口清一郎監督と田中真理主演のコンビで撮られた第2弾が「恋の狩人/欲望」(73年)である。しかし、その内容が係争中の裁判を思わせるようなものであったためか、第3弾の「恋の狩人/淫殺」の撮影は会社によって中止させられた。
これ以降、山口の企画は採用されなくなり、76年には退社を余儀なくされたのである。結局、山口のロマンポルノ監督作品は2作のみで終わったのである。田中真理も退社し、前述の「恋の狩人/欲望」が最後の主演作となってしまったのである。つまり、彼女のロマンポルノでの活動期間は2年にも満たなかったのである。
田中はその後、テレビなどで活躍するが、山口がATGで77年に撮った「北村透谷/わが冬の旅」に、透谷夫人役で出演している。これ以降の山口の作品はないようである。
なお、ロマンポルノ裁判は、80年になって全員に無罪判決が下っている。
摘発された一作である「OL日記/牝猫の匂い」に主演した中川梨絵は子役出身の23歳であった。子役時代はNHKの「ホームラン教室」や「お笑い三人組」などに出演していたという。67年に東宝に入社し、「中川さかゆ」という不思議な芸名で「日本一の男の中の男」(67年)「フレッシュマン若大将」(69年)などに出演している。
67年東宝入社ということは、東宝ニュータレント7期生だった可能性がある。以前ここで書いたのだが、東宝では60年入社の16期までをニューフェースと呼び、61年からはニュータレントと呼称していたのである。
その前後である6期と8期は、活躍したメンバーも多いのだが、7期は伊吹吾郎くらいしか判明していない。まあ、伊吹は東宝では活躍していないし、中川も東宝では芽が出なかったので、ロマンポルノへの転進は成功といえるだろう。
その中川は、74年に「実録・阿部定」の定役に決まっていたのだが、東映が「実録飛車角 狼どもの仁義」のヒロイン(菅原文太の相手役)として、引き抜いていった。実は、東映が彼女を欲しがったというより、敏腕プロデューサーである俊藤浩滋が「阿部定」を監督する田中登を欲しがっており、そのための画策とも言われている。

日活ロマンポルノ誕生編 その4

日活ロマンポルノの初期において、もう一人重要な女優といえば田中真理がいる。彼女も片桐夕子同様、日活の目立たない女優の一人であった。
18歳のとき日活にスカウトされ、「女番長/仁義破り」(69年)の端役でデビューしている(田中マリ名義)。クレジットすらされない作品も何本かあるようだ。人気ドラマ「サインはV」にも出演している。
そんな彼女が、日活ロマンポルノ第4弾となる「セックスライダー/濡れたハイウェイ」(71年)で主役デビューしたのである。ちなみに彼女の祖父は通算303勝の大投手ヴィクトル・スタルヒンである。多少外国人っぽい顔立ちはその血を引いているからであろう。
彼女を有名にしたのは、いわゆる「日活ポルノ裁判」であった。
72年になって、その第2弾として公開されたのが、田中真理主演2作目の「ラブハンター/恋の狩人」と中川梨絵主演の「OL日記/牝猫の匂い」だったのだが、この2作と併映のピンク映画からの買い上げ作品「女高生芸者」が、わいせつ容疑で検挙、フィルムを押収されたのである。
加えて、4月に公開されたやはり田中主演5作目の「愛のぬくもり」も摘発され、計4作品について裁判で争われることになったのである。
翌年始まった公判では、「恋の狩人」の監督である山口清一郎と主演女優の田中真理が突出して闘ったという。田中は「警視庁のアイドル」とう逆説的なニックネームで呼ばれ、大学祭などにゲストとして招かれることが多くなった。そこでは、難解な言葉を使って演説したりしていたという。山口は一貫して「わいせつ、なぜ悪い」という主張であった。
ジャーナリズムも世論も表現の自由に対する国家権力の弾圧、侵害を批判し、日活に同情的であり、時代の流れは日活にあったのである。
余談だが、中学生のとき田中君という転校生が来たのだが、彼のあだ名が「マリ」になった。もちろん、田中真理からきているはずだが、ネットはもちろんAVもない時代なので、映画館以外では成人映画を見れないので、日活を辞め一般作に出ていた頃だと思う。とにかく中坊も知っている田中真理だったのである。

