nao23区飲兵衛 -52ページ目

ガス欠

 愛車がガス欠になった。

愛車といっても、やたら駐車禁止がうるさくなってから近所周りで愛用あいている原付バイクだ。


 ガソリン携行缶が無いと思っていたが、イロイロ考えて思い出したのが、

ボート用のタンクだ。


”アレを持ち出して、ロートで流し込めば・・・”と思ってはみたが、持ち出すのが億劫だ。

しばらく使ってないから、荷物のしたに埋もれているのだろう。イヤダイヤダ・・・と、


思ってみたが、午後、電話のかかってこない時間にやってみることにした。


ガソリン缶の上に「女の子一人分」はあろうかと言う畳まれたゴムボートが載っている。

(これを動かすのが嫌だった)


気合を入れて、「せーの、」で持ち上げてガソリン缶に手が付くと、

後は意外に、勝手に体が動き出し、


駐車場で給油を済ませると、ガソリン缶の小さなヒビを補修しだしていた。


 普段、電話とパソコンばかりの仕事だからか、

久しぶりの作業に爽快感を感じた。


 やっぱり、アタマより体を使った仕事に本来向いているのかと、思った。



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フルートとハープの為の協奏曲

 仕事の後普段よく行く居酒屋に行った。


 体調壊しがちな店主に「御身お大切に」と告げて店を出たあと、

中央線で自宅最寄り駅へ。


 しこたま飲んで、食って、あったまったはずが、

駅改札を出てくるころには体が冷えて、もう一軒行きたくなった。


 駅前飲み屋街の一角に立ち寄った。


接客に来た女の子が、ビートたけしばりに肩を動か私を見かねてか、

肩をもんでくれた。


 「正月は何をしていたんですか?」


と聞かれて、年賀状書きと寝正月と、答えると話は何処からか楽器の話。


 音大に合格したが、学費を払い忘れて、入学の期を逃し、今はコレとのこと。


こういうずっこけた輩は親近感が沸く。


 フルートをやっていたが、何か楽器は?と訊かれ、苦し紛れに


「いい加減なラッパなら・・・」と、答えたら音楽の話に。


 彼女はモーツアルトのこの協奏曲が好きらしい。


口三味線で旋律を歌ったら、


「ぴったり調性もあっている」とよろこんでいた。


 話した事イロイロ。


フルートはCで鳴るらしくて、ラッパのBと違って移調する必要が無いらしいこと。

音大の試験はモーツアルトかバッハが中心とのこと。


 私は、モーツアルトなら、ピアノ協奏曲が一番評価されているらしいが、

バイオリンソナタや歌劇で使われている三連符の使い方が好きだの、


偉い音楽家の大作より、


ほとんど誰も知らない、瀬戸口藤吉の付点リズムだけで作ったような

ト長調の行進曲がすきだのと(帰宅した今、繊細な2拍子を楽しんでいる。行進曲;敷島艦)、


 一年に一度も話すことの無い話題にのめり込み、ささやかな高揚感を覚えた。


 場末の飲み屋の時間としては上出来、

銀座や赤坂だって、詩歌・管弦の話題なんてほとんど出てこない。


 「自分はもしかして、結構好きなのか」


とも思ったが、


こんな話、ニホンのオジサンには、たま~に、が相応しい、とも思った。


 会話そのものよりも、少し音をとるのに躊躇したが、ハ長調の協奏曲が、


ハ長調のまま口から出て来たのが、何ともに嬉しかった。


残念ながら、普段はまったく縁がないシロモノだ。



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銀座・年末

 どうも去年は世間の不景気なみにロクなことが無く、

最後にしっとり飲もうと思って、行きつけの店に行ってみた。


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 店内には坊主頭の初老の男性客一人。

なにやらママにうんちを垂れていた(活舌よろしく、邪心無く)。

これがなかなか止まらない。


 段々にやかましく感じて来たので、


”30分で帰ろうか、1時間以内に帰ろうか”と思っていたけれど

なかなか次の客が来ない。


 60歳前後に見えたが、発言はとどまる事を知らず、声は店内に響き渡る。


初めて見る顔なので、”最初は「この人の職業何?”と思って聞いていたけれど

やがて、ようやく次の客が来て、その人が珍しく


”カウンターで寝たふり”する頃になると、


”この年齢、このような場で、高校・大学生並の間の取り方、お構い無しの大声、

無邪気な迷惑の発動とも言うべき障害は何か??”と、


先天性の人格障害や何か、あまり得意としない分野の分析に入っていた。


 とても飲めたもんじゃない。


クタクタになって店を出た。出る際に彼は礼儀正しく私に挨拶をしていたから、

私が描いた彼の印象はそんなに間違えたもんじゃなかったみたい。


 如何にも2009年の締めくくりにふさわしい一時。


今年は酒をひかえようか。




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