日活ロマンポルノ誕生編 その3

前回の続きだが、日活ロマンポルノ第2弾として公開されたのは、「女高生レポート 夕子の白い胸」と「恋狂い」(71年)の2本であった。
後者の「恋狂い」の監督は加藤彰。その監督デビューは「女子学園/おとなの遊び」(70年)で、夏純子の主演シリーズの3作目である。しかし、この後日活の映画製作中止が発表され、仕事のない日が続いていたのであった。そこへロマンポルノの監督をしないか、という打診があったのである。
迷った末、引き受けたのだが、主演女優が見つからなかった。おそらく、夏純子のことも頭にあったと思われる。高校在学中にデビューし、短い間に大映、東映、東宝のお色気路線の映画に出演し、69年から日活のの専属になっていた。この後、松竹の映画に出演し、あっという間に5社の映画を制覇?したのである。
実はこの間に若松孝二監督の「犯された白衣」(68年)というピンク映画にも出演していた経験があるのだが、人気女優になっていた彼女には、当時それは黒歴史となっていた。ゆえに、路線変更が発表されると彼女も退社していった。今までの出演作とあまり違わないような気もするが、やはりはっきりと「ポルノ」と銘打たれるのは抵抗があったのであろう。真理アンヌやテレサ野田なんかも退社していた。
加藤はオーディションのようなことも行ったのだが、結局決まらずプロデューサーから「封切りに間に合わないから白川でやれ」といわれ、白川和子で撮ることになったのである。
このオーディションで最後まで候補に残っていたのが、牧恵子である。ピンク映画数本に出演した経験はあった。その彼女を主演に撮られたのが、ロマンポルノ第3弾である「花芯の誘い」(71年)という作品である。
「花芯の誘い」の監督は小沼勝。「新・ハレンチ学園」(70年)のチーフ助監督を務め、監督昇進は目前の状態であったが、そのタイミングで加藤同様、仕事がない状態になっていたのである。
小沼は、ロマンポルノの監督を打診されると何の抵抗もなく二つ返事で引き受けている。脚本の荻冬彦とは自身はロマンポルノの監督を断った小沢啓一のことである。かなりの監督が不参加で、脚本でも名前を変えたのは、テレビの仕事が出来なくなるからという理由であった。
小沼も女優を選ぶのに悩んだ。実は「新・ハレンチ学園」の時に、片桐夕子と仲良くなっていたらしいが、既に「夕子の白い胸」の主演に決まっていたこともあり、声をかけなかったという。この小沼と片桐夕子は後に結婚することになるのだが、小沼が片桐主演で撮った作品は2本ほどしかないようだ。

日活ロマンポルノ誕生編 その2

日活ロマンポルノの第1弾である「色暦大奥秘話」(71年)の撮影は、撮影所にいた社員ほぼ全員が見守る中で行われたという。それも主演の小川節子と将軍役の俳優の濡れ場である。そして、もう一本の「団地妻 昼下がりの情事」(71年)についても、その初号試写が超満員の中で行われたという。
つまり、これは日活はこれからこういう作品を作っていくから、嫌な人は辞めてもいいですよ、という「踏絵」だったのだろうと、スクリプターだった白鳥あかねは述べている。実際、300人もの俳優やスタッフが退社したという。
さて、前述の小川節子については、出演の経緯などは不明だが当時まだ20歳の若さで、これが映画デビュー作だったという。ロマンポルノ以外には、サスペンス枠の土曜日の女シリーズ「女子高校生殺人事件」(74年)などにも出演している。
このドラマでは高岡健二(当時24歳:高校生役)の姉役(実際は年下)で出演していた。これが縁で二人は結婚し、小川は引退した。その小川だが、この1月に放送された「爆報THEフライデー」で、C型肝炎で闘病中であることが明かされた。番組は見ていないが、かなりやせこけた姿になっていたようだ。
話は横にそれるが、「女子高校生殺人事件」で、タイトルにある死ぬ女子高生の役は秋吉久美子。秋吉はデビュー作の「旅の重さ」では自殺する役。「太陽にほえろ」でも松田優作演じるジーパン刑事登場の回(73年)に出演するが、セリフもほとんどなく殺される役。そして今回とデビュー当時は死ぬばかりやっていたのである。主演の教師役である山口果林よりも、ずっと綺麗なのにもったいないと、当時は思ったような気がする。
しかし、この直後「赤ちょうちん」「妹」「バージンブルース」(いずれも74年)と立て続けに主演し、人気女優へと成長した。いずれも日活作品(藤田敏八監督)だが、ロマンポルノ扱いではない。相手役は高岡健二だ(「妹」は林隆三)。
話を戻すと、ロマンポルノ第2弾となったのは「恋狂い」と「女高生レポート/夕子の白い胸」の二作である。
後者の「夕子」とは、片桐夕子のことである。五月由美の名で「新・ハレンチ学園」や「八月の濡れた砂」などに端役で出演していたが、会社に口説かれ、芸名を役名でもあった「片桐夕子」に改め出演を承諾した。しかし、いざ撮影で絡みのシーンになると泣き出してしまったという。それほど過激なシーンでなくても泣き出してしまうため、見かねた前述のスクリプター白鳥あかねが彼女に声をかけ賢明になだめて、撮影を続けたという。
また、話が横にそれるが小川節子と片桐夕子はともに「子連れ狼」のテレビシリーズにゲスト出演している。ただし、片桐が出演した第1部第2話である「乞胸お雪」は封印作品となっており、なかったことになっているようだ。

日活ロマンポルノ誕生編

さて、昨年やって一部好評だったピンク映画、ロマンポルノの話題だが、「中断」ということにしてあったので、久々にやってみようと思う。例によって「日活ロマンポルノ全史」という本を古本屋で手に入れたからなのだけれども。
日活ロマンポルノの第1号として公開されたのは、「団地妻 昼下がりの情事」と「色暦大奥秘話」(71年)の2本である。
前者の主演は白川和子、監督は西村昭五郎である。実は西村は70年からの約1年間ほど干されていた監督だ。きっかけは70年に西村が撮った「残酷おんな情死」が堀久作社長の逆鱗に触れたためである。東映のポルノ映画みたいなタイトルだが、青春映画の日活もその末期には、こういう作品も公開していたのである。
堀社長の逆鱗に触れた作品といえば、有名なのは鈴木清順の「殺しの烙印」(68年)だと思うが、これで鈴木清順は日活を追われることになる。この作品の主演は宍戸錠と真理アンヌだが、「残酷おんな情死」の主演も真理アンヌなのである。前回の「七人のリブ」で、毬杏双という女優を紹介したが、こっちが本家の「まりあんぬ」である。
映画会社のワンマンといえば、新東宝の大蔵貢や大映の永田雅一が真っ先に思い浮かぶが、堀久作もかなりのものである。67年には江守清樹郎専務ら六人の取締役が堀社長との軋轢で退任したりしていた。
そんな暇をもてあましていた西村の元に「お色気映画を撮りませんか」という電話があったのである。西村はそれに迷うことなく応じて「団地妻」の企画を考えたのであった。
ロマンポルノへの路線変更で、日活でスタア言われていた人たちは、ほぼ去っていくことなる。宍戸錠などは、出演交渉はおろか何の相談もなかったことに怒っていたという。「ハレンチ学園」シリーズなどにも宍戸は出演しており、依頼していれば、出演の可能性もあったのかもしれない。
そのまま日活に居残ったのは、俗にいう大部屋俳優たちである。「昼下がりの情事」に出演した浜口竜哉や高橋明、小泉郁之助などがそうである。高橋や小泉は55年入社のベテランで、端役ばかりだったのが、ロマンポルノでは主演格(特に高橋)になっていく。本作には後に児玉誉志夫邸にセスナで突っ込んで死亡する前野霜一郎も出演している。
居残ったのは男優だけではない。主演の白川和子はピンク映画界からスカウトされてきたのだが、ポスターで白川の次に名前のある南条マキは口説かれて出演した日活の専属女優である。しかし、本作ともう一作に出演しただけで退社したという。
そして同時公開された「色暦大奥秘話」に出演している五月由美こと、後の片桐夕子も、元々日活に所属していた女優だったのである。森みどり、橘田良江、大谷木洋子なども居残り組である。

コードナンバー108 七人のリブ その3

もう1回だけ、「七人のリブ」(76年)の話題なのだが、少年期に見ていたテレビ番組の記憶というのは結構いいほうだと思っていたのだが、本作に関しては、元々ほとんど忘れていたが、記憶違いの部分も結構あったことに気付いた。
まず、第1話でメンバーの一人が死ぬ。実は七人の他にもう一人、ジュディ・オング演じる雅子と前田美波里演じるマリと同格の律子というメンバーがおり、彼女が殉職する。
演じていたのは泉晶子。泉アキではない。個人的にはあまり馴染みのない女優だが、割合堅実にドラマに顔を出しており、現在も活躍中のようである。
まあ、第1話でメンバーの誰かが死ぬというのは、昔から結構あり、「忍者部隊月光」の広川太一郎、「ワイルド7」の峰岸隆之介(徹)、「ジャンボーグA」の天田俊明、「星空に撃て」の山口崇なんかが第1話で死んでいたりする。
もっとも記憶にあったのが、最終話1回前の第12話。毬杏双演じる竜子が殺される話である。殺し屋役も浜田晃、荻原紀ということも覚えていた。しかし、詳しいストーリーに関しては覚えてなかったので、番組開始15分くらいで、あっさりと浜田に射殺されてしまったのは意外に感じた。
まだ、毬杏双は活躍頻度が高い方だったからマシだと思うが、これが出番の少なかった山内えみこかミッチー・ラブだったら、ただ死ぬために出ていたという感じになってしまっただろうと思う。
殺し屋の一人を演じた荻原紀(ただしと読む)は、若駒冒険グループというスタントチームのメンバーで、名前がピンで出たのはこの時だけかもしれない(ゲストは二人だけだったので)。「太陽にほえろ」でラガー刑事(渡辺徹)を殉職させたのも彼である。
そして、最終話。ここも記憶が混同しており、竜子の復讐戦が今回かなと思っていたのだが、前回中にカタがついてしまっていた。何よりも全く記憶になかったのが、ジュディ演じる雅子が死んでしまったことである。
悪役チームは今井健二、亀石征一郎、内田勝正という東映テイストの強い三人。腕の立つ殺し屋とか大きな組織の一員とかいうわけでもないのだが、彼らにジュディは殺られてしまう。まあ、前回に自分の指示ミスで竜子を死なせてしまったことからエージェントを辞めようとしたりと、死亡フラグはあったけれども。
で、美波里が亀石を射殺し、内田を男性用トイレで指輪に仕込んだ針で刺し殺す。このシーンは記憶にあったのだが、何故か美波里ではなくジュディが殺ったように思っていた。自分の記憶もあまりあてにならないことがわかった。
で、最後はリーダー野際陽子が今井を射殺してジ・エンド。残った5人は任務を解かれ散っていくのだが、野際のナレーションでは「うち死亡2名」とあり、第1話で死んだ彼女はいないことになっていた。まあ、第1話を見ていなかった場合混同するから、仕方ないかもしれない。